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発生動向総覧
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1類感染症: | 報告なし | ||||||||||||||||||
2類感染症: | 結核350例 | ||||||||||||||||||
3類感染症: | 細菌性赤痢2例(感染地域:長崎県2例) 腸管出血性大腸菌感染症58例(有症者39例、うちHUS 2例)
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4類感染症: | A型肝炎2例(感染地域:京都府1例、東京都/中国1例)
つつが虫病9例(感染地域:山形県3例、青森県2例、福島県1例、新潟県1例、岐阜県1例、広島県1例) デング熱1例(感染地域:インドネシア) マラリア1例〔感染地域:国外(国不明)〕
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5類感染症: |
破傷風3例〔年齢群:70代(1例)、80代(2例)〕 バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例(遺伝子型:不明_菌検出検体:腹水)
(補)他に2008年第20週までに診断されたものの報告遅れとして、細菌性赤痢1例(感染地域:長崎県)、日本紅斑熱1例(感染地域:鹿児島県)、レジオネラ症1例〔感染地域:東京都(温泉)〕、劇症型溶血性レンサ球菌感染症2例〔60代(1例)、70代(1例.死亡)〕、髄膜炎菌性髄膜炎1例〔25〜29歳.感染地域:国内(都道府県不明)〕、バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例(遺伝子型:VanC_菌検出検体:膵液)、風しん4例〔検査診断例1例、臨床診断例3例.感染地域:東京都1例、奈良県1例、熊本県1例、国内(都道府県不明)1例.年齢群:5歳(1例)、8歳(1例)、10〜14歳(1例)、40代(1例)〕などの報告があった。 |
◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患によ
り小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000カ所)、眼科定点(約600カ所)、基
幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ:定点当たり報告数は横ばいであった。都道府県別では沖縄県(3.50)、新潟県(0.61)、北海道(0.57)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症は138例の報告があり、報告数は減少した。年齢別では1歳以下の報告数が全体の約62%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では大分県(1.47)、石川県(1.38)、山口県(1.16)、長崎県(1.16)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は2週連続で増加し、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い。都道府県別では鳥取県(5.8)、山形県(4.7)、埼玉県(4.5)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は2週連続で増加し、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では富山県(12.4)、福井県(12.1)、愛媛県(10.9)が多い。水痘の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では山形県(3.9)、新潟県(3.2)、徳島県(3.1)が多い。手足口病の定点当たり報告数は第15週以降増加が続いている。都道府県別では宮崎県(9.1)、長崎県(4.8)、鹿児島県(2.9)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では新潟県(0.90)、大分県(0.53)、秋田県(0.49)が多い。百日咳の定点当たり報告数は横ばいであったが、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では広島県(0.58)、福井県(0.36)、愛媛県(0.35)、山口県(0.30)、が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では愛媛県(2.43)、石川県(1.72)、熊本県(1.69)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は第18週以降増加が続いている。都道府県別では佐賀県(2.52)、岐阜県(1.87)、宮崎県(1.78)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では福島県(3.1)、群馬県(2.8)、沖縄県(2.7)が多い。
◆ A群溶血性レンサ球菌咽頭炎
A群溶血性レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)はその侵入部位や組織によって多彩な症状を引き起こす。また、時に稀ながら発症機序がまだ不明である劇症型溶血性レンサ球菌感染症の原因となることがあるが、本項では、通常主に小児の間で発生する疾患であり、感染症法によって5類感染症定点把握疾患と定められているA群溶血性レンサ球菌咽頭炎について述べる。
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎は、本邦を含めた温帯地域を中心に広く世界的に分布している感染症である。感染経路はヒトからヒトへの飛沫感染が主であるが、食品を介する経口感染もあるといわれている。潜伏期間は2〜5日であり、突然の発熱、咽頭痛、全身倦怠感によって発症し、しばしば嘔吐を伴う。通常発熱は3〜5日以内に下がり、主症状は1週間以内に消失する予後良好の疾患であるが、菌が産生する毒素に免疫のない場合は猩紅熱に発展する場合がある。治療にはペニシリン系薬剤が第1選択薬とされているが、ペニシリンアレルギーがある場合はマクロライド系薬剤やセフェム系を投与する。リウマチ熱や急性糸球体腎炎など非化膿性の合併症予防のために、少なくとも10日間は確実に投与することが必要である。
感染症発生動向調査によると、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎は例年学校、幼稚園等の春期休暇とゴールデンウイークに関連した減少はみられるものの、春季から夏季にかけて流行し、夏期休暇と共に患者報告数の減少がみられている。2008年第20週、第21週の定点当たり報告数は大きく増加しており、特に第21週の報告数(定点当たり報告数3.02、報告数9,111)は、過去10年間を通しても最も高い値となっている(図1)。都道府県別では、鳥取県(5.84)、山形県(4.67)、埼玉県(4.49)、千葉県(4.37)、富山県(4.28)、山口県(4.16)、新潟県(4.15)の順となっているが、全国平均を超えているのは東日本の地域に多い(図2)。
第21週までの定点当たり累積報告数は42.99(累積報告数128,400)であり、2006年、2007年と同様の水準である(図3)。都道府県別では、鳥取県(79.26)、山形県(74.80)、富山県(72.00)、石川県(71.66)、新潟県(68.88)、山口県(66.53)、北海道(64.90)の順であり、やはり東日本地域に全国平均を上回っている地域が多い(図4)。累積報告数の年齢別割合をみると、4〜5歳30.4%、6〜7歳23.8%、2〜3歳14.7%、8〜9歳13.1%の順であり、例年と同様に2〜9歳が発生の中心であり、9歳以下で全報告数の85%以上を占めている(図5、図6)。
図1. A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の年別・週別発生状況(1998年〜2008年第21週) |
図2. A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の都道府県別報告状況(2008年第21週) |
図3. A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の第1〜21週の定点当たり累積報告数年別推移(1999年〜2008年) |
図4. A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の都道府県別累積報告状況(2008年第1〜21週) |
図5. A群溶血性レンサ球菌咽頭炎累積報告数の年齢群別割合(2008年第1〜21週) |
図6. A群溶血性レンサ球菌咽頭炎年別・年齢群別割合(1999年〜2008年第21週) |
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の患者発生は、現在夏季のピークにさしかかりつつあるものと推測される。今後ともその発生動向には注意が必要である。
◆ 麻しん
麻しんは「はしか」とも呼ばれ、麻しんウイルス(Paramyxovirus科Morbillivirus属)によって引き起こされる感染症で、39℃前後の高熱と耳介後部から始まって体の下方へと広がる赤い発疹を特徴とする全身性疾患である。麻しんに対して免疫を持たない者が感染した場合、典型的な臨床経過としては10〜12日間の潜伏期を経て発症し、カタル期(2〜4日間)、発疹期(3〜5日間)、回復期へと至る。一方、ヒトの体内に入った麻しんウイルスは、免疫を担う全身のリンパ組織を中心に増殖し、一過性に強い免疫不全状態を生じるため、麻しんウイルスそのものによるものだけでなく、細菌の二次感染による肺炎や中耳炎などの合併症も生じうる。また、発生頻度は低いものの、麻しんウイルスによる脳炎や、罹患後7〜10年の期間を経て発症する亜急性硬化性全脳炎(SSPE)などの合併症もある。麻しんは接触感染、飛沫感染、空気感染(飛沫核感染)のいずれの感染経路でも感染するが、発症した場合に麻しんに特異的な治療方法はない。手洗い、マスク等の感染対策も十分に効果的な予防手段とは言えず、唯一の有効な予防方法はワクチンの接種によって麻しんに対する免疫を予め獲得しておくことである。
2008年の1月1日から開始された麻しんの全数把握調査によると、第21週(5月19〜25日診断のもの)の麻しん患者発生報告数は5月28日現在で29都道府県から236例あり、都道府県別では北海道64例、神奈川県55例、千葉県21例、東京都19例、静岡県12例、大阪府12例の順であった(図1、図2)。これらの報告数は、今後報告遅れのものを含めて更に増加する可能性がある。第1週から第21週までの累積報告数は、47都道府県から8,415例であり、都道府県別では神奈川県3,083例、北海道1,169例、東京都930例、福岡県638例、千葉県426例、埼玉県302例、大阪府265例、静岡県163例、愛知県162例、秋田県154例、広島県140例の順となっている(図3)。北海道、大阪府では患者発生が継続してみられ、神奈川県、東京都、千葉県、埼玉県の南関東地域の流行は静岡県にも波及している。
図1. 麻しん報告数の週別推移(2008年第1〜21週) | 図2. 麻しんの都道府県別報告状況(2008年第21週) | 図3. 麻しんの都道府県別累積報告状況(2008年第1〜21週) |
図4. 麻しん累積報告数の病型別割合(2008年第1〜21週) |
図5. 麻しん累積報告数の年齢群別割合(2008年第1〜21週) | 図6. 麻しん累積報告数のワクチン接種歴別年齢分布(2008年第1〜21週) | 図7. 麻しん累積報告数のワクチン接種歴別割合(2008年第1〜21週) |
図8. 肺炎合併麻しん累積報告数の年齢群別割合(2008年第1〜21週) |
■麻疹(はしか):http://idsc.nih.go.jp/disea
se/measles/index.html
□緊急情報「2012年麻疹排除(Elimination)に向けて」
●「麻疹」の届出基準・届け出様式、「風疹」の届出基準・届出様式、ポスター
●2008年4月1日以降の予防接種スケジュール
●2008〜2012年度麻疹・風疹の定期予防接種対象者
●第3期・第4期予防接種勧奨リーフレット
□対策・ガイドラインなど
●麻疹の現状と今後の麻疹対策について
●都道府県における麻しん対策会議のガイドライン
●学校における麻しん対策ガイドライン
●麻しん排除に向けた積極的疫学調査ガイドライン第二版
●医師による麻しん届出ガイドライン第二版
●医療機関での麻疹対応ガイドライン第二版
●「麻しん対策ブロック会議」関連資料等
□国内情報
●注目すべき感染症/速報
●麻しん発生状況(速報グラフ)
●麻しん施設別発生状況(学校欠席者数)
●病原微生物検出情報[IASR](麻疹特集・速報、ウイルス分離・検出状況他)
●平成19年度定期の予防接種(麻しん風しん第2期)の実施状況の調査結果について(第1報)
●わが国の健常人における麻疹PA抗体保有状況
□関連情報
●麻しんに関する特定感染症予防指針
●予防接種法施行令の一部を改正する政令 〜定期予防接種対象者に関する改正〜
●「定期の予防接種の実施について」の一部改正 〜定期(一類疾病)の予防接種実施要領の改正〜
■Q&A:http://idsc.nih.go.jp/disease/measles/QA.html
■予防接種の話「麻疹」:http://idsc.nih.go.jp/vaccine/b-measles.html
■年齢別麻疹、風疹、MMRワクチン接種率:http://idsc.nih.go.jp/vaccine/atopics/atpcs001.html
■感染症の話「麻疹」:http://idsc.nih.go.jp/idwr/kansen/k03/k03_03/k03_03.html
■麻疹発生DB(データベース):http://idsc.nih.go.jp/disease/measles/meas-db.html
■「麻疹・風疹ワクチンなぜ2回接種なの?」ポスター:http://idsc.nih.go.jp/vaccine/cpn01.html
■「麻疹風疹混合ワクチンを1歳のお誕生日のプレゼントにしましょう」ポスター:http://idsc.nih.go.jp/vaccine/cpn04.html
■「小学校入学準備に2回目の麻疹・風疹ワクチンを!」ポスター:http://idsc.nih.go.jp/vaccine/cpn07.html
■麻疹教育啓発ビデオ「はしかから身を守るために」:
http://idsc.nih.go.jp/disease/measles/Video/measlesVideo.html
■Surveillance, Focus, Measles“Measles update in Japan as of end of week12(23 March2008)”:
http://idsc.nih.go.jp/disease/measles_e/idwr200812.html
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