国立感染症研究所 感染症情報センター
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IDWR 感染症発生動向調査週報

第30号ダイジェスト
(2008年7月21日〜7月27日)

 発生動向総覧


※2008年5月12日からの法改正に伴い、疾病の名称および並び順を一部変更しました。

全数報告の感染症

〈第30週コメント〉 7月30日集計分

注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。

*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。

1類感染症: 報告なし
2類感染症: 結核231例
3類感染症: コレラ1例(感染地域:フィリピン)
細菌性赤痢14例

感染地域:福岡県11例*、神奈川県1例、インドネシア2例
*飲食店における集団発生

腸管出血性大腸菌感染症117例(有症者73例、うちHUS 1例)

感染地域:国内117例
国内の多い感染地域:岩手県9例、大阪府9例、福岡県8例、兵庫
県7例、広島県7例、山形県6例
年齢群:1歳(2例)、2歳(6例)、3歳(6例)、4歳(5例)、5歳(8例)、6歳(3例)、7歳(2例)、8歳(3例)、9歳(2例)、10代(18例)、20代(19例)、30代(16例)、40代(4例)、50代(10例)、60代(6例)、70代(4例)、80代(3例)
血清型・毒素型:O157 VT2(37例)、O157 VT1・VT2(37例)、O26 VT1(13例)、O157 VT1(5例)、O111 VT1(3例)、O121 VT2(3例)、O25 VT1(1例)、O91 VT1(1例)、O111 VT1・VT2(1例)、その他・不明(16例)

腸チフス2例(感染地域:大阪府1例、インドネシア1例)
パラチフス1例(感染地域:インドネシア/タイ)
4類感染症: A型肝炎5例(感染地域:広島県2例、山口県1例、フィリピン1例、ネパール1例)
デング熱1例(感染地域:タイ)
マラリア2例

三日熱_感染地域:インド
熱帯熱1例_感染地域:シエラレオネ

レジオネラ症7例(肺炎型6例、ポンティアック型1例)

感染地域:埼玉県2例、宮城県1例(温泉)、静岡県1例、愛知県1例、京都府1例、広島県1例
年齢群:10代(1例)、50代(2例)、60代(2例)、80代(2例)

5類感染症:
アメーバ赤痢10例(腸管アメーバ症6例、腸管外アメーバ症2例、腸管及び腸管外アメーバ症2例)

感染地域:愛媛県2例、宮城県1例、東京都1例、富山県1例、愛知県1例、兵庫県1例、山口県1例、徳島県1例、国内(都道府県名不明)1例
感染経路:経口感染1例、性的接触2例(同性間2例)、経口感染/性的接触(異性間・同性間不明)1例、不明6例

急性脳炎1例(病原体不明_年齢群:9歳)
後天性免疫不全症候群8例(AIDS 3例、無症候3例、その他2例)

感染地域:国内7例、タイ1例
感染経路:性的接触6例(異性間2例、同性間4例)、不明2例

梅毒5例(早期顕症I期2例、早期顕症II期2例、無症候1例)
破傷風3例〔年齢群:70代(2例)、80代(1例)〕
麻しん53例〔麻しん(検査診断例17例、臨床診断例30例)、修飾麻しん(検査診断例6例)〕

感染地域:国内53例
国内の多い感染地域:神奈川県11例、千葉県8例、東京都7例、兵庫県4例、埼玉県3例、愛知県3例
年齢群:0歳(7例)、1歳(4例)、2歳(2例)、3歳(2例)、4歳(1例)、5〜9歳(2例)、10〜14歳(10例)、15〜19歳(10例)、20〜24歳(4例)、25〜29歳(6例)、30〜34歳(4例)、40代(1例)

累積報告数:10,442例〔麻しん(検査診断例2,970例、臨床診断例6,566例)、修飾麻しん(検査診断例906例)〕

(補)他に2008年第29週までに診断されたものの報告遅れとして、E型肝炎1例〔感染地域(感染源):インド(不明)〕、日本紅斑熱2例(感染地域:千葉県1例、和歌山県1例)、ブルセラ症1例〔感染地域(感染源):ペルー(不明)〕、急性脳炎2例〔麻しんウイルス1例(10代)、病原体不明1例(4歳)〕、バンコマイシン耐性腸球菌感染症2例(遺伝子型:不明2例_菌検出検体:胸水1例、ペースメーカーシース先1例)などの報告があった。


定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)

全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患によ り小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000カ所)、眼科定点(約600カ所)、基 幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
過去5年間の同時期との比較

インフルエンザ:定点当たり報告数は第22週以降減少が続いている。都道府県別では沖縄県(1.07)が多い。

小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症は237例の報告があり、報告数は微増した。年齢別では1歳以下の報告数が全体の約75%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では鹿児島県(2.45)、愛媛県(2.24)、新潟県(1.70)、東京都(1.56)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は第24週以降減少が続いているが、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してやや多い。都道府県別では鳥取県(1.74)、山口県(1.74)、山形県(1.73)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は第22週以降減少が続いている。都道府県別では大分県(5.8)、宮崎県(5.7)、福井県(5.5)が多い。水痘の定点当たり報告数は25週以降減少が続いている。都道府県別では愛媛県(1.81)、福井県(1.77)、千葉県(1.56)が多い。手足口病の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では三重県(10.0)、石川県(9.5)、富山県(8.5)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では石川県(0.41)、新潟県(0.38)、山形県(0.30)が多い。百日咳の定点当たり報告数は2週連続で減少したが、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では沖縄県(0.15)、長野県(0.09)、愛媛県(0.08)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は減少した。都道府県別では長野県(9.0)、愛媛県(6.8)、埼玉県(6.1)、山形県(5.9)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では佐賀県(2.57)、宮崎県(1.64)、岐阜県(1.17)、高知県(1.17)が多い。

基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では沖縄県(2.57)、福島県(1.29)、富山県(1.20)が多い。





◆ 腸管出血性大腸菌感染症

 2008年の腸管出血性大腸菌感染症報告数は、第11(〜13)週にオーストラリアへ修学旅行に行った高校生がO26 VT1に感染した計76例の報告が佐賀県からあり、一時的に増加した。その後は、第18週から徐々に増加し始め、第24週(6月9日〜)に急増して1週間当たりの報告数が100例を超え、以降はほぼ100〜150例で推移している。第30週の報告は117例であり、第30週までの累積報告数1,533例は、2000年以降では6番目に多い(2000年1,436例、2001年2,030例、2002年1,555例、2003年1,126例、2004年1,525例、2005年1,570例、2006年1,560例、2007年1,802例)。
 第30週(7月21〜27日診断のもの)の報告117例は、患者(有症状者)が73例(62%)で、無症状病原体保有者44例(38%)であった。31都府県から報告があり、都道府県別では、岩手県(9例)、大阪府(8例)、兵庫県(8例)、福岡県(8例)、東京都(7例)、広島県(7例)が多かった。感染地域はすべて国内で、都道府県別では、岩手県(9例)、大阪府(9例)、福岡県(8例)、兵庫県(7例)、広島県(7例)が多かった。岩手県では複数の家族内発生により報告が増加した。性別では男性43例、女性74例であり、年齢群別では0〜9歳37例、20〜29歳19例、10〜19歳18例の順に多かった。
 第1〜30週(2006年12月31日〜2007年7月27日診断のもの)の累積報告1,533例は、患者が1,039例(68%)、無症状病原体保有者が494例(32%)であった。すべての都道府県から報告があり、報告の多い都道府県は、東京都(104例)、大阪府(89例)、福岡県(86例)、佐賀県(85例)、神奈川県(82例)、京都府(75例)であった。感染地域は国内が1,441例、国外が91例、国内か国外か不明が1例であり、国内の都道府県別では、大阪府(88例)、東京都(80例)、京都府(76例)、福岡県(76例)の順で多かった。性別では男性696例、女性837例であり、年齢群別では0〜9歳456例(うち有症者358例:78.5%)、10〜19歳290例(同223例:77%)、20〜29歳238例(同176例:74%)の順に多かった。
 溶血性尿毒症症候群(HUS)は、第30週までに24例報告があった。24例のうち7例は、菌は分離されなかったが、血清抗体の検出により届け出られたものである。都道府県別では、17都道府県(東京都5例、秋田県2例、大阪府2例、愛媛県2例、北海道、群馬県、新潟県、石川県、福井県、三重県、京都府、和歌山県、徳島県、香川県、高知県、鹿児島県、沖縄県各1例)から報告があった。年齢は0〜4歳が10例、5〜9歳が6例、10代が7例、50代が1例となっており、24例中21例が15歳未満の小児であった。前週の集計(7月23日)以降に新たに報告された2例は、第29週に診断された6歳〔香川県からの報告、O血清群:O157(血清抗体による診断)、感染源:不明〕及び、第30週に診断された6歳〔福井県からの報告、O血清群:不明、感染源:不明〕である。24例中7例では生肉・生レバーが感染源とされていた(以前のHUS症例の報告については、感染症週報2008年第29号「注目すべき感染症」を参照)。
 また、第27週には、基礎疾患に腎臓病を持った60代女性患者(O157 VT2)の死亡例が報告されている。

図. 腸管出血性大腸菌の年別・週別発生状況(1999年第14週〜2008年第30週)


 腸管出血性大腸菌感染症は、わが国において、毎年約3,000〜4,500例の報告が続いている疾患である。本年は、2000年以降の同時期までの発生数との比較では、平均的な発生状況といえるが、重症の合併症であるHUSは24例の報告があり、基礎疾患の悪化による死亡例も1例報告されている。
 例年の発生状況からは、今後報告のピークの時期を迎えると考えられる。患者・感染者を増やさないよう、HUS症例や死亡者を出さないよう、予防対策の徹底が必要である。食品の取り扱い等の一般的な食中毒対策に加え、特に、小児、高齢者や抵抗力の弱い者などでは、肉・レバーなどはよく加熱し、生食は控えることが肝要である。また、患者・無症状病原体保有者から周囲の人々への感染が起こりやすい疾患なので、手洗いの励行等の二次感染予防対策の一層の徹底が重要である。


(補)腸管出血性大腸菌感染症については、
 □週報IDWR
  ・感染症の話:http://idsc.nih.go.jp/idwr/kansen/k02_g1/k02_06/k02_06.html
  ・注目すべき感染症
   第25号:http://idsc.nih.go.jp/idwr/kanja/idwr/idwr2008/idwr2008-25.pdf
   第27号:http://idsc.nih.go.jp/idwr/kanja/idwr/idwr2008/idwr2008-27.pdf
   第29号:http://idsc.nih.go.jp/idwr/kanja/idwr/idwr2008/idwr2008-29.pdf
  ・速報「修学旅行先において腸管出血性大腸菌(EHEC)O26に感染したと思われる事例−
   佐賀県」:http://idsc.nih.go.jp/idwr/kanja/idwr/idwr2008/idwr2008-20.pdf
  ・速報「焼肉店が原因施設とされた腸管出血性大腸菌O157:H7食中毒事例−福井県:
   http://idsc.nih.go.jp/idwr/kanja/idwr/idwr2008/idwr2008-21.pdf
 □月報IASR
  ・<特集>:http://idsc.nih.go.jp/iasr/29/339/tpc339-j.html
 □菌の検出状況:http://idsc.nih.go.jp/iasr/prompt/graph-lj.html

 などもご参照ください。


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