|
発生動向総覧
※2008年5月12日の法改正に伴い、疾病の名称および並び順を一部変更しました。
〈第52週コメント〉 1月6日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 335例 |
3類感染症: |
細菌性赤痢4例
|
|
感染地域:インド2例、フィリピン1例、インドネシア1例
|
腸管出血性大腸菌感染症13例(有症者10例)
|
|
感染地域:国内13例
国内の感染地域:東京都2例、福岡県2例、山形県1例、埼玉県1例、千葉県1例、石川県1例、静岡県1例、大阪府1例、奈良県1例、佐賀県1例、沖縄県1例
年齢群:4歳(1例)、6歳(1例)、9歳(1例)、10代(2例)、20代(5例)、30代(1例)、50代(1例)、60代(1例)
血清型・毒素型:O157 VT2(4例)、O26 VT1(2例)、O157 VT1・VT2(2例)、O74 VT1(1例)、O119 VT1(1例)、O145 VT2(1例)、その他・不明(2例)
累積報告数:4,307例(有症者2,811例、うちHUS 94例、死亡8例)
|
腸チフス1例(感染地域:バングラデシュ) パラチフス1例(感染地域:バングラデシュ)
|
4類感染症: |
E型肝炎1例(感染地域:タイ/インド)
つつが虫病17例
|
|
感染地域:鹿児島県8例、千葉県3例、東京都2例、福島県1例、神
奈川県1例、岐阜県1例、宮崎県1例
|
デング熱2例(感染地域:フィリピン1例、インドネシア1例) マラリア2例(熱帯熱2例_感染地域:マラウイ1例、ガボン1例)
レジオネラ症10例(肺炎型10例)
|
|
感染地域:岐阜県2例、北海道1例、秋田県1例、東京都1例、富山県1例、京都府1例、岡山県1例、鹿児島県1例、国内(都道府県不明)1例
年齢群:40代(1例)、50代(1例)、60代(5例)、70代(2例)、90代(1例)
|
|
5類感染症: |
アメーバ赤痢14例(腸管アメーバ症11例、腸管外アメーバ症3例) |
|
感染地域:北海道1例、岩手県1例、福島県1例、栃木県1例、東京都1例、京都府1例、兵庫県1例、国内(都道府県不明)6例、国外(国不明)1例
感染経路:経口感染2例、性的接触3例(異性間3例)、経口感染/性的接触(異性間・同性間不明)1例、不明8例
|
ウイルス性肝炎2例
|
|
B型2例_感染経路:性的接触2例(異性間2例)
|
急性脳炎2例
|
|
A型インフルエンザウイルス1例_年齢群:6歳(死亡)
インフルエンザウイルス(型不明)1例_年齢群:3歳(死亡)
|
クロイツフェルト・ヤコブ病3例
|
|
孤発性プリオン病古典型2例
孤発性プリオン病その他1例
|
後天性免疫不全症候群11例(AIDS 2例、無症候9例) |
|
感染地域:国内10例、国内・国外不明1例
感染経路:性的接触10例(異性間3例、同性間6例、異性/同性間1例)、不明1例
|
ジアルジア症1例(感染地域:インド)
梅毒6例(早期顕症I期2例、早期顕症II期2例、晩期顕症1例、無症候1例)
破傷風1例(年齢群:70代)
風しん1例(検査診断例)
|
|
感染地域:岩手県
年齢群:30〜34歳
|
麻しん12例〔麻しん(検査診断例4例、臨床診断例5例)、修飾麻しん(検査診断例3例)〕
|
|
感染地域:国内12例
国内の感染地域:神奈川県5例、栃木県2例、千葉県2例、山形県1例、埼玉県1例、宮崎県1例
年齢群:0歳(1例)、1歳(3例)、2歳(1例)、3歳(1例)、4歳(1例)、10〜14歳(1例)、15〜19歳(1例)、20〜24歳(1例)、30〜34歳(1例)、60代(1例)
累積報告数:11,005例〔麻しん(検査診断例3,169例、臨床診断例6,814例)、修飾麻しん(検査診断例1,022例)〕
|
(補)他にマラリア1例の報告があったが削除予定。また、2008年第51週までに診断されたものの報告遅れとして、急性脳炎3例〔病原体不明3例(8歳、10代、40代)〕、劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(40代.死亡)、風しん3例〔臨床診断例3例.感染地域:福岡県2例、東京都1例.年齢群:9歳(1例)、15〜19歳(2例)〕などの報告があった。
|
◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は第41週以降増加が続いており、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してやや多い。都道府県別では北海道(24.7)、兵庫県(12.2)、福島県(10.4)、沖縄県(9.7)、岡山県(9.4)、宮城県(9.1)、山口県(8.6)、和歌山県(8.3)、大阪府(8.1)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症は2,364例と報告数は2週連続で減少した。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の約77%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では石川県(1.59)、新潟県(1.53)、北海道(1.37)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では大分県(3.9)、宮崎県(3.8)、鳥取県(3.6)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では宮崎県(27.1)、福井県(25.9)、大分県(24.6)、広島県(21.1)が多い。水痘の定点当たり報告数は第46週以降増加が続いている。都道府県別では宮崎県(4.6)、山形県(4.6)、大分県(4.1)が多い。手足口病の定点当たり報告数は第37週以降減少が続いている。都道府県別では青森県(0.83)、高知県(0.80)、秋田県(0.74)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では神奈川県(0.25)、宮城県(0.20)、東京都(0.19)が多い。百日咳の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では沖縄県(0.12)、秋田県(0.11)、福岡県(0.10)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は3週連続で減少した。都道府県別では熊本県(0.19)、大分県(0.17)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では福井県(3.2)、高知県(2.5)、福岡県(2.1)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では福島県(2.86)、青森県(2.50)、沖縄県(2.00)が多い。
注目すべき感染症
◆ インフルエンザ
インフルエンザ(Influenza)は、インフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症で、毎年世界中で流行がみられている。現在ヒトからヒトに感染して臨床的に問題となっているインフルエンザウイルスにはA香港型(A/H3N2亜型)、Aソ連型(A/H1N1亜型)、B型の3種類がある。日本においては、他の北半球の温帯地域の国々と同様に例年冬季を中心に全国的な流行が発生し、多くのシーズンにおいて推計1,000万人以上の発病者がみられている。インフルエンザはいわゆる「かぜ」と比べて全身症状が強く、また重症化することがあり、加えて様々な合併症を招く可能性がある。インフルエンザが疑われる症状を呈した場合は、速やかに医療機関を受診して医師の診断と適切な治療を受けることが重要である。
インフルエンザは、罹患している人の咳、くしゃみ、つばなどの飛沫と共に放出されたウイルスを、鼻腔や気管など気道に吸入することによる飛沫感染が主な感染経路であり、飛沫等を介する間接的接触による接触感染もあると考えられている。インフルエンザの流行時には、不特定多数の人が集まる場所に行くことはできれば避けるべきであり、外出する際のマスクの利用や帰宅時のうがい、手洗いが奨められる。また、インフルエンザの主な感染経路が飛沫感染であることより、周囲への感染拡大を防止する意味から、インフルエンザに罹患している人、咳嗽などの症状のある人は特に、マスクの着用等の咳エチケットが推奨される。
感染症発生動向調査によると、インフルエンザの定点当たり報告数は2008年第41週以降増加が続いており、第52週は6.52(報告数30,888)となった。全国的な流行の開始の指標を超えた第49週と比べて報告数は約4.0倍、前週(第51週)と比べても1.4倍に増加が認められている(図1)。都道府県別では北海道(24.7)、兵庫県(12.2)、福島県(10.4)、沖縄県(9.7)、岡山県(9.4)、宮城県(9.1)、山口県(8.6)、和歌山県(8.3)、大阪府(8.1)の順であり、前週から引き続き、北海道、本州の各地域および沖縄県において流行が拡大している。前週と同様に、第52週も北海道からの報告数の増加が著しい(図2、図3)。2008年第36〜52週までの定点当たり累積報告数は17.83(累積報告数84,696)であり、年齢別では5〜9歳27,968例(33.0%)、0〜4歳18,530例(21.9%)、10〜14歳14,223例(16.8%)、30〜39歳7,407例(8.7%)の順となっている(図4)。第36週以降のインフルエンザウイルスの分離報告数は36都道府県から633件あり、その内訳はAH1亜型223件(35.2%)、AH3亜型293件(46.3%)、B型117件(18.5%)となっている(図5)。AH3亜型の報告割合が最多であるが、49週以降はAH1亜型の分離報告の方が多くなってきており、今後どの亜型が流行の主流となっていくかは現時点では不明である(図6)。また、急性脳炎として全数報告されているインフルエンザ脳症であるが、今シーズンはこれまでに10例の報告があり、年齢別では3歳3例、5歳2例、6歳1例、8歳1例、9歳1例、10代1例、50代1例であり、3歳、6歳、10代のそれぞれ1例ずつの計3例が届出時に死亡が確認されていた。
|
|
|
図1. インフルエンザの年別・週別発生状況(1998〜2008年第52週) |
図2. インフルエンザの都道府県別報告状況(2008年第52週) |
図3. 主要都道府県におけるインフルエンザの週別推移(2008年第25〜52週) |
|
|
|
図4. 2008/09シーズンのインフルエンザ累積報告数の年齢群別割合(2008年第36〜52週) |
図5. インフルエンザウイルス型別分離・検出割合報告(2008年第36〜52週) |
図6. インフルエンザウイルス分離・検出報告数の週別推移(2008年第20〜52週) |
昨シーズンからAH1亜型ウイルスについてはリン酸オセルタミビル耐性ウイルスの出現が問題となりつつある。今シーズンに入っても、米国などで分離同定されたAH1亜型ウイルスの多くはリン酸オセルタミビル耐性であるとの報告がある(Influenza Activity---United States, September 28 ---November 29, 2008; MMWR http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/mm5749a3.htm)。また、我が国でも、今シーズン国内で分離されたAH1亜型耐性ウイルスに関する報告が散見されてきている(IASR・インフルエンザ速報記事http://idsc.nih.go.jp/iasr/influ.html)。
冬季休暇を経て、1月中旬以降にはインフルエンザの患者報告が急増してくる可能性が高いと予想されることから、今後インフルエンザの発生動向およびインフルエンザウイルスの分離状況には、よりいっそうの注意が必要である。
|