国立感染症研究所 感染症情報センター
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IDWR 感染症発生動向調査週報

第26号ダイジェスト
(2008年6月23日〜6月29日)

 発生動向総覧


※2008年5月12日からの法改正に伴い、疾病の名称および並び順を一部変更しました。

全数報告の感染症

〈第26週コメント〉 7月2日集計分

注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。

*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。

1類感染症: 報告なし
2類感染症: 結核324例
3類感染症: コレラ1例(感染地域:フィリピン)
細菌性赤痢3例(感染地域:中国1例、エジプト1例、エジプト/トルコ1例)
腸管出血性大腸菌感染症94例(有症者71例、HUS 3例)

感染地域:秋田県15例*、東京都10例、兵庫県6例、福岡県6例、熊 本県6例**、千葉県5例、神奈川県3例、富山県3例***、 静岡県3例、島根県3例、北海道2例、青森県2例、群馬 県2例、埼玉県2例、岐阜県2例、愛知県2例、京都府2 例、大阪府2例、鳥取県2例、広島県2例、宮城県1例、 山形県1例、栃木県1例、石川県1例、長野県1例、山口 県1例、愛媛県1例、佐賀県1例、長崎県1例、鹿児島県 1例、国内(都道府県不明)2例、台湾/タイ1例、米国1例
*宅配弁当関連の集団発生、
**第25週の1例とともに、 幼稚園での集団発生、
***保育園での集団発生
年齢群:0歳(1例)、1歳(1例)、2歳(5例)、3歳(3例)、4歳(7例)、5 歳(2例)、6歳(1例)、7歳(2例)、8歳(2例)、9歳(1例)、10 代(12例)、20代(16例)、30代(10例)、40代(7例)、50代 (10例)、60代(1例)、70代(2例)、80代(9例)、90代(2例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2( 51例)、O157 VT2( 14例)、 O26 VT1(8例)、O111 VT1(7例)、O103 VT1(2例)、 O111 VT1・VT2(2例)、O157 VT1(2例)、O121 VT2(1例)、その他・不明(7例)

4類感染症: E型肝炎2例〔感染地域:千葉県1例(感染源:鹿肉)、国内(都道府県不明)1例(感染源:不明)〕
A型肝炎4例(感染地域:滋賀県1例、兵庫県1例、広島県1例、パキスタン1例)
つつが虫病2例(感染地域:秋田県1例、山形県1例)
デング熱1例(感染地域:コートジボワール)
日本紅斑熱2例(感染地域:徳島県2例)
レジオネラ症10例(肺炎型10例)

感染地域:東京都2例、大阪府2例、北海道1例、神奈川県1例、岐阜県1例、三重県1例、奈良県1例、鹿児島県1例
年齢群:30代(1例)、40代(2例)、50代(2例)、60代(2例)、70代(1例)、80代(2例)

5類感染症:
アメーバ赤痢16例(腸管アメーバ症15例、腸管及び腸管外アメーバ症1例)

感染地域:大阪府2例、福岡県2例、岩手県1例、山形県1例、福島県1例、静岡県1例、愛知県1例、兵庫県1例、熊本県1例、国内(都道府県不明)1例、中国1例、タイ1例、フィリピン1例、ミャンマー1例
感染経路:性的接触3例(同性間2例、異性間・同性間不明1例)、経口感染7例、経口及び性的接触(異性間・同性間不明)1例、不明5例

ウイルス性肝炎1例(B型肝炎_感染経路:不明)
急性脳炎2例

単純ヘルペスウイルス1例_年齢群:50代
病原体不明1例_年齢群:10代

クロイツフェルト・ヤコブ病1例(孤発性プリオン病古典型)

後天性免疫不全症候群17例(無症候14例、その他2例、AIDS 1例)

感染地域:国内15例、タイ1例、インドネシア1例
感染経路:性的接触16例(異性間6例、同性間9例、異性/同性間1例)、不明1例

梅毒6例(早期顕症I期1例、早期顕症II期3例、晩期顕性1例、無症候1例)
破傷風2〔年齢群:60代(1例)、80代(1例)〕
バンコマイシン耐性腸球菌感染症2例(遺伝子型:VanB 2例_菌検出検体:便1例、褥瘡面1例)
風しん8例(臨床診断例2例、検査診断例6例)

感染地域:神奈川県3例、千葉県2例、東京都1例、大阪府1例、熊本県1例
年齢群:4歳(1例)、10〜14歳(1例)、30〜34歳(1例)、40代(4例)、50代(1例)

麻しん147例〔麻しん(検査診断例36例、臨床診断例95例)、修飾麻しん(検査診断例16例)〕

感染地域:国内147例
国内の多い感染地域:千葉県51例、神奈川県25例、大阪府13例
年齢群:0歳(6例)、1歳(8例)、2歳(1例)、3歳(2例)、4歳(2例)、5〜9歳(13例)、10〜14歳(16例)、15〜19歳(48例)、20〜24歳(10例)、25〜29歳(19例)、30〜34歳(10例)、35〜39歳(2例)、40代(6例)、50代(2例)、60代(1例)、70代(1例)

累積報告数:9,860例〔麻しん(検査診断例2,719例、臨床診断例6,299例)、修飾麻しん(検査診断例842例)〕

(補)他に2008年第25週までに診断されたものの報告遅れとして、細菌性赤痢1例(感染地域:パナマ)、マラリア2例(熱帯熱1例_感染地域:ベナン.三日熱1例_感染地域:パキスタン)、レジオネラ症2例〔感染地域:神奈川県1例(温泉)、長野県1例(温泉)〕、急性脳炎1例〔ヒトヘルペスウイルス6型(1歳.死亡)〕、クリプトスポリジウム症1例(感染地域:京都府)、バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例(遺伝子型不明_菌検出検体:便)、風しん4例〔検査診断例1例、臨床診断例3例.感染地域:東京都2例、神奈川県1例、福岡県1例.年齢群:0歳(1例)、1歳(1例)、3歳(1例)、35〜39歳(1例)〕などの報告があった。


定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)

全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患によ り小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000カ所)、眼科定点(約600カ所)、基 幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
過去5年間の同時期との比較

インフルエンザ:定点当たり報告数は第22週以降減少が続いている。都道府県別では沖縄県(2.55)、福島県(0.13)、北海道(0.09)が多い。

小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症は155例の報告があり、報告数は増加した。年齢別では1歳以下の報告数が全体の約71%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では新潟県(1.95)、鹿児島県(1.71)、愛媛県(1.30)、兵庫県(1.20)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は3週連続で減少したが、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してやや多い。都道府県別では鳥取県(4.4)、埼玉県(4.1)、千葉県(3.4)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は第22週以降減少が続いているが、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では大分県(7.8)、福井県(6.7)、熊本県(6.3)が多い。水痘の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では長野県(3.9)、新潟県(2.9)、千葉県(2.6)、山口県(2.6)が多い。手足口病の定点当たり報告数は第15週以降増加が続いている。都道府県別では宮崎県(14.0)、鹿児島県(8.3)、大分県(5.6)、石川県(5.2)、三重県(5.2)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では大分県(0.75)、岩手県(0.58)、秋田県(0.54)が多い。百日咳の定点当たり報告数は第23週以降減少が続いているが、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では新潟県(0.15)、栃木県(0.13)、群馬県(0.13)、徳島県(0.13)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は第20週以降増加が続いている。都道府県別では愛媛県(9.7)、高知県(5.9)、群馬県(4.5)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は横ばいであった。都道府県別では佐賀県(4.0)、宮崎県(2.4)、岐阜県(1.9)が多い。

基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では沖縄県(3.86)、埼玉県(1.22)、宮城県(1.17)が多い。





 注目すべき感染症

◆ へルパンギーナ

 ヘルパンギーナ(Herpangina)は、発熱、口腔粘膜に現れる水疱性の発疹を特徴とした急性のウイルス性感染症であり、乳幼児を中心に夏季に流行する疾患である。病原ウイルスは主にコクサッキーウイルスA群(CA2、CA4、CA5、CA6、CA8、CA10等)であるが、まれにコクサッキーウイルスB群、エコーウイルスによる場合もある。
 感染から2〜4日の潜伏期間の後に、突然の発熱に続いて咽頭痛が出現、咽頭の発赤とともに、主として軟口蓋から口蓋弓にかけての部位に直径1〜2mm、場合により大きいものでは5mmほどの紅暈で囲まれた小水疱が出現する。小水疱はやがて破れて浅い潰瘍となる。発熱は2〜4日間程度で解熱し、やや遅れて粘膜疹も消失する。大半は予後良好の疾患であるが、エンテロウイルス感染症の特徴として、まれに無菌性髄膜炎や急性心筋炎を合併する。発熱以外に頭痛、嘔吐等の症状や、心不全兆候の出現には十分に注意すべきである。
 特異的な治療法はなく、発熱や頭痛に対する対症療法が中心となるが、時に脱水に対する治療が必要となることがある。急性期のみの登園・登校停止では厳密な流行阻止効果は期待できないことと、幼児期までに大半の者が罹患する疾患であり、大部分が軽症であることから、登園・登校については手足口病と同様に、流行阻止の目的というよりも患者本人の状態によって判断すべきである。
 感染症発生動向調査では、全国約3,000カ所の小児科定点からの週毎の報告に基づいてヘルパンギーナの患者発生状況の分析を行っている。2008年のヘルパンギーナの報告数は、第20週以降増加が続いていており、第26週の定点当たり報告数は2.25(報告数6,768)となった(図1)。都道府県別では愛媛県(9.70)、高知県(5.87)、群馬県(4.50)、佐賀県(4.30)、香川県(4.14)、三重県(4.07)の順となっている(図2)。第1〜26週までの定点当たり累積報告数は8.12(累積報告数24,483)で、都道府県別では愛媛県(34.46)、石川県(23.90)、大分県(21.47)、熊本県(20.96)、高知県(20.40)、佐賀県(20.13)、山口県(19.55)の順となっており、流行地域は西日本に多くみられている(図3)。2000年以降の年間累積報告の年齢別割合をみると、1歳、2歳の報告割合が大きく、5歳以下が全報告数の90%前後を占めており、2008年もこれまでのところ4歳以下で全体の86.6%を、5歳以下で92.8%を占めている(図4、5)

図1. へルパンギーナの年別・週別発生状況(1998〜2008年第26週) 図2. ヘルパンギーナの都道府県別報告状況(2008年第26週) 図3. へルパンギーナの都道府県別累積報告状況(2008年第1〜26週)
図4. へルパンギーナの年別・年齢群別割合(2000年〜2008年第26週) 図5. へルパンギーナ累積報告数の年齢群別割合(2008年第1〜26週)

 ヘルパンギーナの流行のピークは夏季にあり、1998年から2007年までの過去10年間でのピークの週は第27週2回、第28週4回、第29週3回、第30週1回であった(図1)。ヘルパンギーナの流行は間もなくピークを迎えるものと予想され、その発生動向には注意が必要である。





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