発生動向総覧
*2006年4月からの報告システムの変更に伴い、疾病の並び順を一部変更しました。
◆全数報告の感染症
〈第43週コメント〉 10月31日集計分
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核281例 |
3類感染症: |
コレラ1例(感染地域:タイ) 細菌性赤痢8例
〔感染地域:埼玉県1例、三重県1例、兵庫県1例、国内(都道府県不明)1例、中国3例、スリランカ/シンガポール1例〕 腸管出血性大腸菌感染症102例(うち有症者63例、うちHUS 4例)
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感染地域:国内99例、ベトナム2例、韓国1例
国内の多い感染地域:北海道(14例)*、宮城県(10例)
*うち12例は幼稚園における集団発生
年齢群:10歳未満(46例)、10代(11例)、20代(17例)、30代(11例)、40代(5例)、50代(2例)、60代(5例)、70歳以上(5例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2(32例)、O157 VT2(31例)、O26 VT1( 29例)、O91 VT1( 1例)、O103 VT1( 1例)、O111VT1・VT2(1例)、O111 VT1(1例)、O157 VT1(1例)、その他/不明(5例)
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腸チフス1例〔感染地域:国外(国不明)〕
パラチフス1例(感染地域:シンガポール) |
4類感染症: |
E型肝炎1例(感染地域:宮城県.感染源:不明)
A型肝炎2例〔感染地域:国内(都道府県不明)1例、インドネシア1例〕
つつが虫病2例(感染地域:群馬県1例、神奈川県1例)
デング熱2例(感染地域:フィリピン1例、インド1例)
日本紅斑熱2例(感染地域:和歌山県1例、鳥取県1例)
日本脳炎2例(感染地域:石川県1例、大分県1例.年齢群:70代1例、80代1例.うち1例死亡)
レジオネラ症9例(すべて肺炎型) |
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年齢群:30代1例、40代1例、50代3例、60代3例、70代1例
感染地域:北海道2例、宮城県1例、福島県1例、富山県1例、福井県1例(温泉)、大阪府1例、山口県1例、国内(都道府県不明)1例
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レプトスピラ症3例
〔宮崎県2例(感染原因:池1例、不明1例)、埼玉県1例(感染源:ねずみ)〕 |
5類感染症: |
アメーバ赤痢10例(腸管アメーバ症6例、腸管外アメーバ症4例) |
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感染地域:国内7例、タイ1例、フィリピン1例、国内/ブラジル1例
感染経路:経口感染2例、性的接触4例(異性間2例、同性間1例、異性間・同性間1例)、不明4例 |
ウイルス性肝炎2例B型1例_感染経路:不明 C型1例_感染経路:不明
急性脳炎3例(すべて病原体不明.20代1例、30代1例、60代1例)
クロイツフェルト・ヤコブ病1例(孤発性プリオン病古典型)
劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(80代) |
後天性免疫不全症候群10例(すべて無症候)
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感染地域:国内7例、タイ2例、ブラジル1例
感染経路:性的接触9例(異性間3例、同性間5例、異性間・同性間1例)、性的接触(異性間・同性間)/刺青1例 |
ジアルジア症1例(感染地域:タイ)
梅毒5例(早期顕症I期1例、早期顕症II期2例、無症候2例)
破傷風1例(40代)
(補)他に第42週までに診断されたものの報告遅れとして、細菌性赤痢1例(感染地域:静岡県/中国)、腸チフス2例(感染地域:インド1例、タイ/カンボジア/インド1例)、オウム病1例(感染地域:福井県.感染源:ハト)、日本紅斑熱1例(感染地域:島根県)、急性脳炎1例(病原体不明.10代)、劇症型溶血性レンサ球菌感染症2例(30代、50代)、バンコマイシン耐性腸球菌感染症2例(遺伝子型:Van A 1例_菌検出検体:尿、遺伝子型:Van C 1例_菌検出検体:血液)等の報告があった。
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◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000カ所)、眼科定点(約600カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ:定点当たり報告数は2週連続で増加し、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い。都道府県別では沖縄県(4.72)、神奈川県(0.57)、北海道(0.49)、岡山県(0.42)、東京都(0.40)が多い。 小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症は631例の報告があり、報告数は2週連続で増加した。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の約75%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では高知県(0.30)、長崎県(0.27)、岐阜県(0.26)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では愛媛県(3.0)、山形県(2.6)、鳥取県(2.2)、北海道(2.2)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では宮崎県(14.5)、熊本県(8.8)、鳥取県(8.4)、大分県(8.0)が多い。水痘の定点当たり報告数は3週連続で増加した。都道府県別では石川県(1.72)、新潟県(1.70)、福島県(1.00)が多い。手足口病の定点当たり報告数は第37週以降減少が続いている。都道府県別では沖縄県(3.0)、島根県(2.6)、宮城県(2.3)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では新潟県(0.61)、三重県(0.44)、大分県(0.44)が多い。百日咳の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では栃木県(0.17)、千葉県(0.13)、岐阜県(0.11)、兵庫県(0.07)が多い。風しんの報告数は3例と増加した。都道府県別では千葉県、愛知県、岡山県から各1例であった。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は第31週以降減少が続いているが、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では岩手県(0.85)、北海道(0.52)、高知県(0.47)、福島県(0.44)が多い。麻しんの報告数は減少し、8都道府県から16例の報告があった。都道府県別では北海道、青森県、福岡県から各3例、東京都、神奈川県から各2例、埼玉県、大阪府、兵庫県から各1例の順であった。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では秋田県(1.09)、長崎県(0.73)、新潟県(0.52)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では福島県(2.7)、埼玉県(1.3)、青森県(1.2)、沖縄県(1.1)が多い。成人麻しんの報告数は横ばいであり、7都県から8例の報告があった。都道府県別では、東京都2例、宮城県、埼玉県、新潟県、滋賀県、佐賀県、沖縄県から各1例の順であった。
注目すべき感染症
◆ インフルエンザ
インフルエンザ(Influenza)は、インフルエンザウイルスを病原微生物とする急性の呼吸器感染症である。わが国においては、例年冬季を中心に全国的な流行が発生し、多くのシーズンにおいて年間1,000万人以上の発病者がみられている。典型例の場合、感染してから1〜3日間の潜伏期間を経た後に、突然の発熱(通常は38℃以上)、頭痛、倦怠感、筋肉痛・関節痛等の症状で発症し、次いで咳、鼻汁などの上気道炎症状が続く。合併症等がなければ、約1週間の経過で軽快するものの、高齢者や基礎疾患を持っている場合は、原疾患の悪化と共に呼吸器に二次的な細菌性肺炎を起こす場合がある。また、小児では中耳炎の合併や熱性痙攣、気管支喘息の誘発を招く場合がある。更に乳幼児を中心とした小児においては、稀ではあるものの急性脳症(インフルエンザ脳症)を合併する場合があることも明らかとなってきている。インフルエンザは、いわゆる「かぜ」と比べて全身症状が強く、また重症化することがあり、加えて様々な合併症を招く可能性があるということがいえる。また、過去3シーズン連続して沖縄県では夏季にインフルエンザの流行が発生しており、日本でインフルエンザが流行するのは「気温が低下し空気が乾燥する冬季」であるという従来の概念とは異なる状況もみられるようになってきている。
感染症発生動向調査によると、第43週の定点当たり報告数は0.20(報告数931)となり、前週の報告数(定点当たり報告数0.12、報告数563)から急増した(図1)。都道府県別では、沖縄県(4.72)、神奈川県(0.57)、北海道(0.49)、岡山県(0.42)、東京都(0.40)、静岡県(0.38)、千葉県(0.37)の順となっている(図2)。沖縄県からの報告数は2週連続で減少しているものの、神奈川県、東京都、千葉県等の南関東地域や他の地域での報告数の増加が目立つ。2007年第36週から43週まで(インフルエンザでは第36〜翌年第35週を“シーズン”としている)の累積報告は4,499(定点当たり累積報告数0.72)であり、年齢別では5〜9歳1,379例(30.7%)、0〜4歳937例(20.8%)、30〜39歳551例(12.2%)、10〜14歳513例(11.4%)、20〜29歳395例(8.8%)の順である(図3)。5〜9歳からの報告割合は増加傾向にあり、20代、30代からの報告割合は減少傾向にある。
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図1. インフルエンザの年別・週別発生状況(1997年〜2007年第43週)
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図2. インフルエンザの都道府県別報告状況(2007年第43週)
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図3. 2007/08シーズンのインフルエンザ累積報告数の年齢群別割合(2007年第36〜43週)
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第36週以降のインフルエンザウイルスの分離報告は北海道、千葉県、東京都、神奈川県、愛知県、大阪府、兵庫県、沖縄県の8都道府県から40件あり、うちAH1亜型が38件、AH3亜型が2件、B型は0件となっていることから、現在のインフルエンザ発生の原因ウイルスの主流はAH1亜型であると思われる(表1)。
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表1. 都道府県別インフルエンザウイルス分離・検出状況(2007年第36〜43週)
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沖縄県のインフルエンザ発生報告数は減少傾向にあるものの、北海道や南関東地域等の他の地域からの発生報告は増加し、全国的にみても第43週の報告数は前週と比べて急増した。インフルエンザの発生動向の推移には、今後より注意深い観察が必要である。
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