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発生動向総覧
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1類感染症: | 報告なし | ||||||||||
2類感染症: | 結核229例 | ||||||||||
3類感染症: | 細菌性赤痢11例〔感染地域:埼玉県2例*、モンゴル2例、米国(ハワイ)2例、シンガポール2例、インドネシア1例、フィリピン1例、中国1例〕 *第15週に始まった知的障害者更生施設に関連した集団発生 腸管出血性大腸菌感染症157例(うち有症者105例、うちHUS 5例、死亡者なし))
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4類感染症: | E型肝炎3例(感染地域:北海道3例.感染源:刺身/焼き鳥1例、不明2例) A型肝炎2例(感染地域:東京都1例、大阪府1例) エキノコックス症1例(多包条虫.感染地域:北海道) デング熱2例(感染地域:インドネシア1例、フィリピン1例) 日本紅斑熱2例(感染地域:三重県1例、島根県1例)
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5類感染症: |
(補)他に報告遅れとして、細菌性赤痢11例(感染地域:すべて静岡県.保育所に関連し た集団発生)、レジオネラ症1例〔肺炎型.60代.感染地域:三重県(温泉)〕、急性 脳炎3例〔麻疹ウイルス1例(10代)、病原体不明2例(6歳、60代)〕、劇症型溶血性レ ンサ球菌感染症1例(60代.死亡)等の報告があった。 |
◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000カ所)、眼科定点(約600カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ:定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い。都道府県別では沖縄県(5.26)、宮崎県(0.21)、大分県(0.12)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症は115例の報告があり、報告数は減少した。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の約77%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では高知県(1.37)、長野県(1.14)、広島県(0.89)、大分県(0.86)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は第23週以降減少が続いているが、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では鳥取県(2.4)、埼玉県(1.5)、宮崎県(1.5)、鹿児島県(1.3)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は第21週以降減少が続いているが、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では大分県(6.2)、福井県(5.4)、宮崎県(5.4)、島根県(5.4)が多い。水痘の定点当たり報告数は第25週以降減少が続いている。都道府県別では福島県(1.13)、石川県(1.10)、長野県(1.08)が多い。手足口病の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では和歌山県(6.7)、福島県(5.3)、山形県(4.0)、千葉県(3.4)、秋田県(3.3)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は2週連続で減少したが、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では長野県(1.29)、宮城県(1.28)、高知県(1.20)、岩手県(1.03)が多い。百日咳の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では栃木県(0.09)、広島県(0.06)、千葉県(0.05)、神奈川県(0.05)が多い。風しんの報告数は7例と減少した。都道府県別では神奈川県3例、北海道、大阪府、和歌山県、長崎県から各1例の順であった。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は2週連続で減少したが、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では宮崎県(6.2)、石川県(5.1)、三重県(5.0)、群馬県(4.9)が多い。麻しんの報告数は2週連続で減少し、18都道府県から47例の報告があった。都道府県別では神奈川県、大阪府から各9例、北海道7例、新潟県6例、宮城県、埼玉県から各2例の順であった。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では高知県(1.17)、岩手県(1.00)、宮崎県(0.97)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では沖縄県(1.71)、岡山県(1.20)、鳥取県(1.00)が多い。成人麻しんの報告数は2週連続で減少し、7都道府県から11例の報告があった。都道府県別では、大阪府3例、東京都、神奈川県各2例、秋田県、新潟県、京都府、鳥取県から各1例の順であった。
◆ 腸管出血性大腸菌感染症
腸管出血性大腸菌感染症は、感染症法の3類感染症として、無症状病原体保有者を含む症例の報告が、診断した全ての医師に義務付けられている。無症状病原体保有者は、食品産業従事者の検便によって偶然発見される場合もあるが、届け出された患者と食事をともにした者や、接触者の調査などによって発見される場合が多い。
2007年の腸管出血性大腸菌感染症の報告数は第19週に50例を超え、第22週には東京都における集団発生の影響から100例を超えた。第23週は196例(うち東京都105例)となった後、第24週には一旦80例に減少したが、その後は毎週100例を超える報告が認められる。第28週、第30週は200例を超える報告数となり、第32週は157例(8月16日現在)であった(図1)。本年第32週までの累積報告数2,123例は、過去7年間の同週までの累積報告数と比較して、2001年に次いで多い報告数である(2000年1,739例、2001年2,779例、2002年1,924例、2003年1,282例、2004年1,976例、2005年1,872例、2006年1,894例。7年間の平均1,924例)。
第32週に報告のあった157例は、有症者105例(67%)で、無症状病原体保有者が52例(33%)であった。報告の多かった都道府県は大阪府(31例)、長崎県(17例)、宮崎県(13例)、兵庫県(11例)であった。感染地域は国内156例、不明1例であり、国内の感染地域として多かった都道府県は、大阪府(28例)、長崎県(17例)、宮崎県(12例)、兵庫県(12例)であった。これら4府県はいずれも保育施設での集団発生に関連した報告が含まれている。性別では男性82例、女性75例であり、年齢群別では0〜9歳83例(0〜4歳57例、5〜9歳26例)、10〜19歳、20〜29歳ともに15例、30〜39歳、40〜49歳ともに12例の順に多かった。
分離された菌の血清型・毒素型は、O157 VT2(58例)、O157 VT1・VT2(42例)、O103 VT1(15例)、O111 VT1(11例)、O26 VT1(10例)、O121 VT2(4例)、O157 VT1(4例)、その他/不明(13例)であった。
第1〜32週に報告された2,123例についてみると、報告の多い都道府県は、東京都(335例)、大阪府(186例)、福岡県(117例)、神奈川県(102例)、千葉県(95例)、埼玉県(90例)、石川県(89例)であった(図2)。感染地域は国内が2,092例(98.5%)であり、国外が21例、国内か国外か不明が10例であった。
症状の有無別では有症者1,431例(67%)、無症状病原体保有者692例(33%)、性別では男性911例(43%)、女性1,212例(57%)であり、年齢群別では0〜9歳703例(0〜4歳436例、5〜9歳267例)、20〜29歳377例、10〜19歳340例、30〜39歳215例の順に多かった。また、30歳未満の年齢群では有症者が多く、30〜39歳及び40〜49歳は無症状病原体保有者が多くなるが、50歳以上の年齢群では再び有症者が多くなる傾向が認められる(図3)。
分離された菌の血清型・毒素型は、O157 VT1・VT2(809例)、O157 VT2(698例)、O26 VT1(185例)、O111 VT1・VT2(79例)、O111 VT1(60例)、O157 VT1(40例)の順に多かった。
溶血性尿毒症症候群(HUS)は、第32週までに56例が報告されている。本疾患の届出の基準としては、大腸菌の分離・同定かつ分離菌におけるベロ毒素の確認が必要であるが、溶血性尿毒症症候群(HUS)発症例に限り、2006年4月からは、便からのベロ毒素の検出や血清抗体(O抗原凝集抗体あるいはベロ毒素抗体)の検出によって診断された場合も届け出の対象とされている。56例のうち17例は菌が分離されず、2例が便からのベロ毒素の検出、15例が血清抗体の検出による診断として届け出られたものである。死亡例は2007年では第32週までに2例(3歳、50代)報告されている。届け出時点以降でのHUSなどの合併症や死亡は十分反映されていない可能性があるので、発生があった場合には追加・修正報告していただくようお願いしている。
図1. 腸管出血性大腸菌感染症の年別・週別発生状況(1999年第14週〜2007年第32週) |
図2. 腸管出血性大腸菌感染症の都道府県別累積報告状況(2007年第1〜32週) |
図3. 腸管出血性大腸菌感染症の性別・年齢別・症状の有無別報告状況(2007年第1〜32週) |
本年は既に学校での食中毒による大規模な集団発生が見られているほか、保育施設における集団発生も後を絶たない。本疾患は夏季を中心に流行する疾患であり、今後も報告数の多い状況が続くと考えられるので、その発生動向には引き続き注意が必要である。
食品の取り扱いには十分注意して食中毒の予防を徹底するとともに、手洗いの励行などにより、ヒトからヒトへの二次感染を予防することが大切である。特に、保育施設における集団発生が多くみられており、腸管出血性大腸菌に限らない日ごろからの注意として、オムツ交換時の手洗い、園児に対する排便後・食事前の手洗い指導の徹底が重要である。また、簡易プールなどの衛生管理にも注意を払う必要がある。さらに2006年には、動物とのふれあい体験での感染と推定される事例が報告されており、動物との接触後の充分な手洗いにも注意する必要がある。
(補)菌の検出状況については、http://idsc.nih.go.jp/iasr/prompt/graph-lj.html をご参照ください。
◆ 細菌性赤痢の国内における集団発生について2007年(2007年8月16日現在)
図1. 細菌性赤痢の国内感染例の年別報告状況(2004年〜2007年第32週) |
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