発生動向総覧
※2008年5月12日からの法改正に伴い、疾病の名称および並び順を一部変更しました。
◆全数報告の感染症
〈第45週コメント〉 11月12日集計分
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核253例 |
3類感染症: |
細菌性赤痢3例(感染地域:北海道1例、福島県1例、中国1例)
腸管出血性大腸菌感染症56例(有症者40例、うちHUS 1例)
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感染地域:国内56例
国内の多い感染地域:佐賀県8例1)、福岡県5例2)、東京都4例、岐阜県4例、神奈川県3例、京都府3例、熊本県3例
集団発生:1)すべてが第44週の10例とともに、
2)うち3例が第44週の3例とともに、保育園での集団発生に関連
年齢群:0歳(2例)、2歳(2例)、3歳(2例)、4歳(3例)、5歳(5例)、6歳(1例)、7歳(5例)、9歳(1例)、10代(11例)、20代(6例)、30代(4例)、40代(4例)、50代(3例)、70代(3例)、80代(4例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2(31例)、O26 VT1(9例)、O157 VT2(5例)、O26 VT1・VT2(1例)、O111 VT1(1例)、O128 VT1(1例)、O157 VT1(1例)、O165 VT2(1例)、その他・不明(6例)
累積報告数:4,016例(有症者2,626例、うちHUS 81例、死亡7例)
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腸チフス1例(感染地域:インド)
パラチフス1(感染地域:ネパール)
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4類感染症: |
A型肝炎1例(感染地域:ウズベキスタン)
つつが虫病14例 |
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感染地域:福島県5例、神奈川県3例、山形県1例、東京都1例、岐阜県1例、三重県1例、広島県1例、国内(都道府県不明)1例
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デング熱3例(感染地域:インド1例、フィリピン1例、インド/パキスタン1例)
日本紅斑熱2例(感染地域:三重県1例、熊本県1例) マラリア1例(四日熱_感染地域:カメルーン)
レジオネラ症16例(肺炎型15例、無症状病原体保有者1例) |
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感染地域:栃木県2例、東京都2例、三重県2例、岩手県1例、埼玉県1例、神奈川県1例、新潟県1例、富山県1例、岐阜県1例、静岡県1例、広島県1例、高知県1例、国内(都道府県不明)1例
年齢群:30代(2例)、50代(3例)、60代(5例)、70代(2例)、80代(4例)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢6例(腸管アメーバ症4例、腸管外アメーバ症2例) |
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感染地域:千葉県1例、東京都1例、愛知県1例、滋賀県1例、福岡県1例、国内(都道府県不明)1例
感染経路:経口感染1例、不明5例
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ウイルス性肝炎4例 |
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B型肝炎3例_感染経路:性的接触2例(異性間2例)、不明1例
C型肝炎1例_感染経路:静注薬物常用
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急性脳炎1例(病原体不明_年齢群:1歳)
クロイツフェルト・ヤコブ病2例(孤発性プリオン病古典型2例)
劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(年齢群:50代.死亡) |
後天性免疫不全症候群11例(AIDS 1例、無症候10例) |
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感染地域:国内10例、国外(国不明)1例
感染経路:性的接触10例(異性間3例、同性間7例)、不明1例
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梅毒12例(早期顕症I期4例、早期顕症II期3例、晩期顕症1例、無症候4例)
風しん1例(臨床診断例) |
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感染地域:東京都
年齢群:5〜9歳
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麻しん13例〔麻しん(検査診断例2例、臨床診断例8例)、修飾麻しん(検査診断例3例)〕 |
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感染地域:国内13例
国内の感染地域:千葉県3例、東京都2例、大阪府2例、岩手県1例、福島県1例、群馬県1例、神奈川県1例、長野県1例、京都府1例
年齢群:1歳(4例)、2歳(1例)、5〜9歳(1例)、15〜19歳(2例)、20〜24歳(2例)、30〜34歳(1例)、40代(1例)、60代(1例)
累積報告数:10,904例〔麻しん(検査診断例3,136例、臨床診断例6,763例)、修飾麻しん(検査診断例1,005例)〕
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(補)2008年第44週までに診断されたものの報告遅れとして、腸チフス1例(感染地域:インド)、デング熱1例(感染地域:マレーシア)、レジオネラ症1例〔感染地域:青森県(温泉)〕、レプトスピラ症1例(感染地域:沖縄県_感染原因:河川)、急性脳炎4例〔ヒトヘルペスウイルス6型1例(2歳)、病原体不明3例(0歳、1歳、10代)〕、劇症型溶血性レンサ球菌感染症2例〔30代(1例)、60代(1例.死亡)〕、バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例(遺伝子型:VanB_菌検出検体:創部の膿)、風しん1例(検査診断例.感染地域:大阪府.年齢群:40代)などの報告があった。 |
◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患によ
り小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000カ所)、眼科定点(約600カ所)、基
幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ:定点当たり報告数は第41週以降増加が続いている。都道府県別では山梨県(3.23)、大阪府(0.77)、徳島県(0.68)が多い。 小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症は2,062例の報告があり、3週連続で増加した。年齢別では1歳以下の報告数が全体の約73%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では徳島県(0.87)、福井県(0.73)、北海道(0.69)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は2週連続で減少し、都道府県別では富山県(2.28)、山形県(2.23)、千葉県(2.13)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は3週連続で増加した。都道府県別では大分県(7.4)、宮崎県(7.2)、熊本県(6.8)が多い。水痘の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では山形県(2.13)、北海道(1.58)、岩手県(1.55)が多い。手足口病の定点当たり報告数は第37週以降減少が続いている。都道府県別では高知県(1.87)、福井県(1.59)、秋田県(1.43)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は横ばいであった。都道府県別では福島県(0.29)、宮城県(0.27)、新潟県(0.18)が多い。百日咳の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い。都道府県別では千葉県(0.18)、秋田県(0.14)、福岡県(0.12)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は第37週以降減少が続いている。都道府県別では佐賀県(0.57)、山形県(0.43)、熊本県(0.42)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では高知県(1.80)、佐賀県(1.65)、宮崎県(1.33)が多い。 基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では福島県(4.0)、青森県(2.3)、沖縄県(1.6)が多い。
注目すべき感染症
◆ インフルエンザ
インフルエンザ(Influenza)は、インフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症で、毎年世界中で流行がみられている。現在ヒトからヒトに感染して臨床的に問題となっているインフルエンザウイルスにはA香港型(A/H3N2亜型)、Aソ連型(A/H1N1亜型)、B型の3種類がある。日本においては、他の北半球の温帯地域の国々と同様に例年冬季を中心に全国的な流行が発生し、多くのシーズンにおいて推計1,000万人以上の発病者がみられている。典型例の場合、感染してから1〜3日間の潜伏期間を経た後に、突然の発熱(通常は38℃以上)、頭痛、倦怠感、筋肉痛・関節痛等の症状で発症し、次いで咳、鼻汁などの上気道炎症状が続く。合併症等がなければ、約1週間の経過で軽快するものの、とくに高齢者や、基礎疾患を持っている場合などでは原疾患の悪化と共に、二次的な細菌性肺炎を起こす場合がある。また、小児では中耳炎の合併や熱性痙攣、気管支喘息の誘発を招く場合がある。更に乳幼児を中心とした小児においては、稀ではあるものの急性脳症(インフルエンザ脳症)を合併する場合がある。このようにインフルエンザはいわゆる「かぜ」と比べて全身症状が強く、また重症化することがあり、加えて様々な合併症を招く可能性がある。
インフルエンザは、既に治療薬が開発され、実用化されているが、その予防対策としては流行シーズン前にインフルエンザワクチンを接種することが最も有効である。例年、インフルエンザの流行は12月下旬以降に始まり、国内の多くの地域での本格的な流行は1月中旬以降にみられることが多い。また、ワクチンを接種してからその効果が現れるまでには通常2週間程度かかるといわれている。従って、インフルエンザワクチンの接種は流行に備えて、できれば12月初旬頃までに終えておくことが望ましい。
感染症発生動向調査では、インフルエンザは例年の流行が第36週以降に始まり、第35週以前に収束していることから、第36週から翌年の第35週までをシーズンとしている。2008年第35週に終了した2007/08シーズン(2007年第36週〜2008年第35週)では、その流行は2007年第47週からと1987年のインフルエンザの発生動向調査開始以降では最も早く始まり、流行のピークは2008年第5週であった(図1)。2007/08シーズンの全国約4,700カ所のインフルエンザ定点からの累積報告数は675,102、定点当たり累積報告数は142.65であり、この定点当たり累積報告数は1999/2000シーズン以降では2000/01シーズンに次いで少なかった(図2)。
2008/09シーズンの週別の定点当たり報告数は第41週以降増加が続いており、第45週の定点当たり報告数は0.17(報告数811)となった(図1)。都道府県別では山梨県(3.23)、大阪府(0.77)、徳島県(0.68)、兵庫県(0.38)、沖縄県(0.33)、和歌山県(0.32)、鳥取県(0.28)の順となっており、大阪府とその周辺地域での増加がみられている他、山梨県でも報告数の増加がみられている(図3)。第36〜45週までの累積報告数は2,195(定点当たり累積報告数0.49)であり、年齢群別(0〜9歳は5歳毎、10〜59歳は10歳毎、60歳以上)では5〜9歳573例(26.1%)、0〜4歳533例(24.3%)、10〜14歳294例(13.4%)、30〜39歳239例(10.9%)、20〜29歳191例(8.7%)の順となっている(図4)
第36週以降のインフルエンザウイルスの分離報告は栃木県、東京都、神奈川県、大阪府、兵庫県、山口県から46件あり、その内訳はAH1亜型4件(8.7%)、AH3亜型15件(32.6%)、B型27件(58.7%)となっており、B型の報告割合が半数以上を占めている(図5)。
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図1. インフルエンザの年別・週別発生状況(1998〜2008年第45週) |
図2.インフルエンザの定点当たり累積報告数シーズン別推移(1999/2000〜2007/2008シーズン) |
図3. インフルエンザの都道府県別報告状況(2008年第45週) |
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図4. 2008/09シーズンのインフルエンザ累積報告数の年齢群別割合(2008年第36〜45週) |
図5. インフルエンザウイルス型別分離・検出報告割合(2008年第36〜45週) |
第45週で定点当たり報告数が0.17というのは、1998/99シーズン以降では昨シーズン(2007/08シーズン、第45週定点当たり報告数0.50)に次いで高い値である。今後さらにインフルエンザの地域的な流行が拡大していく可能性があり、インフルエンザの発生動向には注意深い観察が必要である。
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