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発生動向総覧 〈第50週コメント〉 12月19日集計分 ◆全数報告の感染症 注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。 インフルエンザ:定点当たり報告数は第42週以降増加が続いており、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い。都道府県別では北海道(18.8)、青森県(18.6)、和歌山県(15.9)、岡山県(13.4)、山梨県(11.2)、兵庫県(11.1)、埼玉県(9.6)、千葉県(8.9)、神奈川県(8.8)が多い。 小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症は3,368例の報告があり、報告数は第42週以降増加が続いている。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の約74%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は第44週以降増加が続いている。都道府県別では青森県(1.37)、佐賀県(1.04)、石川県(0.69)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は第47週以降増加が続いており、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では山口県(5.2)、山形県(4.2)、富山県(4.1)、石川県(4.1)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は第42週以降増加が続いており、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では大分県(41.9)、長崎県(31.0)、鹿児島県(29.5)、熊本県(28.7)、佐賀県(27.0)、福岡県(27.0)が多い。水痘の定点当たり報告数は第41週以降増加が続いている。都道府県別では新潟県(4.7)、石川県(4.1)、福島県(4.0)、山口県(3.5)が多い。手足口病の定点当たり報告数は微増した。都道府県別では沖縄県(1.74)、大分県(1.58)、鳥取県(1.32)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は3週連続で増加した。都道府県別では新潟県(1.18)、秋田県(0.63)、山形県(0.63)が多い。百日咳の定点当たり報告数は2週連続で減少したが、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では岐阜県(0.12)、栃木県(0.11)、群馬県(0.07)が多い。風しんの報告数は横ばいであり、4県から6例の報告があった。都道府県別では神奈川県3例、茨城県、愛知県、高知県から各1例の順であった。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は減少した。都道府県別では岩手県(0.28)、徳島県(0.20)が多い。麻しんの報告数は増加し、8道府県から33例の報告があった。都道府県別では神奈川県11例、北海道、福岡県各7例、青森県3例、千葉県2例、埼玉県、大阪府、大分県から各1例の順であった。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は横ばいであった。都道府県別では秋田県(1.69)、新潟県(1.00)、高知県(0.97)、宮崎県(0.94)が多い。 〈11月コメント〉 ●月別推移
年齢群毎にみた定点当たり報告数の男女の比較では、淋菌感染症では全ての年齢群で男性が女性よりも多いが、性器クラミジア感染症では10〜29歳の4つの年齢群、性器ヘルペスウイルス感染症では15〜34歳、50〜59歳の6つの年齢群、尖圭コンジローマでは15〜24歳の2つの年齢群で、女性が男性よりも多かった。ただし、性感染症定点は泌尿器科系、婦人科系および皮膚科系などの診療科から構成されており、男女の比較についてはそれらの比率の影響を受ける可能性がある。 ●若年齢層での推移
注目すべき感染症 ◆ インフルエンザ 臨床症状としては、インフルエンザウイルスの感染を受けてから1〜3日間ほどの潜伏期間の後に、発熱(通常38℃以上の高熱)、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛・関節痛などが突然現われ、咳、鼻汁などの上気道炎症状がこれに続き、いわゆる「かぜ」に比べて全身症状が強い。とくに、高齢者や慢性疾患を持つ患者では、入院や死亡の危険が増加する。小児では中耳炎や急性脳症の合併が知られ、熱性痙攣や気管支喘息を誘発することもある。 感染症発生動向調査によると、インフルエンザの定点当たり報告数は2007年第42週以降増加が続いており、第50週は5.7(報告数26,983)であった(図1)。都道府県別では、北海道(18.8)、青森県(18.6)、和歌山県(15.9)、岡山県(13.4)、山梨県(11.2)、兵庫県(11.1)、埼玉県(9.6)、千葉県(8.9)、神奈川県(8.8)、静岡県(7.9)の順となっている。これまで患者報告数が急増していた北海道は、今週は前週よりも微減したものの、青森県ではこの4週間で報告数が急増し、その他全国の多くの地域においても報告数の増加がみられている(図2)。シーズン開始の第36週から第50週までの定点当たり累積報告数は15.1(累積報告数74,102)であり、年齢別では5〜9歳45.6%、0〜4歳21.2%、10〜14歳14.6%、30〜39歳6.7%の順となっている。5〜9歳からの報告数割合が例年と比較しても高い状態が続いており、15歳未満の小児を中心とした流行が継続している(図3)。第36週以降のインフルエンザウイルスの分離報告数は31都道府県から474件であり、うちAH1亜型415件(87.6%)、AH3亜型51件(10.8%)、B型8件(1.7%)となっており、現時点での国内におけるインフルエンザ流行の原因ウイルスの大半はAH1亜型であると思われる(図4、図5)。
インフルエンザの定点当たり報告数の全国平均値は、第47週に流行開始の指標である定点当たり報告数1.0を上回ったが、その後も増加の勢いはさらに大きくなってきている。例年、学校等の冬期休暇が全国的に始まるまでは、インフルエンザの患者発生報告数の増加や流行地域が拡大し、冬期休暇の時期に一旦患者発生が鈍化、その後再び増加するという傾向が見られている。今後、より年長者における患者発生が増えてくるものと予想され、地域のインフルエンザ流行情報への注意が必要である。流行時には、外出時のマスク利用や帰宅時のうがい、手洗いなどが、かぜの予防と併せて奨められる。インフルエンザが疑われる症状を呈した者については、速やかに医療機関を受診して医師の診断と適切な加療を受けることと、周囲への感染拡大を防止するため、マスク着用などの咳エチケットを始めとした予防措置を取ることが重要である。 ◆ 感染性胃腸炎 ノロウイルスの感染経路については、経口感染が以前から知られていたが、同ウイルスはヒトの体内においてのみ増殖するウイルスであり、ヒトからヒトへ直接伝播する感染経路による感染が、ノロウイルス感染症の流行拡大の大きな要因であると思われる。ヒト−ヒト間の感染経路としては、便や嘔吐物の付着した手や物品を介する接触感染や、嘔吐物や下痢便の飛沫をあびるまたは吸い込むことによる飛沫感染があり、更には嘔吐物や下痢便の存在した場所または物品に対して適切な消毒が行われなかったことによって、乾燥後にウイルスが埃と共に舞い上がって集団感染を引き起こしたいわゆる塵埃感染もこれまでに報告されている。ノロウイルス感染症の接触感染を予防する最も重要な方法は「流水・石けんによる手洗い」であり、流行時期には外出から帰った後、調理や喫食の前後等に十分な手洗いを行う必要がある。また、ノロウイルス感染症の場合、嘔吐物や下痢便には、大量のノロウイルスが含まれており、わずかな量のウイルスが体内に入っただけで容易に感染するため、嘔吐物・下痢便の処理の際にはマスク・手袋を着用し、うすめた塩素系消毒剤や家庭用漂白剤(濃度は200ppm以上;http://idsc.nih.go.jp/disease/norovirus/index.html)でふき取りを行うことが重要である。 感染症発生動向調査によると、感染性胃腸炎の定点当たり報告数は第42週以降増加が続いており、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してやや多い。2007年第50週の定点当たり報告数は19.3(報告数58,352)であり、前週の報告数(定点当たり報告数16.9、報告数51,000)を大きく上回った(図1)。都道府県別では大分県(41.9)、長崎県(31.0)、鹿児島県(29.5)、熊本県(28.7)、佐賀県(27.0)、福岡県(27.0)、富山県(26.3)、福井県(26.0)の順であり、九州地域の各県の報告数の増加が目立っている(図2)。発生報告数を年齢別にみると、0〜1歳20.9%、2〜3歳18.9%、4〜5歳17.2%の順であり、5歳以下で全報告数の60%前後を、7歳以下で70%前後を占めている(図3)のは例年と同様である。 2007年の感染性胃腸炎の患者報告数は昨年の流行レベルには及ばないものの、12月に入っても増加が続いており、第50週では既に2005年以前の報告数のレベルを超えている。現在、感染性胃腸炎の流行は、ピークを迎えつつある可能性が高いが、その発生動向には今後とも十分な注意が必要である。
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