発生動向総覧
※2008年1月からの省令改正に伴い、疾病の追加および並び順を一部変更しました。
〈第12週コメント〉 3月26日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 228例 |
3類感染症: |
コレラ1例(感染地域:長野県)
細菌性赤痢5例(感染地域:ベトナム1例、カンボジア1例、マリ1例、バングラデシュ/インド/ネパール1例、タイ/カンボジア/インド1例)
腸管出血性大腸菌感染症24例(有症者14例、HUSなし)
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感染地域:大分県6例*、大阪府2例、茨城県1例、静岡県1例、愛知県1例、島根県1例、宮崎県1例、国内(都道府県不明)2例、オーストラリア8例**、オーストラリア/米国/メキシコ1例
*第11週の1例とともに保育園に関連した集団感染、
**第11週の63例とともに、同一修学旅行での集団感染
年齢群:0歳(1例)、1歳(1例)、2歳(1例)、3歳(2例)、4歳(1例)、5歳(1例)、10代(10例)、20代(2例)、30代(3例)、40代(1例)、50代(1例)
血清型・毒素型:O26 VT1(9例)、O157 VT1・VT2(11例)、O157 VT2(2例)、不明(2例)
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腸チフス(感染地域:兵庫県) |
4類感染症: |
A型肝炎1例(感染地域:大阪府)
デング熱1例(感染地域:フィリピン)
マラリア1例(熱帯熱_感染地域:マラウイ)
レジオネラ症5例(肺炎型5例)
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感染地域:東京都1例、愛知県1例、三重県1例、大阪府1例、国内(都道府県不明)1例
年齢群:50代(2例)、70代(2例)、80代(1例) |
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5類感染症: |
アメーバ赤痢5例(腸管アメーバ症4例、腸管外アメーバ症1例) |
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感染地域:東京都1例、岐阜県1例、静岡県1例、愛媛県1例、フランス1例
感染経路:経口感染2例、性的接触2例(同性間1例、異性間・同性間不明1例)、不明1例 |
ウイルス性肝炎2例〔B型肝炎2例_感染経路:性的接触(異性間)1例、不明1例〕
急性脳炎3例
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ヘルペスウイルス1例_年齢群:0歳
病原体不明2例_年齢群:2歳(1例)、10代(1例.死亡) |
クロイツフェルト・ヤコブ病1例(孤発性プリオン病古典型)
劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(年齢群:2歳)
後天性免疫不全症候群11例(無症候7例、その他2例、AIDS 2例)
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感染地域:国内11例
感染経路:性的接触11例(異性間3例、同性間7例、異性/同性間1例) |
ジアルジア症2例(感染地域:岐阜県1例、国外(国不明)1例)
髄膜炎菌性髄膜炎1例 |
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感染地域:北海道
年齢群:6歳 |
梅毒7例(早期顕症II期2例、晩期顕症1例、無症候4例)
バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例(遺伝子型:VanC_菌検出検体:血液)
風しん5例(検査診断例2例、臨床診断例3例)
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感染地域:栃木県1例、東京都1例、神奈川県1例、静岡県1例、兵庫県1例
年齢群:5歳(1例)、10〜14歳(1例)、20〜24歳(1例)、35〜39歳(1例)、40代(1例) |
麻しん331例〔麻しん(検査診断例72例、臨床診断例228例)、修飾麻しん(検査診断例31例)〕
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感染地域:国内331例
国内の多い感染地域:神奈川県119例、東京都42例、千葉県27例、福岡県19例、北海道18例、広島県13例、埼玉県12例、大阪府10例
年齢群:0歳(22例)、1歳(10例)、2歳(4例)、3歳(5例)、4歳(1例)、5〜9歳(30例)、10〜14歳(55例)、15〜19歳(81例)、20〜24歳(61例)、25〜29歳(28例)、30〜34歳(16例)、35〜39歳(8例)、40代(9例)、70代(1例)
累積報告数:4,648例〔麻しん(検査診断例1,237例、臨床診断例3,030例)、修飾麻しん(検査診断例381例) |
(補)他に2008年第11週までに診断されたものの報告遅れとして、腸チフス1例(感染地域:インドネシア)、レジオネラ症2例〔感染地域:山形県1例(温泉)、静岡県1例(温泉)〕、劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(70代)などの報告があった。
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◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は第6週以降減少が続いている。都道府県別では沖縄県(17.2)、宮崎県(10.2)、長崎県(8.2)、佐賀県(7.5)、福岡県(7.3)、長野県(6.4)、大分県(6.2)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症は396例の報告があり、報告数は第5週以降減少が続いている。年齢別では1歳以下の報告数が全体の約76%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では青森県(0.86)、長崎県(0.75)、三重県(0.64)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では山形県(4.5)、北海道(4.3)、山口県(4.2)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してやや多い。都道府県別では宮崎県(21.7)、大分県(18.1)、山形県(16.2)、熊本県(15.7)が多い。水痘の定点当たり報告数は横ばいであった。都道府県別では沖縄県(5.7)、愛媛県(2.7)、鹿児島県(2.7)が多い。手足口病の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では鳥取県(1.37)、宮崎県(1.25)、鹿児島県(0.84)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では新潟県(0.72)、大分県(0.42)、沖縄県(0.41)が多い。百日咳の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では福井県(0.18)、千葉県(0.16)、栃木県(0.11)、広島県(0.08)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は増加した。都道府県別では熊本県(0.35)、大分県(0.25)、山口県(0.24)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では高知県(1.77)、秋田県(1.50)、群馬県(0.92)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では福島県(2.14)、群馬県(1.88)、沖縄県(1.71)が多い。
◆ 麻しん
麻しんは「はしか」とも呼ばれているが、麻しんウイルス(Paramyxovirus科Morbillivirus属)によって引き起こされる感染症で、39℃前後の高熱と耳介後部から始まって体の下方へと広がる赤い発疹を特徴とする全身性疾患である。麻しんに対して免疫を持たない者が感染した場合、典型的な臨床経過としては10〜12日間の潜伏期を経て発症し、カタル期(2〜4日間)、発疹期(3〜5日間)、回復期へと至る。しかしながら麻しんの発症による免疫力や体力の低下により、経過中に肺炎(ウイルス性、細菌性)、脳炎、中耳炎、心筋炎等の様々な合併症がみられることも少なくない。また、麻しん罹患者10万例に1例と発生頻度は低いものの、罹患後7〜10年の期間を経て予後不良の中枢神経疾患である亜急性硬化性全脳炎(SSPE)を発症することがある。麻しんは接触感染、飛沫感染、空気感染(飛沫核感染)のいずれの感染経路でも感染するが、発症した場合に麻しんに特異的な治療方法はない。手洗い、マスク等の感染対策も十分に効果的な予防手段とは言えず、唯一の有効な予防方法はワクチンの接種によって麻しんに対する免疫を予め獲得しておくことである。
2008年の1月1日から開始された麻しんの全数把握調査によると、第12週(3月17〜23日診断のもの)の麻しん患者発生報告数は3月26日現在で24都道府県から331例あり、都道府県別では神奈川県138例、東京都46例、千葉県27例、福岡県21例、北海道18例、埼玉県14例、大阪府、広島県各11例の順であった(図1、図2)。これらの報告数は、今後報告遅れのものを含めて更に増加する可能性がある。第1週から第12週までの累積報告数は、徳島県、高知県を除く45都道府県から4,648例であり、都道府県別では神奈川県1,801例、東京都567例、福岡県476例、北海道396例、千葉県245例、埼玉県188例、秋田県150例、大阪府118例、熊本県73例、大分県69例の順となっている(図3)。神奈川県、東京都、千葉県、埼玉県の南関東地域、福岡県、北海道では患者発生が継続してみられている。
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図1. 麻しん報告数の週別推移(2008年第1〜12週) |
図2. 麻しんの都道府県別報告状況(2008年第12週) |
図3. 麻しんの都道府県別累積報告状況(2008年第1〜12週) |
病型別累積報告数は、臨床診断例3,030例(65.2%)、検査診断例1,237例(26.6%)、修飾麻しん(検査診断例)381例(8.2%)となっており、臨床診断例が最多である(図4)。
年齢群別では15〜19歳1,139例(24.5%)、10〜14歳892例(19.2%)、20〜24歳638例(13.7%)、0〜4歳612例(13.2%)、25〜29歳492例(10.6%)、5〜9歳384例(8.3%)の順となっている。10〜20代前半からの報告割合が半数以上を占めており、30歳未満からの報告数が全体の90%近くを占めている(図5)。各年齢別の報告数をみると、16歳284例、15歳258例、14歳257例、17歳247例、0歳233例、13歳208例、1歳201例、20歳190例の順であり、まだ麻しんワクチン定期接種の対象とならない0歳児や、発病者の多くがワクチンの接種を受ける前に麻しんウイルスに感染していると考えられる1歳児の患者を除いては、13〜17歳が現在の患者発生の中心である状態が続いている(図6)。
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図4. 麻しん塁積報告数の病型分類別割合(2008年第1〜12週) |
図5. 麻しん累積報告数の年齢群別割合(2008年第1〜12週) |
麻しん含有ワクチンの接種歴別の報告数は、全体では接種歴なし2,213例(47.6%)、1回接種1,096例(23.6%)、2回接種38例(0.8%)、接種歴不明1,301例(28.0%)となっており、接種歴がない者が最も多く、次いで接種歴不明者、1回接種者の順となっている(図7)。年齢が高くなる程発病者中に占める接種歴不明者の割合が多い(図6)
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図6. 麻しん累積報告数のワクチン接種歴別年齢別分布(2008年第1〜12週) |
図7. 麻しん累積報告数のワクチン接種歴別割合(2008年第1〜12週) |
脳炎合併例はこれまでに4例報告されており、すべて10代以上(第4週;10代女性、20代男性、第5週;30代男性、第9週;30代男性)であり、いずれも麻しん含有ワクチンの接種歴はなかた。第1〜12週までに死亡例の報告はない。
2008年は1月から北海道、秋田県、神奈川県、福岡県で麻しんの流行がみられたが、その後秋田県を除く他の地域の麻しんの流行は継続し、特に神奈川県の流行は既に東京都、千葉県、埼玉県の周辺地域に拡大しつつある。今後春期休暇を経て、4月中旬〜5月の本格的な麻しんの流行時期を迎えることとなるが、現在の流行地域とその周辺地域での流行の拡大に加えて、若年人口の流入と移動が活発な他の大都市圏においても新たな流行が発生してくる可能性が高い。中学校、高等学校、大学等、現在の好発年齢層の集団生活施設内で麻しん患者が発生した場合、初発例の段階で適切な対策をとらなければその後の集団発生を招く可能性が高く、集団発生が起こった段階で当該施設において感染拡大防止策を実施しても、周辺地域への感染拡大を食い止めることは不可能である。そして地域的な流行に発展した場合は、秋田県大館市、神奈川県横須賀市、横浜市が実施しているように広範な年齢層に対するワクチンの接種勧奨を軸とする自治体を単位とした感受性者対策のみが、今のところわが国では効果を期待できる唯一の対抗手段である。その上、流行抑制の効果をあげるためには短期間で免疫保有者の割合を高めなければならず、多大の労力と経費を要することに加えて、大館市が実施したような対象者への強力なワクチン接種勧奨及び啓発が必要となる(本号17ページ「速報」参照)。
2008年4月1日より、1回しかワクチンを接種していない年齢層に対する補足的ワクチン接種を目的とした5年間の期限付き措置として、第3期(中学校1年生相当年齢)、第4期(高校3年生相当年齢)の定期予防接種が始まる。接種対象者がこの機会を逃すことなく、ワクチン接種を受けることができるよう、対象者自身および保護者への正確な情報の伝達とワクチン接種に関する啓発、教育機関と保健衛生部局との緊密な連携と学校現場での積極的な接種勧奨が非常に重要である。
以下に、麻しん関連情報として感染症情報センターのホームページに掲載されている主な項目とそのURLを挙げる。
麻しん対策として活用いただければ幸いである。
■麻疹(はしか):http://idsc.nih.go.jp/disease/measles/index.html
□緊急情報「2012年麻疹排除(Elimination)に向けて」
●「麻疹」の届出基準・届け出様式、「風疹」の届出基準・届出様式、ポスター
●2008年4月1日以降の予防接種スケジュール
●2008〜2012年度麻疹・風疹の定期予防接種対象者
□対策・ガイドラインなど
●麻疹の現状と今後の麻疹対策について ●都道府県における麻しん対策会議のガイドライン ●学校における麻しん対策ガイドライン
●麻しん排除に向けた積極的疫学調査ガイドライン第二版
●医師による麻しん届出ガイドライン第二版
●医療機関での麻疹対応ガイドライン第二版
●「麻しん対策ブロック会議」関連資料等
□国内情報
●注目すべき感染症/速報
●麻しん発生状況(速報グラフ)
●病原微生物検出情報[IASR](麻疹特集・速報、ウイルス分離・検出状況他)
●平成19年度定期の予防接種(麻しん風しん第2期)の実施状況の調査結果について(第1 報)
●わが国の健常人における麻疹PA抗体保有率
□関連情報
●予防接種法施行令の一部を改正する政令の一部を改正する政令及び予防接種法施行 規則及び予防接種実施規則の一部を改正する省令
●麻しんに関する特定感染症予防指針
●予防接種法施行令の一部を改正する政令 〜定期予防接種対象者に関する改正〜
●定期の予防接種の実施についての一部改正 〜定期(一類疾病)の予防接種実施要領の改正〜
■Q&A:http://idsc.nih.go.jp/disease/measles/QA.html
■予防接種の話「麻疹」:
http://idsc.nih.go.jp/vaccine/b-measles.html
■年齢別麻疹、風疹、MMRワクチ
ン接種率:http://idsc.nih.go.jp/vaccine/
atopics/atpcs001.html
■感染症の話「麻疹」:http://idsc.ni
h.go.jp/idwr/kansen/k03/k03_03/k03_03.html
■麻疹発生DB(データベース):
http://idsc.nih.go.jp/disease/measles/meas-db.html
■「麻疹・風疹ワクチンなぜ2回接種なの
?」ポスター:http://idsc.nih.go.jp/vaccine/cpn01.html
■「麻疹風疹混合ワクチンを1歳のお誕生日のプレ
ゼントにしましょう」ポスター:http://idsc.nih.go.jp/vaccine/cpn04.html
■「小学校入学準備に2回目の麻疹・風疹ワクチンを!」ポスタ
ー:http://idsc.nih.go.jp/vaccine/cpn07.html
■麻疹教育啓発ビデオ「はしかから身を守るために」:
http://idsc.nih.go.jp/disease/measles/Video/measlesVideo.html
■Surveillance, Focus, Measles“Measles in Japan as of end of week 8(24 February 2008)”:
http://idsc.nih.go.jp/disease/measles_e/idwr200808.html
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