発生動向総覧
※2008年5月12日の法改正に伴い、疾病の名称および並び順を一部変更しました。
〈第4週コメント〉 1月28日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 267例 |
3類感染症: |
細菌性赤痢2例(感染地域:岩手県1例、インドネシア1例)
腸管出血性大腸菌感染症11例(有症者6例)
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感染地域:国内11例
国内の感染地域:茨城県2例、東京都2例、長野県2例、福岡県2例、新潟県1例、兵庫県1例、国内(都道府県不明)1例
年齢群:6歳(1例)、9歳(1例)、10代(2例)、20代(3例)、30代(1例)、40代(1例)、50代(2例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2(4例)、O157 VT2(3例)、O91 VT1(1例)、O115 VT1(1例)、その他・不明(2例)
累積報告数:44例(有症者28例、うちHUS 3例)
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4類感染症: |
つつが虫病6例(感染地域:和歌山県4例、茨城県1例、鹿児島県1例)
デング熱5例(感染地域:タイ2例、インドネシア1例、オーストラリア1例、バヌアツ1例)
レジオネラ症17例(肺炎型15例、ポンティアック型2例)
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感染地域:富山県2例(うち1例温泉)、長野県2例(うち1例温泉)、岐阜県2例、青森県1例(温泉)、栃木県1例(温泉)、群馬県1例、埼玉県1例、神奈川県1例、愛知県1例、大阪府1例、島根県1例、香川県1例、愛媛県1例、国内・国外不明1例
年齢群:4歳(1例)、40代(2例)、50代(2例)、60代(3例)、70代(2例)、80代(4例.うち1例死亡)、90代(3例)
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レプトスピラ症1例
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感染地域:千葉県
感染原因:ネズミ
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5類感染症: |
アメーバ赤痢7例(腸管アメーバ症5例、腸管外アメーバ症1例、腸管及び腸管外アメーバ症1例) |
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感染地域:福島県1例、埼玉県1例、岐阜県1例、中国1例、台湾1例、タイ1例、フィリピン1例
感染経路:経口感染4例、性的接触1例(同性間)、不明2例
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ウイルス性肝炎1例(C型_感染経路:不明)
急性脳炎5例
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A型インフルエンザウイルス5例
年齢群:0歳(1例)、3歳(1例)、6歳(1例)、8歳(1例)、9歳(1例)
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劇症型溶血性レンサ球菌感染症2例
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年齢群:60代(2例.うち1例死亡)
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後天性免疫不全症候群15例(AIDS 6例、無症候8例、その他1例)
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感染地域:国内12例、タイ1例、モンゴル1例、国内・国外不明1例
感染経路:性的接触14例(異性間5例、同性間8例、異性/同性間1例)、静注薬物使用1例
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髄膜炎菌性髄膜炎1例
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感染地域:千葉県
年齢群:80代
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梅毒9例(早期顕症I期1例、早期顕症II期2例、無症候6例)
バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例(遺伝子型:不明_菌検出検体:胆汁)
風しん1例(検査診断例) |
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感染地域:北海道
年齢群:20〜24歳
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麻しん12例〔麻しん(検査診断例4例、臨床診断例6例)、修飾麻しん(検査診断例2例)〕
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感染地域:国内12例
国内の感染地域:東京都4例、埼玉県2例、福岡県2例、神奈川県1例、広島県1例、国内(都道府県不明)2例
年齢群:0歳(1例)、1歳(4例)、3歳(2例)、9歳(1例)、15〜19歳(1例)、20〜24歳(1例)、30〜34歳(2例)
累積報告数:59例〔麻しん(検査診断例16例、臨床診断例33例)、修飾麻しん(検査診断例10例)〕
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(補)他に2009年第3週までに診断されたものの報告遅れとして、エキノコックス症5例(多包条虫5例_感染地域:北海道5例)、急性脳炎6例〔A型インフルエンザウイルス1例(10代)、インフルエンザウイルス(型不明)1例(10代)、コクサッキーA4ウイルス1例(10代)、病原体不明3例(1歳1例、6歳1例、10代1例)〕、劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(70代)、バンコマイシン耐性腸球菌感染症2例(遺伝子型:VanC 1例_菌検出検体:血液、遺伝子型:不明1例_菌検出検体:尿)、風しん1例(検査診断例.感染地域:神奈川県.年齢群:15〜19歳)などの報告があった。
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◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は3週連続で増加し、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してやや多い。都道府県別では沖縄県(89.6)、宮崎県(64.5)、大分県(51.7)、長崎県(50.6)、神奈川県(47.1)、千葉県(46.0)、埼玉県(45.3)、香川県(45.1)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症は649例と報告数は2週連続で減少した。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の約80%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では新潟県(0.72)、三重県(0.69)、香川県(0.57)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は3週連続で増加した。都道府県別では福井県(4.9)、富山県(4.6)、鳥取県(4.1)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では愛媛県(16.3)、山形県(15.6)、福井県(14.9)が多い。水痘の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では宮崎県(5.4)、大分県(4.1)、福井県(3.6)、山形県(3.5)、沖縄県(3.5)が多い。手足口病の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では青森県(0.63)、秋田県(0.54)、高知県(0.30)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は横ばいであった。都道府県別では福島県(0.29)、神奈川県(0.28)、東京都(0.25)が多い。百日咳の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では秋田県(0.09)、福岡県(0.09)、千葉県(0.08)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では鳥取県(0.11)、熊本県(0.10)、島根県(0.09)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では福井県(1.82)、福岡県(1.11)、高知県(0.93)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では福島県(2.86)、沖縄県(1.86)、青森県(1.33)が多い。
注目すべき感染症
◆ インフルエンザ
インフルエンザ(Influenza)は、インフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症で、毎年世界中で流行がみられている。いわゆる「かぜ」と比べて全身症状が強く、また重症化することがあり、加えて様々な合併症を招く可能性がある。合併症等がなければ、約1週間の経過で軽
快するものの、とくに高齢者や、基礎疾患を持っている場合などでは原疾患の悪化と共に、二次的な細菌性肺炎を起こす場合がある。また、小児では中耳炎の合併や熱性痙攣、気管支喘息の誘発を招く場合がある。更に乳幼児を中心とした小児においては、稀ではあるものの急性脳症(インフルエンザ脳症)を合併する場合がある。インフルエンザが疑われる症状を呈した場合は、速やかに医療機関を受診して医師の診断と適切な治療を受けることが重要である。
インフルエンザの流行時には、不特定多数の人が集まる場所に行くことはできれば避けるべきであり、外出する際のマスクの利用や帰宅時のうがい、手洗いが奨められる。また、インフルエンザの主な感染経路が飛沫感染であることより、周囲への感染拡大を防止する意味から、インフルエンザに罹患している人、咳嗽などの症状のある人は特に、マスクの着用等の咳エチケットが推奨される。
感染症発生動向調査によると、2009年第4週のインフルエンザの定点当たり報告数は37.45(報告数178,991)となり、第3週(定点当たり報告数20.84)を大幅に上回った(図1)。都道府県別では沖縄県(89.6)、宮崎県(64.5)、大分県(51.7)、長崎県(50.6)、神奈川県(47.1)、千葉県(46.0)、埼玉県(45.3)、香川県(45.1)、福岡県(44.1)、新潟県(43.4)の順であり、北海道を除いて全国的に流行の拡大がみられている(図2、図3)。2008年第36週〜2009年第4週までの定点当たり累積報告数は94.25(累積報告数444,705)であり、年齢別では5〜9歳131,848例(29.6%)、0〜4歳102,346例(23.0%)、10〜14歳64,418例(14.5%)、30〜39歳42,463例(9.5%)、20〜29歳37,291例(8.4%)の順となっている(図4)。第36週以降のインフルエンザウイルスの分離報告数は45都道府県から1,344件あり、その内訳はAH1亜型664件(49.4%)、AH3亜型491件(36.5%)、B型189件(14.1%)となっている(図5)。今シーズンここまではAH1亜型とAH3亜型の混合流行であるといえるが、その中でもAH1亜型の分離報告割合が更に増加してきている(図6)。
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図1. インフルエンザの年別・週別発生状況(1999〜2009年第4週) |
図2. インフルエンザの都道府県別報告状況(2009年第4週) |
図3. 主要都道府県におけるインフルエンザの週別推移(2008年第36〜2009年第4週) |
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図4. 2008/09シーズンのインフルエンザ累積報告数の年齢群別割合(2008年第36〜2009年第4週) |
図5. インフルエンザウイルス型別分離・検出割合報告(2008年第36〜2009年第4週) |
図6. インフルエンザウイルス分離・検出報告数の週別推移(2008年第20〜2009年第4週) |
昨シーズンからAH1亜型ウイルスについてはリン酸オセルタミビル耐性ウイルスが出現した。今シーズンは、日本を含めた北半球の諸国(日本、米国、EU諸国等)で分離されたAH1亜型ウイルスの大半が同薬剤に対して耐性であると報告されている(IASR:インフルエンザ速報記事http://idsc.nih.go.jp/iasr/influ.html)。現在の状況を受けて、本年1月30日には厚生労働省のインフルエンザQ&Aも改訂された(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/07qa.html)。
今シーズンは12月から全国的な流行が始まっており、過去のシーズンの報告数推移をみると、現在流行のピークを迎えつつあるものと予想される。今シーズンの流行はAH1亜型ウイルスとAH3亜型ウイルスの混合流行であり、中でもAH1亜型ウイルスの分離報告割合が増加しつつある。インフルエンザに対しては、第一に予防に努めることであるが、疑わしい症状を呈して医療機関でインフルエンザと診断された場合は、地域のインフルエンザの流行状況を踏まえ、医師とよく相談の上で適切な治療を受けるべきである。
今後ともインフルエンザの患者発生状況、ウイルス分離報告に対しては注意深い観察が必要である。
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