発生動向総覧
*2007年4月からの法改正に伴い、疾病の追加および並び順を一部変更しました。
〈第46週コメント〉 11月21日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 289例 |
3類感染症: |
細菌性赤痢9例(感染地域:埼玉県3例、新潟県2例、千葉県1例、インドネシア1例、タイ1例、インド1例)
腸管出血性大腸菌感染症47例(うち有症者30例) 感染地域:国内46例、中国1例
国内の多い感染地域:高知県(6例)*、福岡県(5例)
*全例が保育所における集団感染
年齢群:10歳未満(15例)、10代(9例)、20代(11例)、30代(2例)、40代(6例)、50代(2例)、60代(1例)、70歳以上(1例)
血清型・毒素型:O157 VT2( 13例)、O157 VT1・VT2( 11例)、O111VT1( 7例)、O26 VT1( 6例)、O28 VT2( 1例)、O91VT1(1例)、O111 VT1・VT2(1例)、O145 VT1(1例)、O157 VT1(1例)、その他/不明(5例)
腸チフス1例(感染地域:不明) |
4類感染症: |
A型肝炎3例(感染地域:神奈川県1例、新潟県1例、三重県1例)
つつが虫病19例(感染地域:福島県7例、神奈川県3例、鹿児島県3例、山形県2例、岐阜県2例、新潟県1例、広島県1例)
デング熱1例(感染地域:台湾)
日本紅斑熱5例(感染地域:兵庫県2例、広島県2例、和歌山県1例)
マラリア1例(三日熱_感染地域:モザンビーク)
レジオネラ症7例(すべて肺炎型)
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年齢群:30代1例、50代1例、70代1例、80代3例、90代1例
感染地域:広島県3例、千葉県1例(温泉)、滋賀県1例、鹿児島県1例、国内(都道府県不明)1例
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5類感染症: |
アメーバ赤痢9例(腸管アメーバ症8例、腸管及び腸管外アメーバ症1例) |
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感染地域:国内7例、ミャンマー1例、国内/グアム1例
感染経路:経口2例、性的接触3例(すべて異性間)、不明4例 |
ウイルス性肝炎4例 |
B型3例_感染経路:性的接触(異性間)1例、不明2例
C型1例_感染経路:針刺し事故 |
劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(70代.死亡)
後天性免疫不全症候群16例(AIDS 4例、無症候9例、その他3例)
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感染地域:国内12例、ジンバブエ1例、フランス/香港1例、タイ/ラオス1例、国外(国不明)1例
感染経路:性的接触15例(異性間5例、同性間9例、異性間・同性間1例)、不明1例 |
梅毒10例(早期顕症I期5例、早期顕症II期1例、無症候4例)
破傷風2例(60代1例、70代1例)
(補)他に第45週までに診断されたものの報告遅れとして、パラチフス1例(感染地域:インド/スペイン)、レジオネラ症1例〔感染地域:不明(温泉).60代〕、レプトスピラ症1例(感染地域:沖縄県.感染原因:滝)等の報告があった。 |
◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ:定点当たり報告数は第42週以降増加が続いており、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い。都道府県別では北海道(8.1)、沖縄県(3.1)、神奈川県(1.8)、和歌山県(1.7)、千葉県(1.5)、兵庫県(1.4)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症は1,184例の報告があり、報告数は第42週以降増加が続いている。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の約73%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は3週連続で増加した。都道府県別では青森県(0.79)、佐賀県(0.57)、広島県(0.51)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では山形県(3.6)、鳥取県(2.8)、富山県(2.8)、石川県(2.6)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は第42週以降増加が続いている。都道府県別では宮崎県(23.6)、大分県(20.2)、福岡県(16.2)、熊本県(16.1)が多い。水痘の定点当たり報告数は第41週以降増加が続いている。都道府県別では福島県(2.5)、岩手県(2.3)、新潟県(2.3)が多い。手足口病の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では沖縄県(2.7)、大分県(1.8)、宮城県(1.6)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では新潟県(0.72)、宮城県(0.38)、三重県(0.38)が多い。百日咳の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では岐阜県(0.11)、千葉県(0.10)、広島県(0.10)、東京都(0.07)、兵庫県(0.07)が多い。風しんの報告数は9例と増加した。都道府県別では埼玉県から3例、千葉県、神奈川県から各2例、岐阜県、大阪府から各1例であった。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は減少し、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では岩手県(0.56)、三重県(0.33)、埼玉県(0.29)が多い。麻しんの報告数は横ばいであり、10都道府県から44例の報告があった。都道府県別では北海道15例、大阪府11例、福岡県6例、青森県4例、千葉県、東京都から各2例、埼玉県、神奈川県、長崎県、沖縄県から各1例の順であった。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では秋田県(1.80)、新潟県(0.84)、宮崎県(0.78)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では福島県(2.4)、沖縄県(1.6)、宮城県(1.3)が多い。成人麻しんの報告数は増加し、6都府県から8例の報告があった。都道府県別では、栃木県、神奈川県から各2例、宮城県、東京都、大阪府、長崎県から各1例の順であった。
〈10月コメント〉
◆性感染症について 2007年11月12日集計分 性感染症定点数:965
(産婦人科・産科・婦人科:465、泌尿器科:394、皮膚科92、性病科14)
●月別推移
2007年10月の月別定点当たり患者報告数は、性器クラミジア感染症が2.81(男1.21、女1.60)、性器ヘルペスウイルス感染症が0.76(男0.30、女0.46)、尖圭コンジローマが0.55(男0.30、女0.25)、淋菌感染症が1.03(男0.82、女0.21)であった。男性では性器クラミジア感染症、次いで淋菌感染症が多く、女性では性器クラミジア感染症、次いで性器ヘルペスウイルス感染症が多かった(図1)
前月に比べると、4疾患すべてで男女ともに増加した(27〜30ページ「グラフ総覧」参照)。男女別に過去5年間の同時期と比較すると、性器クラミジア感染症は男女ともにやや少なく、性器ヘルペスウイルス感染症は男女ともにかなり少なく、淋菌感染症は男性でやや少なかった(図2)。
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図1. 各性感染症が総報告数に占める割合(10月) |
●男女別・年齢階級別
年齢群(0歳、1〜4歳、5〜69歳は5歳毎、および70歳以上)でみた定点当たり報告数のピークは、男性では性器クラミジア感染症では25〜29歳、性器ヘルペスウイルス感染症では35〜39歳、尖圭コンジローマでは30〜34歳、淋菌感染症では25〜29歳であるのに対し、女性では性器クラミジア感染症と尖圭コンジローマでは20〜24歳、性器ヘルペスウイルス感染症と淋菌感染症では20〜24歳および25〜29歳であり、女性の罹患年齢が男性に比べてやや若い傾向が認められた(図3:PDF参照)。また、性器クラミジア感染症、尖圭コンジローマ、淋菌感染症の3疾患は、男性では60代以降、女性では50代以降の報告はないか、あっても僅かである。しかし、性器ヘルペスウイルス感染症は男女ともに、50代以降の報告も少なくない。この年齢層は再発例が含まれている可能性が以前から指摘されており、2006年4月の届出基準改正により、抗体のみ陽性のものの除外に加えて「明らかな再発例は除外する」ことが明示された。しかし、報告数や年齢階級別分布において明らかな変化は見られておらず、この基準変更の周知徹底が必要と考える。
年齢群毎にみた定点当たり報告数の男女の比較では、淋菌感染症では全ての年齢群で男性が女性よりも多いが、性器クラミジア感染症では15〜29歳の3つの年齢群、性器ヘルペスウイルス感染症では15〜34歳、55〜59歳および70歳以上の6つの年齢群、尖圭コンジローマでは15〜24歳の2つの年齢群で、女性が男性よりも多かった。ただし、性感染症定点は泌尿器科系、婦人科系および皮膚科系などの診療科から構成されており、男女の比較についてはそれらの比率の影響を受ける可能性がある。
●若年齢層での推移
感染症法が施行された1999年4月以降について、若年齢層(15〜29歳)における各疾患の定点当たり報告数を男女別・月別に図4(PDF参照)に示した。性器クラミジア感染症と淋菌感染症は男女ともに2003年以降減少傾向がみられる。性器ヘルペスウイルス感染症と尖圭コンジローマは男性では横ばいであり、女性では2005年半ば頃から微かながら減少傾向がみられる。前月との比較では、男性で性器クラミジア感染症、性器ヘルペスウイルス感染症、淋菌感染症は増加し、尖圭コンジローマは同値であった。女性では4疾患ともに増加した。
◆薬剤耐性菌について (11月12日集計分)
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基幹定点数(10月):468.
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●月別
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メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症 4.68(前月:4.19、前年同月:4.18)
定点当たり報告数は、例年年間を通じてほぼ一定である。10月は前月より増加し、過去8年間の同月との比較では最も高かった。
ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)感染症 0.82(前月:0.50、前年同月:0.86)
定点当たり報告数は、例年春から初夏にかけて(4〜6月)と冬(11、12月)に多く、夏(7〜9月)に少なく推移している。10月は例年同様前月より増加し、過去8年間の同月との比較では中位に属した。
薬剤耐性緑膿菌感染症 0.14(前月:0.11、前年同月:0.23)
定点当たり報告数は、例年後半が前半に比して多い傾向がある。10月は前月より増加し、過去8年間の同月との比較では中位に属した。 |
●年齢階級別
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MRSA感染症
高齢者に多く、70歳以上が全体の63%を占めている(図1:PDF参照)
PRSP感染症
小児と高齢者に多い。5歳未満が全体の55%を占める一方、70歳以上が全体の21%を占めている(図2:PDF参照)。
薬剤耐性緑膿菌感染症
高齢者に多く、70歳以上が全体の52%を占めている(図3:PDF参照)
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●性別:女性を1 として算出した男/女比
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MRSA感染症…男:女=1.6:1
PRSP感染症…男:女=1.5:1
薬剤耐性緑膿菌感染症…男:女=2.7:1
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●都道府県別
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MRSA感染症
定点当たり報告数は福島県(8.1)、鳥取県(7.6)、三重県(7.1)が多い。
PRSP感染症
定点当たり報告数は神奈川県(4.4)、千葉県(4.1)、沖縄県(2.9)が多い。
薬剤耐性緑膿菌感染症
報告総数が66件にとどまるため、都道府県別定点当たり報告数の評価は困難である。
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注目すべき感染症
◆ インフルエンザ
インフルエンザ(Influenza)は、インフルエンザウイルスを病原微生物とする急性の呼吸器感染症であり、わが国においては、例年冬季を中心に全国的な流行が発生し、多くのシーズンにおいて年間1,000万人以上の発病者がみられている。インフルエンザの予防の基本は、流行前にワクチン接種を受けることであり、ワクチンは罹患した場合の重症化防止に有効と報告されている。また、インフルエンザの流行時には、外出時のマスクの利用や帰宅時のうがい、手洗いは、かぜの予防と併せて奨められる。さらにインフルエンザの主な感染経路が飛沫感染であることから、インフルエンザに罹患し、咳嗽などの症状のある人は特に、周囲への感染拡大を防止する意味から、マスクの着用が推奨される。
感染症発生動向調査によると、インフルエンザの定点当たり報告数は第42週以降増加が続いており、第46週は0.94(報告数4,415)と前週の報告数(定点当たり報告数0.50、報告数2,326)を大きく上回った(図1)。都道府県別では北海道(8.1)、沖縄県(3.1)、神奈川県(1.8)、和歌山県(1.7)、千葉県(1.5)、兵庫県(1.4)、岡山県(1.1)、東京都(1.0)、山梨県(1.0)の順となっている。北海道では患者報告数の急激な増加が続いており、さらに関東、近畿、中部、中国地域からの報告数の増加も目立ってきている(図2)。2007年第36週からの定点当たり累積報告数は2.04(累積報告数12,286)であり、年齢別では5〜9歳41.6%、0〜4歳21.2%、10〜14歳12.9%、30〜39歳8.5%の順となっており、5〜9歳からの報告数の割合は更に増加してきている(図3)。
第36週以降のインフルエンザウイルスの分離・検出報告数は14都道府県から130件であり、うちAH1亜型123件(94.6%)、AH3亜型7件(5.4%)、B型0件(0%)となっており、現在のインフルエンザ国内発生の原因ウイルスの大半はAH1亜型であると思われる(表1、図4)。
第43週以降、インフルエンザの患者発生報告数の増加の勢いは増してきており、第46週の定点当たり報告数は0.94となった(図1)。次週の第47週には、全国的な流行開始の指標とされている定点当たり報告数1.0を超え、インフルエンザの流行が開始する可能性が高いと思われる。今シーズンインフルエンザのワクチンを接種する予定であるものの、まだ接種を完了されていない方は、早期に接種することが推奨される。今後ともインフルエンザの発生動向には一層の注意が必要である。
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図1. インフルエンザの年別・週別発生状況(1997年〜2007年第46週)
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図2. インフルエンザの都道府県別報告状況(2007年第46週)
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図3. 2007/08シーズンのインフルエンザ累積報告数の年齢群別割合(2007年第36〜46週)
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表1. 都道府県別インフルエンザウイルス分離・検出状況(2007年第36〜46週)(病原微生物検出情報:2007年11月21日現在報告数)
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図4. インフルエンザウイルス分離・検出報告数の週別推移(2007年第36〜46週)(病原微生物検出情報:2007年11月21日現在報告数)
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