発生動向総覧
※2008年5月12日の法改正に伴い、疾病の名称および並び順を一部変更しました。
〈第50週コメント〉 12月17日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 315例 |
3類感染症: |
細菌性赤痢9例
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感染地域:埼玉県1例、国内(都道府県不明)1例、インド3例、インドネシア1例、ネパール1例、スーダン1例、インド/ネパール1例
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腸管出血性大腸菌感染症20例(有症者15例、うちHUS 4例)
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感染地域:国内20例
国内の感染地域:広島県3例、山形県2例、愛知県2例、滋賀県2例、宮城県1例、千葉県1例、富山県1例、大阪府1例、奈良県1例、岡山県1例、山口県1例、福岡県1例、長崎県1例、熊本県1例、鹿児島県1例
年齢群:1歳(1例)、2歳(2例)、3歳(2例)、4歳(1例)、10代(2例)、20代(5例)、30代(2例)、40代(3例)、60代(1例)、70代(1例)
血清型・毒素型:O157 VT2(8例)、O157 VT1・VT2(4例)、O15 VT1・VT2(2例)、O26 VT1(1例)、O103 VT1(1例)、O111 VT1(1例)、O165 VT1・VT2(1例)、その他・不明(2例)
累積報告数:4,254例(有症者2,784例、うちHUS 93例、死亡8例)
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4類感染症: |
A型肝炎1例(感染地域:神奈川県)
つつが虫病27例
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感染地域:宮崎県4例、鹿児島県4例、福島県3例、千葉県3例、東京都3例、三重県3例、群馬県2例、静岡県2例、和歌山県1例、広島県1例、韓国1例
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デング熱2例(感染地域:フィリピン1例、インドネシア1例)
日本紅斑熱2例(感染地域:熊本県2例)
マラリア1例(三日熱_感染地域:ブラジル) ライム病1例(感染地域:北海道)
レジオネラ症14例(肺炎型13例、ポンティアック型1例)
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感染地域:神奈川県3例(うち1例温泉)、東京都2例、宮城県1例、栃木県1例、千葉県1例、新潟県1例(温泉)、石川県1例、静岡県1例(温泉)、兵庫県1例(温泉)、福岡県1例、沖縄県1例
年齢群:40代(1例)、50代(2例)、60代(4例)、70代(2例)、80代(4例)、90代(1例)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢14例(腸管アメーバ症13例、腸管外アメーバ症1例) |
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感染地域:大阪府3例、宮城県1例、神奈川県1例、滋賀県1例、京都府1例、広島県1例、沖縄県1例、国内(都道府県不明)4例、フィリピン1例
感染経路:経口感染3例、性的接触3例(異性間3例)、不明8例
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ウイルス性肝炎5例
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B型4例_感染経路:性的接触2例(異性間1例、同性間1例)、不明2例
サイトメガロウイルス1例_感染経路:不明
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急性脳炎1例(ヒトヘルペスウイルス6型_年齢群:0歳) クロイツフェルト・ヤコブ病2例(孤発性プリオン病古典型2例)
後天性免疫不全症候群21例(AIDS 3例、無症候17例、その他1例) |
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感染地域:国内20例、タイ1例
感染経路:性的接触18例(異性間2例、同性間15例、異性/同性間1例)、性的接触(異性間)/刺青1例、不明2例
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ジアルジア症1例〔感染地域:国内(都道府県不明)〕
梅毒12例(早期顕症II期6例、晩期顕症2例、無症候4例)
バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例(遺伝子型:VanC_菌検出検体:血液)
風しん2例(検査診断例1例、臨床診断例1例)
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感染地域:大阪府1例、福岡県1例
年齢群:15〜19歳(1例)、25〜29歳(1例)
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麻しん13例〔麻しん(検査診断例1例、臨床診断例12例)〕
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感染地域:国内13例
国内の感染地域:神奈川県4例、千葉県2例、栃木県1例、埼玉県1例、東京都1例、愛知県1例、大阪府1例、佐賀県1例、国内(都道府県不明)1例
年齢群:0歳(1例)、1歳(1例)、3歳(1例)、4歳(1例)、5〜9歳(2例)、15〜19歳(2例)、20〜24歳(1例)、25〜29歳(1例)、35〜39歳(2例)、40代(1例)
累積報告数:10,969例〔麻しん(検査診断例3,156例、臨床診断例6,798例)、修飾麻しん(検査診断例1,015例)〕
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(補)他に2008年第49週までに診断されたものの報告遅れとして、デング熱1例(感染地域:ベトナム)、急性脳炎1例〔病原体不明(1歳).死亡〕、風しん2例〔検査診断例1例、臨床診断例1例.感染地域:福岡県1例、長崎県1例.年齢群:15〜19歳(2例)〕などの報告があった。
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◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は第41週以降増加が続いている。都道府県別では北海道(8.5)、福井県(6.8)、山口県(6.1)、山梨県(5.8)、兵庫県(5.5)、大阪府(4.6)、宮城県(4.2)、福島県(4.1)、岡山県(3.9)、栃木県(3.8)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症は3,181例と報告数は2週連続で増加した。年齢別では1歳以下の報告数が全体の約73%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は第45週以降増加が続いている。都道府県別では北海道(1.73)、新潟県(1.58)、愛媛県(1.16)、秋田県(1.03)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は2週連続で増加し、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してやや多い。都道府県別では富山県(5.3)、大分県(5.0)、福井県(4.6)、鳥取県(4.0)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は第43週以降増加が続いている。都道府県別では大分県(26.7)、三重県(23.4)、埼玉県(23.4)、山口県(21.8)が多い。水痘の定点当たり報告数は第46週以降増加が続いている。都道府県別では新潟県(4.2)、宮崎県(4.0)、山形県(3.4)、愛媛県(3.3)が多い。手足口病の定点当たり報告数は第37週以降減少が続いている。都道府県別では高知県(1.53)、秋田県(1.34)、青森県(1.19)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では新潟県(0.35)、東京都(0.28)、広島県(0.24)が多い。百日咳の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では秋田県(0.20)、福岡県(0.13)、栃木県(0.10)、沖縄県(0.09)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は減少した。都道府県別では滋賀県(0.33)、岩手県(0.23)、熊本県(0.23)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では高知県(2.07)、福井県(1.64)、福岡県(1.36)、宮崎県(1.36)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では福島県(2.71)、沖縄県(2.29)、宮城県(2.25)が多い。
〈11月コメント〉
◆性感染症について 2008年12月11日集計分 性感染症定点数:965
(産婦人科・産科・婦人科:464、泌尿器科:396、皮膚科91、性病科14)
●月別推移
2008年11月の月別定点当たり患者報告数は、性器クラミジア感染症が2.04(男0.93、女1.12)、性器ヘルペスウイルス感染症が0.60(男0.26、女0.35)、尖圭コンジローマが0.41(男0.23、女0.18)、淋菌感染症が0.77(男0.61、女0.16)であった。男性では性器クラミジア感染症、次いで淋菌感染症が多く、女性では性器クラミジア感染症、次いで性器ヘルペスウイルス感染症が多かった(図1)
前月に比べると、男性では性器クラミジア感染症、性器ヘルペスウイルス感染症、尖圭コンジローマ、淋菌感染症の4疾患すべてで減少した。女性でも同様に、4疾患すべてで減少した(25〜28ページ「グラフ総覧」参照)。
男女別に過去5年間の同時期と比較すると、性器クラミジア感染症は男女ともでやや少なく、性器ヘルペスウイルス感染症は男女ともでかなり少なく、尖圭コンジローマは男性ではやや少なく、女性ではかなり少なく、淋菌感染症は男性ではやや少なかった(図2)。
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図1. 各性感染症が総報告数に占める割合(11月) |
●男女別・年齢階級別
年齢群(0歳、1〜4歳、5〜69歳は5歳毎、および70歳以上)でみた定点当たり報告数のピークは、男性では、性器クラミジア感染症は30〜34歳の年齢群、性器ヘルペスウイルス感染症は25〜34歳、40〜44歳の3つの年齢群、尖圭コンジローマは20〜34歳の3つの年齢群、淋菌感染症では25〜29歳の年齢群であった。一方、女性では、性器クラミジア感染症、尖圭コンジローマ、淋菌感染症の3疾患では20〜24歳、性器ヘルペスウイルス感染症では25〜29歳の年齢群であり、女性の罹患年齢が男性に比べてやや若い傾向が認められた(図3:PDF参照)。また、性器クラミジア感染症、尖圭コンジローマ、淋菌感染症の3疾患は、男性では60代以降は僅かであり、女性では50代以降の報告はないか、あっても僅かである。しかし、性器ヘルペスウイルス感染症は男女ともに、50代以降の報告も少なくない。この年齢層は再発例が含まれている可能性が以前から指摘されており、2006年4月の届出基準改正により、抗体のみ陽性のものの除外に加えて「明らかな再発例は除外する」ことが明示された。しかし、報告数や年齢群分布において明らかな変化は見られておらず、この基準変更の周知徹底が必要と考える。
年齢群毎にみた定点当たり報告数の男女の比較では、淋菌感染症では、すべての年齢群で男性が女性よりも多かった。一方、性器クラミジア感染症では15〜29歳の3つの年齢群、性器ヘルペスウイルス感染症では15〜34歳、60〜64歳、70歳以上の6つの年齢群、尖圭コンジローマでは15〜24歳の2つの年齢群の、比較的低い年齢層を中心に女性が男性よりも多かった。ただし、性感染症定点は泌尿器科系、婦人科系および皮膚科系などの診療科から構成されており、男女の比較についてはそれらの比率の影響を受ける可能性がある。
●若年齢層での推移
感染症法が施行された1999年4月以降について、若年層(15〜29歳)における各疾患の定点当たり報告数を男女別・月別に(図4:PDF参照)に示した。性器クラミジア感染症と淋菌感染症は男女ともに2003年以降減少傾向がみられる。一方、性器ヘルペスウイルス感染症と尖圭コンジローマは、男女ともにこの間全体としてはほぼ横ばいの状況であるが、女性において2005年半ば頃から微かな減少傾向がみられる。
前月との比較では、男性では性器クラミジア感染症で減少、性器ヘルペスウイルス感染症では
同値、尖圭コンジローマで減少、淋菌感染症で減少した。女性では、4疾患全てで減少した。
◆薬剤耐性菌について (12月11日集計分)
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基幹定点数(11月):467.
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●月別
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メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症
4.01(前月:4.18、前年同月:4.45)
定点当たり報告数は、例年年間を通じてほぼ一定である。11月は前月より減少したが、過去9年間の同月との比較では上位に属した。
ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)感染症
1.10(前月:1.02、前年同月:0.98)
定点当たり報告数は、例年春から初夏にかけて(4〜6月)と冬(11、12月)に多く、夏(7〜9月)に少なく推移している。11月は前月より増加したが、過去9年間の同月との比較では中位に属した。
薬剤耐性緑膿菌感染症
0.06(前月:0.11、前年同月:0.09)
定点当たり報告数は、例年後半が前半に比して多い傾向がある。11月は前月より減少し、過去9年間の同月との比較では最も低かった。
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●年齢階級別
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MRSA感染症 高齢者に多く、70歳以上が全体の68%を占めている(図1:PDF参照)
PRSP感染症
小児と高齢者に多い。5歳未満が全体の70%を占める一方、70歳以上が全体の13%を占めている(図2:PDF参照)。
薬剤耐性緑膿菌感染症
高齢者に多く、70歳以上が全体の79%を占めてい(図3:PDF参照)
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●性別:女性を1 として算出した男/女比
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MRSA感染症…男:女=1.8:1
PRSP感染症…男:女=1.5:1
薬剤耐性緑膿菌感染症…男:女=1.8:1
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●都道府県別
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MRSA感染症
定点当たり報告数は新潟県(10.4)、栃木県(8.3)、福島県(8.1)が多い。
PRSP感染症
定点当たり報告数は千葉県(4.3)、埼玉県(4.0)、山口県(4.0)が多い。
薬剤耐性緑膿菌感染症
報告総数が28件にとどまるため、都道府県別定点当たり報告数の評価は困難である。
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注目すべき感染症
◆ インフルエンザ
インフルエンザ(Influenza)は、インフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症で、毎年世界中で流行がみられている。現在ヒトからヒトに感染して臨床的に問題となっているインフルエンザウイルスにはA香港型(A/H3N2亜型)、Aソ連型(A/H1N1亜型)、B型の3種類がある。日本においては、他の北半球の温帯地域の国々と同様に例年冬季を中心に全国的な流行が発生し、多くのシーズンにおいて推計1,000万人以上の発病者がみられている。典型例の場合、感染してから1〜3日間の潜伏期間を経た後に、突然の発熱(通常は38℃以上)、頭痛、倦怠感、筋肉痛・関節痛等の症状で発症し、次いで咳、鼻汁などの上気道炎症状が続く。合併症等がなければ、約1週間の経過で軽快するものの、とくに高齢者や、基礎疾患を持っている場合などでは原疾患の悪化と共に、二次的な細菌性肺炎を起こす場合がある。また、小児では中耳炎の合併や熱性痙攣、気管支喘息の誘発を招く場合がある。更に乳幼児を中心とした小児においては、稀ではあるものの急性脳症(インフルエンザ脳症)を合併する場合がある。このようにインフルエンザはいわゆる「かぜ」と比べて全身症状が強く、また重症化することがあり、加えて様々な合併症を招く可能性がある。
インフルエンザの予防の基本は、流行前にワクチン接種を受けることである。欧米では一般的な方法であり、わが国でも近年はワクチン接種率の上昇が見られてきている。インフルエンザワクチンは、接種によってある程度の発病阻止効果があり、また罹患した場合の重症化防止に有効であると報告されている。ワクチンを接種してからその効果が現れるまでには通常2週間程度かかるといわれており、本格的な流行に備え12月中にワクチンの接種を受けておくべきである。
インフルエンザは、罹患している人の咳、くしゃみ、つばなどの飛沫と共に放出されたウイルスを、鼻腔や気管など気道に吸入することによる飛沫感染が主な感染経路であり、飛沫等を介する間接的接触による接触感染もあると考えられている。従ってインフルエンザの流行時には、外出時のマスクの利用や帰宅時のうがい、手洗いは、かぜの予防と併せて奨められる。また、インフルエンザの主な感染経路が飛沫感染であることより、周囲への感染拡大を防止する意味から、インフルエンザに罹患している人、咳嗽などの症状のある人は特に、マスクの着用(咳エチケット)が推奨される。
感染症発生動向調査によると、インフルエンザの定点当たり報告数は2008年第41週以降増加が続いており、第50週は2.79(報告数13,286)となり、全国的な流行の開始の指標を超えた第49週と比べて報告数は約1.7倍に増加した(図1)。都道府県別では北海道(8.5)、福井県(6.8)、山口県(6.1)、山梨県(5.8)、兵庫県(5.5)、大阪府(4.6)、宮城県(4.2)、福島県(4.1)、岡山県(3.9)、栃木県(3.8)の順であり、前週から引き続き、北海道及び本州の各地域において流行が拡大しており、特に第50週では北海道での増加が著しい(図2、図3)。2008年第36〜50週までの定点当たり累積報告数は6.65(累積報告数31,390)であり、年齢別では5〜9歳10,683例(34.0%)、0〜4歳7,324例(23.3%)、10〜14歳5,206例(16.6%)、30〜39歳2,569例(8.2%)の順となっている(図4)。第36週以降のインフルエンザウイルスの分離報告数は26都道府県から239件あり、その内訳はAH1亜型58件(24.3%)、AH3亜型111件(46.4%)、B型70件(29.3%)となっている(図5)。AH3亜型の報告割合が高いが、AH1亜型及びB型の報告割合も増加がみられており、どの亜型が流行の主流となっていくかは現時点では不明である(図6)。
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図1. インフルエンザの年別・週別発生状況(1998〜2008年第50週) |
図2. インフルエンザの都道府県別報告状況(2008年第50週) |
図3. 主要都道府県におけるインフルエンザの週別推移(2008年第25〜50週) |
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図4. 2008/09シーズンのインフルエンザ累積報告数の年齢群別割合(2008年第36〜50週) |
図5. インフルエンザウイルス型別分離・検出割合報告(2008年第36〜50週) |
図6. インフルエンザウイルス分離・検出報告数の週別推移(2008年第20〜50週) |
第50週のインフルエンザの定点当たり報告数は、今シーズンの流行が開始した(定点当たり報告数が1.0を超えた)前週(第49週)の約1.7倍となり、北海道と本州の広範な地域において特に流行が拡大しつつある。今シーズンのように12月中にインフルエンザの全国的な流行が見られた場合、年末・年始の様々な行事への参加や長距離移動を目的として公共交通機関を利用する際には、インフルエンザウイルスの感染予防について注意するべきである。インフルエンザの発生動向には今後とも注意深い観察を行っていく必要がある。
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