国立感染症研究所 感染症情報センター
Go to English Page
ホーム疾患別情報サーベイランス各種情報
IDWR 感染症発生動向調査週報

第45号ダイジェスト
(2007年11月5日〜11月11日)

 発生動向総覧


*2006年4月からの報告システムの変更に伴い、疾病の並び順を一部変更しました。

全数報告の感染症

〈第45週コメント〉 11月14日集計分

注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。

*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。

1類感染症: 報告なし
2類感染症: 結核297例
3類感染症: 細菌性赤痢4例〔感染地域:埼玉県1例、東京都1例、国内(都道府県不明)1例、ウズベキスタン1例〕
腸管出血性大腸菌感染症54例(うち有症者34例)

感染地域:すべて国内
国内の多い感染地域:福岡県(8例)*、大阪府(7例)、宮崎県(5例)**
*うち7例は飲食店における集団発生
**うち5例は第44週からの保育園における集団発生
年齢群:10歳未満(19例)、10代(5例)、20代(5例)、30代(11例)、40代(2例)、50代(4例)、60代(5例)、70歳以上(3例)
血清型・毒素型:O157 VT2(19例)、O157 VT1・VT2(16例)、O26 VT1(5例)、O91 VT2(3例)、O157 VT1(3例)、O111 VT1(2例)、O18 VT1・VT2(1例)、その他/不明(5例)

腸チフス1例(感染地域:栃木県)
4類感染症: E型肝炎1例(感染地域:ネパール.感染源:不明)
つつが虫病6例(感染地域:福島県2例、神奈川県2例、埼玉県1例、広島県1例)
日本紅斑熱4例(感染地域:三重県1例、和歌山県1例、愛媛県1例、熊本県1例)
日本脳炎1例(感染地域:島根県.70代)
ボツリヌス症1例(乳児ボツリヌス症.感染地域:茨城県)
レジオネラ症11例(肺炎型10例、ポンティアック型1例)

年齢群:40代2例、50代3例、60代4例、80代2例
感染地域:東京都2例、愛知県2例、山梨県1例(温泉)、茨城県1例、埼玉県1例、神奈川県1例、三重県1例、兵庫県1例、長崎県1例

5類感染症:
アメーバ赤痢10例(すべて腸管アメーバ症)

感染地域:国内8例、タイ1例、東南アジア(国不明)1例
感染経路:経口3例、性的接触5例(異性間2例、同性間2例、異性間・同性間不明1例)、不明2例
ウイルス性肝炎3例B型2例_感染経路:ともに性的接触(異性間)
         C型1例_感染経路:不明
急性脳炎1例(ムンプスウイルス.20代)
クロイツフェルト・ヤコブ病1例(孤発性プリオン病古典型)
劇症型溶血性レンサ球菌感染症2例(80代1例、90代1例.ともに死亡)
後天性免疫不全症候群11例(AIDS 3例、無症候6例、その他2例)
感染地域:すべて国内
感染経路:すべて性的接触(異性間2例、同性間9例)
ジアルジア症3例〔感染地域:大阪府1例、国内(都道府県不明)1例、アジア(国不明)1例〕
髄膜炎菌性髄膜炎1例(感染地域:神奈川県)
梅毒9例(早期顕症I期3例、早期顕症II期2例、無症候4例)
破傷風1例(70代)
バンコマイシン耐性腸球菌感染症2例(遺伝子型:ともに不明_菌検出検体:膿汁1例、尿1例)

(補)他に第44週までに診断されたものの報告遅れとして、レプトスピラ症1例(感染地域:宮崎県.感染源:不明)、バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例(遺伝子型:不明_菌検出検体:血液)等の報告があった。


定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)

全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000カ所)、眼科定点(約600カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
過去5年間の同時期との比較

インフルエンザ:定点当たり報告数は第42週以降増加が続いており、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い。都道府県別では北海道(3.57)、沖縄県(3.09)、和歌山県(1.14)、富山県(1.08)、神奈川県(1.01)、千葉県(0.96)が多い。

小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症は923例の報告があり、報告数は第42週以降増加が続いている。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の約75%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では青森県(0.76)、佐賀県(0.65)、広島県(0.49)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は第42週以降増加が続いており、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では山形県(4.2)、鳥取県(3.4)、富山県(2.9)、埼玉県(2.7)、石川県(2.7)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は第42週以降増加が続いている。都道府県別では宮崎県(22.4)、大分県(14.3)、山形県(12.2)、熊本県(11.6)、が多い。水痘の定点当たり報告数は第41週以降増加が続いている。都道府県別では石川県(3.3)、新潟県(2.0)、福井県(1.9)が多い。手足口病の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では沖縄県(2.7)、大分県(2.0)、島根県(2.0)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では新潟県(0.92)、山形県(0.50)、宮城県(0.47)が多い。百日咳の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では千葉県(0.12)、兵庫県(0.09)、東京都(0.07)、栃木県(0.06)、岐阜県(0.06)が多い。風しんの報告数は3例と減少した。都道府県別では埼玉県、広島県、徳島県から各1例であった。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では秋田県(0.83)、岩手県(0.51)、三重県(0.42)が多い。麻しんの報告数は2週連続で増加し、10都道府県から44例の報告があった。都道府県別では北海道15例、青森県14例、福岡県4例、神奈川県3例、埼玉県、大阪府から各2例、岩手県、東京都、京都府、兵庫県から各1例の順であった。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では新潟県(1.18)、秋田県(1.09)、群馬県(0.82)が多い。

基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では福島県(3.1)、沖縄県(2.0)、岡山県(1.8)、富山県(1.6)が多い。成人麻しんの報告数は2週連続で減少し、3都県から3例の報告があった。都道府県別では、東京都、静岡県、山口県から各1例であった。



 注目すべき感染症

◆ インフルエンザ

 インフルエンザ(Influenza)は、インフルエンザウイルスを病原微生物とする急性の呼吸器感染症であり、わが国においては、例年冬季を中心に全国的な流行が発生し、多くのシーズンにおいて年間1,000万人以上の発病者がみられている。インフルエンザは、いわゆる「かぜ」と比べて全身症状が強く、また重症化することがあり、加えて様々な合併症を招く可能性がある。インフルエンザの予防の基本は、流行前にワクチン接種を受けることであり、欧米では一般的な方法であり、わが国でも近年はワクチン接種率の上昇が見られてきている。インフルエンザワクチンは、罹患した場合の重症化防止に有効と報告されている。インフルエンザは、罹患している人の咳、くしゃみ、つばなどの飛沫と共に放出されたウイルスを、鼻腔や気管など気道に吸入することによる飛沫感染が主な感染経路であり、また接触感染による感染もあると考えられている。従ってインフルエンザの流行時には、外出時のマスクの利用や帰宅時のうがい、手洗いは、かぜの予防と併せて奨められる。また、インフルエンザの主な感染経路が飛沫感染であることより、インフルエンザに罹患し、咳嗽などの症状のある方は特に、周囲への感染拡大を防止する意味から、マスクの着用が推奨される。
 感染症発生動向調査によると、第45週のインフルエンザの定点当たり報告数は0.50(報告数2,326)となり、前週の報告数(定点当たり報告数0.26、報告数1,217)よりも大きく増加した(図1)。都道府県別では、北海道(3.57)、沖縄県(3.09)、和歌山県(1.14)、富山県(1.08)、神奈川県(1.01)、千葉県(0.96)、岡山県(0.65)、東京都(0.64)の順となっている。沖縄県からの報告数はほぼ横ばいであるが、北海道からの報告数の増加が著しく、さらに関東、近畿、中部等、他の地域からの報告数の増加がみられてきている(図2)。2007年第36週からの定点当たり累積報告数は1.34(累積報告数8,088)であり、年齢別では5〜9歳38.1%、0〜4歳21.2%、10〜14歳12.5%、30〜39歳9.5%の順となっており、5〜9歳からの報告割合の増加が目立っている(図3)。第36週以降のインフルエンザウイルスの分離報告は12都道府県から96件あり、うちAH1亜型89件(92.7%)、AH3亜型7件(7.3%)、B型0件(0%)となっており、現在のインフルエンザ発生の原因ウイルスの主流はAH1亜型であると推測される(表1)
 

図1. インフルエンザの年別・週別発生状況(1997年〜2007年第45週)

図2. インフルエンザの都道府県別報告状況(2007年第45週)

図3. 2007/08シーズンのインフルエンザ累積報告数の年齢群別割合(2007年第36〜45週)


表1. 都道府県別インフルエンザウイルス分離・検出状況(2007年第36〜45週)

 第45週は日本国内の複数の地域においてインフルエンザの患者報告数の増加が見られ、定点当たり報告数は0.50となった。1997/98年シーズン以降の過去10シーズンの同時期と比較しても最も多い値となっている。今後更に報告数が増加し、早期に全国的な流行へと発展する可能性も高まってきている。インフルエンザの発生動向にはより一層の注意が必要である。



↑ トップへ戻る

Copyright ©2004 Infectious Disease Surveillance Center All Rights Reserved.