国立感染症研究所 感染症情報センター
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IDWR 感染症発生動向調査週報

第6号ダイジェスト
(2008年2月4日〜2月10日)

 発生動向総覧


※2008年1月からの省令改正に伴い、疾病の追加および並び順を一部変更しました。

全数報告の感染症

〈第6週コメント〉 2月14日集計分

注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。

*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。

1類感染症: 報告なし
2類感染症: 結核258例
3類感染症: 細菌性赤痢4例(感染地域:大阪府1例、インド2例、ベトナム1例)
腸管出血性大腸菌感染症8例(うち有症者2例、HUSなし)

感染地域:愛知県2例、福井県1例、大阪府1例、福岡県1例、佐賀県1例、鹿児島県1例、国内(都道府県不明)1例
年齢群:10歳未満(1例)、20代(4例)、50代(3例)
血清型・毒素型:O157 VT2(3例)、O26 VT1(2例)、O91 VT1(2 例)、その他・不明(1例)

腸チフス1例(感染地域:インド)
4類感染症: A型肝炎1例(感染地域:神奈川県)
つつが虫病3例(感染地域:東京都1例、宮崎県1例、鹿児島県1例)
デング熱1例(感染地域:ソロモン諸島)
マラリア1例(死亡)(熱帯熱_感染地域:西アフリカ)
レジオネラ症12例(肺炎型12例)

感染地域:埼玉県3例、千葉県1例、新潟県1例、長野県1例(温泉)、岐阜県1例、京都府1例、広島県1例、高知県1例、福岡県1例、国内(都道府県不明)1例(温泉)
年齢群:2歳(1例)、20代(1例)、30代(2例)、50代(2例)、70代(4例)、80代(1例)、90代(1例)

5類感染症:
アメーバ赤痢8例(腸管アメーバ症4例、腸管外アメーバ症4例)

感染地域:兵庫県2例、国内(都道府県不明)5例、エジプト1例
感染経路:経口感染3例、性的接触1例(異性間・同性間不明)、経口/性的接触1例、不明3例
ウイルス性肝炎2例(B型肝炎2例_感染経路:性的接触2例〔異性間1例、同性間1例〕)
クロイツフェルト・ヤコブ病2例(孤発性プリオン病古典型1例、孤発性プリオン病その他1例)
劇症型溶血性レンサ球菌感染症2例(年齢群:70代〔2例〕)
後天性免疫不全症候群17例(AIDS 4例、無症候13例)
感染地域:国内13例、タイ2例、ウガンダ1例、国内・国外不明1例
感染経路:性的接触16例(異性間5例、同性間9例、異性間/同性間1例、異性間・同性間不明1例)、不明1例
梅毒9例(先天梅毒1例、早期顕症I期1例、早期顕症II期2例、晩期顕性1例、無症候4例)
風しん10例(検査診断例7例、臨床診断例3例)

感染地域:宮城県2例、東京都1例、神奈川県1例、大阪府1例、兵庫県1例、国内(都道府県不明)4例
年齢群:2歳(1例)、10〜14歳(1例)、30〜34歳(2例)、35〜39歳(4例)、50代(1例)、70代(1例)

麻しん314例〔麻しん(検査診断例66例、臨床診断例218例)、修飾麻しん(検査診断例)30 例〕

感染地域:国内314例
国内の多い感染地域:神奈川県107例、北海道37例、福岡県31 例、東京都21例、大阪府18例
年齢群:0歳(14例)、1歳(11例)、2歳(4例)、3歳(3例)、4歳(9例)、5〜9歳(36例)、10〜14歳(70例)、15〜19歳(79例)、20〜24歳(33例)、25〜29歳(25例)、30〜34歳(12例)、35〜39歳(7例)、40代(7例)、50代(2例)、60代(1例)、80代(1例)
累積報告数:1,556例〔麻しん(検査診断例397例、臨床診断例1,064例)、修飾麻しん(検査診断例)95例〕

(補)他に2008年第5週までに診断されたものの報告遅れとして、E型肝炎1例(感染地域:北海道)、 エキノコックス症1例(多包条虫_感染地域:北海道)、急性脳炎2例〔麻しんウイルス1例(20代)、病原体不明 1例(60代)〕、などの報告があった。


定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)

全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患によ り小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000カ所)、眼科定点(約600カ所)、基 幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
過去5年間の同時期との比較

インフルエンザ:定点当たり報告数は減少した。都道府県別では大分県(38.0)、熊本県(36.8)、 宮崎県(32.5)、石川県(29.8)、福井県(29.7)、岩手県(29.1)、鹿児島県(27.8)が多い。。

小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症は1,097例の報 告があり、報告数は2週連続で減少した。年齢別では1歳以下の報告数が全体の約75%を占めている。咽頭結膜熱 の定点当たり報告数は微減した。都道府県別では奈良県(0.60)、長崎県(0.55)、青森県(0.48)が多い。A群溶血性 レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は第2週以降増加が続いている。都道府県別では石川県(4.6)、福島県(3.6)、富山県 (3.6)が多い。感染性胃腸炎の定点 当たり報告数は微増し、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してやや多 い。都道府県別では宮崎県(18.5)、鳥取県(17.9)、福井県(14.3)、群馬県(13.9)、大分県(13.4)が多い。水痘の定点 当たり報告数は増加した。都道府県別では沖縄県(3.9)、宮崎県(3.4)、福岡県(3.4)が多い。手足口病の定点当たり報告数は微増し た。都道府県別では鳥取県(1.53)、沖縄県(1.06)、鹿児島県(0.85)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は減少した。都道府県別で は大分県(0.72)、新潟県(0.64)、岩手県(0 .54)、秋田県(0.54)が多い。百日咳の定点当たり報告数は増加し、過去5年 間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では福井県(0.23)、広島県(0.13)、千葉県(0.10)が多い。ヘルパンギーナの定点当た り報告数は横ばいであった。都道府県別では大分県(0. 17)、和歌山県(0.16)、福岡県(0.10)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数 は減少した。都道府県別では秋田県(1.11)、佐賀県(0.96)、高知県(0.77)が多い。

基幹定点報告疾患 :マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は3週連続で増加し、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では沖縄県(4.1)、福島県 (2.7)、宮城県(2.1)が多い。


◆ 麻しん

 麻しんは「はしか」とも呼ばれているが、麻しんウイルス(Paramyxovirus科Morbillivirus属)によって引き起こ される感染症で、39℃前後の 高熱と耳介後部から始まって体の下方へと広がる赤い発疹を特徴とする全身性疾患である。 空気感染(飛沫核感染)、飛沫感染、接触感染と様々な感染経路を示し、その感染力は極めて強い上に、罹患者の約3割が 合併症を併発し、そのおよそ半数が肺炎である。まれに急性脳炎を発症し、精神発達遅滞等 の重篤な後遺症が残るか又は死 亡することがある。さらに、よりまれではあるが、亜急性硬化性全脳炎という特殊な脳炎を発症することがあり、この脳 炎 を発症した場合には、多くは知能障害や運動障害が進行した後、数年以内に死亡する。
 2008年の1月1日から開始された麻しんの全数把握調査によると 、第6週(2月4〜10日診断のもの)の麻しん患者発 生報告数は2月14日現在で21都道府県から314例あり、都道府県別では神奈川県123例、北海道37例 、福岡県34例、 東京都20例、埼玉県19例、大阪府18例、千葉県12例、秋田県11例の順となっている(図1、図2)。なお報告 数は、今後報告遅れ のものを含めて更に増加する可能性がある。

 第1週から6週までの累積報告数は40都道府県から1,556例であり、都道府県別では神奈川県595例、福岡県212 例、北海道164例、東京都125例、秋田 県110例、埼玉県45例、大分県44例、大阪府43例の順となっている(図3) 。第1週以降これまで神奈川県からの報告数が突出 した状態が続いているが、福岡県、北海道、東京都、秋田県も100例を 超えており、また埼玉県や大阪府からの報告数の増加もみられてきている。累積報 告数を病型別にみると、臨床診断例1,064例 (68.4%)、検査診断例397例(25.5%)、修飾麻しん(検査診断例)95例(6.1%)と臨床診断例が最も 多くを占めている(図4)

図1. 麻しん報告数の週別推移(2008年第1〜6週) 図2. 麻しんの都道府県別報告状況(2008年第6週) 図3. 麻しん都道府県別累積報告状況(2008年第1〜6週)
図4. 麻しん塁積報告数の病型分類別割合(2008年第1〜6週)

 年齢群別では10〜14歳385例(24.7%)、15〜19歳381例(24.5%)、0〜4歳195例(12.5%)、20〜24歳182例(11.7%)、25〜29歳138例(8.9%)、5〜9歳127例(8.2%)の順となっている。10代の割合が49.2%とほぼ半数近くを占めており、29歳以下では90.5%、39歳以下では97.5%となっている(図5)。各年齢別の報告数では、14歳115例、13歳108例、15歳102例の順であり、14歳前後の年齢を中心に麻しんの発生がみられている(図6)。    
 麻しん含有ワクチンの接種歴別の報告数は、全体では、接種歴なし810例(52.1%)、1回接種325例(20.9%)、2回接種12例(0.8%)、接種歴不明409例(26.3%)となっており、接種歴なしが過半数を占めている状態が続いている(図7)。年齢別にみると、10代までは麻しん報告例中の多数がワクチン接種歴なしであるが、20代以降では接種歴不明者の方が多い(図6)
 2008年において麻しんを原因とする急性脳炎は1例(第4週;20代の男性)報告されている。この他、麻しん報告例中2例(第4週;10代の女性、第5週;30代の男性)に脳炎合併と記載されており、今後2例共に急性脳炎としても届出予定である。

図5. 麻しん累積報告数の年齢群別割合(2008年第1〜6週) 図6. 麻しん累積報告数のワクチン接種歴別年齢別分布(2008年第1〜6週) 図7. 麻しんの累積報告数のワクチン接種歴別割合(2008年第1〜6週)

 2008年第1週以降の麻しんの報告状況をみると、神奈川県からの麻しん累積報告数(595例、全国の累積報告数1,556例の38.2%)が突出した状態が続いているが、福岡県、秋田県、東京都、大分県、北海道等の他地域からの報告数の割合も増加傾向にある。加えて、2007年に麻しんの流行がみられた埼玉県、千葉県、大阪府においても第5週以降に報告数の増加がみられている。いくつかの自治体や学校、大学等においては、既に麻しんの流行を抑制または予防するための対策がとられつつあるものの、麻しんの流行が本格化するのは例年春季から夏季にかけてであり、現状のままでは、昨年と同様3月から4月にかけて麻しんの流行が更に拡大する可能性が高い。
 日本を含むWHO西太平洋地域では、2012年が麻しん排除(elimination)の目標年として設定され、国際的な責務として各国に対策が求められている。我が国における対策としては、(1)積極的な感受性者対策、すなわち95%以上の予防接種率の達成・維持のための取り組み《1歳代(第1期)、小学校就学前1年間(第2期)、さらに2008年4月1日より5年間の期限付きで実施される、中学校1年生相当世代(第3期)、高校3年生相当世代(第4期)への定期接種としての予防接種計画》、(2)2008年1月1日からの全数把握制度による麻しんサーベイランス、(3)麻しん発生時の迅速な対応、が対策の三本柱として実施されつつある。これらを可能な限り円滑に導入・実施することを目的として、国は「国の麻しん対策推進会議」を設置し、「都道府県を主体とした麻しん対策会議」の設立等をはじめとした都道府県レベルの活動支援を実践することとしている。2月12日には、第1回の国の麻しん対策推進会議が開催された。また2月中旬から全国各地で麻しん対策の情報を伝達することを主な目的とした麻しん対策ブロック会議が開催されている。麻しん排除のためには、関係各機関との意思統一とより一層の連携が重要である。

 以下に、麻しん関連情報として感染症情報センターのホームページに掲載されている主な項目とそのURLを挙げる。 麻しん対策として活用いただければ幸いである。

■麻疹(はしか):http://idsc.nih.go.jp/disea se/measles/index.html
 □緊急情報「2012年麻疹排除(Elimination)に向けて」
  ●「麻疹」の届出基準・届け出様式、「風疹」の届出基準・届出様式、ポスター
  ●2008年4月1日以降の予防接種スケジュール
  ●2008〜2012年度麻疹・風疹の定期予防接種対象者
 □対策・ガイドラインなど
  ●麻疹の現状と今後の麻疹対策について
  ●都道府県における麻しん対策会議のガイドライン(案)
  ●麻しん排除に向けた積極的疫学調査ガイドライン第二版
  ●医師による麻しん届出ガイドライン第二版
  ●医療機関での麻疹対応ガイドライン第二版
  ●保育所・幼稚園・学校等における麻しん対応ガイドライン第二版
 □国内情報
  ●注目すべき感染症/速報
  ●麻しん発生状況(速報グラフ)
  ●病原微生物検出情報[IASR](麻疹特集・速報、ウイルス分離・検出状況他)
  ●平成19年度定期の予防接種(麻しん風しん第2期)の実施状況の調査結果について(第1 報)
  ●わが国の健常人における麻疹PA抗体保有率
□関連情報
  ●予防接種法施行令の一部を改正する政令の一部を改正する政令及び予防接種法施行 規則及び予防接種実施規則の一部を改正する省令
  ●麻しんに関する特定感染症予防指針

■Q&A:http://idsc.nih.go.jp/disease/measles/QA.html
■予防接種の話「麻疹」:http://idsc.nih.go.jp/vaccine/b-measles.html
■年齢別麻疹、風疹、MMRワクチ ン接種率:http://idsc.nih.go.jp/vaccine/ atopics/atpcs001.html
■感染症の話「麻疹」:http://idsc.ni h.go.jp/idwr/kansen/k03/k03_03/k03_03.html
■麻疹発生DB(データベース): http://idsc.nih.go.jp/disease/measles/meas-db.html
■「麻疹・風疹ワクチンなぜ2回接種なの ?」ポスター:http://idsc.nih.go.jp/vaccine/cpn01.html
■「麻疹風疹混合ワクチンを1歳のお誕生日のプレ ゼントにしましょう」ポスター:http://idsc.nih.go.jp/vaccine/cpn04.html
■「小学校入学準備に2回目の麻疹・風疹ワクチンを!」ポスタ ー:http://idsc.nih.go.jp/vaccine/cpn07.html



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