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発生動向総覧
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1類感染症: | 報告なし | ||||||||||
2類感染症: | 結核292例 | ||||||||||
3類感染症: | 細菌性赤痢3例〔感染地域:埼玉県1例、国内(都道府県不明)1例、中国1例〕腸管出血性大腸菌感染症70例(うち有症者49例、うちHUS 2例)
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4類感染症: | E型肝炎1例(感染地域:滋賀県.感染源:不明) A型肝炎1例(感染地域:千葉県) オウム病1例(感染地域:宮崎県.感染源:インコ) つつが虫病4例(感染地域:神奈川県3例、静岡県1例) デング熱1例(感染地域:グアテマラ) 日本紅斑熱4例(感染地域:島根県1例、熊本県2例、鹿児島県1例) 日本脳炎2例(感染地域:石川県1例、山口県1例.年齢群:ともに60代) マラリア3例三日熱1例_感染地域:インドネシア 卵形1例_感染地域:ガーナ 熱帯熱1例_感染地域:マレーシア
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5類感染症: |
破傷風1例(70代) バンコマイシン耐性腸球菌感染症2例 (遺伝子型:VanC 1例_菌検出検体:血液、遺伝子型:不明1例_菌検出検体:腹水) (補)他に第43週までに診断されたものの報告遅れとして、日本紅斑熱1例(感染地域:和歌山県)、急性脳炎2例〔サルモネラ菌1例(1歳)、病原体不明1例(80代)〕、バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例(遺伝子型:VanC_菌検出検体:血液)等の報告があった。 |
◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000カ所)、眼科定点(約600カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ:定点当たり報告数は3週連続で増加し、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い。都道府県別では沖縄県(3.03)、和歌山県(0.96)、北海道(0.89)、神奈川県(0.66)、千葉県(0.61)、東京都(0.61)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症は722例の報告があり、報告数は3週連続で増加した。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の約77%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では熊本県(0.40)、青森県(0.36)、佐賀県(0.35)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は3週連続で増加した。都道府県別では鳥取県(2.5)、山形県(2.4)、愛媛県(2.3)、石川県(2.3)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は3週連続で増加した。都道府県別では宮崎県(19.2)、山形県(11.5)、熊本県(9.4)、大分県(8.7)が多い。水痘の定点当たり報告数は第41週以降増加が続いている。都道府県別では岩手県(2.4)、石川県(1.8)、福島県(1.5)、新潟県(1.5)が多い。手足口病の定点当たり報告数は第37週以降減少が続いている。都道府県別では島根県(2.3)、沖縄県(2.2)、大分県(1.8)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では新潟県(0.54)、福井県(0.36)、宮城県(0.30)が多い。百日咳の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では千葉県(0.13)、長野県(0.09)、沖縄県(0.09)、北海道(0.06)、秋田県(0.06)が多い。風しんの報告数は9例と2週連続で増加した。都道府県別では千葉県、東京都から各2例、北海道、秋田県、神奈川県、岡山県、徳島県から各1例であった。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は第31週以降減少が続いているが、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では岩手県(0.74)、北海道(0.42)、千葉県(0.35)が多い。麻しんの報告数は増加し、11都道府県から19例の報告があった。都道府県別では北海道、福岡県から各3例、青森県、東京都、神奈川県、大阪府から各2例、新潟県、静岡県、愛知県、大分県、鹿児島県から各1例の順であった。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では秋田県(1.29)、宮崎県(0.63)、群馬県(0.61)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では福島県(2.7)、沖縄県(2.4)、宮城県(1.6)、青森県(1.3)が多い。成人麻しんの報告数は減少し、5県から7例の報告があった。都道府県別では、山形県、沖縄県から各2例、埼玉県、広島県、長崎県から各1例の順であった。
◆ 感染性胃腸炎
感染性胃腸炎は、多種多様の病原体による疾患を包含する症候群である。現在、5類感染症定点把握疾患に規定されており、全国約3,000カ所の小児科定点医療機関から週単位で報告がなされている。1999年4月の感染症法施行以前の旧感染症発生動向調査では、感染性胃腸炎(ウイルスまたは細菌による感染性胃腸炎を一括したもの)と乳児嘔吐下痢症が報告対象になっていた。感染性胃腸炎の病原体としては、夏季に増加するサルモネラ、腸炎ビブリオ、下痢原性大腸菌などの細菌もありうるが、実際に報告数が増加するのは冬季であり、多くはノロウイルスやロタウイルス等のウイルスであると推測されている(IASR, Vol. 24. No. 12. p321-322)。また、例年感染症発生動向調査による報告のピークは12月中旬以降となることが多く(図1)、その時期の報告、特に集団発生例の多くはノロウイルスによるものと推測される(http://idsc.nih.go.jp/iasr/prompt/graph-kj.html )。
ノロウイルス感染症の潜伏期間は数時間〜数日(平均1〜2日)で、主な症状は嘔気・嘔吐及び下痢であり、嘔吐・下痢は1日数回から多いときには10回以上のこともある。しかし、症状持続期間は数時間〜数日(平均1〜2日)と比較的短く、以前から他の病気がある等の要因がない限りは、重症化して長期にわたり入院を要することは少ない。また、発熱の頻度は高くない。治療では特効薬はなく、対症療法となるが、最も重要なことは水分補給によって脱水を防ぐことである。
これまでノロウイルスの感染経路としては、食中毒としての経口感染がよく知られていたが、患者や無症状病原体保有者の嘔吐物や便、もしくはそれらに汚染された器物等に触れた手指を介しての接触感染や、また嘔吐物や便(下痢便)の飛沫感染あるいは床上の嘔吐物中のウイルスがほこりとともに舞い上がりこれを吸い込むことによる塵埃感染などのヒト−ヒト感染があり、その感染力は非常に強い。実際に、乳幼児、児童、高齢者の集団生活施設や病院で、ヒト−ヒト間の感染によると思われる集団感染や院内感染がしばしば報告されている。ヒトに感染するノロウイルスはヒトの体内のみで増殖するウイルスであり、現在流行しているノロウイルスも全てヒトからの排泄物を起源としていることからも、このウイルスの主な感染・循環経路はヒト−ヒト間の感染であると考えるべきである。このヒト−ヒト感染の予防法として重要なことは流水・石鹸による手洗いの徹底であり、また嘔吐物・下痢便の適切な処理と消毒である(「ノロウイルス感染症とその対応・予防」http://idsc.nih.go.jp/disease/norovirus/index.html )。
小児科定点の感染症発生動向調査によると、2007年第44週の感染性胃腸炎の定点当たり報告数は4.2(報告数12,665)であり、3週連続で増加がみられているが、昨年の同時期(定点当たり報告数7.1、報告数21,251)と比較すると低い値である(図1)。都道府県別では宮崎県(19.2)、山形県(11.5)、熊本県(9.4)、大分県(8.7)、島根県(8.0)、福岡県(7.1)、鳥取県(7.0)の順となっている(図2)。また、第36週から44週までの9週間の定点当たり累積報告数は30.1(累積報告数92,412)であり、都道府県別では宮崎県(89.0)、島根県(65.7)、大分県(65.5)、鳥取県(52.6)、熊本県(48.6)、福井県(44.9)、福岡県(43.3)の順であり、昨年と同様に西日本からの報告数の増加が目立つ(図3)。定点報告の年間累積報告数の各年毎における年齢別割合をみると(2007年は第1〜44週)、例年5歳以下で全報告数の60%前後、7歳以下で70%以上を占めており、これは2007年も同様である(図4)。
図1. 感染性胃腸炎の年別・週別発生状況(1997年〜2007年第44週) |
図2. 感染性胃腸炎の都道府県別報告状況(2007年第44週) |
図3. 感染性胃腸炎の都道府県別累積報告状況(2007年第36〜44週) |
図4. 感染性胃腸炎の報告症例の年別・年齢群別割合(2000年〜2007年第44週) |
これまでの感染性胃腸炎の発生動向をみると、例年11月及び12月に患者発生数が急激に増加し、その主原因はノロウイルス感染症の流行の増大によるものであると考えられる。2007年の患者発生報告数も、今後12月の報告数のピークに向けて増加してくるものと予想される。感染性胃腸炎の発生動向の推移には、今後とも注意が必要である。
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