発生動向総覧
※2008年5月12日の法改正に伴い、疾病の名称および並び順を一部変更しました。
〈第24週コメント〉 6月18日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 294例 |
3類感染症: |
コレラ2例(感染地域:インドネシア2例)
細菌性赤痢3例(感染地域:埼玉県2例、インドネシア1例)
腸管出血性大腸菌感染症87例(有症者63例、HUS 1例)
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感染地域:福岡県9例、熊本県7例、新潟県6例、石川県6例、静岡県6例、長崎県5例*、北海道4例**、群馬県3例、岐阜県3例、兵庫県3例、鹿児島県3例、千葉県2例、東京都2例、神奈川県2例、富山県2例、長野県2例、愛知県2例、奈良県2例、岩手県1例、栃木県1例、福井県1例、滋賀県1例、大阪府1例、岡山県1例、広島県1例、徳島県1例、愛媛県1例、大分県1例、沖縄県1例、国内(都道府県不明)7例*** *同一施設内の集団発生、
**うち3例は同一ツアー参加者内での集団発生、
***修学旅行に関連した集団発生
年齢群:1歳(6例)、2歳(5例)、3歳(7例)、4歳(3例)、6歳(2例)、7歳(1例)、9歳(4例)、10代(11例)、20代(14例)、30代(9例)、40代(4例)、50代(6例)、60代(10例)、70代(2例)、80代(3例)
血清型・毒素型:O26 VT1(30例)、O157 VT2(17例)、O157 VT1・VT2(16例)、O103 VT1(5例)、O111 VT1・VT2(5例)、O111 VT1(3例)、O26 VT1・VT2(2例)、O91 VT1(2例)、O165 VT2(2例)、その他・不明(5例)
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パラチフス1例(感染地域:インド) |
4類感染症: |
E型肝炎1例
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感染地域:北海道
感染源:豚ホルモン
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A型肝炎3例(感染地域:東京都1例、滋賀県1例、韓国1例)
つつが虫病2例(感染地域:福島県1例、福岡県1例)
マラリア1例(熱帯熱_感染地域:ギニア)
ライム病1例(感染地域:長野県)
レジオネラ症20例(肺炎型19例、ポンティアック型1例)
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感染地域:宮城県4例、新潟県2例、埼玉県2例、兵庫県2例、青森県1例、山形県1例、茨城県1例、神奈川県1例、富山県1例、愛知県1例、三重県1例、京都府1例、国内(都道府県不明)2例(うち1例温泉)
年齢群:30代(1例)、40代(1例)、50代(5例)、60代(6例)、70代(2例)、80代(5例)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢13例(腸管アメーバ症10例、腸管外アメーバ症2例、腸管及び腸管外アメーバ症1例) |
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感染地域:東京都3例、大阪府2例、山形県1例、千葉県1例、愛知県1例、奈良県1例、愛媛県1例、福岡県1例、鹿児島県1例、国内(都道府県不明)1例
感染経路:性的接触3例(同性間1例、異性間1例、異性間・同性間不明1例)、経口感染2例、経口及び性的接触(異性間)1例、常習的腸管洗浄1例、不明6例
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ウイルス性肝炎3[B型肝炎3例_感染経路:性的接触2例(異性間1例、異性間・同性間不明1例)、不明1例]
劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例〔年齢群:80代(死亡)〕
後天性免疫不全症候群19例(無症候13例、その他1例、AIDS 5例) |
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感染地域:国内15例、タイ2例、ニュージーランド1例、オーストラリア/米国1例
感染経路:性的接触17例(異性間4例、同性間10例、異性/同性間2例、異性間・同性間不明1例)、不明2例
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梅毒12例(早期顕症II期3例、無症候9例)
破傷風3例[年齢群:60代(1例)、70代(2例)]
バンコマイシン耐性腸球菌感染症3例
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遺伝子型:VanC 1例_菌検出検体:胆汁
遺伝子型:不明2例_菌検出検体:血液1例、胆汁1例
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風しん9例(検査診断例3例、臨床診断例6例)
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感染地域:福岡県2例、東京都1例、滋賀県1例、兵庫県1例、国内(都道府県不明)4例
年齢群:1歳(1例)、2歳(1例)、4歳(1例)、9歳(1例)、20〜24歳(1例)、30〜34歳(2例)、35〜39歳(2例)
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麻しん206例〔麻しん(検査診断例48例、臨床診断例128例)、修飾麻しん(検査診断例30例)〕
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感染地域:国内206例
国内の多い感染地域:千葉県49例、神奈川県26例、北海道21例、京都府16例、埼玉県10例、東京都10例
年齢群:0歳(7例)、1歳(10例)、2歳(3例)、3歳(6例)、5〜9歳(10例)、10〜14歳(25例)、15〜19歳(73例)、20〜24歳(30例)、25〜29歳(16例)、30〜34歳(1例)、35〜39歳(6例)、40代(6例)、50代(2例)、60代(1例)
累積報告数:9,392例〔麻しん(検査診断例2,571例、臨床診断例6,029例)、修飾麻しん(検査診断例792例)〕
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(補)他に2008年第23週までに診断されたものの報告遅れとして、コレラ1例(感染地域:インドネシア)、細菌性赤痢1例(感染地域:インドネシア)、E型肝炎1例〔感染地域(感染源):ネパール(不明)〕、マラリア1例(熱帯熱_感染地域:インドネシア)、レジオネラ症2例〔肺炎型_感染地域:北海道1例(温泉)、群馬県1例(温泉)〕、急性脳炎1例〔単純ヘルペスウイルス1型(60代)〕、劇症型溶血性レンサ球菌感染症2例〔40代(2例.うち1例死亡)〕、バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例(遺伝子型:不明_菌検出検体:膣分泌物)、風しん4例〔臨床診断例4例.感染地域:沖縄県1例、国内(都道府県不明)3例.年齢群:4歳(1例)、10〜14歳(1例)、20〜24歳(1例)、25〜29歳(1例)〕などの報告があった。
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◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は3週連続で減少した。都道府県別では沖縄県(3.16)、北海道(0.33)、福島県(0.31)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症は160例の報告があり、報告数は2週連続で増加した。年齢別では1歳以下の報告数が全体の約76%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では新潟県(1.78)、鹿児島県(1.58)、大分県(1.50)、兵庫県(1.30)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い。都道府県別では鳥取県(5.5)、埼玉県(4.8)、千葉県(4.0)、山口県(3.7)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は3週連続で減少したが、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では大分県(8.9)、埼玉県(7.9)、長野県(7.6)、福井県(7.6)が多い。水痘の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では長野県(4.0)、福井県(3.7)、千葉県(3.7)が多い。手足口病の定点当たり報告数は第15週以降増加が続いている。都道府県別では宮崎県(11.2)、鹿児島県(5.7)、長崎県(4.6)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は横ばいであった。都道府県別では岩手県(0.78)、新潟県(0.63)、大分県(0.58)が多い。百日咳の定点当たり報告数は2週連続で減少したが、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では千葉県(0.26)、広島県(0.26)、鳥取県(0.21)、愛媛県(0.19)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は第20週以降増加が続いている。都道府県別では愛媛県(5.4)、石川県(4.6)、高知県(4.3)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では佐賀県(3.13)、岐阜県(1.87)、宮崎県(1.69)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では群馬県(2.38)、沖縄県(1.86)、福島県(1.71)が多い。
〈5月コメント〉
◆性感染症について 2008年6月10日集計分 性感染症定点数:961
(産婦人科・産科・婦人科:461、泌尿器科:396、皮膚科90、性病科14)
●月別推移
2008年5月の月別定点当たり患者報告数は、性器クラミジア感染症が2.58(男1.15、女1.43)、性器ヘルペスウイルス感染症が0.79(男0.34、女0.45)、尖圭コンジローマが0.53(男0.31、女0.23)、淋菌感染症が0.89(男0.72、女0.17)であった。男性では性器クラミジア感染症、次いで淋菌感染症が多く、女性では性器クラミジア感染症、次いで性器ヘルペスウイルス感染症が多かった(図1)
前月に比べると、男女ともに4疾患すべてで増加した(27〜30ページ「グラフ総覧」参照)。男女別に過去5年間の同時期と比較すると、性器クラミジア感染症は男女ともにやや少なかった。性器ヘルペスウイルス感染症は男性ではやや少なく、女性ではかなり少なかった。尖圭コンジローマは女性でやや少なかった。淋菌感染症は男性でやや少なかった(図2)。
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図1. 各性感染症が総報告数に占める割合(5月) |
●男女別・年齢階級別
年齢群(0歳、1〜4歳、5〜69歳は5歳毎、および70歳以上)でみた定点当たり報告数のピークは、男性では性器クラミジア感染症では20〜24歳、性器ヘルペスウイルス感染症は25〜44歳の4つの年齢群、尖圭コンジローマでは20〜39歳の4つの年齢群、淋菌感染症では20〜29歳の2つの年齢群であった。一方、女性では性器クラミジア感染症、尖圭コンジローマ及び淋菌感染症では20〜24歳、性器ヘルペスウイルス感染症では20〜34歳の3つの年齢群であり、女性の罹患年齢が男性に比べてやや低い傾向が認められた(図3:PDF参照)。また、性器クラミジア感染症、尖圭コンジローマ、淋菌感染症の3疾患は、男性では60代以降は僅かであり、女性では50代以降の報告はないか、あっても僅かである。しかし、性器ヘルペスウイルス感染症は男女ともに、50代以降の報告も少なくない。この年齢層は再発例が含まれている可能性が以前から指摘されており、2006年4月の届出基準改正により、抗体のみ陽性のものの除外に加えて「明らかな再発例は除外する」ことが明示された。しかし、報告数や年齢階級別分布において明らかな変化は見られておらず、この基準変更の周知徹底が必要と考える。
年齢群毎にみた定点当たり報告数の男女の比較では、淋菌感染症ではすべての年齢群で男性が女性よりも多かった。一方、性器クラミジア感染症では15〜29歳の3つの年齢群、性器ヘルペスウイルス感染症では15〜34歳、50〜54歳、60〜64歳、70歳以上の7つの年齢群、尖圭コンジローマでは15〜24歳の2つの年齢群で、女性が男性よりも多かった。ただし、性感染症定点は泌尿器科系、婦人科系および皮膚科系などの診療科から構成されており、男女の比較についてはそれらの比率の影響を受ける可能性がある。
●若年齢層での推移
感染症法が施行された1999年4月以降について、若年齢層(15〜29歳)における各疾患の定点当たり報告数を男女別・月別に(図4:PDF参照)に示した。性器クラミジア感染症と淋菌感染症は男女ともに2003年以降減少傾向がみられる。一方、性器ヘルペスウイルス感染症と尖圭コンジローマは、男女ともに2005年半ば頃からごく微かな減少傾向がみられるものの、この間全体としてはほぼ横ばいの状況である。前月との比較では、男性では性器クラミジア感染症、性器ヘルペスウイルス感染症及び尖圭コンジローマは増加し、淋菌感染症は同値であった。女性では4疾患すべてで増加した。
◆薬剤耐性菌について (6月10日集計分)
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基幹定点数(5月):466.
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●月別
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メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症
4.10(前月:4.34、前年同月:4.20)
定点当たり報告数は、例年年間を通じてほぼ一定である。5月は前月より若干減少したが、過去9年間の同月との比較では上位に属した。
ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)感染症
1.07(前月:0.99、前年同月:1.17)
定点当たり報告数は、例年春から初夏にかけて(4〜6月)と冬(11、12月)に多く、夏(7〜9月)に少なく推移している。5月は前月より若干増加したが、過去9年間の同月との比較では下位に属した。
薬剤耐性緑膿菌感染症
0.07(前月:0.07、前年同月:0.08)
定点当たり報告数は、例年後半が前半に比して多い傾向がある。5月は前月とほぼ同様であったが、過去9年間の同月との比較では下位に属した。
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●年齢階級別
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MRSA感染症
高齢者に多く、70歳以上が全体の67%を占めている(図1:PDF参照)
PRSP感染症
小児と高齢者に多い。5歳未満が全体の70%を占める一方、70歳以上が全体の16%を占めている(図2:PDF参照)。
薬剤耐性緑膿菌感染症
高齢者に多く、70歳以上が全体の59%を占めている(図3:PDF参照)
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●性別:女性を1 として算出した男/女比
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MRSA感染症…男:女=1.7:1
PRSP感染症…男:女=1.4:1
薬剤耐性緑膿菌感染症…男:女=5.8:1
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●都道府県別
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MRSA感染症
定点当たり報告数は滋賀県(9.1)、沖縄県(7.9)、新潟県(7.7)が多い。
PRSP感染症
定点当たり報告数は千葉県(4.9)、大分県(3.6)、福井県(3.3)が多い。
薬剤耐性緑膿菌感染症
報告総数が34件にとどまるため、都道府県別定点当たり報告数の評価は困難である。
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◆ 手足口病
手足口病(hand, foot, and mouth disease : HFMD)は、口腔粘膜および手や足などに現れる水疱性の発疹を主症状とした急性ウイルス性感染症であり、乳幼児を中心に夏季に流行する疾患である。病原ウイルスは、主にコクサッキーA16(CA16)、エンテロウイルス71(EV71)で、その他コクサッキーA6、A9、A10などのエンテロウイルスである。
臨床的特徴であるが、感染から3〜5日の潜伏期間の後に、口腔粘膜、手掌、足底や足背などの四肢末端に2〜3mmの水疱性発疹が出現する。発熱は約3分の1に認められるが軽度であり、高熱が続くことは通常はない。本症は基本的には数日間の内に治癒する予後良好の疾患である。しかしながら、まれではあるが髄膜炎、小脳失調症、脳炎などの中枢神経症状や、心筋炎、急性弛緩性麻痺などの多彩な臨床症状を呈することがある。特にEV71ウイルスに感染した場合は、髄膜炎、脳炎などの中枢神経性の合併症を引き起こす割合が比較的高いことが明らかとなってきているので、EV71が流行しているシーズンは、手足口病発症者の経過を注意深く観察し、合併症に対する警戒を行う必要がある。
感染経路は飛沫感染、接触感染、糞口感染であり、保育園や幼稚園などの乳幼児施設においての感染予防は手洗いの励行と排泄物の適正な処理が基本となる。本疾患は主要症状が回復した後も比較的長期間にわたって児の便などからウイルスが排泄されることがあるが、基本的には軽症疾患であることを踏まえ、回復した児に対して長期間の欠席を求めることは現実的ではない。
感染症発生動向調査によると、全国約3,000カ所の小児科定点医療機関からの定点当たり報告数は、2008年は第15週以降増加が継続しており、第24週は1.36(報告数4,109)となった。過去10年間の発生状況をみると、手足口病の報告数のピークは第28週前後であり、今しばらくは患者発生数が増加するものと思われる(図1)。都道府県別では宮崎県(11.19)、鹿児島県(5.71)、長崎県(4.57)、鳥取県(4.16)、石川県(3.93)、三重県(3.56)、佐賀県(3.30)の順である(図2)。第24週までの定点当たり累積報告数は8.10(累積報告数24,426)であり、都道府県別では宮崎県(74.31)、鹿児島県(37.70)、鳥取県(33.89)、長崎県(31.70)、大分県(20.58)、香川県(19.18)、愛媛県(18.92)の順となっている。宮崎県を中心とした九州地域からの報告数が多い(図3)。累積報告数の年齢別割合をみると、発生報告の中心が5歳以下の乳幼児であることは例年と同様であるが、2008年は特に5歳以下の報告割合が90%以上となっている(図4、図5)。
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図1. 手足口病の年別・週別発生状況(1998〜2008年第24週) |
図2. 図2. 手足口病の都道府県別報告状況(2008年第24週) |
図3.手足口病の都道府県別累積報告状況(2008年第1〜24週) |
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図4. 手足口病の年別・年齢群別割合(2000年〜2008年第24週) |
図5. 手足口病累積報告数の年齢群別割合(2008年第1〜24週) |
第24週までの手足口病由来ウイルス分離・検出報告件数は44件であり、CA16が75.0%(33件)と最多を占め、次いでEV71(4.5%、2件)である(図6)。2004年以降の手足口病由来ウイルス分離・検出状況をみると、2008年第24週までのEV71の報告割合は、過去4年間では最も少ない(図7)。
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図6. 手足口病由来ウイルスの分離・検出状況(2008年第1〜24週) |
図7. 手足口病由来ウイルスの年別の分離・検出状況(2004年〜2008年第24週) |
手足口病の流行はピークに向けて今後さらに増加するものと予想される。患者発生数の推移やEV71の分離・検出状況には注意が必要である。
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