発生動向総覧
*2006年4月からの報告システムの変更に伴い、疾病の並び順を一部変更しました。
◆全数報告の感染症
〈第47週コメント〉 11月28日集計分
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核267例 |
3類感染症: |
細菌性赤痢4例〔感染地域:神奈川県1例、大阪府1例、国内(都道府県不明)1例、インド1例〕
腸管出血性大腸菌感染症67例(うち有症者26例、うちHUS 2例)
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感染地域:国内65例、中国1例、インドネシア1例
国内の多い感染地域:広島県(17例)*、高知県(11例)**、東京都(9例)
*、**それぞれ全例が、保育園に関連する集団発生
年齢群:10歳未満(34例)、10代(3例)、20代(11例)、30代(9例)、40代(4例)、50代(4例)、60代(1例)、70歳以上(1例)
血清型・毒素型:O145 VT1( 17例)、O157 VT1・VT2( 15例)、O111VT1( 12例)、O26 VT1( 10例)、O157 VT2( 7例)、O157 VT1(1例)、その他/不明(5例)
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4類感染症: |
A型肝炎2例(感染地域:北海道1例、福岡県1例)
オウム病1例(感染地域:福岡県、感染源:不明)
Q熱1例(感染地域:三重県.感染源:イヌ)
つつが虫病24例(感染地域:鹿児島県7例、福島県6例、千葉県2例、静岡県2例、大分県2例、青森県1例、山梨県1例、広島県1例、福岡県1例、熊本県1例)
日本紅斑熱2例(感染地域:三重県1例、和歌山県1例)
レジオネラ症8例(すべて肺炎型) |
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年齢群:50代3例、60代3例、80代2例
感染地域:宮城県1例、秋田県1例、山形県1例、石川県1例、福井県1例、長野県1例(温泉)、兵庫県1例(温泉)、大分県1例(温泉)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢5例(腸管アメーバ症3例、腸管外アメーバ症2例) |
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感染地域:すべて国内
感染経路:性的接触1例(異性間)、不明4例 |
ウイルス性肝炎1例(B型_感染経路:不明)
急性脳炎3例(すべて病原体不明.10代1例、20代1例、30代1例)
劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(70代) |
後天性免疫不全症候群9例(AIDS 3例、無症候5例、その他1例)
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感染地域:国内8例、インドネシア1例
感染経路:性的接触8例(異性間3例、同性間4例、異性間・同性間不明1例)、不明1例 |
梅毒4例(早期顕症I期2例、無症候2例)
バンコマイシン耐性腸球菌感染症2例(遺伝子型:ともに不明_菌検出検体:尿1例、便1例)
(補)他に第46週までに診断されたものの報告遅れとして、細菌性赤痢1例〔感染地域:国外(国不明)〕、エキノコックス症1例(多包条虫.感染地域:北海道)、日本脳炎1例(感染地域:愛知県.40代.死亡)、急性脳炎3例〔ロタウイルス1例(2歳)、RSウイルス1例(4歳)、病原体不明1例(60代)〕、髄膜炎菌性髄膜炎1例(感染地域:国内.30代)、バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例(遺伝子型:不明_菌検出検体:血液)等の報告があった。
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◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000カ所)、眼科定点(約600カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ:定点当たり報告数は第42週以降増加が続いており、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い。都道府県別では北海道(12.6)、岡山県(3.8)、沖縄県(3.3)、兵庫県(3.0)、和歌山県(3.0)、神奈川県(2.6)、千葉県(1.8)、青森県(1.6)が多い。 小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症は1,428例の報告があり、報告数は第42週以降増加が続いている。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の約74%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は第44週以降増加が続いている。都道府県別では青森県(1.12)、佐賀県(0.65)、広島県(0.57)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では石川県(3.5)、山口県(2.9)、佐賀県(2.8)、山形県(2.7)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は第42週以降増加が続いている。都道府県別では大分県(21.9)、宮崎県(21.8)、長崎県(19.7)、福岡県(19.1)が多い。水痘の定点当たり報告数は第41週以降増加が続いている。都道府県別では石川県(3.4)、福島県(2.8)、福井県(2.3)、新潟県(2.3)が多い。手足口病の定点当たり報告数は2週連続で減少し、都道府県別では沖縄県(2.1)、大分県(1.4)、島根県(1.4)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は2週連続で減少し、都道府県別では新潟県(0.74)、山形県(0.33)、三重県(0.31)が多い。百日咳の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では岐阜県(0.17)、和歌山県(0.16)、兵庫県(0.09)、千葉県(0.08)、新潟県(0.08)、福岡県(0.08)が多い。風しんの報告数は6例と減少した。都道府県別では神奈川県から2例、青森県、栃木県、東京都、大阪府から各1例の順であった。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では岩手県(0.41)、三重県(0.27)、福島県(0.25)が多い。麻しんの報告数は減少し、13都道府県から34例の報告があった。都道府県別では青森県8例、大阪府6例、兵庫県5例、北海道、大分県から各3例、埼玉県2例、栃木県、千葉県、東京都、神奈川県、静岡県、岡山県、福岡県から各1例の順であった。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では秋田県(1.97)、新潟県(0.85)、群馬県(0.77)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では福島県(2.9)、沖縄県(1.9)、宮城県(1.6)、青森県(1.5)が多い。成人麻しんの報告数は増加し、3都県から3例の報告があった。都道府県別では埼玉県、東京都、山口県から各1例であった。
注目すべき感染症
◆ インフルエンザ
インフルエンザ(Influenza)は、インフルエンザウイルスを病原微生物とする急性の呼吸器感染症であり、わが国においては、例年12月中旬もしくは1月に全国的な流行が開始となり、多くのシーズンにおいて年間1,000万人以上の発病者がみられている。
1987年からのインフルエンザの感染症発生動向調査開始以降、昨シーズンまでの各シーズンにおいて、早期に流行が開始したのは1995/96シーズン(第48週)であり、次いで1988/89シーズン、1996/97シーズン(どちらも第49週)であった。今シーズン(2007/08シーズン)のインフルエンザの定点当たり報告数は2007年第42週以降増加が続いており、第47週は1.53(患者報告数7,162)と全国的な流行開始の指標である定点当たり報告数1.0を初めて上回った(図1)。都道府県別では、北海道(12.6)、岡山県(3.8)、沖縄県(3.3)、兵庫県(3.0)、和歌山県(3.0)、神奈川県(2.6)、千葉県(1.8)、青森県(1.6)の順となっており、患者報告数の急増が続いている北海道をはじめ、より広範な地域での患者発生数の増加が目立つ(図2)。シーズン開始の第36週から第47週までの定点当たり累積報告数は3.63(患者報告数19,455)であり、年齢別では5〜9歳44.3%、0〜4歳21.5%、10〜14歳13.4%、30〜39歳7.4%の順となっており、最多を占める5〜9歳からの報告数の割合は更に増加傾向にある(図3)。第36週以降のインフルエンザウイルスの分離報告数は、21都道府県から186件であり、そのうちAH1亜型171件(91.9%)、AH3亜型14件(7.5%)、B型1件(0.5%)となっており、現時点での国内におけるインフルエンザ流行の原因ウイルスの大半はAH1亜型であると思われる(表1、図4)
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図1. インフルエンザの年別・週別発生状況(1997年〜2007年第47週)
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図2. インフルエンザの都道府県別報告状況(2007年第47週)
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図3. 2007/08シーズンのインフルエンザ累積報告数の年齢群別割合(2007年第36〜47週)
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表1. 都道府県別インフルエンザウイルス分離・検出状況(2007年第36〜47週)
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図4. インフルエンザウイルス分離・検出報告数の週別推移(2007年第36〜47週)
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インフルエンザの患者発生数は、今後比較的短期間のうちに大きく増加し、より本格的な流行へと発展する可能性が高い。今後のインフルエンザの発生動向にはより一層の注意が必要である。
インフルエンザの予防の基本は、流行前にワクチン接種を受けることであり、ある程度の発病防止と罹患した場合の重症化防止に有効であると報告されている。また流行時には、外出時のマスクの利用や帰宅時のうがい、手洗いは、かぜの予防と併せて奨められる。さらにインフルエンザの主な感染経路が飛沫感染であることから、インフルエンザに罹患し、咳嗽などの症状のある人は特に、周囲への感染拡大を防止する意味から、マスクの着用が推奨される。今シーズンのインフルエンザワクチンを接種予定でまだ接種を完了していない人は、速やかに接種を完了することが望まれる。
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