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発生動向総覧
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1類感染症: | 報告なし | ||||||||||
2類感染症: | 結核289例 | ||||||||||
3類感染症: | 細菌性赤痢4例(感染地域:ネパール1例、インドネシア1例、エチオピア1例、マラウイ1例) 腸管出血性大腸菌感染症23例(うち有症者12例、うちHUSなし)
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4類感染症: | E型肝炎1例(感染地域:中国.感染源:不明) A型肝炎2例(感染地域:フィリピン1例、インド1例) つつが虫病23例(感染地域:岐阜県8例、千葉県5例、鹿児島県3例、福島県2例、青森県1例、東京都1例、静岡県1例、愛知県1例、和歌山県1例) デング熱2例(感染地域:ベトナム1例、フィリピン1例)
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5類感染症: |
梅毒5例(早期顕症I期2例、早期顕症II期3例) (補)他に第48週までに診断されたものの報告遅れとして、腸チフス1例(感染地域:インドネシア)、E型肝炎1例(感染地域:北海道.感染源:不明)、エキノコックス症1例(多包条虫.感染地域:北海道)、レプトスピラ症5例(感染地域:すべて沖縄県)、急性脳炎2例〔ともに病原体不明(2歳、5歳)〕、バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例(遺伝子型:VanA_菌検出検体:吐物)等の報告があった。 |
◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000カ所)、眼科定点(約600カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ:定点当たり報告数は第42週以降増加が続いており、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い。都道府県別では北海道(19.0)、和歌山県(11.7)、青森県(11.5)、岡山県(11.0)、兵庫県(7.7)、山梨県(6.7)、神奈川県(6.5)、埼玉県(6.2)、千葉県(6.2)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症は2,559例の報告があり、報告数は第42週以降増加が続いている。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の約72%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は第44週以降増加が続いている。都道府県別では青森県(1.22)、佐賀県(0.96)、広島県(0.69)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は3週連続で増加した。都道府県別では山口県(4.7)、富山県(4.2)、石川県(4.0)、山形県(3.6)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は第42週以降増加が続いている。都道府県別では大分県(43.6)、長崎県(33.7)、鹿児島県(29.6)、熊本県(29.2)、佐賀県(29.1)、石川県(27.3)が多い。水痘の定点当たり報告数は第41週以降増加が続いている。都道府県別では石川県(5.6)、福島県(3.4)、新潟県(3.2)、大分県(3.0)が多い。手足口病の定点当たり報告数は第46週以降減少が続いている。都道府県別では沖縄県(2.53)、大分県(1.81)、山口県(0.88)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では新潟県(0.66)、大分県(0.47)、北海道(0.38)が多い。百日咳の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では栃木県(0.17)、岐阜県(0.17)、徳島県(0.13)、千葉県(0.11)が多い。風しんの報告数は6例と減少した。都道府県別では千葉県3例、静岡県、京都府、兵庫県から各1例の順であった。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は横ばいであった。都道府県別では岩手県(0.33)、熊本県(0.19)、宮崎県(0.19)が多い。麻しんの報告数は減少し、5道府県から19例の報告があった。都道府県別では神奈川県8例、北海道4例、大阪府3例、青森県、福岡県各2例の順であった。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では秋田県(2.09)、新潟県(1.11)、宮崎県(0.83)、群馬県(0.82)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では福島県(3.0)、沖縄県(2.7)、群馬県(2.0)が多い。成人麻しんの報告数は増加し、2道県から4例の報告があった。都道府県別では北海道、神奈川県から各2例であった。
◆ インフルエンザ
わが国においてインフルエンザ(Influenza)は、例年冬季を中心に全国的な流行が開始し、多くのシーズンにおいて年間1,000万人以上の発病者がみられている。
臨床症状としては、インフルエンザウイルスの感染を受けてから1〜3日間ほどの潜伏期間の後に、発熱(通常38℃以上の高熱)、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛・関節痛などが突然現われ、咳、鼻汁などの上気道炎症状がこれに続き、約1週間の経過で軽快するのが典型的なインフルエンザで、いわゆる「かぜ」に比べて全身症状が強い。とくに、高齢者や慢性疾患を持つ患者では、入院や死亡の危険が増加する。小児では中耳炎の合併、熱性痙攣や気管支喘息を誘発することもある。近年、幼児を中心とした小児において、急激に悪化する急性脳症が重篤な合併症として存在することが明らかとなってきている。
感染症発生動向調査によると、インフルエンザの定点当たり報告数は2007年第42週以降増加が続いており、第49週は3.98(報告数18,868)であった(図1)。都道府県別では北海道(19.0)、和歌山県(11.7)、青森県(11.5)、岡山県(11.0)、兵庫県(7.7)、山梨県(6.7)、神奈川県(6.5)、埼玉県(6.2)、千葉県(6.2)、東京都(4.7)の順となっており、患者報告数の急増が続いている北海道をはじめ、より広範な地域での患者発生数の増加が目立つ(図2)。第36週から第49週までの定点当たり累積報告数は10.2(累積報告数48,016)であり、年齢別では5〜9歳45.5%、0〜4歳21.5%、10〜14歳14.4%、30〜39歳6.8%の順となっており、最多を占める5〜9歳からの報告数の割合は更に増加傾向にある(図3)。第36週以降のインフルエンザウイルスの分離報告数は28都道府県から375件であり、うちAH1亜型329件(87.7%)、AH3亜型40件(10.7%)、B型6件(1.6%)となっており、現時点での国内におけるインフルエンザ流行の原因ウイルスの大半はAH1亜型であると思われる(図4、図5)が、AH3亜型の割合も増加傾向にあり、今後の動向が注目される。
図1. インフルエンザの年別・週別発生状況(1997年〜2007年第49週) |
図2. インフルエンザの都道府県別報告状況(2007年第49週) |
図3. 2007/08シーズンのインフルエンザ累積報告数の年齢群別割合(2007年第36〜49週) |
図4. インフルエンザウイルス型別分離・検出報告割合(2007年第36〜49週) |
図5. インフルエンザウイルス分離・検出報告数の週別推移(2007年第36〜49週) |
第47週に、インフルエンザの定点当たり報告数の全国平均値は、流行開始の指標である定点当たり報告数1.0を上回ったが、その後も増加の勢いは大きくなりつつある。今後も学校等の冬期休暇が全国的に始まるまでは、インフルエンザの患者発生報告数の増加や流行地域の拡大がみられるものと予想される。インフルエンザの流行拡大に伴い、地域のインフルエンザ流行情報にはより一層の注意が必要である。流行時には、外出時のマスクの利用や帰宅時のうがい、手洗いなどが、かぜの予防と併せて奨められる。また、インフルエンザワクチンには、ある程度の発病阻止効果と発病時の重症化防止効果が期待できるため、今シーズンのインフルエンザワクチンを接種予定でまだ接種を完了していない人は、速やかに接種を完了することが望まれる。
◆ 感染性胃腸炎
感染性胃腸炎は多種多様の病原によるものを包含する症候群名であるが、全国約3,000カ所の小児科定点からの患者発生報告数が増加するのは冬季であり、その大半はノロウイルスやロタウイルス等のウイルス感染を原因とするものであると推測されている(IASR, Vol 24. No 12.p321-322参照)。また、患者発生のピークは例年12月の中旬以降となることが多く(図1)、同時期の感染性胃腸炎の、特に集団発生例の原因の多くはノロウイルスによるものであると推測される(感染症情報センターホームページhttp://idsc.nih.go.jp/iasr/prompt/graph-kj.html)。
ノロウイルス感染症の潜伏期間は数時間〜数日(平均1〜2日)で、主な症状は嘔気・嘔吐及び下痢であり、嘔吐・下痢は1日数回から多いときには10回以上のこともある。しかし、症状持続期間は数時間〜数日(平均1〜2日)と比較的短く、以前から他の病気がある等の要因がない限りは、重症化して長期にわたり入院を要することは少ない。また、発熱の頻度は高くはない。特効薬はなく、治療は対症療法となるが、最も重要なことは水分補給によって脱水を防ぐことである。
感染症発生動向調査によると、感染性胃腸炎の定点当たり報告数は第42週以降増加が続いていたが、2007年第49週の定点当たり報告数は16.9(報告数51,000)であり、前週の報告数(定点当たり報告数13.6、報告数41,003)を大きく上回った(図1)。都道府県別では大分県(43.6)、長崎県(33.7)、鹿児島県(29.6)、熊本県(29.2)、佐賀県(29.1)、石川県(27.3)、福岡県(25.8)、富山県(23.7)の順であり、九州地域の各県の報告数の増加が目立っている(図2)。発生報告数を年齢別にみると、0〜1歳22.9%、2〜3歳19.9%、4〜5歳17.2%の順であり、5歳以下で全報告数の60%前後を、7歳以下で70%以上を占めている(図3)のは例年と同様である。
2007年の感染性胃腸炎の患者報告数は昨年の流行レベルには及ばないものの、12月に入っても増加が続いている。過去10年間では第50もしくは51週にピークとなったことが大半であり、本年も間もなくピークを迎えるものと予想される。感染性胃腸炎の発生動向には今後とも注意が必要である。
図1. 感染性胃腸炎の年別・週別発生状況(1997年〜2007年第49週) | 図2. 感染性胃腸炎の都道府県別報告状況(2007年第49週) | 図3. 感染性胃腸炎の年齢群別割合(2007年第49週) |
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