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発生動向総覧
※2008年5月12日の法改正に伴い、疾病の名称および並び順を一部変更しました。
〈第51週コメント〉 12月24日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 292例 |
3類感染症: |
細菌性赤痢6例
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感染地域:長野県2例、ネパール2例、パラグアイ1例、タイ/ネパール1例
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腸管出血性大腸菌感染症28例(有症者12例、うちHUS 1例)
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感染地域:国内28例
国内の感染地域:大分県5例、広島県3例、佐賀県3例1)、山口県2例、熊本県2例、宮城県1例、山形県1例、群馬県1例、東京都1例、神奈川県1例、新潟県1例、岡山県1例、長崎県1例、宮崎県1例、鹿児島県1例、国内(都道府県不明)3例
集団発生:1)全例が、第47〜48週の18例とともに、同一保育園に関連した集団発生
年齢群:3歳(2例)、4歳(1例)、5歳(1例)、6歳(1例)、8歳(1例)、10代(3例)、20代(4例)、30代(8例)、40代(2例)、50代(2例)、60代(1例)、70代(1例)、80代(1例)
血清型・毒素型:O157 VT2(12例)、O157 VT1・VT2(5例)、O26 VT1(2例)、O103 VT1(2例)、O146 VT2(2例)、O15 VT1・VT2( 1例)、O26 VT1・VT2(1例)、O157 VT1(1例)、その他・不明(2例)
累積報告数:4,292例(有症者2,801例、うちHUS 94例、死亡8例)
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腸チフス1例(感染地域:フィリピン)
パラチフス1例(感染地域:バングラデシュ)
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4類感染症: |
E型肝炎1例(感染地域:中国)
A型肝炎1例(感染地域:東京都)
つつが虫病22例
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感染地域:千葉県6例、鹿児島県5例、高知県3例、茨城県2例、宮崎県2例、群馬県1例、愛知県1例、和歌山県1例、大分県1例
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デング熱1例(感染地域:ボリビア) マラリア1例(熱帯熱_感染地域:ニジェール)
レジオネラ症7例(肺炎型7例)
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感染地域:埼玉県2例、茨城県1例、群馬県1例、京都府1例(温泉)、兵庫県/京都府(温泉)1例、国内(都道府県不明)1例
年齢群:30代(1例)、40代(2例)、60代(2例)、80代(2例)
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レプトスピラ症1例(感染地域:沖縄県_感染原因:不明)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢12例(腸管アメーバ症11例、腸管及び腸管外アメーバ症1例) |
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感染地域:愛知県2例、福島県1例、埼玉県1例、兵庫県1例、山口県1例、熊本県1例、沖縄県1例、国内(都道府県不明)2例、韓国1例、中国/インド/クウェート1例
感染経路:経口感染4例、性的接触3例(異性間1例、異性/同性間1例、異性間・同性間不明1例)、不明5例
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ウイルス性肝炎2例
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B型2例_感染経路:性的接触1例(異性間)、不明1例
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クロイツフェルト・ヤコブ病1例(孤発性プリオン病古典型)
後天性免疫不全症候群18例(AIDS 5例、無症候13例) |
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感染地域:国内17例、アルゼンチン1例
感染経路:性的接触16例(異性間2例、同性間12例、異性/同性間2例)、不明2例
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ジアルジア症1例(感染地域:ジブチ)
梅毒5例(早期顕症II期2例、晩期顕症1例、無症候2例)
バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例(遺伝子型:不明_菌検出検体:便)
風しん2例(検査診断例1例、臨床診断例1例)
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感染地域:宮城県1例、広島県1例
年齢群:5〜9歳(1例)、35〜39歳(1例)
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麻しん12例〔麻しん(検査診断例3例、臨床診断例8例)、修飾麻しん(検査診断例1例)〕
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感染地域:国内11例、フィリピン1例
国内の感染地域:神奈川県3例、東京都1例、長野県1例、愛知県1例、兵庫県1例、愛媛県1例、国内(都道府県不明)3例
年齢群:0歳(2例)、1歳(2例)、5〜9歳(1例)、10〜14歳(1例)、15〜19歳(3例)、30〜34歳(3例)
累積報告数:10,986例〔麻しん(検査診断例3,160例、臨床診断例6,808例)、修飾麻しん(検査診断例1,018例)
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(補)他に2008年第50週までに診断されたものの報告遅れとして、急性灰白髄炎1例(ワクチン株由来.0歳)、細菌性赤痢1例(感染地域:ネパール)、日本紅斑熱8例(感染地域:三重県6例、熊本県2例)、急性脳炎4例〔RSウイルス1例(2歳)、A型インフルエンザウイルス1例(8歳)、水痘帯状疱疹ウイルス1例(98歳)、大腸菌1例(69歳)〕などの報告があった。
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◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は第41週以降増加が続いている。都道府県別では北海道(17.3)、兵庫県(8.6)、宮城県(8.1)、山口県(7.8)、福島県(7.5)、岡山県(7.5)、大阪府(6.6)、福井県(5.6)、和歌山県(5.6)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症は2,948例と報告数は減少した。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の約76%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は第45週以降増加が続いている。都道府県別では新潟県(2.10)、北海道(1.94)、福井県(1.00)、愛媛県(1.00)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は3週連続で増加し、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してやや多い。都道府県別では大分県(5.3)、福井県(4.8)、山形県(4.2)、新潟県(3.9)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は第43週以降増加が続いている。都道府県別では大分県(28.2)、宮崎県(28.1)、三重県(25.4)、埼玉県(24.6)が多い。水痘の定点当たり報告数は第46週以降増加が続いている。都道府県別では山形県(4.6)、新潟県(4.4)、宮崎県(4.4)が多い。手足口病の定点当たり報告数は第37週以降減少が続いている。都道府県別では青森県(1.29)、高知県(1.00)、栃木県(0.73)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は横ばいであった。都道府県別では東京都(0.26)、鳥取県(0.26)、福島県(0.25)が多い。百日咳の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では栃木県(0.15)、大分県(0.15)、秋田県(0.11)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では佐賀県(0.39)、熊本県(0.29)、島根県(0.26)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では福井県(2.68)、高知県(2.10)、福岡県(1.95)、佐賀県(1.78)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では福島県(2.86)、宮城県(2.83)、青森県(2.17)が多い。
注目すべき感染症
◆ インフルエンザ
インフルエンザ(Influenza)は、インフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症で、毎年世界中で流行がみられている。現在ヒトからヒトに感染して臨床的に問題となっているインフルエンザウイルスにはA香港型(A/H3N2亜型)、Aソ連型(A/H1N1亜型)、B型の3種類がある。日本においては、他の北半球の温帯地域の国々と同様に例年冬季を中心に全国的な流行が発生し、多くのシーズンにおいて推計1,000万人以上の発病者がみられている。典型例の場合、感染してから1〜3日間の潜伏期間を経た後に、突然の発熱(通常は38℃以上)、頭痛、倦怠感、筋肉痛・関節痛等の症状で発症し、次いで咳、鼻汁などの上気道炎症状が続く。合併症等がなければ、約1週間の経過で軽快するものの、とくに高齢者や、基礎疾患を持っている場合などでは原疾患の悪化と共に、二次的な細菌性肺炎を起こす場合がある。また、小児では中耳炎の合併や熱性痙攣、気管支喘息の誘発を招く場合がある。更に乳幼児を中心とした小児においては、稀ではあるものの急性脳症(インフルエンザ脳症)を合併する場合がある。このようにインフルエンザはいわゆる「かぜ」と比べて全身症状が強く、また重症化することがあり、加えて様々な合併症を招く可能性がある。インフルエンザが疑われる症状を呈した場合は、速やかに医療機関を受診して医師の診断と適切な治療を受けることが重要である。
インフルエンザは、罹患している人の咳、くしゃみ、つばなどの飛沫と共に放出されたウイルスを、鼻腔や気管など気道に吸入することによる飛沫感染が主な感染経路であり、飛沫等を介する間接的接触による接触感染もあると考えられている。インフルエンザの流行時には、不特定多数の人が集まる場所に行くことはできれば避けるべきであり、外出する際のマスクの利用や帰宅時のうがい、手洗いが奨められる。また、インフルエンザの主な感染経路が飛沫感染であることより、周囲への感染拡大を防止する意味から、インフルエンザに罹患している人、咳嗽などの症状のある人は特に、マスクの着用等の咳エチケットが推奨される。
感染症発生動向調査によると、インフルエンザの定点当たり報告数は2008年第41週以降増加が続いており、第51週は4.68(報告数22,200)となり、全国的な流行の開始の指標を超えた第49週と比べて約2.9倍、前週(第50週)と比べて約1.7倍に増加した(図1)。都道府県別では北海道(17.3)、兵庫県(8.6)、宮城県(8.1)、山口県(7.8)、福島県(7.5)、岡山県(7.5)、大阪府(6.6)、福井県(5.6)、和歌山県(5.6)、埼玉県(5.5)の順であり、前週から引き続き、北海道及び本州の各地域において流行が拡大しており、特に第51週では北海道からの報告数の増加が著しい(図2、図3)。2008年第36〜51週までの定点当たり累積報告数は11.27(累積報告数53,632)であり、年齢別では5〜9歳18,266例(34.1%)、0〜4歳11,951例(22.3%)、10〜14歳9,226例(17.2%)、30〜39歳4,374例(8.2%)の順となっている(図4)。第36週以降のインフルエンザウイルスの分離報告数は31都道府県から442件あり、その内訳はAH1亜型153件(34.6%)、AH3亜型207件(46.8%)、B型82件(18.6%)となっている(図5)。AH3亜型の報告割合が最多であるが、AH1亜型は12月に入って急増してきており、どの亜型が流行の主流となっていくかは現時点では不明である(図6)。
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図1. インフルエンザの年別・週別発生状況(1998〜2008年第51週) |
図2. インフルエンザの都道府県別報告状況(2008年第51週) |
図3. 主要都道府県におけるインフルエンザの週別推移(2008年第25〜51週) |
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図4. 2008/09シーズンのインフルエンザ累積報告数の年齢群別割合(2008年第36〜51週) |
図5. インフルエンザウイルス型別分離・検出割合報告(2008年第36〜51週) |
図6. インフルエンザウイルス分離・検出報告数の週別推移(2008年第20〜51週) |
第51週のインフルエンザの定点当たり報告数は、今シーズンの流行が開始した前々週(第49週)の約2.9倍となり、北海道と本州の広範な地域において更に流行が拡大しつつある。これまで、12月までにインフルエンザの全国的な流行が開始した場合は、その流行のピークは翌年の1月末かもしくは2月初旬となっている。インフルエンザの患者発生報告数は今後更に増加する可能性が高いと予想されるため、インフルエンザの発生動向にはよりいっそうの注意が必要である。
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