国立感染症研究所 感染症情報センター
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IDWR 感染症発生動向調査週報

第52号ダイジェスト
(2007年12月24日〜12月30日)

 発生動向総覧


*2006年4月からの報告システムの変更に伴い、疾病の並び順を一部変更しました。

全数報告の感染症

〈第52週コメント〉 1月8日集計分

注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。

*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。

1類感染症: 報告なし
2類感染症: 結核340例
3類感染症: 細菌性赤痢3例(感染地域:東京都1例、石川県1例、カンボジア1例)
腸管出血性大腸菌感染症11例(うち有症者9例、HUS 1例)

感染地域:東京都2例、岩手県1例、富山県1例、山梨県1例、長野県1例、大阪府1例、岡山県1例、福岡県1例、国内(都道府県不明)2例
年齢群:10歳未満(4例)、10代(3例)、20代(1例)、30代(2例)、40代(1例)
血清型・毒素型:O157 VT2 (4例)、O26 VT1 (3例)、O157 VT1・VT2 (2例)、O18 VT2(1例)、その他・不明(1例)

パラチフス2例(感染地域:新潟県1例、バングラデシュ1例)
4類感染症: A型肝炎1例(感染地域:福島県)
つつが虫病26例(感染地域:鹿児島県12例、千葉県6例、宮崎県2例、福島県1例、東京都1例、岐阜県1例、静岡県1例、徳島県1例、大分県1例)
マラリア1例(熱帯熱_感染地域:ミャンマー)
レジオネラ症8例(肺炎型7例、ポンティアック型1例)

年齢群:30代1例、40代1例、50代1例、60代2例、70代3例
感染地域:神奈川県2例、山形県1例(温泉)、福井県1例(温泉)、長野県1例、兵庫県1例(温泉)、鹿児島県1例、インド/韓国1例

レプトスピラ症1例(感染地域:東京都.感染源:ねずみ)
5類感染症:
アメーバ赤痢9例(腸管アメーバ症8例、腸管外アメーバ症1例)

感染地域:国内5例、タイ2例、インドネシア1例、グアム1例
感染経路:経口3例、性的接触2例(ともに異性間)、不明4例
ウイルス性肝炎1例(C型_感染経路:不明)
急性脳炎1例(A型インフルエンザウイルス.5歳)
クロイツフェルト・ヤコブ病1例(孤発性プリオン病古典型)
劇症型溶血性レンサ球菌感染症2例(40代1例、60代1例)
後天性免疫不全症候群8例(AIDS 1例、無症候7例)
感染地域:すべて国内
感染経路:性的接触7例(異性間1例、同性間5例、異性間・同性間1例)、
不明1例
梅毒9例(早期顕症I期2例、早期顕症II期3例、無症候4例)
破傷風1例(70代)

(補)他に第51週までに診断されたものの報告遅れとして、細菌性赤痢2例〔感染地域: 千葉県1例、国内(都道府県不明)1例〕、E型肝炎1例(感染地域:中国.感染源:不 明)、日本紅斑熱5例(感染地域:すべて三重県)、ライム病1例(感染地域:北海道)、 急性脳炎2例〔A型インフルエンザウイルス1例(0歳)、病原体不明1例(1歳)〕等の報 告があった。


定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)

全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000カ所)、眼科定点(約600カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
過去5年間の同時期との比較

インフルエンザ:定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してやや多い。都道府県別では青森県(17.4)、和歌山県(12.7)、岡山県(11.7)、香川県(10.0)、埼玉県(9.6)、岩手県(9.6)、兵庫県(8.9)、千葉県(8.7)、静岡県(8.6)が多い。

小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症は3,445例の報告があり、報告数は減少した。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の約77%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では青森県(1.15)、熊本県(0.96)、佐賀県(0.74)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では石川県(3.9)、富山県(3.3)、山形県(2.6)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では大分県(24.7)、福井県(23.9)、三重県(23.3)、愛媛県(22.0)が多い。水痘の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では石川県(5.0)、新潟県(4.9)、愛媛県(4.3)、福島県(4.2)が多い。手足口病の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では沖縄県(1.18)、鳥取県(1.11)、山口県(1.06)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では新潟県(1.16)、大分県(0.75)、秋田県(0.74)が多い。百日咳の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では島根県(0.17)、岐阜県(0.13)、千葉県(0.07)、長野県(0.07)が多い。風しんの報告数は増加し3例の報告があった。都道府県別では北海道、東京都、大阪府から各1例であった。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は3週連続で減少した。都道府県別では鳥取県(0.16)、栃木県(0.13)、群馬県(0.11)が多い。麻しんの報告数は減少し、8都道府県から27例の報告があった。都道府県別では北海道12例、神奈川県7例、兵庫県3例、青森県、東京都、新潟県、大阪府、大分県から各1例の順であった。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では秋田県(2.14)、高知県(1.20)、新潟県(0.87)が多い。

基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は3週連続で増加し、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では福島県(3.3)、沖縄県(2.6)、富山県(1.8)が多い。成人麻しんの報告数は減少し、2県から2例の報告があった。都道府県別では青森県、秋田県から各1例であった。



 注目すべき感染症

◆ インフルエンザ

 インフルエンザ(Influenza)は、インフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症である。1〜3日間の潜伏期間を経て、突然に発熱(38℃以上の高熱)、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛・関節痛などが出現し、鼻水・咳などの呼吸器症状がこれに続く。通常は1週間前後の経過で軽快するが、いわゆる「かぜ」と比べて全身症状が強いのが特徴である。正確な診断には、ウイルス学的検査が必要である。我が国のインフルエンザの流行は、例年12〜1月に全国的な流行が始まり、1〜3月にピークとなり、4〜5月に減少するパターンを繰り返しているが、最近では春〜夏季に地域的な流行がみられることがある。また、今シーズンは例年とは異なって11月中(第47週)に全国的な流行開始の指標である定点当たり報告数1.0を上回り、流行開始となった。
 感染症発生動向調査によると、インフルエンザの定点当たり報告数は2007年第42週以降第51週までは増加が続いていたが、第52週は6.2(報告数28,831)と減少した(図1)。都道府県別では、青森県(17.4)、和歌山県(12.7)、岡山県(11.7)、香川県(10.0)、埼玉県(9.6)、岩手県(9.6)、兵庫県(8.9)、千葉県(8.7)、静岡県(8.6)、山梨県(8.6)の順となっている。多くの地域において前週よりも報告数の減少がみられているものの、依然として広範囲の地域において患者発生数の多い状態が続いている(図2)。シーズン開始の第36週から第52週までの定点当たり累積報告数は28.7(累積報告数138,647)であり、年齢別では5〜9歳42.3%、0〜4歳22.4%、10〜14歳13.8%、30〜39歳7.6%の順となっている。5〜9歳からの報告数割合が例年と比較しても高く、15歳未満の小児からの報告割合は75%以上となっている(図3)。第36週以降のインフルエンザウイルスの分離報告数は40都道府県から812件であり、うちAH1亜型732件(90.1%)、AH3亜型65件(8.0%)、B型15件(1.8%)となっており、これまでのところ国内におけるインフルエンザ流行の原因ウイルスの大半はAH1亜型であると思われる(図4)

図1. インフルエンザの年別・週別発生状況(1997年〜2007年第52週)

図2. インフルエンザの都道府県別報告状況(2007年第52週)

図3. 2007/08シーズンのインフルエンザ累積報告数の年齢群別割合(2007年第36〜52週)

図4. インフルエンザウイルス型別分離・検出報告割合(2007年第36〜52週)

 今シーズンのインフルエンザの定点当たり報告数は、第42週以降増加が続いていたものの、第52週は減少がみられた。これは学校等の冬期休暇の影響によるものであると考えられる。今後、インフルエンザの患者発生報告数は、冬期休暇終了後に再び大きく増加し、インフルエンザの本格的な流行は2008年の1月以降となると予想される。インフルエンザの発生動向には今後より一層の注意が必要である。インフルエンザが疑われる症状を呈した場合は、速やかに医療機関を受診して医師の診断と適切な加療を受けることと、周囲への感染拡大を防止するため、マスク着用などの咳エチケットを始めとした予防措置を取ることが重要である。


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