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発生動向総覧
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1類感染症: | 報告なし | ||||||||||||||||||||||||||
2類感染症: | 結核196例 | ||||||||||||||||||||||||||
3類感染症: | 細菌性赤痢6例(感染地域:中国2例、インドネシア1例、フィリピン1例、インド1例、タイ/カンボジア/インド1例) 腸管出血性大腸菌感染症131例(有症者53例、うちHUS 2例)
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4類感染症: | A型肝炎2例(感染地域:島根県1例、インド1例) デング熱2例(感染地域:フィリピン1例、カンボジア1例) 日本紅斑熱2例(感染地域:三重県1例、鹿児島県1例) マラリア1例(熱帯熱_感染地域:マダガスカル)
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5類感染症: |
(補)他にマラリア1例の報告があったが削除予定。また、2008年第37週までに診断されたものの報告遅れとして、デング熱1例(感染地域:インド)、マラリア1例(三日熱_感染地域:インド)、レプトスピラ症2例(感染地域:沖縄県1例_感染原因:不明、感染地域:静岡県1例_感染原因:川)、急性脳炎1例〔病原体不明(60代)〕、クリプトスポリジウム症1例〔感染地域:国内(都道府県不明)〕、劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(60代.死亡)などの報告があった。 |
◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患によ
り小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000カ所)、眼科定点(約600カ所)、基
幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ:定点当たり報告数は微減した。都道府県別では沖縄県(0.29)、栃木県(0.05)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症は919例の報告があり、報告数は減少した。年齢別では1歳以下の報告数が全体の約73%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は第35週以降減少が続いている。都道府県別では鹿児島県(0.84)、宮崎県(0.81)、静岡県(0.80)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してやや多い。都道府県別では鳥取県(1.79)、大分県(1.58)、富山県(1.52)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では福井県(5.8)、宮崎県(5.4)、大分県(5.3)が多い。水痘の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では宮崎県(1.06)、鳥取県(1.00)、山形県(0.83)が多い。手足口病の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では新潟県(6.0)、熊本県(3.0)、北海道(2.6)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は3週連続で減少した。都道府県別では広島県(0.14)、千葉県(0.13)、福島県(0.10)、新潟県(0.10)が多い。百日咳の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では秋田県(0.17)、千葉県(0.10)、広島県(0.10)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では山形県(3.1)、新潟県(2.5)、北海道(1.9)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では宮崎県(1.72)、高知県(1.30)、群馬県(1.16)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では沖縄県(2.57)、宮城県(2.25)、富山県(2.20)が多い。
◆ RSウイルス感染症
RSウイルス感染症(respiratory syncytial virus infection)は、病原体であるRSウイルスが感染者の鼻汁、喀痰などから接触感染、あるいは飛沫感染により伝播する呼吸器感染症である。年齢を問わず、生涯にわたり顕性感染を繰り返すが、乳幼児期においては非常に重要な疾患である。特に乳児期早期においては、母体からの移行抗体が存在するにもかかわらず、生後数週間〜数カ月間の時期に下気道の炎症を中心とした重篤な症状を引き起こす。乳幼児の肺炎の約50%、細気管支炎の50〜90%を占めるとの報告もある。また、低出生体重児や、心肺系に基礎疾患があったり、免疫不全が存在する場合には重症化のリスクは高く、臨床上、公衆衛生上のインパクトは大きい。
特異的な治療法はなく、基本的には酸素投与、呼吸管理、輸液などの対症療法が中心である。予防としては、数十年間にわたってワクチン開発の努力が続けられているが、依然としてまだ研究段階である。現在利用可能な予防方法としては、遺伝子組み換え技術を用いて作成された単クローン抗体製剤(Palivizumab:パリビズマブ)が2002年1月に輸入認可されており、早産児や慢性肺疾患を持つ小児などのハイリスク児に対しては、流行初期から流行期の間、1カ月毎に予防的な投与が考慮される。
RSウイルス感染症の発生動向については、感染症法改正(2003年11月5日施行)により対象疾患となり、小児科定点把握疾患に位置づけられた。診断は臨床症状のみでは不可能であることから、届出基準としてウイルスの分離・同定、迅速診断キットによる抗原検出、血清抗体検出(中和反応または補体結合反応)による病原検査が必須とされている。しかし、臨床現場で最も簡便な迅速診断キット検査については、保険適応が3歳未満の入院症例に限定されていたので、当初より届出されていない例もかなり多いと考えられていた。その後2006年4月からは、保険適応の年齢制限は撤廃されたが、依然として入院例のみが対象であり、全国約3,000の小児科定点医療機関の70%以上を占める病院以外の一般医療機関では多くの症例が診断に至らずに報告されていないものと推察される。このようにRSウイルス感染症の発生動向調査には大きな制約があり、現状を正確に反映しているとは必ずしも言えないが、年々その報告数は増加してきており、また2008年は過去の発生動向よりも早期に報告数の増加が顕著となってきているので、最近の発生動向データを以下にまとめた。
RSウイルス感染症の小児科定点医療機関からの報告数は、例年冬季を中心としたピークがみられているが、2008年は第38週の報告数は919例と前週よりも減少がみられたものの、比較的早期から患者報告数の立ち上がりがみられ、第28週以降前週(第37週)までは報告数の増加が続いていた(図1)。2008年第1〜38週までの小児科定点医療機関からの累積報告数は21,476例であり、都道府県別でみると福岡県2,633例、大阪府1,942例、北海道1,696例、山口県1,082例、兵庫県1,052例、福島県1,040例の順となっている。特に福岡県や大阪府からの報告数が多くなっている(図2)。累積報告数を年齢群別でみると、0歳児46.3%(0〜5カ月22.6%、6〜11カ23.7%)、1歳児30.0%、2歳児12.5%、3歳児5.7%、4歳児2.8%の順であり、4歳以下で全報告数の95%前後を占めているのは、2004年以降変わっていない(図3、図4)。
図1. RSウイルス感染症の年別・週別発生状況(2003年第45週〜2008年第38週) | 図2. RSウイルス感染症の都道府県別累積報告状況(2008年第1〜38週) | 図3. RSウイルス感染症の累積報告数年齢群別割合(2008年第1〜38週) |
図4. RSウイルス感染症の年別・年齢別割合(2004年〜2008年第38週) |
2008年の腸管出血性大腸菌感染症報告数は、第11(〜13)週に、オーストラリアへ修学旅行に行った高校生(76例)の集団発生があり一時的に増加した。その後、第18週から徐々に増加し始め、第24週に100例を超えた。第24〜30週はほぼ100〜150例で推移していたが、第31週に大きく増加し250例を超えた。第35週の283例をピークとして、第36週223例、第37週191例、第38週は131例であった。第38週までの累積報告数3,403例は、2000年以降では2番目に多い(2000年2,790例、2001年3,916例、2002年2,727例、2003年2,004例、2004年3,031例、2005年2,805例、2006年3,054例、2007年3,354例)(図1)。
第38週(9月15〜21日診断のもの)の報告131例は、患者(有症状者)が53例(40%)で、無症状病原体保有者78例(60%)であった。28都道府県から報告があり、都道府県別では、岩手県(58例)、東京都(11例)、大阪府(7例)、佐賀県(7例)、千葉県(6例)、宮城県(5例)、兵庫県(5例)が多かった。感染地域は国内130例、国外1例(韓国)であった。国内の感染地域としての都道府県別では、岩手県(58例)、東京都(10例)、大阪府(7例)、佐賀県(7例)、宮城県(5例)、千葉県(4例)、兵庫県(4例)が多かった。岩手県(第36週の発生)では幼稚園に関連した集団発生があった。性別では男性69例、女性62例で、年齢群別では0〜9歳83例、20〜29歳15例、10〜19歳8例の順に多かった。
第1〜38週(2007年12月31日〜2008年9月21日診断のもの)の累積報告3,403例は、患者が2,241例(66%)、無症状病原体保有者が1,162例(34%)であった。報告はすべての都道府県からあり、報告の多い都道府県は、東京都(305例)、大阪府(208例)、福岡県(186例)、岩手県(149例)、千葉県(142例)、神奈川県(139例)、長崎県(127例)、愛知県(125例)、兵庫県(115例)であった(図2)。感染地域は国内が3,303例、国外が95例、国内か国外か不明が5例であり、国内の感染地域としての都道府県別では、東京都(247例)、大阪府(203例)、福岡県(170例)、岩手県(153例)、長崎県(125例)、千葉県(120例)の順で多かった。性別では男性1,578例、女性1,825例であり、年齢群別では0〜9歳1,269例(うち患者70%)、10〜19歳528例(同78%)、20〜29歳520例(同75%)、30〜39歳342例(同43%)、40〜49歳189例(同43%)、50〜59歳237例(同48%)、60〜69歳152例(同55%)、70〜79歳93例(同71%)、80〜89歳65例(同78%)、90〜99歳8例(同75%)であった(図3)。
溶血性尿毒症症候群(HUS)は、前週の集計(9月17日)以降に新たに4例が報告され、第38週までに60例の報告となった。60例のうち17例は、菌は分離されなかったが、血清抗体(O抗原凝集抗体)の検出によって届け出られたものである。都道府県別では、30都道府県(東京都9例、大阪府7例、茨城県3例、群馬県3例、埼玉県3例、北海道2例、秋田県2例、山形県2例、栃木県2例、千葉県2例、新潟県2例、愛知県2例、兵庫県2例、岡山県2例、愛媛県2例、福島県1例、石川県1例、福井県1例、岐阜県1例、三重県1例、京都府1例、和歌山県1例、鳥取県1例、徳島県1例、香川県1例、高知県1例、福岡県1例、長崎県1例、鹿児島県1例、沖縄県1例)から報告があった。年齢は0〜4歳が29例、5〜9歳が15例、10代が12例、20代が1例、50代が1例、80代が2例となっており、60例中52例が15歳未満の小児であった(表)。原因菌が分離された43例でみたO血清群・ベロ毒素抗体(VT型別)では、O157 VT1・VT2 22例、O157 VT2 18例、O111 VT1・VT2 1例、O121 VT2 1例、O157 VT2とO26 VT1の両方1例であり、血清抗体(O抗原凝集抗体)により診断されたもののO血清群は不明の3例を除いてすべてO157であった。60例中、感染経路として飲食物の経口感染とされたものは38例あり、飲食物の種類として、生肉・生レバー9例、焼肉6例、バーベキュー3例、生せんまい(牛の胃)2例、ステーキ1例などが挙げられていた。HUS発症者60例のうち肉類の生での喫食者(11例)は18.3%(経口感染例38例に限ると28.9%)であり、加熱不十分であったとの記載がある1例を加えると20.0%(同31.6%)となり、焼肉・バーベキューなど肉に関連するものの喫食者全体は35.0%(同55.3%)であった。
死亡例は第38週までに6例が報告された。2歳男性(O157 VT2.HUS発症)、10代女性(O157
VT1・VT2.HUS発症)、60代女性(O157 VT2)、80代男性(O157 VT2)、80代女性(O157 VT2.HUS発症)、80代女性(O157 VT1・VT2.HUS発症)である。死亡例のうち4例がHUSを発症しており、HUS発症例(60例)の致死率は6.7%となる。
図1. 腸管出血性大腸菌感染症の年別・週別発生状況(1999年14週〜2008年第38週) | 図2. 腸管出血性大腸菌感染症の都道府県別報告数(2008年第1〜38週) | 図3. 腸管出血性大腸菌感染症の年齢分布(2008年第1〜38週) |
表. 腸管出血性大腸菌感染症の溶血性尿毒症症候群(HUS)の年齢群別報告数(2008年第1〜38週) |
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