国立感染症研究所 感染症情報センター
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IDWR 感染症発生動向調査週報

第34号ダイジェスト
(2008年8月18日〜8月24日)

 発生動向総覧


※2008年5月12日からの法改正に伴い、疾病の名称および並び順を一部変更しました。

全数報告の感染症

〈第34週コメント〉 8月27日集計分

注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。

*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。

1類感染症: 報告なし
2類感染症: 結核304例
3類感染症: コレラ1例(感染地域:埼玉県)
細菌性赤痢14例

感染地域:福岡県9例*、宮城県1例、鹿児島県1例、カンボジア1例、バングラデシュ1例、インド1例
*すべて、第30週の11例、第32週の1例、第33週の2例とともに同一飲食店関連の集団発生

腸管出血性大腸菌感染症190例(有症者137例、うちHUS 5例)

感染地域:国内189例、兵庫県/アフガニスタン1例
国内の多い感染地域:埼玉県19例1)2)、東京都17例3)、愛知県10例、長崎県9例、北海道8例、石川県8例、福岡県8例、千葉県7例、兵庫県7例、岩手県6例、宮城県6例、岡山県6例4)
集団発生:グループホームに関連 1)うち6例
     保育園に関連 2)うち9例(第33週の3例とともに)、
            3)うち3例(第32週の13例、第33週の15例とともに)、
            4)うち1例(第32〜33週の計5例とともに)
年齢群:0歳(4例)、1歳(9例)、2歳(16例)、3歳(16例)、4歳(15例)、5歳(8例)、6歳(6例)、7歳(6例)、8歳(2例)、9歳(1例)、10代(29例)、20代(23例)、30代(11例)、40代(12例)、50代(8例)、60代(6例)、70代(10例)、80代(8例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2(65例)、O157 VT2(56例)、O26 VT1(32例)、O103 VT1(6例)、O145 VT1(4例)、O157 VT1(3例)、O111 VT1(2例)、O121 VT(22例)、O91 VT(11例)、O115 VT(11例)、その他・不明(18例)

累積報告数:2,536例(有症者1,721例、うちHUS 41例、死亡2例)

腸チフス1例(感染地域:タイ)
4類感染症: A型肝炎6例〔感染地域:北海道1例、島根県1例、熊本県1例、インド2例、パキスタン1例〕
デング熱3例(感染地域:インド3例)
日本紅斑熱5例(感染地域:千葉県3例、広島県1例、鹿児島県1例)
ブルセラ症1例(感染地域:愛知県)
マラリア1例(三日熱_感染地域:コートジボワール/ブルキナファソ)
レジオネラ症10例(肺炎型10例)

感染地域:神奈川県2例(うち温泉1例)、山形県1例、茨城県1例、東京都1例、滋賀県1例、大阪府1例、広島県1例、福岡県1例、国内(都道府県不明)1例
年齢群:30代(2例)、50代(2例)、70代(5例)、80代(1例)

5類感染症:
アメーバ赤痢9例(腸管アメーバ症8例、腸管外アメーバ症1例)

感染地域:茨城県1例、石川県1例、愛知県1例、大阪府1例、福岡
県1例、熊本県1例、国内(都道府県不明)2例、韓国/タイ1例
感染経路:経口感染3例、性的接触2例(異性間1例、異性/同性間1例)、不明4例

ウイルス性肝炎2例

B型肝炎1例_感染経路:性的接触(異性間)
C型肝炎1例_感染経路:不明

急性脳炎1例〔病原体不明_年齢群:1歳.死亡〕
クロイツフェルト・ヤコブ病2例(孤発性プリオン病古典型2例)
劇症型溶血性レンサ球菌感染症2例〔年齢群:60代(2例)〕
後天性免疫不全症候群14例(AIDS 3例、無症候11例)

感染地域:国内13例、タイ/カンボジア1例
感染経路:性的接触13例(異性間5例、同性間7例、異性/同性間1例)、不明1例

ジアルジア症1例(感染地域:福岡県)
梅毒4例(早期顕症I期1例、無症候3例)
破傷風2例〔年齢群:30代(1例)、60代(1例)〕
バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例(遺伝子型:VanC _菌検出検体:血液)
風しん2例(検査診断例2例)

感染地域:神奈川県1例、大阪府1例
年齢群:30〜34歳(1例)、70代(1例)

麻しん26例〔麻しん(検査診断例9例、臨床診断例15例)、修飾麻しん(検査診断例2例)〕

感染地域:国内26例
国内の多い感染地域:神奈川県5例、東京都3例、千葉県2例、山梨県2例、静岡県2例、愛媛県2例
年齢群:0歳(1例)、1歳(4例)、2歳(1例)、3歳(1例)、5〜9歳(1例)、10〜14歳(3例)、15〜19歳(7例)、20〜24歳(1例)、25〜29歳(1例)、30〜34歳(2例)、35〜39歳(3例)、40代(1例)

累積報告数:10,677例〔麻しん(検査診断例3,059例、臨床診断例6,670例)、修飾麻しん(検査診断例948例)〕

(補)他に2008年第33週までに診断されたものの報告遅れとして、細菌性赤痢2例(感染地域:カンボジア/ベトナム2例)、エキノコックス症2例(多包条虫2例_感染地域:北海道2例)、日本紅斑熱1例(感染地域:三重県)、レジオネラ症1例〔感染地域:富山県(温泉)〕、レプトスピラ症1例(感染地域:沖縄県_感染原因:水田)、急性脳炎3例〔ヒトヘルペスウイルス6型1例(0歳)、病原体不明2例(0歳1例、1歳1例)〕、クリプトスポリジウム症1例(感染地域:インドネシア)、劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(30代.死亡)、先天性風しん症候群1例(感染地域:神奈川県)、風しん3例〔検査診断例3例.感染地域:静岡県1例、兵庫県1例、国内(都道府県不明)1例.年齢群:8歳(1例)、25〜29歳(1例)、60代(1例)〕などの報告があった。


定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)

全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患によ り小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000カ所)、眼科定点(約600カ所)、基 幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
過去5年間の同時期との比較

インフルエンザ:定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では沖縄県(0.31)、福井県(0.09)、島根県(0.03)が多い。

小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症は443例の報告があり、報告数は増加した。年齢別では1歳以下の報告数が全体の約76%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してやや多い。都道府県別では愛媛県(2.14)、宮崎県(2.00)、鹿児島県(1.91)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では福井県(1.95)、大分県(1.86)、鳥取県(1.53)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では大分県(8.4)、宮崎県(7.1)、福井県(5.9)が多い。水痘の定点当たり報告数は25週以降減少が続いている。都道府県別では大分県(1.14)、新潟県(1.13)、山形県(1.03)が多い。手足口病の定点当たり報告数は第30週以降減少が続いている。都道府県別では新潟県(6.9)、石川県(4.4)、熊本県(3.6)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では鳥取県(0.26)、島根県(0.26)、新潟県(0.22)、大分県(0.22)が多い。百日咳の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では宮崎県(0.17)、三重県(0.09)、岡山県(0.09)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は第30週以降減少が続いている。都道府県別では山形県(4.1)、新潟県(2.6)、長野県(2.6)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では佐賀県(3.1)、宮崎県(2.6)、福井県(1.4)が多い。

基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較するとやや多い。都道府県別では沖縄県(2.86)、岡山県(2.00)、青森県(1.50)が多い。




 注目すべき感染症

◆ 腸管出血性大腸菌感染症

 2008年の腸管出血性大腸菌感染症報告数は、第11(〜13)週に、オーストラリアへ修学旅行に行った高校生(76例)の集団発生があり一時的に増加した。その後、第18週から徐々に増加しめ、第24週に100例を超えた。第24〜30週はほぼ100〜150例で推移していたが、第31週に大きく増加し250例を超えた。第31週261例、第32週266例、第33週は246例で、第34週は190例であった。第34週までの累積報告数2,536例は、2000年以降では3番目に多い(2000年2,085例、2001年3,296例、2002年2,319例、2003年1,549例、2004年2,416例、2005年2,264例、2006年2,324例、2007年2,625例)(図)。

 第34週(8月18日〜8月24日診断のもの)の報告190例は、患者(有症状者)が137例(72%)で、無症状病原体保有者53例(28%)であった。39都道府県から報告があり、都道府県別では、埼玉県(21例)、東京都(19例)、愛知県(11例)、兵庫県(10例)、千葉県(9例)、長崎県(9例)が多かった。感染地域は国内189例、国内またはアフガニスタン1例であった。国内の感染地域としての都道府県別では、埼玉県(19例)、東京都(17例)、愛知県(10例)、長崎県(9例)が多かった。埼玉県(第33週からの発生)、東京都(第32週からの発生)ではいずれも保育園に関連した集団発生があった。このほか、埼玉県ではグループホームにおける集団発生があった。性別では男性74例、女性116例で、年齢群別では0〜9歳83例、10〜19歳29例、20〜29歳23例の順に多かった。
 第1〜34週(2007年12月31日〜2008年8月24日診断のもの)の累積報告2,536例は、患者が1,721例(68%)、無症状病原体保有者が815例(32%)であった。報告はすべての都道府県からあり、報告の多い都道府県は、東京都(222例)、大阪府(149例)、福岡県(112例)、愛知県(110例)、神奈川県(106例)、兵庫県(99例)、長崎県(96例)、京都府(95例)、佐賀県(91例)であった。感染地域は国内が2,438例、国外が93例、国内か国外か不明が5例であり、国内の感染地域としての都道府県別では、東京都(175例)、大阪府(148例)、福岡県(101例)、愛知県(97例)、京都府(96例)、長崎県(95例)の順で多かった。性別では男性1,167例、女性1,369例であり、年齢群別では0〜9歳889例(うち患者75%)、10〜19歳420例(同79%)、20〜29歳391例(同76%)、30〜39歳263例(同45%)、40〜49歳139例(同45%)、50〜59歳182例(同48%)、60〜69歳120例(同52%)、70〜79歳71例(同70%)、80〜89歳54例(同76%)、90〜99歳7例(同71%)であった。

 溶血性尿毒症症候群(HUS)は、前週の集計(8月20日)以降に新たに5例が報告され、第34週までに41例の報告となった。41例のうち12例は、菌は分離されなかったが、血清抗体の検出によって届け出られた。都道府県別では、25都道府県(東京都6例、大阪府5例、秋田県2例、山形県2例、群馬県2例、埼玉県2例、新潟県2例、岡山県2例、愛媛県2例、北海道、栃木県、千葉県、石川県、福井県、岐阜県、愛知県、三重県、京都府、和歌山県、徳島県、香川県、高知県、長崎県、鹿児島県、沖縄県各1例)から報告があった。年齢は0〜4歳が21例、5〜9歳が9例、10代が9例、50代が1例、80代が1例となっており、41例中36例が15歳未満の小児であった(表)。原因菌が分離された29例でみたO血清群・ベロ毒素(VT)型別では、O157 VT1・VT2 17例、O157 VT2 11例、O121 VT2 1例であり、また、血清抗体(O抗原凝集抗体)により診断されたもののO血清群はすべてO157であった。感染源としては、41例中、生肉・生レバー8例、生せんまい(牛の胃)1例、焼肉3例、ステーキ1例、バーベキュー1例などが挙げられていた。
 死亡例は第34週までに2例が報告された。1例は基礎疾患に腎臓病を持った60代女性(O157 VT2)、もう一例はHUSを発症した80代の女性(O157 VT2)である。

図1. 腸管出血性大腸菌感染症の年別・週別発生状況(1999年14週〜2008年第34週) 表. 腸管出血性大腸菌感染症の溶血性尿毒症症候群(HUS)の年齢群別報告数(2008年第1〜34週)

 腸管出血性大腸菌感染症は、わが国において、毎年約3,000〜4,500例の報告が続いている疾患である。本年は、2000年以降の過去8年間の同時期までの発生数との比較では、3番目に多い報告数となっている。保育園に関連した集団発生が続いており、今週はグループホームでの集団発生もみられた。重症の合併症であるHUSは41例の報告となり、患者の2%以上、5歳未満に限れば5%以上に合併している。また、死亡例も2例報告されている。
 例年の状況から、発生のピーク時期にあると考えられ、引き続き予防対策の徹底が求められる。食品の取り扱い等の一般的な食中毒対策に加え、特に、小児、高齢者や抵抗力の弱い者などでは、肉・レバーなどはよく加熱し生食は控えること、生肉などに使用した箸などにも注意することが肝要である。また、患者・無症状病原体保有者から周囲の人々への感染が起こりやすい疾患なので、手洗いの励行等の二次感染予防対策の一層の徹底が重要である。


(補)腸管出血性大腸菌感染症については、
   □週報IDWR
    ・感染症の話:http://idsc.nih.go.jp/idwr/kansen/k02_g1/k02_06/k02_06.html
    ・注目すべき感染症
     第25号:http://idsc.nih.go.jp/idwr/kanja/idwr/idwr2008/idwr2008-25.pdf
     第27号:http://idsc.nih.go.jp/idwr/kanja/idwr/idwr2008/idwr2008-27.pdf
     第29号:http://idsc.nih.go.jp/idwr/kanja/idwr/idwr2008/idwr2008-29.pdf
     第30号:http://idsc.nih.go.jp/idwr/kanja/idwr/idwr2008/idwr2008-30.pdf
     第31号:http://idsc.nih.go.jp/idwr/kanja/idwr/idwr2008/idwr2008-31.pdf
     第32号:http://idsc.nih.go.jp/idwr/kanja/idwr/idwr2008/idwr2008-32.pdf
     第33号:http://idsc.nih.go.jp/idwr/kanja/idwr/idwr2008/idwr2008-33.pdf
    ・速報「修学旅行先において腸管出血性大腸菌(EHEC)O26に感染したと思われる事例−
     佐賀県」:http://idsc.nih.go.jp/idwr/kanja/idwr/idwr2008/idwr2008-20.pdf
    ・速報「焼肉店が原因施設とされた腸管出血性大腸菌O157:H7食中毒事例−福井県:
      http://idsc.nih.go.jp/idwr/kanja/idwr/idwr2008/idwr2008-21.pdf
   □月報IASR
    ・<特集>「腸管出血性大腸菌感染症 2008年4月現在」:
     http://idsc.nih.go.jp/iasr/29/339/tpc339-j.html
   □菌の検出状況:http://idsc.nih.go.jp/iasr/prompt/graph-lj.html

   などもご参照ください。








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