発生動向総覧
※2008年1月からの省令改正に伴い、疾病の追加および並び順を一部変更しました。
〈第7週コメント〉 2月20日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 213例 |
3類感染症: |
細菌性赤痢2例(国内(都道府県不明)1例、韓国1例)
腸管出血性大腸菌感染症12例(うち有症者9例、HUSなし)
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感染地域:新潟県1例、石川県1例、埼玉県1例、静岡県1例、京都府1例、兵庫県1例、福岡県1例、国内(都道府県不明)3例、タイ1例、オーストラリア1例 年齢群:10歳未満(2例)、10代(3例)、20代(1例)、30代(2例)、40代(1例)、50代(1例)、60代(2例) 血清型・毒素型:O157 VT1・VT2( 6例)、O1 VT2( 1例)、O91 VT1(1例)、O128 VT1(1例)、O157 VT1(1例)、O157 VT2(1例)、その他・不明(1例)
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パラチフス1例(感染地域:インドネシア) |
4類感染症: |
E型肝炎1例(感染地域:群馬県 感染源:豚肉)
A型肝炎5例(感染地域:埼玉県1例、大阪府1例、長崎1例、インド2例)
つつが虫病2例(感染地域:福島県1例、千葉県1例)
デング熱1例(感染地域:ベトナム)
レジオネラ症6例(肺炎型6例)
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感染地域:千葉県1例、静岡県1例(温泉)、愛知県1例(温泉)、京都府1例、大阪府1例、島根県1例
年齢群:50代(4例)、60代(1例)、80代(1例)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢10例(腸管アメーバ症8例、腸管外アメーバ症1例、腸管及び腸管外アメーバ症1例) |
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感染地域:埼玉県3例、東京都1例、愛知県1例、大阪府1例、山口県1例、韓国1例、
ベトナム・タイ1例、カンボジア1例 感染経路::経口感染2例、性的接触2例(異性間1例、異性間・同性間不明1例)、不明5例、その他1例 |
急性脳炎4例
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A型インフルエンザウイルス2例
_年齢群:4歳(1例)、7歳〔1例(死亡)〕
単純ヘルペスウイルス1例_年齢群:70代
病原体不明1例_年齢群:0歳
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クロイツフェルト・ヤコブ病2例(孤発性プリオン病古典型1例、遺伝性プリオン病家族性1例)
後天性免疫不全症候群11例(AIDS 2例、無症候9例)
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感染地域:国内10例、国外(国不明)1例
感染経路:性的接触11例(異性間3例、同性間7例、異性/同性間1例) |
梅毒2例(早期顕症I期1例、無症候1例)
風しん7例(検査診断例2例、臨床診断例5例)
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感染地域:東京都2例、長野県1例、広島県1例、国内(都道府県不明)3例
年齢群:1歳(1例)、2歳(1例)、4歳(1例)、6歳(1例)、10〜14歳(1例)、15〜19歳(2例) |
麻しん435例〔麻しん(検査診断例86例、臨床診断例327例)、修飾麻しん(検査診断例)22例〕
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感染地域:国内435例
国内の多い感染地域:神奈川県143例、北海道45例、東京都39例、福岡県37例、熊本県26例
年齢群:0歳(23例)、1歳(20例)、2歳(5例)、3歳(5例)、4歳(4例)、5〜9歳(46例)、10〜14歳(77例)、15〜19歳(97例)、20〜24歳(57例)、25〜29歳(62例)、30〜34歳(25例)、35〜39歳(8例)、40代(3例)、50代(3例)
累積報告数:2,119例〔麻しん(検査診断例534例、臨床診断例1,460例)、修飾麻しん(検査診断例)125例〕 |
(補)他に2008年第6週までに診断されたものの報告遅れとして、E型肝炎1例(感染地域:中国)、エキノコックス症1例(多包条虫_感染地域:北海道)、急性脳炎5例〔A型インフルエンザウイルス1例(3歳)、インフルエンザウイルス型不明1例(5歳)、病原体不明3例(1歳、30代、60代)〕、劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(60代.死亡)、バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例(遺伝子型VanB_菌検出検体:便)、風しん4例〔検査診断例2例(3歳1例、40代1例)、臨床診断例2例(5歳1例、10〜14歳1例)〕などの報告があった。
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◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では宮崎県(25.2)、熊本県(25.0)、大分県(24.7)、佐賀県(22.4)、福井県(19.8)、鹿児島県(18.6)、石川県(16.3)、福岡県(16.3)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症は875例の報告があり、報告数は3週連続で減少した。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の約73%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では石川県(0.62)、三重県(0.53)、青森県(0.48)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では石川県(3.5)、新潟県(3.5)、山形県(3.4)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では宮崎県(15.2)、群馬県(13.1)、富山県(13.0)、島根県(12.0)が多い。水痘の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では沖縄県(3.8)、宮崎県(3.5)、福岡県(3.1)が多い。手足口病の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では鳥取県(0.84)、愛媛県(0.70)、沖縄県(0.50)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では岩手県(0.67)、大分県(0.58)、山形県(0.50)が多い。百日咳の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では福井県(0.09)、沖縄県(0.06)、千葉県(0.05)、新潟県(0.05)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は減少した。都道府県別では大分県(0.17)、栃木県(0.09)、宮城県(0.07)、山形県(0.07)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では佐賀県(1.22)、秋田県(1.20)、高知県(0.87)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では沖縄県(2.9)、福島県(2.1)、青森県(2.0)、群馬県(2.0)が多い。
〈1月コメント〉
◆性感染症について 2008年2月12日集計分 性感染症定点数:965
(産婦人科・産科・婦人科:464、泌尿器科:398、皮膚科89、性病科14)
●月別推移
2008年1月の月別定点当たり患者報告数は、性器クラミジア感染症が2.36(男0.97、女1.39)、性器ヘルペスウイルス感染症が0.71(男0.31、女0.40)、尖圭コンジローマが0.48(男0.27、女0.21)、淋菌感染症が0.96(男0.78、女0.18)であった。男性では性器クラミジア感染症、次いで淋菌感染症が多く、女性では性器クラミジア感染症、次いで性器ヘルペスウイルス感染症が多かった(図1)
前月に比べると、男性は性器クラミジア感染症で減少し、性器ヘルペスウイルス感染症、尖圭コンジローマ、淋菌感染症で増加した。女性は、性器ヘルペスウイルス感染症で減少し、性器クラミジア感染症、尖圭コンジローマ、淋菌感染症で増加した(33〜36ページ「グラフ総覧」参照)。男女別に過去5年間の同時期と比較すると、性器クラミジア感染症は男女ともにやや少なかった。性器ヘルペスウイルス感染症は男女ともにかなり少なかった。尖圭コンジローマは女性でやや少なかった。淋菌感染症は男女ともにやや少なかった(図2)。
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図1. 各性感染症が総報告数に占める割合(1月) |
●男女別・年齢階級別
年齢群(0歳、1〜4歳、5〜69歳は5歳毎、および70歳以上)でみた定点当たり報告数のピークは、男性では性器クラミジア感染症では20〜24歳、性器ヘルペスウイルス感染症では30〜34歳、尖圭コンジローマでは25〜29歳、淋菌感染症では25〜29歳であるのに対し、女性では4疾患とも20〜24歳であり、女性の罹患年齢が男性に比べてやや若い傾向が認められた(図3:PDF参照)。また、性器クラミジア感染症、尖圭コンジローマ、淋菌感染症の3疾患は、男性では60代以降は僅かであり、女性では50代以降の報告はないか、あっても僅かである。しかし、性器ヘルペスウイルス感染症は男女ともに、50代以降の報告も少なくない。この年齢層は再発例が含まれている可能性が以前から指摘されており、2006年4月の届出基準改正により、抗体のみ陽性のものの除外に加えて「明らかな再発例は除外する」ことが明示された。しかし、報告数や年齢階級別分布において明らかな変化は見られておらず、この基準変更の周知徹底が必要と考える。
年齢群毎にみた定点当たり報告数の男女の比較では、淋菌感染症ではすべての年齢群で男性が女性よりも多かった。一方、性器クラミジア感染症では15〜29歳の3つの年齢群、性器ヘルペスウイルス感染症では15〜29歳、65〜69歳及び70歳以上の5つの年齢群、尖圭コンジローマでは15〜24歳の2つの年齢群で、女性が男性よりも多かった。ただし、性感染症定点は泌尿器科系、婦人科系および皮膚科系などの診療科から構成されており、男女の比較についてはそれらの比率の影響を受ける可能性がある。
●若年齢層での推移
感染症法が施行された1999年4月以降について、若年齢層(15〜29歳)における各疾患の定点当たり報告数を男女別・月別に(図4:PDF参照)に示した。性器クラミジア感染症と淋菌感染症は男女ともに2003年以降減少傾向がみられる。性器ヘルペスウイルス感染症と尖圭コンジローマは男性では横ばいであり、女性では2005年半ば頃から微かながら減少傾向がみられる。前月との比較では、男性は性器クラミジア感染症で減少し、他の3疾患で増加した。女性は性器ヘルペスウイルス感染症で同値であり、他の3疾患で増加した。
◆薬剤耐性菌について (2月12日集計分)
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基幹定点数(1月):469.
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●月別
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メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症
4.47(前月:4.26、前年同月:4.29)
定点当たり報告数は、例年年間を通じてほぼ一定である。1月は前月より若干増加し、過去8年間の同月との比較では最も高かった。
ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)感染症
0.83(前月:1.14、前年同月:0.90)
定点当たり報告数は、例年春から初夏にかけて(4〜6月)と冬(11、12月)に多く、夏(7〜9月)に少なく推移している。1月は前月より減少し、過去8年間の同月との比較では最も低かった。
薬剤耐性緑膿菌感染症
0.07(前月:0.08、前年同月:0.07)
定点当たり報告数は、例年後半が前半に比して多い傾向がある。1月は前月より減少し、過去8年間の同月との比較では下位に属した。
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●年齢階級別
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MRSA感染症
高齢者に多く、70歳以上が全体の68%を占めている(図1:PDF参照)
PRSP感染症
小児と高齢者に多い。5歳未満が全体の56%を占める一方、70歳以上が全体の22%を占めている(図2:PDF参照)。
薬剤耐性緑膿菌感染症
高齢者に多く、70歳以上が全体の65%を占めている(図3:PDF参照)
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●性別:女性を1 として算出した男/女比
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MRSA感染症…男:女=1.7:1
PRSP感染症…男:女=1.3:1
薬剤耐性緑膿菌感染症…男:女=2.9:1
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●都道府県別
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MRSA感染症
定点当たり報告数は福島県(10.3)、栃木県(9.3)、山口県(7.6)が多い。
PRSP感染症
定点当たり報告数は千葉県(3.9)、高知県(3.4)、大分県(3.0)が多い。
薬剤耐性緑膿菌感染症
報告総数が31件にとどまるため、都道府県別定点当たり報告数の評価は困難である。
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◆ 麻しん
麻しんは「はしか」とも呼ばれているが、麻しんウイルス(Paramyxovirus科Morbillivirus属)によって引き起こされる感染症で、39℃前後の高熱と耳介後部から始まって体の下方へと広がる赤い発疹を特徴とする全身性疾患である。空気感染(飛沫核感染)、飛沫感染、接触感染と様々な感染経路を示し、その感染力は極めて強い上に、罹患者の約3割が合併症を併発し、そのおよそ半数が肺炎である。およそ1,000例に0.5〜1例の割合で急性脳炎を発症し、精神発達遅滞等の重篤な後遺症が残るか又は死亡することがある。さらに、よりまれではあるが、亜急性硬化性全脳炎という特殊な脳炎を発症することがあり、この脳炎を発症した場合には、多くは知能障害や運動障害が進行した後、数年以内に死亡する。
2008年の1月1日から開始された麻しんの全数把握調査によると、第7週(2月11〜17日診断のもの)の麻しん患者発生報告数は2月20日現在で27都道府県から435例あり、都道府県別では神奈川県174例、東京都47例、福岡県45例、北海道44例、熊本県27例、千葉県21例、埼玉県15例、大阪府10例の順となっている(図1、図2)。とくに熊本県では、前週の報告数(6例)から大きく増加している。なお報告数は、今後報告遅れのものを含めて更に増加する可能性がある。
第1週から7週までの累積報告数は42都道府県から2,119例であり、都道府県別では神奈川県807例、福岡県280例、北海道223例、東京都197例、秋田県119例、埼玉県68例、千葉県65例、大分県56例、大阪府54例の順となっている(図3)。第1週以降、神奈川県からの報告数が突出した状態が続いているが、神奈川県を中心とした南関東地域、北海道・東北北部、福岡県を中心とした九州地域、大阪府・兵庫県の各地域において既に麻しんの流行がみられている。累積報告数を病型別にみると、臨床診断例1,460例(68.9%)、検査診断例534例(25.2%)、修飾麻しん(検査診断例)125例(5.9%)と臨床診断例が最も多くを占めている(図4)
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図1. 麻しん報告数の週別推移(2008年第1〜7週) |
図2. 麻しんの都道府県別報告状況(2008年第7週) |
図3. 麻しんの都道府県別累積報告状況(2008年第1〜7週) |
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図4. 麻しん塁積報告数の病型分類別割合(2008年第1〜7週) |
年齢群別では15〜19歳515例(24.3%)、10〜14歳487例(23.0%)、0〜4歳267例(12.6%)、20〜24歳254例(12.0%)、25〜29歳215例(10.1%)、5〜9歳189例(8.9%)の順となっている。10代の割合が47.3%とほぼ半数近くを占めており、29歳以下では90.9%、39歳以下では97.8%となっている(図5)。各年齢別の報告数では、14歳148例、13歳133例、16歳132例、15歳130例の順であり、13〜16歳の年齢を中心に麻しんの発生がみられている(図6)。
麻しん含有ワクチンの接種歴別の報告数は、全体では、接種歴なし1,084例(51.2%)、1回接種447例(21.1%)、2回接種19例(0.9%)、接種歴不明569例(26.9%)となっており、接種歴なしが過半数を占めている状態が続いている(図7)。年齢別にみると、10代までは麻しん報告例中の多数がワクチン接種歴なしであるが、20代以降では接種歴不明者の方が多くなっている(図6)。脳炎の合併は3例で報告されているが(第4週;10代の女性、20代の男性、第5週;30代の男性)、これらの症例はいずれも麻しん含有ワクチンの接種歴はなかった。
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図5. 麻しん累積報告数の年齢群別割合(2008年第1〜7週) |
図6. 麻しん累積報告数のワクチン接種歴別年齢別分布(2008年第1〜7週) |
図7. 麻しん累積報告数のワクチン接種歴別割合(2008年第1〜7週) |
2008年第1週以降の麻しんの報告状況をみると、神奈川県からの麻しん累積報告数(807例、全国の累積報告数2,119例の38.1%)が突出した状態が続いている。福岡県、北海道、東京都、秋田県、大分県等に加えて、2007年に麻しんの流行がみられた埼玉県、千葉県、大阪府等においても第5週以降に報告数の増加がみられている。いくつかの自治体や学校、大学等においては、既に麻しんの流行を抑制または予防するための対策がとられつつあるものの、麻しんの流行が本格化するのは例年春季から夏季にかけてであり、現状のままでは、昨年と同様3月から4月にかけて麻しんの流行が更に拡大する可能性が高い。
日本を含むWHO西太平洋地域では、2012年が麻しん排除(elimination)の目標年として設定され、国際的な責務として各国に対策が求められている。我が国における対策としては、(1)積極的な感受性者対策、すなわち95%以上の予防接種率の達成・維持のための取り組み《1歳代(第1期)、小学校就学前1年間(第2期)、さらに2008年4月1日より5年間の期限付きで実施される、中学校1年生相当世代(第3期)、高校3年生相当世代(第4期)への定期接種としての予防接種計画》、(2)2008年1月1日からの全数把握制度による麻しんサーベイランス、(3)麻しん発生時の迅速な対応、が対策の三本柱として実施されつつある。これらを可能な限り円滑に導入・実施することを目的として、国は「国の麻しん対策推進会議」を設置し、「都道府県を主体とした麻しん対策会議」の設立等をはじめとした都道府県レベルの活動支援を実践することとしている。2月12日には、第1回の国の麻しん対策推進会議が開催された。また2月中旬から下旬にかけて、各地の行政機関や教育関連機関を対象に、麻しん対策に関する情報伝達を主な目的として、麻しん対策ブロック会議が全国7つの地域で開催された。麻しん排除のためには、関係各機関との意思統一とより一層の連携が重要である。
以下に、麻しん関連情報として感染症情報センターのホームページに掲載されている主な項目とそのURLを挙げる。
麻しん対策として活用いただければ幸いである。
■麻疹(はしか):http://idsc.nih.go.jp/disea
se/measles/index.html
□緊急情報「2012年麻疹排除(Elimination)に向けて」
●「麻疹」の届出基準・届け出様式、「風疹」の届出基準・届出様式、ポスター
●2008年4月1日以降の予防接種スケジュール
●2008〜2012年度麻疹・風疹の定期予防接種対象者
□対策・ガイドラインなど
●麻疹の現状と今後の麻疹対策について
●都道府県における麻しん対策会議のガイドライン(案)
●麻しん排除に向けた積極的疫学調査ガイドライン第二版
●医師による麻しん届出ガイドライン第二版
●医療機関での麻疹対応ガイドライン第二版
●保育所・幼稚園・学校等における麻しん対応ガイドライン第二版
□国内情報
●注目すべき感染症/速報
●麻しん発生状況(速報グラフ)
●病原微生物検出情報[IASR](麻疹特集・速報、ウイルス分離・検出状況他)
●平成19年度定期の予防接種(麻しん風しん第2期)の実施状況の調査結果について(第1 報)
●わが国の健常人における麻疹PA抗体保有率 □関連情報
●予防接種法施行令の一部を改正する政令の一部を改正する政令及び予防接種法施行 規則及び予防接種実施規則の一部を改正する省令
●麻しんに関する特定感染症予防指針
■Q&A:http://idsc.nih.go.jp/disease/measles/QA.html
■予防接種の話「麻疹」:
http://idsc.nih.go.jp/vaccine/b-measles.html
■年齢別麻疹、風疹、MMRワクチ
ン接種率:http://idsc.nih.go.jp/vaccine/
atopics/atpcs001.html
■感染症の話「麻疹」:http://idsc.ni
h.go.jp/idwr/kansen/k03/k03_03/k03_03.html
■麻疹発生DB(データベース):
http://idsc.nih.go.jp/disease/measles/meas-db.html
■「麻疹・風疹ワクチンなぜ2回接種なの
?」ポスター:http://idsc.nih.go.jp/vaccine/cpn01.html
■「麻疹風疹混合ワクチンを1歳のお誕生日のプレ
ゼントにしましょう」ポスター:http://idsc.nih.go.jp/vaccine/cpn04.html
■「小学校入学準備に2回目の麻疹・風疹ワクチンを!」ポスタ
ー:http://idsc.nih.go.jp/vaccine/cpn07.html
注目すべき感染症
◆ インフルエンザ
インフルエンザ(Influenza)は、インフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症である。1〜3日間の潜伏期間を経て、突然に発熱(38℃以上の高熱)、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛・関節痛などが出現し、鼻水・咳などの呼吸器症状がこれに続く。通常は1週間前後の経過で軽快するが、いわゆる「かぜ」と比べて全身症状が強いのが特徴である。温帯地域より緯度の高い国々での流行は冬季にあり、北半球では1〜2月頃、南半球では7〜8月頃が流行のピークとなる。また、熱帯・亜熱帯地域では、雨季を中心としてインフルエンザが発生する。わが国のインフルエンザの発生は、11月下旬から12月上旬頃に始まり、翌年の1〜3月頃に患者数が増加し、4〜5月にかけて減少していくパターンを示すが、流行の程度とピークの時期はその年によって異なる。今シーズン(2007/08年シーズン)は、2007年第47週からと例年よりも早期にインフルエンザの流行が開始している。
感染症発生動向調査によると、2008年第7週のインフルエンザ定点当たり報告数は9.51(報告数45,278)と2週連続で減少した(図1)。都道府県別では宮崎県(25.2)、熊本県(25.0)、大分県(24.7)、佐賀県(22.4)、福井県(19.8)、鹿児島県(18.6)、石川県(16.3)、福岡県(16.3)、岩手県(15.9)の順となっており、九州地域に報告数の多い県が目立つ(図2)。シーズン開始の2007年第36週から2008年第7週までの定点当たり累積報告数は105.5(累積報告数502,685)であり、年齢別では5〜9歳39.0%、0〜4歳24.2%、10〜14歳13.3%、30〜39歳8.1%の順となっている(図3)。2007年第36週以降のインフルエンザウイルスの分離報告数は全国47都道府県から2,134件で、内訳はAH1亜型1,969件(92.3%)、AH3亜型126件(5.9%)、B型39件(1.8%)となっており、流行の主流がAH1亜型である状態が続いている(図4)
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図1. インフルエンザの年別・週別発生状況(1998年〜2008年第7週)
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図2. インフルエンザの都道府県別報告状況(2008年第7週)
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図3. 2007/08シ−ズンのインフルエンザウイルス塁積報告数の年齢別割合(2007年第36週〜2008第7週)
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図4. インフルエンザウイルス型別分離・検出報告割合(2007年第36週〜2008年第7週)
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インフルエンザの定点当たり報告数は2週連続で減少しており、今シーズンの流行はそのピークを越えたものと思われる。今シーズン最も報告数が多かったのは2008年第5週(定点当たり報告数17.62)であるが、これは過去10シーズンのそれぞれの流行のピークと比較すると2000/01年シーズン(2001年第11週、定点当たり報告数10.59)に次ぐ低い報告数である。しかし、現在まだ九州地域を中心にインフルエンザの流行がみられており、今後ともインフルエンザの発生動向には注意が必要である。
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