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発生動向総覧
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1類感染症: | 報告なし | ||||||||||
2類感染症: | 結核223例 | ||||||||||
3類感染症: | コレラ1例(感染地域:米国) 腸管出血性大腸菌感染症166例(うち有症者114例、うちHUS 2例、死亡なし)
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4類感染症: | E型肝炎2例(感染地域:長野県1例_感染源:不明、愛知県1例_感染源:焼肉)オウム病1例(感染地域:福岡県.感染源:ハト/ニワトリ) つつが虫病1例(感染地域:佐賀県) デング熱3例(感染地域:インド2例、ジャマイカ1例) 日本紅斑熱6例(感染地域:三重県2例、熊本県2例、青森県1例、徳島県1例) マラリア3例 三日熱2例_感染地域:インド1例、ブラジル1例 熱帯熱1例_感染地域:マリ/ブルキナファソ
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5類感染症: |
破傷風1例(4歳) バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例(遺伝子型:VanC_菌検出検体:胆汁) (補)他に第40週までに診断されたものの報告遅れとして、細菌性赤痢1例(感染地域:神奈川県)、E型肝炎1例(感染地域:神奈川県.感染源:不明)、日本紅斑熱4例(感染地域:三重県3例、高知県1例)、レプトスピラ症1例(感染地域:沖縄県.感染原因:滝)、急性脳炎3例〔単純ヘルペスウイルス1例(1歳)、病原体不明2例(1歳、20代)〕等の報告があった。 |
◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000カ所)、眼科定点(約600カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ:定点当たり報告数は横ばいであるが、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い。都道府県別では沖縄県(6.02)、愛知県(0.18)、静岡県(0.13)、東京都(0.08)、神奈川県(0.08)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症は414例と減少した。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の約72%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は第37週以降減少が続いている。都道府県別では高知県(0.70)、熊本県(0.38)、広島県(0.28)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では茨城県(1.80)、山形県(1.63)、北海道(1.50)、富山県(1.48)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では宮崎県(11.0)、島根県(6.7)、大分県(6.5)が多い。水痘の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では新潟県(1.21)、宮崎県(0.86)、長野県(0.76)が多い。手足口病の定点当たり報告数は第37週以降減少が続いている。都道府県別では沖縄県(2.9)、宮城県(2.4)、大分県(2.1)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では高知県(0.37)、岩手県(0.33)、三重県(0.33)、福井県(0.32)が多い。百日咳の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では栃木県(0.09)、奈良県(0.09)、東京都(0.08)、千葉県(0.07)が多い。風しんの報告数は6例と横ばいであった。都道府県別では北海道、青森県、岐阜県、滋賀県、京都府、広島県から各1例であった。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は第31週以降減少が続いているが、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では岩手県(1.10)、北海道(1.01)、鳥取県(1.00)、山形県(0.97)が多い。麻しんの報告数は2週連続で減少し、5府県から20例の報告があった。都道府県別では福岡県11例、神奈川県、大阪府から各3例、兵庫県2例、新潟県1例の順であった。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では秋田県(1.51)、高知県(1.17)、新潟県(0.84)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では福島県(2.4)、群馬県(1.1)、宮城県(1.0)、沖縄県(1.0)が多い。成人麻しんの報告数は減少し、2県から2例の報告があった。都道府県別では、宮城県、秋田県から各1例であった。
◆ インフルエンザ
インフルエンザ(Influenza)は、インフルエンザウイルスを病原微生物とする急性の呼吸器感染症である。現在ヒトからヒトへ感染して臨床的に問題となっているインフルエンザウイルスにはA香港型(A/H3N2亜型)、Aソ連型(A/H1N1亜型)、B型の3種類があり、毎年世界中で流行がみられている。日本においても、例年冬季を中心に全国的な流行が発生し、多くのシーズンにおいて年間1,000万人以上の発病者がみられている。インフルエンザの臨床経過であるが、典型例の場合は感染してから1〜3日間の潜伏期間を経た後に、突然の発熱(通常は38℃以上)、頭痛、倦怠感、筋肉痛・関節痛等の症状で発症し、次いで咳、鼻汁などの上気道炎症状が続く。合併症等がなければ、約1週間の経過で軽快するものの、高齢者や基礎疾患を持っている場合は、原疾患の悪化と共に二次的な細菌性肺炎を起こす場合がある。また、小児では中耳炎の合併や熱性痙攣、気管支喘息の誘発を招く場合がある。更に乳幼児を中心に、稀ではあるものの急性脳症(インフルエンザ脳症)を合併する場合があることも明らかとなってきている。以上よりインフルエンザは、いわゆる「かぜ」と比べて全身症状が強く、また重症化することがあり、加えて様々な合併症を招く可能性があるといえる。
感染症発生動向調査では、例年最もインフルエンザの発生報告数が減少する時期をシーズンの起点及び終点としており、従ってインフルエンザシーズンは第36週から翌年の第35週までとなっている。2007年第35週に終了した2006/07シーズン(2006年第36週〜2007年第35週)では、その流行は2007年第3週に始まり、流行のピークは2007年第11週であった(図1)。春季に北海道や東北地域で2シーズン連続して報告数の再上昇がみられ、沖縄県では3シーズン連続で夏季の流行がみられた(図2)。2006/07シーズンの全国約4,700カ所のインフルエンザ定点からの累積報告数は1,076,448、定点当たり累積報告数232.76であり、この定点当たり累積報告数は1999/00シーズン以降では2004/05シーズン、2002/03シーズンに次いで多かった(図3)
図1. インフルエンザの年別・週別発生状況(1997年〜2007年第41週) |
図2. 主要都道府県におけるインフルエンザの週別発生状況(2007年第1〜41週) |
図3. 1999/00〜2006/07シーズンのインフルエンザ定点当たり累積報告数年別推移 |
2007/08シーズンは第36週以降第41週までの6週間が経過しているが、沖縄県からのインフルエンザの発生報告数が他の地域よりも突出して多い状態が、2006/07シーズンから継続している(図2)。第41週のインフルエンザ定点からの定点当たり報告数は0.10(報告数470)であり、都道府県別では沖縄県(6.02)、愛知県(0.18)、静岡県(0.13)、東京都(0.08)、神奈川県(0.08)、千葉県(0.06)の順となっている(図4)。沖縄県からの第41週の患者報告数は349であり、総患者報告数の74.3%を占めている。第36週から41週までの累積報告数は2,999(定点当たり累積報告数0.40)であり、年齢別では5〜9歳786例(26.2%)、0〜4歳623例(20.8%)、30〜39歳422例(14.1%)、10〜14歳310例(10.3%)、20〜29歳308例(10.3%)の順である。まだ患者報告数は少ないが、例年の流行期と比較して20代、30代からの報告割合が高い(図5)。第36週以降のインフルエンザウイルス分離報告は愛知県からのAH3亜型2件のみであるが、沖縄県の夏季の流行を含めた第23週以降では、総計で49件の分離報告があり、そのうち35件(71.4%)がAH1亜型であった(図6、図7)。
図4. インフルエンザの都道府県別報告状況(2007年第41週) |
図5. 2007/08シーズンのインフルエンザ累積報告数の年齢群別割合(2007年第36〜41週) |
図6. インフルエンザウイルス分離報告数の週別推移(2007年第23〜41週) |
図7. インフルエンザウイルス分離状況(2007年第23〜41週) |
さらに沖縄県からの第23週以降のウイルス分離報告数は16件であるが、AH1は12件(75.0%)となっている。したがって、沖縄県を中心とした夏季の流行はAH1亜型が主流であり、AH3亜型とB型の報告数の合計が90%前後であった冬季及び春季の流行とは異なっていると考えられる。
沖縄県の夏季のインフルエンザの流行は収束せずに秋季である2007/08シーズンに入っても継続している。今後の同県の流行の展開と他地域への影響、他の地域での新たなインフルエンザの流行の発生等、インフルエンザの発生動向には注意深い観察が必要である。
◆ デング熱
デング熱は、デングウイルスが感染しているネッタイシマカやヒトスジシマカに刺されることによって感染する感染症である。ヒトからヒトに直接感染することはなく、ヒト→蚊→ヒトで感染が成立する。デングウイルスは熱帯・亜熱帯のほとんどの国に存在し、特に、東南アジア、インド亜大陸・南アジア、中南米では流行を繰り返している他、最近では台湾などでも流行が認められている。現在、日本国内にヒトスジシマカは生息しているが、デングウイルスは常在しないので、国内での感染はない。しかし、流行地から感染者や航空機内の感染蚊などによってウイルスが持ち込まれ、日本においても流行を起こす可能性がある。
デング熱は、一過性の熱性疾患である「デング熱」(狭義)と、重症型の「デング出血熱」に分けられる。また、不顕性感染も多いと推測されている。「デング熱」は、感染後3〜8日の潜伏期を経て、発熱で発症し、頭痛、眼窩痛、筋肉痛、関節痛を伴う。発症後3〜4日後から胸部、体幹に発疹が出現し、四肢、顔面へ広がる。これらの症状は通常1週間程度で消失する。一方、「デング出血熱」は、「デング熱」とほぼ同様に発症するが、発症後2〜7日の解熱し始めた頃に、血漿漏出と出血症状が出現する。患者は不安・興奮状態となり、発汗し、四肢は冷たくなる。胸水や腹水が貯留し、皮膚の点状出血、さらに10〜20%で鼻出血や消化管出血などの出血症状がみられる。血漿漏出の進行によって、循環血液量が減少してショック状態となることがあり、デング出血熱の中でもデングショック症候群と呼ばれる。
デング熱(デング出血熱を含む)の発生動向については、感染症法の施行(1999年4月)により、四類感染症に規定され、診断したすべての医師に届け出が義務づけられている。
感染症法のもとで2006年までに報告されたデング熱は1999年(4〜12月)9例、2000年18例、2001年50例、2002年52例、2003年32例、2004年49例、2005年74例、2006年58例であった。年毎の報告数の変動は、渡航地域における流行状況が反映される以外に、増加については、全数届出疾患であることへの認識の向上や、検疫所における検査体制の整備などの影響が考えられる。2003年の一時的な減少については、重症急性呼吸器症候群(SARS)発生による流行地域への渡航の減少が考えられる。
2007年の報告数は、第41週(2007年10月14日診断分)までに75例となり、感染症法施行以降の年間報告数としては、最多となった(図1)。75例のうち、狭義のデング熱は71例であり、デング出血熱は4例であった。
性別では男性44例、女性31例であり、年齢の中央値は27歳(4〜78歳)〔男性:27歳(4〜67歳)、女性:27歳(15〜78歳)〕であった。報告例の発病月は、夏季休暇による渡航者増加の影響を受けて例年7〜9月に発病者が増加する傾向が認められるが、2007年においても9月(17例)、8月(13例)、7月(10例)の順に多い(図2)。75例の感染地域は、アジアが67例(89%)、中南米7例、オセアニア1例であった。アジアの中では例年インドネシア、フィリピン、インド、タイなどが多いが、2007年においても同様であり、インドネシア25例、フィリピン9例、カンボジア8例、インド7例、タイ7例(複数国名記載分を含む)が多かった(表)。特にインドネシアでは、春季の流行が伝えられており、2007年3〜4月は、感染地をインドネシアとする報告が多かった。またインドネシアの22例のうち14例には、詳細地域としてバリ島の記載があった。中南米を感染地域とする7例のうち、9月を発症月とする3例はいずれもジャマイカが感染国とされており、現地でのハリケーン後の大流行が報じられている。
図1. デング熱の累積報告数の年別推移(1999年4月〜2007年第41週) | 図2. デング熱の発症月別・感染地域別発生状況(2007年第1〜41週) | 表. デング熱の感染国(2007年第1〜41週) |
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