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発生動向総覧 〈第17週コメント〉 4月30日集計分 ◆全数報告の感染症 注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。 インフルエンザ: 定点当たり報告数は第6週以降減少が続いている。都道府県別では沖縄県(5.8)、佐賀県(2.6)、長野県(1.3)、福島県(1.3)、宮崎県(1.2)、石川県(1.2)が多い。 ◆ 麻しん 麻しんは「はしか」とも呼ばれ、麻しんウイルス(Paramyxovirus科Morbillivirus属)によって引き起こされる感染症で、39℃前後の高熱と耳介後部から始まって体の下方へと広がる赤い発疹を特徴とする全身性疾患である。麻しんに対して免疫を持たない者が感染した場合、典型的な臨床経としては10〜12日間の潜伏期を経て発症し、カタル期(2〜4日間)、発疹期(3〜5日間)、回復期へと至る。一方、ヒトの体内に入った麻しんウイルスは、免疫を担う全身のリンパ組織を中心に増殖し、一過性に強い免疫不全状態を生じるため、麻しんウイルスそのものによるものだけでなく、細菌の二次感染による肺炎や中耳炎などの合併症も生じうる。また、発生頻度は低いものの、麻しんウイルスによる脳炎や、罹患後7〜10年の期間を経て発症する亜急性硬化性全脳炎(SSPE)などの合併症もある。麻しんは接触感染、飛沫感染、空気感染(飛沫核感染)のいずれの感染経路でも感染するが、発症した場合に麻しんに特異的な治療方法はない。手洗い、マスク等の感染対策も十分に効果的な予防手段とは言えず、唯一の有効な予防方法はワクチンの接種によって麻しんに対する免疫を予め獲得しておくことである。
年齢群別では15〜19歳1,598例(23.9%)、10〜14歳1,252例(18.7%)、20〜24歳908例(13.6%)、0〜4歳900例(13.5%)、25〜29歳712例(10.7%)、5〜9歳581例(8.7%)の順となっている。10〜20代前半からの報告割合が半数以上を占めており、30歳未満からの報告数が全体の90%近くを占めている(図5)。各年齢別の報告数をみると、16歳383例、15歳372例、14歳354例、0歳341例、17歳332例、1歳305例、13歳295例、20歳265例の順であり、まだ麻しんワクチン定期接種の対象とならない0歳児や、発病者の多くがワクチンの接種を受ける前に麻しんウイルスに感染していると考えられる1歳児の患者を除いては、13〜17歳が現在の患者発生の中心である状態が続いている(図6)。 麻しん含有ワクチンの接種歴別の報告数は、全体では接種歴なし3,135例(46.9%)、1回接種1,573例(23.5%)、2回接種52例(0.8%)、接種歴不明1,921例(28.8%)となっており、接種歴がない者が最も多く、次いで接種歴不明者、1回接種者の順となっている(図7)。年齢が高くなる程発病者中に占める接種歴不明者の割合が多い(図6)。
脳炎合併例はこれまでに5例報告されており、すべて10代以上であり、このうち麻しん含有ワク チンの接種歴の無いものが4例、接種歴不明が1例(40代女性)だった。第1〜17週までに死亡例 の報告はない(表)。
2008年は1月から北海道、秋田県、神奈川県、福岡県で麻しんの流行がみられたが、その後秋田県を除く他の地域の麻しんの流行は継続し、現在に至っている。ほんとんどの中学校・高校が春期休暇中であった第14週には、麻しんの報告数は一時的に減少したが、第15週には再び増加がみられている。第16、17週の報告数も、4月30日現在では減少したかにみえているが、今後遅れて報告される分が追加されると増加に転じると思われる。2007年には4月中旬〜5月に本格的な麻しんの流行時期を迎えたが、2008年も、若年人口の流入と移動が活発な大都市圏を中心に、流行の継続や新たな流行が発生してくる可能性が高い。その一方で、2008年4月1日より、1回しかワクチンを接種していない年齢層に対する補足的ワクチン接種を目的とした5年間の期限付き措置として、第3期(中学校1年生相当年齢)、第4期(高校3年生相当年齢)の定期予防接種が始まり、中学校、高校などでは、麻しん未罹患者や麻しん含有ワクチン未接種者の把握が行われるようになった。さらに、一部の大学では、新入生などを対象に、麻しんに対する免疫状態を把握し、ワクチン接種を推奨するといった対策を実施し始めた。現在の流行の中心の年齢層に対する、これらの感受性者対策が効を奏せば、2007年に比較して、全体の流行の規模が抑制される可能性もある。 麻しんは、現代の日本においても、重篤な病態を引き起こす可能性のある感染症であることに変わりはなく、特にワクチン接種の対象にならない0歳児や、免疫低下を来たす基礎疾患を持つ者にとっては今もなお、「命さだめ」の病といえる。個人の感染予防だけではなく、これらのワクチンを接種できない人々を守るためにも、未罹患、未接種、1回のみ接種の者は、有効な予防手段であるワクチンの接種を受けることが勧められる。また、ワクチン接種を実施する自治体、医療機関等は、その安全な実施のために十分な配慮をすることが必要である。 以下に、麻しん関連情報として感染症情報センターのホームページに掲載されている主な項目とそのURLを挙げる。 麻しん対策として活用いただければ幸いである。 ■麻疹(はしか):http://idsc.nih.go.jp/disease/measles/index.html □緊急情報「2012年麻疹排除(Elimination)に向けて」 ●「麻疹」の届出基準・届出様式、「風疹」の届出基準・届出様式、ポスター ●2008年4月1日以降の予防接種スケジュール ●2008〜2012年度麻疹・風疹の定期予防接種対象者 ●第3期・第4期予防接種勧奨リーフレット □対策・ガイドラインなど ●麻疹の現状と今後の麻疹対策について ●都道府県における麻しん対策会議のガイドライン ●学校における麻しん対策ガイドライン ●麻しん排除に向けた積極的疫学調査ガイドライン第二版 ●医師による麻しん届出ガイドライン第二版 ●医療機関での麻疹対応ガイドライン第二版 ●「麻しん対策ブロック会議」関連資料等 □国内情報 ●注目すべき感染症/速報 ●麻しん発生状況(速報グラフ) ●麻しん施設別発生状況(学校欠席者数) ●病原微生物検出情報[IASR](麻疹特集・速報、ウイルス分離・検出状況他) ●平成19年度定期の予防接種(麻しん風しん第2期)の実施状況の調査結果について(第1報) ●わが国の健常人における麻疹PA抗体保有状況 □関連情報 ●麻しんに関する特定感染症予防指針 ●予防接種法施行令の一部を改正する政令 〜定期予防接種対象者に関する改正〜 ●「定期の予防接種の実施について」の一部改正 〜定期(一類疾病)の予防接種実施要領の改正〜 ■Q&A:http://idsc.nih.go.jp/disease/measles/QA.html ■予防接種の話「麻疹」:http://idsc.nih.go.jp/vaccine/b-measles.html ■年齢別麻疹、風疹、MMRワクチン接種率:http://idsc.nih.go.jp/vaccine/atopics/atpcs001.html ■感染症の話「麻疹」:http://idsc.nih.go.jp/idwr/kansen/k03/k03_03/k03_03.html ■麻疹発生DB(データベース):http://idsc.nih.go.jp/disease/measles/meas-db.html ■「麻疹・風疹ワクチンなぜ2回接種なの?」ポスター:http://idsc.nih.go.jp/vaccine/cpn01.html ■「麻疹風疹混合ワクチンを1歳のお誕生日のプレゼントにしましょう」ポスター: http://idsc.nih.go.jp/vaccine/cpn04.html ■「小学校入学準備に2回目の麻疹・風疹ワクチンを!」ポスター: http://idsc.nih.go.jp/vaccine/cpn07.html ■麻疹教育啓発ビデオ「はしかから身を守るために」: http://idsc.nih.go.jp/disease/measles/Video/measlesVideo.html ■Surveillance, Focus, Measles“Measles update in Japan as of end of week 12(23 March2008)”: http://idsc.nih.go.jp/disease/measles_e/idwr200812.html
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