発生動向総覧
※2008年5月12日の法改正に伴い、疾病の名称および並び順を一部変更しました。
〈第33週コメント〉 8月20日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 293例 |
3類感染症: |
コレラ1例(感染地域:宮城県)
細菌性赤痢4例
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感染地域:福岡県3例*、カンボジア1例
*うち2例は、第30週の11例、第32週の1例とともに同一飲食店関連の集団発生
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腸管出血性大腸菌感染症216例(有症者139例、うちHUS 3例)
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感染地域:国内215例、韓国1例
国内の多い感染地域:東京都36例1)、熊本県13例2)、埼玉県11例、大阪府10例3)、宮城県8例、千葉県8例、秋田県7例、岡山県7例、宮崎県7例、山形県6例4)、群馬県6例5)、静岡県6例、愛知県6例
集団発生:保育園関連
1)うち15例(第32週の13例とともに)、
2)うち12例(第31〜32週の計12例とともに)、
3)うち1例(第31〜32週の計17例とともに)
放課後児童クラブに関連
4)うち5例(第32週の4例とともに)
飲食店に関連
5)うち5例
年齢群:0歳(4例)、1歳(13例)、2歳(20例)、3歳(18例)、4歳(8例)、5歳(8例)、6歳(5例)、7歳(5例)、8歳(9例)、9歳(6例)、10代(22例)、20代(37例)、30代(20例)、40代(7例)、50代(10例)、60代(17例)、70代(3例)、80代(4例) 血清型・毒素型:O157 VT2( 68例)、O157 VT1・VT2( 62例)、O26 VT1(48例)、O121 VT2(3例)、O157 VT1( 3例)、O103 VT1( 2例)、O111 VT2( 2例)、O145 VT1(2例)、O111 VT1・VT2(1例)、O115 VT2(1例)、O126 VT1(1例)、O145 VT2(1例)、O157 VT2/O26 VT1(1例)、その他・不明(21例)
累積報告数:2,310例(有症者1,561例、うちHUS 36例、死亡1例)
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パラチフス1例(感染地域:愛知県) |
4類感染症: |
A型肝炎3例(感染地域:北海道1例、岐阜県1例、福岡県1例) コクシジオイデス症1例(感染地域:米国) デング熱3例(感染地域:インドネシア1例、タイ1例、タイ/マレーシア1例)
日本紅斑熱6例(感染地域:三重県2例、宮城県1例、千葉県1例、和歌山県1例、鹿児島県1例)
レジオネラ症13例(肺炎型13例)
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感染地域:岩手県3例(うち温泉1例)、石川県2例、千葉県1例、三重県1例、広島県1例、山口県1例、福岡県1例、鹿児島県1例、国内(都道府県不明)2例
年齢群:40代(2例)、50代(3例)、60代(3例)、70代(2例)、80代(3例)
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レプトスピラ症1例(感染地域:宮崎県_感染原因:水田)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢10例(腸管アメーバ症8例、腸管外アメーバ症2例) |
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感染地域:栃木県1例、千葉県1例、東京都1例、奈良県1例、広島県1例、国内(都道府県不明)4例、国内・国外不明1例
感染経路:経口感染2例、性的接触4例(異性間2例、同性間1例、経口/同性間1例)、不明4例
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ウイルス性肝炎4例 |
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B型肝炎1例_感染経路:性的接触(異性間)
C型肝炎3例_感染経路:静注薬物使用1例、不明2例
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急性脳炎1例(病原体不明_年齢群:4歳)
クリプトスポリジウム症1例(感染地域:韓国)
クロイツフェルト・ヤコブ病2例(孤発性プリオン病古典型2例)
劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(年齢群:60代)
後天性免疫不全症候群22例(AIDS 4例、無症候16例、その他2例) |
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感染地域:国内20例、ブラジル1例、国内/フィリピン1例
感染経路:性的接触21例(異性間8例、同性間11例、異性/同性間2例)、不明1例
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ジアルジア症2例(感染地域:大分県1例、ペルー1例)
梅毒10例(早期顕症I期2例、早期顕症II期4例、晩期顕症1例、無症候3例)
破傷風2例〔年齢群:50代(1例)、80代(1例)〕
バンコマイシン耐性腸球菌感染症2例(遺伝子型:VanC 2例_菌検出検体:血液2例)
風しん2例(臨床診断例2例)
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感染地域:栃木県1例、国内(都道府県不明)1例
年齢群:3歳(1例)、5歳(1例)
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麻しん32例〔麻しん(検査診断例14例、臨床診断例13例)、修飾麻しん(検査診断例5例)〕
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感染地域:国内32例
国内の多い感染地域:千葉県6例、神奈川県6例、茨城県2例、東京都2例、静岡県2例、大阪府2例、兵庫県2例、愛媛県2例
年齢群:0歳(6例)、1歳(5例)、3歳(1例)、4歳(1例)、5〜9歳(1例)、10〜14歳(2例)、15〜19歳(4例)、20〜24歳(4例)、25〜29歳(3例)、30〜34歳(1例)、35〜39歳(1例)、40代(3例)
累積報告数:10,635例〔麻しん(検査診断例3,043例、臨床診断例6,652例)、修飾麻しん(検査診断例940例)〕
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(補)他に2008年第32週までに診断されたものの報告遅れとして、コレラ1例(感染地域:インド)、細菌性赤痢1例(感染地域:フィジー)、E型肝炎1例〔感染地域(感染源):中国(不明)〕、デング熱1例(感染地域:フィリピン)、日本紅斑熱1例(感染地域:和歌山県)、レジオネラ症1例〔感染地域:岩手県(温泉)〕、急性脳炎2例〔病原体不明2例.10代(1例)、50代(1例)〕、劇症型溶血性レンサ球菌感染症3例〔30代(1例)、60代(1例)、80代(1例)〕、風しん1例(検査診断例.感染地域:ベトナム.年齢群:20〜24歳)などの報告があった。
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◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は減少した。都道府県別では沖縄県(0.60)、静岡県(0.03)、熊本県(0.03)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症は330例の報告があり、報告数は減少した。年齢別では1歳以下の報告数が全体の約78%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は第30週以降減少が続いている。都道府県別では愛媛県(2.11)、宮崎県(1.75)、佐賀県(1.57)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は第24週以降減少が続いている。都道府県別では大分県(1.56)、宮崎県(1.11)、福井県(0.95)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では大分県(5.4)、福井県(5.1)、宮崎県(4.9)が多い。水痘の定点当たり報告数は25週以降減少が続いている。都道府県別では徳島県(1.43)、青森県(1.24)、宮崎県(1.14)が多い。手足口病の定点当たり報告数は第30週以降減少が続いている。都道府県別では新潟県(6.7)、石川県(6.1)、富山県(4.3)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では新潟県(0.20)、大分県(0.17)、長崎県(0.16)が多い。百日咳の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い。都道府県別では千葉県(0.15)、福井県(0.09)、奈良県(0.09)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は第30週以降減少が続いている。都道府県別では長野県(4.4)、秋田県(4.4)、山形県(4.4)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は減少したが過去5年間の同時期と比較するとやや多い。都道府県別では福島県(2.29)、沖縄県(2.14)、青森県(1.50)が多い。
〈7月コメント〉
◆性感染症について 2008年8月8日集計分 性感染症定点数:963
(産婦人科・産科・婦人科:462、泌尿器科:396、皮膚科91、性病科14)
●月別推移
2008年7月の月別定点当たり患者報告数は、性器クラミジア感染症が2.66(男1.21、女1.44)、性器ヘルペスウイルス感染症が0.76(男0.32、女0.44)、尖圭コンジローマが0.58(男0.35、女0.23)、淋菌感染症が0.92(男0.77、女0.16)であった。男性では性器クラミジア感染症、次いで淋菌感染症が多く、女性では性器クラミジア感染症、次いで性器ヘルペスウイルス感染症が多かった(図1)
前月に比べると、男性では4疾患すべてで増加し、女性では4疾患すべてで減少した(28〜31ページ「グラフ総覧」参照)。
男女別に過去5年間の同時期と比較すると、性器クラミジア感染症は男女ともにやや少なかった。性器ヘルペスウイルス感染症は男性でやや少なく、女性でかなり少なかった。尖圭コンジローマは女性でやや少なかった。淋菌感染症は男女ともにやや少なかった(図2)。
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図1. 各性感染症が総報告数に占める割合(7月) |
●男女別・年齢階級別
年齢群(0歳、1〜4歳、5〜69歳は5歳毎、および70歳以上)でみた定点当たり報告数のピークは、男性では性器クラミジア感染症、性器ヘルペスウイルス感染症、尖圭コンジローマは25〜29歳、淋菌感染症では20〜24歳であった。一方、女性では性器クラミジア感染症、尖圭コンジローマ、淋菌感染症は20〜24歳、性器ヘルペスウイルス感染症は20〜29歳の2つの年齢群であり、女性の罹患年齢が男性に比べてやや低い傾向が認められた(図3:PDF参照)。また、性器クラミジア感染症、尖圭コンジローマ、淋菌感染症の3疾患は、男性では60代以降は僅かであり、女性では50代以降の報告はないか、あっても僅かである。しかし、性器ヘルペスウイルス感染症は男女ともに、50代以降の報告も少なくない。この年齢層は再発例が含まれている可能性が以前から指摘されており、2006年4月の届出基準改正により、抗体のみ陽性のものの除外に加えて「明らかな再発例は除外する」ことが明示された。しかし、報告数や年齢群分布において明らかな変化は見られておらず、この基準変更の周知徹底が必要と考える。
年齢群毎にみた定点当たり報告数の男女の比較では、淋菌感染症では、すべての年齢群で男性が女性よりも多かった。一方、性器クラミジア感染症では15〜29歳の3つの年齢群、性器ヘルペスウイルス感染症では15〜39歳、50〜54歳、70歳以上の7つの年齢群、尖圭コンジローマでは15〜24歳の2つの年齢群の、比較的低い年齢層を中心に女性が男性よりも多かった。ただし、性感染症定点は泌尿器科系、婦人科系および皮膚科系などの診療科から構成されており、男女の比較についてはそれらの比率の影響を受ける可能性がある。
●若年齢層での推移
感染症法が施行された1999年4月以降について、若年層(15〜29歳)における各疾患の定点当たり報告数を男女別・月別に(図4:PDF参照)に示した。性器クラミジア感染症と淋菌感染症は男女ともに2003年以降減少傾向がみられる。一方、性器ヘルペスウイルス感染症と尖圭コンジローマは、男女ともに2005年半ば頃からごく微かな減少傾向がみられるものの、この間全体としてはほぼ横ばいの状況である。
前月との比較では、男性では性器クラミジア感染症は同値で、性器ヘルペスウイルス感染症、尖圭コンジローマ、淋菌感染症は増加した。女性では性器クラミジア感染症、淋菌感染症が減少し、性器ヘルペスウイルス感染症は同値で、尖圭コンジローマは増加した。
◆薬剤耐性菌について (8月8日集計分)
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基幹定点数(7月):464.
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●月別
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メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症
4.31(前月:4.38、前年同月:4.42)
定点当たり報告数は、例年年間を通じてほぼ一定である。7月は前月より若干減少したが、過去9年間の同月との比較では上位に属した。
ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)感染症
0.74(前月:1.09、前年同月:0.76)
定点当たり報告数は、例年春から初夏にかけて(4〜6月)と冬(11、12月)に多く、夏(7〜9月)に少なく推移している。7月は前月より減少し、過去9年間の同月との比較では下位に属した。
薬剤耐性緑膿菌感染症
0.09(前月:0.09、前年同月:0.11)
定点当たり報告数は、例年後半が前半に比して多い傾向がある。7月は前月より若干増加したが、過去9年間の同月との比較では下位に属した。
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●年齢階級別
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MRSA感染症
高齢者に多く、70歳以上が全体の64%を占めている(図1:PDF参照)
PRSP感染症
小児と高齢者に多い。5歳未満が全体の70%を占める一方、70歳以上が全体の15%を占めている(図2:PDF参照)。
薬剤耐性緑膿菌感染症
高齢者に多く、70歳以上が全体の63%を占めている(図3:PDF参照)
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●性別:女性を1 として算出した男/女比
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MRSA感染症…男:女=1.7:1
PRSP感染症…男:女=1.5:1
薬剤耐性緑膿菌感染症…男:女=4.4:1
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●都道府県別
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MRSA感染症
定点当たり報告数は新潟県(9.5)、滋賀県(8.6)、岐阜県(8.4)が多い。
PRSP感染症
定点当たり報告数は千葉県(5.0)、富山県(2.6)、群馬県(2.1)が多い。
薬剤耐性緑膿菌感染症
報告総数が43件にとどまるため、都道府県別定点当たり報告数の評価は困難である。
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◆ 腸管出血性大腸菌感染症
2008年の腸管出血性大腸菌感染症報告数は、第11(〜13)週に、オーストラリアへ修学旅行に行った高校生(76例)の集団発生があり一時的に増加した。その後、第18週から徐々に増加し始め、第24週に100例を超えた。第24〜30週はほぼ100〜150例で推移していたが、第31週に大きく増加し250例を超えた。第31週261例、第32週263例で、第33週は216例であった。第33週までの累積報告数2,310例は、2000年以降では3番目に多い(2000年1,872例、2001年3,033例、2002年2,175例、2003年1,385例、2004年2,194例、2005年2,069例、2006年2,090例、2007年2,343例)(図1)。
第33週(8月11日〜8月17日診断のもの)の報告216例は、患者(有症状者)が139例(64%)で、無症状病原体保有者77例(36%)であった。37都道府県から報告があり、都道府県別では、東京都(44例)、埼玉県(14例)、熊本県(13例)、大阪府(12例)が多かった。感染地域は国内215例、国外1例(韓国)であった。国内の感染地としての都道府県別では、東京都(36例)、熊本県(13例)、埼玉県(11例)、大阪府(10例)が多かった。東京都(第32週からの発生)、熊本県(第31週からの発生)、大阪府(第31週からの発生)ではいずれも保育園に関連した集団発生があった。このほか、群馬県では飲食店での食中毒による集団発生があった。性別では男性85例、女性131例で、年齢群別では0〜9歳96例、20〜29歳37例、10〜19歳22例の順に多かった。
第1〜33週(2007年12月31日〜2008年8月17日診断のもの)の累積報告2,310例は、患者が1,561例(68%)、無症状病原体保有者が749例(32%)であった。報告はすべての都道府県からあり、報告の多い都道府県は、東京都(198例)、大阪府(146例)、福岡県(104例)、神奈川県(99例)、愛知県(98例)、京都府(94例)、佐賀県(91例)、兵庫県(89例)、長崎県(88例)であった(図2)。感染地域は国内が2,212例、国外が93例、国内か国外か不明が5例であり、国内の感染地域としての都道府県別では、東京都(154例)、大阪府(143例)、京都府(94例)、福岡県(93例)、長崎県(87例)、愛知県(86例)の順で多かった。性別では男性1,081例、女性1,229例であり、年齢群別では0〜9歳794例(うち患者75%)、10〜19歳389例(同78%)、20〜29歳361例(同76%)、30〜39歳251例(同45%)、40〜49歳127例(同45%)、50〜59歳166例(同47%)、60〜69歳111例(同51%)、70〜79歳60例(同75%)、80〜89歳44例(同75%)、90〜99歳7例(同71%)であった。
溶血性尿毒症症候群(HUS)は、前週の集計(8月13日)以降に新たに3例が報告され、第33週までに36例の報告となった。36例のうち11例は、菌は分離されなかったが、血清抗体の検出によって届け出られたものである。都道府県別では、24都道府県(東京都5例、大阪府5例、秋田県2例、山形県2例、新潟県2例、愛媛県2例、北海道、栃木県、群馬県、千葉県、埼玉県、石川県、福井県、岐阜県、愛知県、三重県、京都府、和歌山県、徳島県、香川県、高知県、長崎県、鹿児島県、沖縄県各1例)から報告があった。年齢は0〜4歳が20例、5〜9歳が8例、10代が7例、50代が1例となっており、36例中33例が15歳未満の小児であった。また、36例中8例は生肉・生レバー、1例は生せんまい(牛の胃)、1例はステーキ、2例は焼肉が感染源とされていた(表1、表2)。
さらに、第27週には、基礎疾患に腎臓病を持った60代女性患者(O157 VT2)の死亡例が報告
されている。
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図1. 腸管出血性大腸菌感染症の年別・週別発生状況(1999年14週〜2008年第33週) |
図2. 腸管出血性大腸菌感染症の都道府県別報告状況(2008年第1〜33週) |
表1. 腸管出血性大腸菌感染症の溶血性尿毒症症候群(HUS)の年齢群別報告数(2008年第1〜33週) |
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表2. 溶血性尿毒症症候群(HUS)届出症例(n=36)(2008年第1〜33週) |
腸管出血性大腸菌感染症は、わが国において、毎年約3,000〜4,500例の報告が続いている疾患である。本年は、2000年以降の過去8年間の同時期までの発生数との比較では、3番目に多い報告数となっている。飲食店における集団発生が散見され、保育園に関連した集団発生が続いている。重症の合併症であるHUSは36例の報告となり、患者の2%以上、5歳未満に限れば5%以上に合併している。また、基礎疾患の悪化による死亡例も1例報告されている。
例年の状況からは、発生のピーク時期を迎えていると考えられ、予防対策の徹底が必要である。食品の取り扱い等の一般的な食中毒対策に加え、特に、小児、高齢者や抵抗力の弱い者などでは、肉・レバーなどはよく加熱し、生食は控えることが肝要である。また、患者・無症状病原体保有者から周囲の人々への感染が起こりやすい疾患なので、手洗いの励行等の二次感染予防対策の一層の徹底が重要である。
(補)腸管出血性大腸菌感染症については、
□週報IDWR
・感染症の話:http://idsc.nih.go.jp/idwr/kansen/k02_g1/k02_06/k02_06.html
・注目すべき感染症
第25号:http://idsc.nih.go.jp/idwr/kanja/idwr/idwr2008/idwr2008-25.pdf
第27号:http://idsc.nih.go.jp/idwr/kanja/idwr/idwr2008/idwr2008-27.pdf
第29号:http://idsc.nih.go.jp/idwr/kanja/idwr/idwr2008/idwr2008-29.pdf
第30号:http://idsc.nih.go.jp/idwr/kanja/idwr/idwr2008/idwr2008-30.pdf
第31号:http://idsc.nih.go.jp/idwr/kanja/idwr/idwr2008/idwr2008-31.pdf
第32号:http://idsc.nih.go.jp/idwr/kanja/idwr/idwr2008/idwr2008-32.pdf
・速報「修学旅行先において腸管出血性大腸菌(EHEC)O26に感染したと思われる事例
−佐賀県」:http://idsc.nih.go.jp/idwr/kanja/idwr/idwr2008/idwr2008-20.pdf
・速報「焼肉店が原因施設とされた腸管出血性大腸菌O157:H7食中毒事例
−福井県:http://idsc.nih.go.jp/idwr/kanja/idwr/idwr2008/idwr2008-21.pdf
□月報IASR
・<特集>「腸管出血性大腸菌感染症 2008年4月現在」:
http://idsc.nih.go.jp/iasr/29/339/tpc339-j.html
□菌の検出状況:http://idsc.nih.go.jp/iasr/prompt/graph-lj.html
などもご参照ください。
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