発生動向総覧
*2007年4月からの法改正に伴い、疾病の追加および並び順を一部変更しました。
〈第28週コメント〉 7月18日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 261例 |
3類感染症: |
細菌性赤痢8例(感染地域:東京都5例*、インドネシア3例)
*大学における検査実習による集団発生
腸管出血性大腸菌感染症165例(うち有症者103例、うちHUS 6例)
感染地域:すべて国内
国内の多い感染地域:熊本県21例、埼玉県20例、東京都18例、兵庫県12例
年齢群:10歳未満(56例)、10代(22例)、20代(32例)、30代(21例)、40代(7例)、50代(12例)、60代(10例)、70歳以上(5例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2( 56例)、O157 VT2( 53例)、O111 VT1・VT2( 19例)、O26 VT1( 14例)、O111 VT1( 4
例)、O121 VT2(2例)、O157 VT1(2例)、O25 VT2(1例)、O63 VT2(1例)、O119 VT1(1例)、O145 VT1(1例)、O145 VT2(1例)、O165 VT1・VT2(1例)、O165 VT1(1例)、その他/不明(8例)
腸チフス1例(感染地域:大阪府) |
4類感染症: |
:A型肝炎3例
(感染地域:兵庫県1例、国内(都道府県不明)1例、英領ピトケアン島1例)
つつが虫病1例(感染地域:青森県)
デング熱4例(感染地域:タイ2例、マレーシア1例、ネパール1例)
日本紅斑熱3例(感染地域:三重県2例、広島県1例)
マラリア1例(三日熱_感染地域:ブラジル)
レジオネラ症12例(すべて肺炎型)
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年齢群:40代1例、50代5例、60代5例、70代1例
感染地域:滋賀県2例、和歌山県2例(ともに温泉)、山形県1例、埼玉県1例、長野県1例、愛知県1例、大阪府1例、岡山県1例、熊本県
1例、国内(都道府県不明)1例
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5類感染症: |
アメーバ赤痢8例(腸管アメーバ症7例、腸管外アメーバ症1例) |
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感染地域:国内6例、中国1例、タイ1例
感染経路:経口1例、性的接触3例(異性間2例、同性間1例)、不明4例 |
ウイルス性肝炎5例
〔すべてB型_感染経路:性的接触4例(すべて異性間)、不明1例〕 急性脳炎3例
〔A型インフルエンザウイルス1例(3歳)、病原体不明2例(ともに1歳)〕
クロイツフェルト・ヤコブ病2例(ともに孤発性プリオン病古典型)
後天性免疫不全症候群18例(AIDS 2例、無症候16例)
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感染地域:国内15例、国内/オーストラリア1例、国外(国不明)2例
感染経路:性的接触15例(異性間2例、同性間11例、異性間・同性間2例)、不明3例 |
梅毒12例(早期顕症I期2例、早期顕症II期5例、無症候5例)
(補)他に梅毒1例の報告があったが削除予定。また、報告遅れとして、エキノコックス症2例(ともに多包条虫_感染地域:ともに北海道)、オウム病1例(感染地域:宮城県_感染源:インコ)、レジオネラ症1例〔肺炎型_感染地域:栃木県(温泉)〕、急性脳炎3例〔麻疹ウイルス1例(10代)、単純ヘルペスウイルス1例(40代)、A型インフルエンザウイルス1例(9歳)〕、劇症型溶血性レンサ球菌感染症3例(60代1例、80代2例)等の報告があった。 |
◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ:定点当たり報告数は増加した。都道府県別では沖縄県(13.69)、宮崎県(0.93)、福島県(0.43)が多い。沖縄県は4週連続で増加している。 小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症は157例の報告があり、報告数は増加した。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の約64%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では埼玉県(1.05)、高知県(1.00)、山形県(0.93)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は第23週以降減少が続いているが、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してやや多い。都道府県別では茨城県(2.7)、埼玉県(2.7)、富山県(2.5)、秋田県(2.5)、山形県(2.5)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は第21週以降減少が続いているが、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では大分県(10.6)、福井県(6.9)、三重県(6.0)、滋賀県(6.0)が多い。水痘の定点当たり報告数は25週以降減少が続いている。都道府県別では長野県(1.98)、埼玉県(1.52)、新潟県(1.49)、宮城県(1.48)が多い。手足口病の定点当たり報告数は第19週以降増加が続いている。都道府県別では和歌山県(11.9)、熊本県(7.1)、福島県(6.9)、福岡県(5.2)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は2週連続で減少したが、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では長野県(3.8)、新潟県(2.5)、宮城県(1.8)が多い。百日咳の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では徳島県(0.17)、熊本県(0.17)、沖縄県(0.12)、大阪府(0.06)、福岡県(0.06)が多い。風しんの報告数は9例と3週連続で減少した。都道府県別では広島県2例、埼玉県、千葉県、神奈川県、京都府、大阪府、兵庫県、沖縄県より各1例であった。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は第19週以降増加が続いている。都道府県別では福井県(10.5)、宮崎県(9.4)、徳島県(8.3)、愛媛県(8.3)が多い。麻しんの報告数は24週以降減少が続いており、17都道府県から73例の報告があった。都道府県別では大阪府12例、千葉県、東京都から各11例、北海道9例、神奈川県6例、埼玉県4例、福島県、茨城県、福岡県から各3例、長野県、京都府、広島県から各2例の順であった。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は微減した。都道府県別では愛媛県(1.5)、新潟県(1.3)、高知県(1.3)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では沖縄県(3.4)、福島県(2.4)、宮城県(2.2)が多い。成人麻しんの報告数は第22週以降減少が続いており、7都道府県から12例の報告があった。都道府県別では、東京都4例、長野県、大阪府から各2例、福島県 神奈川県、岡山県、福岡県から各1例の報告があった。
〈6月コメント〉
◆性感染症について 2007年7月11日集計分 性感染症定点数:974
(産婦人科・産科・婦人科:469、泌尿器科:395、皮膚科95、性病科14)
●月別推移 2007年6月の月別定点当たり患者報告数は、性器クラミジア感染症が2.76(男1.25、女1.52)、性器ヘルペスウイルス感染症が0.80(男0.33、女0.46)、尖圭コンジローマが0.59(男0.34、女0.26)、淋菌感染症が0.94(男0.76、女0.17)であった。男性では性器クラミジア感染症、次いで淋菌感染症が多く、女性では性器クラミジア感染症、次いで性器ヘルペスウイルス感染症が多 かった(図1)。
前月に比べると、性器クラミジア感染症は男性で増加、女性で減少、性器ヘルペスウイルス感染症は男女ともに減少、尖圭コンジローマは男性で増加、女性で同値、淋菌感染症は男女ともに減少した(「グラフ総覧」参照)。男女別に過去5年間の同時期と比較すると、性器クラミジア感染症では男女ともに平均-1標準偏差(SD)を下回り、性器ヘルペスウイルス感染症では男性で-1SD、女性で-2SDを下回り、淋菌感染症では男女ともに-1SDを下回った(図2)。
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図1.各性感染症が総報告数に占める割合(6月) |
●男女別・年齢階級別
年齢群(0歳、1〜4歳、5〜69歳は5歳毎、および70歳以上)でみた定点当たり報告数のピークは、男性では淋菌感染症が20〜24歳と30〜34歳(同値)で、他の3疾患が25〜29歳であった。女性では性器ヘルペスウイルス感染症が20〜24歳、25〜29歳、30〜34歳(同値)で、他の3疾患は20〜24歳であり、女性の罹患年齢が男性に比べてやや若い傾向が認められた(図3:PDF参照)。また、 性器クラミジア感染症、尖圭コンジローマ、淋菌感染症の3疾患は、男性では60代以降、女性では50代以降の報告はないか、あっても僅かである。しかし、性器ヘルペスウイルス感染症は男女ともに、50代以降の報告も少なくない。この年齢層は再発例が含まれている可能性が以前から指摘されており、2006年4月の届出基準改正により、抗体のみ陽性のものの除外に加えて「明らかな再発例は除外する」ことが明示された。しかし、報告数や年齢階級別分布において明らかな変化は見られておらず、この基準変更の周知徹底が必要と考える。
年齢群毎にみた男女の比較では、淋菌感染症では全ての年齢群において男性が女性よりも報告数が多いが、性器クラミジア感染症では15〜29歳、性器ヘルペスウイルス感染症では15〜34歳、50〜54歳、70歳以上、尖圭コンジローマでは15〜24歳の年齢群において、女性が男性よりも多かった。ただし、性感染症定点は泌尿器科系、婦人科系および皮膚科系などの診療科から構成されており、男女の比較についてはそれらの比率の影響を受ける可能性がある。
●若年齢層での推移
感染症法が施行された1999年4月以降について、若年齢層(15〜29歳)における各疾患の定点当たり報告数を男女別・月別に図4(PDF参照)に示した。性器クラミジア感染症と淋菌感染症は男女ともに2001年以降減少傾向がみられ、尖圭コンジローマは男女ともに2005年半ば頃から微かながら減少傾向がみられる。性器ヘルペスウイルス感染症は男性でほぼ横ばい傾向であるが、女性では微かながら減少傾向がみられる。前月との比較では、男性で性器ヘルペスウイルス感染症と淋菌感染症は減少、性器クラミジア感染症と尖圭コンジローマは増加し、女性では4疾患すべてが減少した。
◆薬剤耐性菌について (7月11日集計分)
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基幹定点数(6月):468.
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●月別
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メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症 4.40(前月:4.20、前年同月:4.32)
定点当たり報告数は、例年年間を通じてほぼ一定である。6月は前月より増加し、過去8年間の同月との比較では最も高かった。
ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)感染症
1.01(前月:1.17、前年同月:1.23) 定点当たり報告数は、例年春から初夏にかけて(4〜6月)と冬(11、12月)に多く、夏(7〜9月)に少なく推移している。6月は前月より減少し、過去8年間の同月との比較では低位に属した。
薬剤耐性緑膿菌感染症 0.11(前月:0.08、前年同月:0.13)
定点当たり報告数は、例年後半が前半に比して多い傾向がある。6月は前月より増加し、過去8年間の同月との比較では中位に属した。 |
●年齢階級別
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MRSA感染症 高齢者に多く、70歳以上が全体の67%を占めている(図1:PDF参照)。
PRSP感染症 小児と高齢者に多い。5歳未満が全体の66%を占める一方、70歳以上が全体の18%を占めて
いる(図2:PDF参照)。
薬剤耐性緑膿菌感染症 高齢者に多く、70歳以上が全体の75%を占めている(図3:PDF参照)。
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●性別:女性を1 として算出した男/女比
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MRSA感染症…男:女=1.9:1
PRSP感染症…男:女=1.2:1
薬剤耐性緑膿菌感染症…男:女=2.6:1
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●都道府県別
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MRSA感染症
定点当たり報告数は栃木県(8.9)、岐阜県(7.8)、島根県(7.3)が多い。
PRSP感染症
定点当たり報告数は千葉県(6.1)、高知県(3.3)、新潟県(2.4)が多い。
薬剤耐性緑膿菌感染症
報告総数が51件にとどまるため、都道府県別定点当たり報告数の評価は困難である。
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注目すべき感染症
◆ 腸管出血性大腸菌感染症
腸管出血性大腸菌感染症は、感染症法の3類感染症として、無症状病原体保有者を含む症例の報告が、診断した全ての医師に義務付けられている。無症状病原体保有者は、食品産業従事者の検便によって偶然発見される場合もあるが、届け出された患者と食事をともにした者や、接触者の調査などによって発見される場合が多い。届出の基準としては、大腸菌の分離・同定かつ分離菌におけるベロ毒素の確認が必要であるが、2006年4月からは、溶血性尿毒症症候群(HUS)発症例に限り、便からのベロ毒素の検出や血清抗体(O抗原凝集抗体あるいはベロ毒素抗体)の検出によって診断された場合も届け出の対象とされている。
2007年の腸管出血性大腸菌感染症の報告数は第19週に50例を超え、第22週には東京都での学校における集団発生の影響から100例を超えた。第22週133例(うち東京都68例)、第23週194例(うち東京都104例)の後、第24週には一旦80例に減少したが、その後再び増加傾向が認められている。第27週は159例、第28週は165例である(図1)。
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本年第28週までの累積報告数(1,376例)は、過去7年間の同週までの累積報告数と比べ、2001年に次いで多い報告数となっている(2000年1,208例、2001年1,641例、2002年1,260例、2003年831例、2004年1,187例、2005年1,256例、2006年1,178例。7年間の平均1,223例)。
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図1. 腸管出血性大腸菌感染症の年別・週別発生状況(1999年第14週〜2007年第28週)
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図2. 腸管出血性大腸菌感染症の都道府県別累積報告状況(2007年第1〜28週)
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第28週に報告のあった165例は、有症状者103例(62%)で、無症状病原体保有者が62例(38%)であった。報告の多かった都道府県は埼玉県(21例)、熊本県(21例)、東京都(17例)、兵庫県(13例)、神奈川県(12例)、大阪府(10例)であった。感染地域はすべて国内であり、感染地域として多かった都道府県は、熊本県(21例)、埼玉県(20例)、東京都(18例)、兵庫県(12例)であった。熊本県では保育所での集団発生に関連したものが第27週に引き続き報告されている。性別では男性76例、女性89例であり、年齢群別では0〜9歳56例(0〜4歳30例、5〜9歳26例)、20〜29歳32例、10〜19歳22例の順に多かった。
第1〜28週に報告された1,376例についてみると、報告の多い都道府県は、東京都(266例)、大阪府(88例)、福岡県(75例)、埼玉県(73例)、石川県(68例)、千葉県(65例)、神奈川県(58例)、兵庫県(56例)、熊本県(54例)である(図2)。
溶血性尿毒症症候群(HUS)は、第28週に報告遅れ分や追加報告を含み7例報告があり、累積では36例の報告となった。36例のうち10例は菌が分離されなかったが、2例が便からのベロ毒素の検出、8例が血清抗体の検出による診断として届け出られたものである。2007年では第28週までに死亡例の報告はない。HUSなどの合併症や死亡については、届け出時点以降での発生が十分反映されていない可能性があり、発生があった場合の追加・修正報告をお願いしている。
本年第22週には既に学校での食中毒による大規模な集団発生が見られているほか、保育施設における集団発生も散見される。また2006年には、動物とのふれあい体験での感染と推定される事例が報告されており、動物との接触後には充分な手洗いに注意する必要がある。毎年本症が数多く発生する夏季を迎えて、報告数はさらに増加するものと予想されるので、その発生動向には注意が必要である。食品の取り扱いには十分注意して食中毒の予防を徹底するとともに、手洗いの励行などにより、ヒトからヒトへの二次感染を予防することが大切である。特に、保育施設における集団発生は例年多くみられており、腸管出血性大腸菌に限らない注意として、特にオムツ交換時の手洗い、園児に対する食前・食後の手洗い指導を徹底し、これからの季節は簡易プールなどの衛生管理にも注意を払う必要がある。
(補)菌の検出状況については、http://idsc.nih.go.jp/iasr/prompt/graph-lj.html をご参照ください。
◆ ヘルパンギーナ
ヘルパンギーナ(Herpangina)は、発熱、口腔粘膜に現れる水疱性の発疹を特徴とした急性のウイルス性感染症であり、例年夏季を中心に多発する疾患である(図1)。病原ウイルスは主にコクサッキーウイルスA群(CA2、CA4、CA5、CA6、CA8、CA10等)である場合が多いが、まれにコクサッキーウイルスB群、エコーウイルスで発症する場合もある。感染から2〜4日の潜伏期間の後に、突然の発熱に続いて咽頭痛が出現、咽頭の発赤とともに、主として軟口蓋から口蓋弓にかけての部位に直径1〜2mm、場合により大きいものでは5mmほどの紅暈で囲まれた小水疱が出現する。小水疱はやがて破れて浅い潰瘍となる。発熱は2〜4日間程度で解熱し、やや遅れて粘膜疹も消失する。発病者の殆どは予後良好の疾患であるが、エンテロウイルス感染症の特徴として、まれに無菌性髄膜炎や急性心筋炎を合併することがある。発熱以外に頭痛、嘔吐等の症状や、心不全兆候の出現には十分に注意すべきである。
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感染症発生動向調査によると、ヘルパンギーナの定点当たり報告数は第19週以降増加が続いているが、2007年第28週の定点当たり報告数は全国平均で4.4となり、都道府県別では福井県(10.5)、宮崎県(9.4)、徳島県(8.3)、愛媛県(8.3)、兵庫県(8.2)、三重県(8.1)の順となっている(図1、図2)。
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図1. ヘルパンギーナの年別・週別発生状況(1997年〜2007年第28週)
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図2. ヘルパンギーナの都道府県別報告状況(2007年第28週)
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1997年以降2006年までの過去10年間におけるヘルパンギーナの流行のピークは、全て第27〜29週の3週間にみられている(第27週2回、第28週5回、第29週3回)(図1)。2007年第1週から28週までの定点当たり累積報告数は14.3(総患者報告数43,270)、都道府県別では宮崎県(50.3)、福井県(42.4)、山口県(40.2)、鳥取県(34.5)、島根県(31.5)、福岡県(29.0)、熊本県(28.6)の順であり、流行地域は西日本に多い(図3)。
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ヘルパンギーナの発生は乳幼児が中心であり、その年齢別報告割合をみると、例年0〜3歳からの報告数が60%以上あり、5歳以下で全報告数の90%前後を占めているのは2007年も同様である(図4)。
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図3. ヘルパンギーナの都道府県別累積報告状況(2007年第1〜28週)
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図4. ヘルパンギーナの報告症例の年別・年齢群別割合(2000年〜2007年第28週)
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ヘルパンギーナの感染経路は飛抹感染、接触感染、糞口感染である。患者は症状回復後も2〜4週間の長期にわたって便からウイルスが検出されるので、保育園、幼稚園、学校施設等の小児の集団生活施設において、急性期のみの登園、登校停止によっては、厳密な意味での流行阻止効果が期待はできない。しかしながら本症の大部分は予後良好の軽症疾患であり、登園・登校については手足口病と同様、流行阻止の目的というよりも患者本人の状態によって判断を行う方が現実的である。
ヘルパンギーナの患者発生は現在ピークを迎えつつあるものと思われる。今後ともその発生動向には注意が必要である。
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