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発生動向総覧
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1類感染症: | 報告なし | ||||||||||||||||||||||
2類感染症: | 結核351例 | ||||||||||||||||||||||
3類感染症: | 細菌性赤痢7例〔感染地域:静岡県1例、長崎県1例、国内(都道府県不明)1例、中国1例、フィリピン1例、インド1例、メキシコ1例〕 腸管出血性大腸菌感染症141例(有症者65例、HUS 4例、死亡1例)
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4類感染症: | A型肝炎1例(感染地域:インド)
デング熱1例(感染地域:タイ) 日本紅斑熱1例(感染地域:千葉県) マラリア1例〔熱帯熱_感染地域:カメルーン〕
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5類感染症: |
梅毒9例(早期顕症I期1例、早期顕症II期6例、無症候2例) 破傷風2例〔年齢群:50代(1例)、70代(1例)〕 バンコマイシン耐性腸球菌感染症2例(遺伝子型:VanB 2例_菌検出検体:尿1例、血液1例)
(補)他に2008年第26週までに診断されたものの報告遅れとして、細菌性赤痢2例(感染地域:北海道1例、タイ1例)、腸チフス1例(感染地域:インドネシア)、日本紅斑熱1例(感染地域:島根県)、急性脳炎3例〔病原体不明3例(6歳、30代、60代)〕、劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(60代、死亡)、風しん4例〔検査診断例1例、臨床診断例3例.感染地域:大阪府2例、東京都1例、三重県1例.年齢群:3歳(2例)、10〜14歳(1例)、70代(1例)〕などの報告があった。 |
◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患によ
り小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000カ所)、眼科定点(約600カ所)、基
幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ:定点当たり報告数は第22週以降減少が続いている。都道府県別では沖縄県(2.21)、岡山県(0.18)、新潟県(0.13)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症は139例の報告があり、報告数は減少した。年齢別では1歳以下の報告数が全体の約74%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では鹿児島県(2.11)、新潟県(1.62)、埼玉県(1.36)、滋賀県(1.18)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は第24週以降減少が続いているが、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い。都道府県別では埼玉県(3.9)、千葉県(3.8)、山口県(3.6)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は第22週以降減少が続いているが、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では大分県(6.6)、宮崎県(6.6)、福井県(6.1)が多い。水痘の定点当たり報告数は3週連続で減少した。都道府県別では長野県(2.87)、山形(2.67)、新潟県(2.53)が多い。手足口病の定点当たり報告数は第15週以降増加が続いている。都道府県別では宮崎県(13.0)、鹿児島県(9.4)、大分県(7.3)、石川県(6.9)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では新潟県(0.85)、岩手県(0.63)、長野県(0.55)が多い。百日咳の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では栃木県(0.25)、新潟県(0.22)、千葉県(0.17)、和歌山県(0.13)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は第20週以降増加が続いている。都道府県別では愛媛県(9.4)、群馬県(6.9)、愛知県(5.2)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では佐賀県(2.96)、宮崎県(2.08)、岐阜県(2.04)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では沖縄県(3.00)、富山県(2.00)、埼玉県(1.56)が多い。
◆ 麻しん
麻しんは「はしか」とも呼ばれ、麻しんウイルス(Paramyxovirus 科Morbillivirus 属)によって引き起こされる感染症で、39℃前後の高熱と耳介後部から始まって体の下方へと広がる赤い発疹を特徴とする全身性疾患である。麻しんに対して免疫を持たない者が感染した場合、典型的な臨床経過としては10〜12日間の潜伏期を経て発症し、カタル期(2〜4日間)、発疹期(3〜5日間)、回復期へと至る。一方、ヒトの体内に入った麻しんウイルスは、免疫を担う全身のリンパ組織を中心に増殖し、一過性に強い免疫不全状態を生じるため、麻しんウイルスそのものによるものだけでなく、細菌の二次感染による肺炎や中耳炎などの合併症も生じうる。また、発生頻度は低いものの、麻しんウイルスによる脳炎や、罹患後7〜10年の期間を経て発症する亜急性硬化性全脳炎(SSPE)などの合併症もある。麻しんは接触感染、飛沫感染、空気感染(飛沫核感染)のいずれの感染経路でも感染し、発症した場合に麻しんに特異的な治療方法はない。手洗い、マスク等の感染対策も十分に効果的な予防手段とは言えず、唯一の有効な予防方法はワクチンの接種によって麻しんに対する免疫を予め獲得しておくことである。
2008年の1月1日から開始された麻しんの全数把握調査によると、第27週(6月30〜7月6日診断のもの)の麻しん患者発生報告数は7月9日現在で15都道府県から132例あり、都道府県別では千葉県63例、神奈川県24例、東京都12例、埼玉県6例、京都府6例、北海道5例の順となっている(図1、図2)。第22週以降は千葉県からの報告が最も多い状態が続いている。累積報告数は、第1週から第27週までに47都道府県から10,037例であり、第27週目で1万例を超えた。都道府県別では神奈川県3,345例、北海道1,384例、東京都1,063例、千葉県907例、福岡県658例、埼玉県352例、大阪府337例、静岡県217例、愛知県184例、秋田県156例の順となっている(図3)。2008年初頭から継続していた神奈川県、東京都、埼玉県の南関東地域の流行は、沈静化へむかっていると思われる一方で、千葉県では、5月10〜11日に開催された高校の柔道大会を契機に、15〜19歳の年代の報告数が増加した。同県の麻しん患者の報告数は、柔道大会以降の第21〜27週だけで2008年の総累積報告数907例の半数を超える502例に達している。
病型別累積報告数は、臨床診断例6,405例(63.8%)、検査診断例2,772例(27.6%)、修飾麻しん(検査診断例)860例(8.6%)となっており、臨床診断例が最多である(図4)。
図1. 麻しん報告数の週別推移(2008年第1〜27週) | 図2. 麻しんの都道府県別報告状況(2008年第27週) | 図3. 麻しんの都道府県別累積報告状況(2008年第1〜27週) |
図4. 麻しん累積報告数の病型別割合(2008年第1〜27週) |
図5. 麻しん累積報告数の年齢群別割合(2008年第1〜27週) | 図6. 麻しん累積報告数のワクチン接種歴別年齢分布(2008年第1〜27週) | 図7. 麻しん累積報告数のワクチン接種歴別割合(2008年第1〜27週) |
表. 脳炎合併の報告があった麻しん症例(2008年第1〜27週) |
■麻疹(はしか):http://idsc.nih.go.jp/disea
se/measles/index.html
□緊急情報「2012年麻疹排除(Elimination)に向けて」
●「麻疹」の届出基準・届け出様式、「風疹」の届出基準・届出様式、ポスター
●2008年4月1日以降の予防接種スケジュール
●2008〜2012年度麻疹・風疹の定期予防接種対象者
●第3期・第4期予防接種勧奨リーフレット
□対策・ガイドラインなど
●麻疹の現状と今後の麻疹対策について
●都道府県における麻しん対策会議のガイドライン
●学校における麻しん対策ガイドライン
●麻しん排除に向けた積極的疫学調査ガイドライン第二版
●医師による麻しん届出ガイドライン第二版
●医療機関での麻疹対応ガイドライン第二版
●「麻しん対策ブロック会議」関連資料等
□国内情報
●注目すべき感染症/速報
●麻しん発生状況(速報グラフ)
●麻しん施設別発生状況(学校欠席者数)
●病原微生物検出情報[IASR](麻疹特集・速報、ウイルス分離・検出状況他)
●高い接種率を達成した自治体における接種率向上への取り組み
●平成19年度定期の予防接種(麻しん風しん第2期)の実施状況の調査結果について(第1報)
●平成19年度定期の予防接種(麻しん風しん第2期)の実施状況の調査結果について(第2報)
●わが国の健常人における麻疹PA抗体保有状況
□関連情報
●麻しんに関する特定感染症予防指針
●予防接種法施行令の一部を改正する政令 〜定期予防接種対象者に関する改正〜
●「定期の予防接種の実施について」の一部改正 〜定期(一類疾病)の予防接種実施要領の改正〜
■Q&A:http://idsc.nih.go.jp/disease/measles/QA.html
■予防接種の話「麻疹」:http://idsc.nih.go.jp/vaccine/b-measles.html
■年齢別麻疹、風疹、MMRワクチン接種率:http://idsc.nih.go.jp/vaccine/atopics/atpcs001.html
■感染症の話「麻疹」:http://idsc.nih.go.jp/idwr/kansen/k03/k03_03/k03_03.html
■麻疹発生DB(データベース):http://idsc.nih.go.jp/disease/measles/meas-db.html
■「麻疹・風疹ワクチンなぜ2回接種なの?」ポスター:http://idsc.nih.go.jp/vaccine/cpn01.html
■「麻疹風疹混合ワクチンを1歳のお誕生日のプレゼントにしましょう」ポスター:http://idsc.nih.go.jp/vaccine/cpn04.html
■「小学校入学準備に2回目の麻疹・風疹ワクチンを!」ポスター:http://idsc.nih.go.jp/vaccine/cpn07.html
■麻疹教育啓発ビデオ「はしかから身を守るために」:
http://idsc.nih.go.jp/disease/measles/Video/measlesVideo.html
■Surveillance, Focus, Measles“Measles update in Japan as of end of week12(23 March2008)”:
http://idsc.nih.go.jp/disease/measles_e/idwr200812.html
◆ 腸管出血性大腸菌感染症
腸管出血性大腸菌感染症は、感染症法の3類感染症として、無症状病原体保有者を含む症例の報告が、診断した全ての医師に義務付けられている。無症状病原体保有者は、食品産業従事者等での検便によって偶然発見される場合もあるが、届け出された患者と食事をともにした者や、接触者の調査などによって発見される場合が多い。届出の基準としては、大腸菌の分離・同定かつ分離菌におけるベロ毒素の確認が必要であるが、2006年4月以降は、溶血性尿毒症症候群(HUS)発症例に限り、便からのベロ毒素の検出や血清抗体(O抗原凝集抗体あるいはベロ毒素抗体)の検出によって診断された場合も届出の対象とされている。
2008年の腸管出血性大腸菌感染症報告数は、例年報告数の少ない第11週に一時的に増加した。これは佐賀県でオーストラリアへ修学旅行に行った高校生がO26 VT1に多数感染し、帰国した生徒から感染した家族の報告を含め、第10〜13週にかけて計76例が報告されたためである(IDWR 第10巻第20号「速報」参照)。その後第18週から徐々に増加し始め、第24週から急増し、第24週以降100〜150例で推移している。第27週は141例であった(図)。本年第27週までの累積報告数1,136例は、2000年以降では2001年、2007年、2002年に次いで4番目に多い(2000年1,083例、2001年1,481例、2002年1,161例、2003年743例、2004年1,026例、2005年1,068例、2006年1,036例、2007年1,234例)。
第27週に報告のあった141例は、有症状者が65例(46%)で、無症状病原体保有者が76例(54%)であった。都道府県別にみると、富山県(20例)、山形県(19例)、秋田県(16例)からの報告が多く、次いで東京都(11例)、群馬県(10例)の順に多かった。富山県では第26週から保育施設における集団発生(O26 VT1)により、山形県では小学校における集団発生(O111 VT1)により、秋田県では宅配弁当を介した集団発生(O157 VT1・VT2)により報告が増加している。性別では男性72例、女性69例であり、年齢群別では0〜9歳57例、10〜19歳23例、30〜39歳16例の順に多かった。
第1〜27週の累積報告数1,136例についてみると、報告の多い都道府県は、佐賀県(80例)、東京都(69例)、神奈川県(66例)、京都府(65例)、福岡県(63例)であった。性別では男性528例、女性608例であり、年齢群別では0〜9歳320例、10〜19歳238例、20〜29歳177例の順に多かった。
溶血性尿毒症症候群(HUS)は、第27週までに17例報告があった(表)。17例のうち5例は、菌の分離はされなかったが、血清抗体の検出により届け出られたものである。また、年齢は0〜4歳が8例、5〜9歳が2例、10代が6例、50代が1例となっており、17例中14例が15歳未満の小児であった。また、第27週に60代女性患者(O157 VT2)の死亡例が1例報告され、本年初の死亡例となっている。
HUSなどの合併症や死亡については、届け出時点以降での発生が十分反映されていない可能性があるので、発生があった場合の追加・修正報告を自治体に依頼している。
図. 腸管出血性大腸菌の年別・週別発生状況(1999年第14週〜2008年第27週) |
表. 溶血性尿毒症症候群(HUS)届出症例(n=17)(2008年第1〜27週) |
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