発生動向総覧
※2008年5月12日の法改正に伴い、疾病の名称および並び順を一部変更しました。
〈第20週コメント〉 5月21日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 291例 |
3類感染症: |
細菌性赤痢4例〔感染地域:国内(都道府県不明)3例、カンボジア1例〕
腸管出血性大腸菌感染症53例(有症者41例、HUSなし)
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感染地域:岐阜県7例、大阪府5例、福岡県4例、北海道2例、福井県2例、千葉県2例、長野県2例、愛知県2例、三重県2例、広島県2例、宮崎県2例、岩手県1例、山形県1例、神奈川県1例、富山県1例、石川県1例、静岡県1例、滋賀県1例、兵庫県1例、奈良県1例、鳥取県1例、熊本県1例、大分県1例、国内(都道府県不明)9例
年齢群:1歳(2例)、3歳(1例)、4歳(3例)、5歳(1例)、6歳(2例)、7歳(2例)、9歳(1例)、10代(12例)、20代(10例)、30代(5例)、40代(1例)、50代(8例)、60代(3例)、70代(2例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2( 21例)、O157 VT2( 11例)、O26 VT(10例)O157 VT(1例)、O91 VT(2例)、O103 VT1(1例)、O111 VT1・VT2(1例)、O165 VT2(1例)、その他・不明(5例)
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腸チフス1例(感染地域:ベトナム) |
4類感染症: |
A型肝炎1例(感染地域:東京都)
つつが虫病5例(感染地域:秋田県2例、新潟県2例、福島県1例)
デング熱3例(感染地域:タイ1例、インドネシア2例)
レジオネラ症10例(肺炎型10例)
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感染地域:長野県2例(うち1例温泉)、茨城県1例、群馬県1例(温泉)、埼玉県1例(温泉)、岐阜県1例、愛知県1例、沖縄県1例、国内(都道府県不明)2例
年齢群:30代(1例)、40代(4例)、50代(2例)、60代(1例)、70代(2例)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢4例(腸管アメーバ症4例) |
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感染地域:長野県2例、宮城県1例、国内(都道府県不明)1例
感染経路:性的接触2例(同性間1例、異性間・同性間不明1例)、経口感染1例、不明1例
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クロイツフェルト・ヤコブ病2例(孤発性プリオン病古典型2例)
劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例〔年齢群:70代(死亡)〕
後天性免疫不全症候群13例(無症候9例、AIDS 4例) |
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感染地域:国内11例、タイ1例、国外(国不明)1例
感染経路:性的接触10例(異性間1例、同性間8例、異性/同性間1例)、性的接触(異性間)/静注薬物使用1例、不明2例
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髄膜炎菌性髄膜炎1例
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感染地域:東京都
年齢群:10代
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梅毒10例(早期顕症I期3例、早期顕症II期2例、晩期顕症1例、先天梅毒1例、無症候3例)
風しん5例(検査診断例1例、臨床診断例4例)
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感染地域:神奈川県2例、高知県1例、長崎県1例、熊本県1例
年齢群:2歳(1例)、5歳(2例)、10〜14歳(1例)、25〜29歳(1例)
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麻しん302例〔麻しん(検査診断例75例、臨床診断例191例)、修飾麻しん(検査診断例36例)〕
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感染地域:国内301例、栃木県/アフガニスタン1例
国内の多い感染地域:北海道104例、神奈川県61例、東京都20例、埼玉県16例、千葉県15例、静岡県15例、岡山県12例
年齢群:0歳(19例)、1歳(9例)、2歳(4例)、3歳(4例)、4歳(4例)、5〜9歳(31例)、10〜14歳(54例)、15〜19歳(69例)、20〜24歳(48例)、25〜29歳(27例)、30〜34歳(18例)、35〜39歳(7例)、40代(5例)、50代(3例)
累積報告数:8,073例〔麻しん(検査診断例2,199例、臨床診断例5,222例)、修飾麻しん(検査診断例652例)〕
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(補)他に2008年第19週までに診断されたものの報告遅れとして、細菌性赤痢4例(感染地域:福岡県2例、インド1例、ギニア1例)、腸チフス1例(感染地域:インドネシア)、日本紅斑熱1例(感染地域:愛媛県)、ライム病1例(感染地域:福岡県)、急性脳炎2例〔A型インフルエンザウイルス1例(5歳)、病原体不明1例(30代)〕、バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例(遺伝子型:不明_菌検出検体:血液)、劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(70代)、風しん4例〔検査診断例1例、臨床診断例3例.感染地域:北海道1例、東京都1例、大分県1例、国内(都道府県不明)1例.年齢群:1歳(1例)、15〜19歳(1例)、25〜29歳(1例)、40代(1例)〕などの報告があった。
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◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は増加した。都道府県別では沖縄県(3.48)、福島県(0.65)、岡山県(0.54)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症は151例の報告があり、報告数は増加した。年齢別では1歳以下の報告数が全体の約64%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では石川県(1.24)、大分県(1.11)、福井県(1.05)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してやや多い。都道府県別では鳥取県(6.8)、埼玉県(4.8)、山形県(4.4)、千葉県(4.4)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では福井県(12.5)、富山県(12.3)、滋賀県(10.6)が多い。水痘の定点当たり報告数は16週以降増加が続いている。都道府県別では福井県(4.0)、千葉県(3.3)、山口県(3.0)、沖縄県(3.0)、新潟県(3.0)が多い。手足口病の定点当たり報告数は第15週以降増加が続いている。都道府県別では宮崎県(6.9)、長崎県(3.8)、鹿児島県(3.0)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では新潟県(0.82)、大分県(0.78)、岩手県(0.60)が多い。百日咳の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では愛媛県(0.70)、広島県(0.63)、山口県(0.38)、福井県(0.36)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は増加した。都道府県別では熊本県(1.94)、大分県(1.53)、石川県(0.93)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は3週連続で増加した。都道府県別では佐賀県(2.43)、岐阜県(1.87)、宮崎県(1.80)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では福島県(2.14)、群馬県(1.88)、沖縄県(1.71)が多い。
〈4月コメント〉
◆性感染症について 2008年5月12日集計分 性感染症定点数:963
(産婦人科・産科・婦人科:463、泌尿器科:396、皮膚科90、性病科14)
●月別推移
2008年4月の月別定点当たり患者報告数は、性器クラミジア感染症が2.28(男1.05、女1.23)、性器ヘルペスウイルス感染症が0.68(男0.29、女0.39)、尖圭コンジローマが0.49(男0.27、女0.22)、淋菌感染症が0.83(男0.69、女0.14)であった。男性では性器クラミジア感染症、次いで淋菌感染症が多く、女性では性器クラミジア感染症、次いで性器ヘルペスウイルス感染症が多かった(図1)
前月に比べると、男性では性器クラミジア感染症、性器ヘルペスウイルス感染症、淋菌感染症は増加し、尖圭コンジローマは減少した。女性では4疾患すべてで減少した(28〜31ページ「グラフ総覧」参照)。
男女別に過去5年間の同時期と比較すると、性器クラミジア感染症は男性ではやや少なく、女性ではかなり少なかった。性器ヘルペスウイルス感染症は男女ともにかなり少なかった。尖圭コンジローマと淋菌感染症は男女ともにやや少なかった(図2)。
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図1. 各性感染症が総報告数に占める割合(4月) |
●男女別・年齢階級別
年齢群(0歳、1〜4歳、5〜69歳は5歳毎、および70歳以上)でみた定点当たり報告数のピークは、男性では性器クラミジア感染症、性器ヘルペスウイルス感染症、尖圭コンジローマでは25〜34歳の2つの年齢群、淋菌感染症では25〜29歳であるのに対し、女性では4疾患すべてで20〜24歳であり、女性の罹患年齢が男性に比べてやや若い傾向が認められた(図3:PDF参照)。また、性器クラミジア感染症、尖圭コンジローマ、淋菌感染症の3疾患は、男性では60代以降は僅かであり、女性では50代以降の報告はないか、あっても僅かである。しかし、性器ヘルペスウイルス感染症は男女ともに、50代以降の報告も少なくない。この年齢層は再発例が含まれている可能性が以前から指摘されており、2006年4月の届出基準改正により、抗体のみ陽性のものの除外に加えて「明らかな再発例は除外する」ことが明示された。しかし、報告数や年齢階級別分布において明らかな変化は見られておらず、この基準変更の周知徹底が必要と考える。
年齢群毎にみた定点当たり報告数の男女の比較では、淋菌感染症ではすべての年齢群で男性が女性よりも多かった。一方、性器クラミジア感染症では15〜29歳の3つの年齢群、性器ヘルペスウイルス感染症では15〜29歳、55〜59歳、70歳以上の5つの年齢群、尖圭コンジローマでは15〜24歳の2つの年齢群で、女性が男性よりも多かった。ただし、性感染症定点は泌尿器科系、婦人科系および皮膚科系などの診療科から構成されており、男女の比較についてはそれらの比率の影響を受ける可能性がある。
●若年齢層での推移
感染症法が施行された1999年4月以降について、若年齢層(15〜29歳)における各疾患の定点当たり報告数を男女別・月別に図4(PDF参照)に示した。性器クラミジア感染症と淋菌感染症は男女ともに2003年以降減少傾向がみられる。一方、性器ヘルペスウイルス感染症と尖圭コンジローマは、男女ともに2005年半ば頃からごく微かな減少傾向がみられるものの、この間全体としてはほぼ横ばいの状況である。前月との比較では、男性では性器クラミジア感染症、性器ヘルペスウイルス感染症及び淋菌感染症は増加し、尖圭コンジローマは減少した。女性では尖圭コンジローマは増加し、淋菌感染症は横ばい、性器クラミジア感染症及び性器ヘルペスウイルス感染症は減少した。
◆薬剤耐性菌について (5月12日集計分)
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基幹定点数(4月):470.
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●月別
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メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症
4.34(前月:4.28、前年同月:4.06)
定点当たり報告数は、例年年間を通じてほぼ一定である。4月は前月より若干増加しており、過去9年間の同月との比較では最多であった。
ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)感染症
0.99(前月:0.87、前年同月:0.84)
定点当たり報告数は、例年春から初夏にかけて(4〜6月)と冬(11、12月)に多く、夏(7〜9月)に少なく推移している。4月は前月より若干増加したが、過去9年間の同月との比較では下位に属した。
薬剤耐性緑膿菌感染症
0.07(前月:0.09、前年同月:0.09)
定点当たり報告数は、例年後半が前半に比して多い傾向がある。4月は前月より若干減少し、過去9年間の同月との比較では下位に属した。
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●年齢階級別
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MRSA感染症
高齢者高齢者に多く、70歳以上が全体の65%を占めている(図1:PDF参照)
PRSP感染症
小児と高齢者に多い。5歳未満が全体の60%を占める一方、70歳以上が全体の23%を占めている(図2:PDF参照)。
薬剤耐性緑膿菌感染症
高齢者に多く、70歳以上が全体の68%を占めている(図3:PDF参照)
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●性別:女性を1 として算出した男/女比
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MRSA感染症…男:女=1.8:1
PRSP感染症…男:女=1.4:1
薬剤耐性緑膿菌感染症…男:女=2.9:1
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●都道府県別
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MRSA感染症
定点当たり報告数は滋賀県(8.7)、新潟県(8.6)、栃木県(8.6)が多い。
PRSP感染症
定点当たり報告数は千葉県(4.8)、神奈川県(3.0)、東京都(2.7)が多い。
薬剤耐性緑膿菌感染症
報告総数が31件にとどまるため、都道府県別定点当たり報告数の評価は困難である。
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◆ 百日咳
百日咳は、好気性のグラム陰性桿菌である百日咳菌(Bordetella pertussis)の感染を原因とする急性の呼吸器感染症である。特有のけいれん性の咳発作(痙咳発作)を特徴としており、母親からの移行抗体が有効に働かないために乳児期早期から罹患する可能性があり、ことに百日咳(P)ワクチンを含んだジフテリア・百日咳・破傷風(DPT)3種混合ワクチンを接種していない生後6カ月以下の乳児が罹患した場合は、未だに死に至る危険性がある疾患である。通常は感染後7〜10日間の潜伏期間を経て発症するが、臨床経過は(1)カタル期、(2)痙咳期、(3)回復期の3つに分けられている。百日咳はワクチンの開発・普及と乳児期の接種率の上昇によって、発生報告数は大きく減少した。これまで乳幼児を中心とした小児で流行する疾患とされてきたが、最近では小児科定点報告疾患であるにもかかわらず20歳以上の成人例の報告数が年々増加してくると共に、発生報告数そのものも増加に転じている。成人の発生例は咳が長期にわたって持続するものの、乳幼児にみられるような重篤な痙咳性の咳嗽を示すことは稀であり、症状が典型的ではないために診断が見逃されやすく、感染源となって周囲へ感染を拡大してしまうこともあり、注意が必要である。治療薬としてはマクロライド系抗菌薬が第一選択であるが、セフェム系が処方されることもある。早期に抗菌薬を処方すれば、症状の軽減と菌排出期間(無治療の場合は3週間前後)の短縮が期待できる。
感染症発生動向調査では、全国約3,000カ所の小児科定点からの報告数に基づいて百日咳の患者発生状況の分析を行っている。2008年の百日咳の週別の定点当たり報告数は、過去10年間の同時期と比較しても高い状態が続いているが、殊に第20週は大きな増加がみられた(図1)。第20週の定点からの患者報告数は325例(定点当たり報告数0.11)であり、小児科定点がほぼ3,000カ所となった1999年第14週以降の最高値(2008年第17週、患者報告数218)をさらに大きく上回った。都道府県別では、広島県45例、愛媛県26例、埼玉県、愛知県共に24例、千葉県23例、山口県19例、神奈川県17例、兵庫県15例の順となっているが、多くの地域で患者報告数が増加しており、特に広島県、愛媛県の増加が著しい(図2)。第1〜20週までの累積報告数は2,177例であり、2000年以降の同時期の累積報告数と比較しても、これまで最も多かった2000年(1,365例)を大きく上回っている。都道府県別にみると、千葉県318例、広島県206例、福岡県146例、愛知県134例、大阪府126例、埼玉県115例、山口県86例、兵庫県80例の順であり、千葉県からの報告数が突出している状態は変わってはいないが、報告数の多い地域は国内の広い範囲に分布している(図3)。2000〜2008年まで(2008年は第20週まで)の年間の累積報告数の年齢別割合をみると、0歳児、1歳児を中心とした乳幼児からの報告割合は年々低下がみられている一方で、小児科定点からの報告ではあるものの、20歳以上の報告割合は年々増加しており、2008年は20週までの報告ではあるが、20歳以上の割合は37.5%にまで達している(図4、図5)。
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図1. 百日咳の年別・週別発生報告状況(1998年〜2008年第20週) |
図2. 百日咳の都道府県別報告状況(2008年第20週) |
図3. 百日咳の都道府県別累積報告状況(2008年第1〜20週) |
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図4. 百日咳の報告症例の年別・年齢別割合(2000年〜2008年第20週) |
図5. 百日咳累積報告数の年齢群別割合(2008年第1〜20週) |
百日咳(P)ワクチンが開発されるまでは、かつては我が国においても百日咳の患者発生数は乳幼児を中心に年間10万例以上あり、その約10%が死亡していたといわれている。百日咳(P)ワクチンを含んだDPT3種混合ワクチンの導入と改良・普及により、近年乳幼児を中心とした百日咳の患者発生数は大きく減少した。しかし、最近では大学等の小児以外の集団生活施設においての集団発生の報告が見られるようになってきているとともに、小児科定点からの報告であるにもかかわらず、20歳以上の成人例の報告数が年々増加してきている。また、患者報告数そのものも、2006年以降は増加傾向にあり、2008年はこれまでのところ2000年以降では最も報告数の多い状態が続いている。百日咳は、過去の乳幼児等の小児を中心とした流行形態が変化してきていることは間違いないが、現在の小児科定点のみからの発生動向調査だけでは、その実態を正確に把握することは困難である。百日咳の患者数が大きく減少したことによって、感染曝露の機会が失われ、百日咳(P)含有ワクチン既接種者である成人層での百日咳に対する免疫が減衰し、現在の流行を招いているものとも推察されるが、いずれにせよより正確な実態の把握と対策の立案が急務となってきている。国立感染症研究所感染症情報センターでは、百日咳を診断した医師よりその情報を発信していただき、共有・分析するために、「百日咳DB:全国の百日咳発生状況」(http://idsc.nih.go.jp/disease/pertussis/pertu-db.html)を2008年5月8日より立ち上げた。本データベースが、全国の医療従事者や衛生部局関係者で情報共有され、今後の有効な対策の一助となるために、全国の多数の関係者の参加および協力をお願いしたい。
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