発生動向総覧
※2008年5月12日の法改正に伴い、疾病の名称および並び順を一部変更しました。
〈第9週コメント〉 3月4日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 296例 |
3類感染症: |
細菌性赤痢5例〔感染地域:国内(都道府県不明)2例、フィリピン3例〕
腸管出血性大腸菌感染症12例(有症者6例)
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感染地域:国内12例
国内の感染地域:愛知県3例、福岡県2例、北海道1例、東京都1例、神奈川県1例、奈良県1例、愛媛県1例、国内(都道府県不明)2例
年齢群:2歳(1例)、3歳(1例)、5歳(1例)、7歳(1例)、20代(4例)、30代(2例)、50代(2例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2(7例)、O26 VT1(2例)、O91 VT1(1例)、その他・不明(2例)
累積報告数:125例(有症者86例、うちHUS 5例)
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4類感染症: |
E型肝炎1例
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感染地域:静岡県
感染源:イノシシの生レバー
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A型肝炎2例(感染地域:京都府1例、モザンビーク1例)
デング熱1例(感染地域:ミャンマー)
マラリア3例(熱帯熱3例_感染地域:ギニア2例、モザンビーク1例)
レジオネラ症7例(肺炎型5例、ポンティアック型1例、無症状病原体保有者1例)
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感染地域:岐阜県2例、宮城県1例(温泉)、富山県1例、静岡県1例、大阪府1例、香港1例
年齢群:30代(1例)、70代(3例)、80代(3例.うち1例死亡)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢9例(腸管アメーバ症7例、腸管外アメーバ症2例) |
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感染地域:千葉県1例、東京都1例、神奈川県1例、大阪府1例、兵庫県1例、国内(都道府県不明)1例、台湾1例、インド1例、国外(国不明)1例
感染経路:経口感染2例、性的接触4例(同性間2例、異性間1例、異性間・同性間不明1例)、不明3例
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ウイルス性肝炎3例〔B型3例_感染経路:性的接触2例(異性間2例)、不明1例〕
急性脳炎2例〔A型インフルエンザウイルス2例_年齢群:1歳(1例)、6歳(1例)〕
クロイツフェルト・ヤコブ病1例(孤発性プリオン病古典型)
劇症型溶血性レンサ球菌感染症2例
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年齢群:70代(1例)、100代(1例)
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後天性免疫不全症候群21例(AIDS 5例、無症候14例、その他2例)
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感染地域:国内17例、タイ1例、国外(国不明)1例、国内・国外不明2例
感染経路:性的接触18例(異性間5例、同性間13例)、不明3例
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ジアルジア症1例〔感染地域:国内(都道府県不明)/インドネシア〕
梅毒10例(早期顕症I期1例、早期顕症II期3例、晩期顕症2例、無症候4例)
破傷風1例(年齢群:30代)
バンコマイシン耐性腸球菌感染症2例
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遺伝子型:VanC 1例_菌検出検体:血液
遺伝子型:不明1例_菌検出検体:便
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風しん5例(検査診断例3例、臨床診断例2例) |
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感染地域:福岡県2例、千葉県1例、神奈川県1例、大分県1例
年齢群:1歳(1例)、10〜14歳(1例)、15〜19歳(2例)、30〜34歳(1例)
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麻しん16例〔麻しん(検査診断例6例、臨床診断例6例)、修飾麻しん(検査診断例)4例〕
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感染地域:国内15例、フィリピン1例
国内の感染地域:東京都2例、神奈川県2例、福井県2例、埼玉県1例、千葉県1例、愛知県1例、大阪府1例、和歌山県1例、広島県1例、福岡県1例、国内(都道府県不明)2例
年齢群:0歳(2例)、1歳(3例)、2歳(1例)、4歳(2例)、5〜9歳(1例)、10〜14歳(3例)、15〜19歳(2例)、25〜29歳(1例)、35〜39歳(1例)
累積報告数:131例〔麻しん(検査診断例36例、臨床診断例71例)、修飾麻しん(検査診断例24例)〕
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(補)他に後天性免疫不全症候群1例の報告があったが削除予定。また、2009年第8週までに診断されたものの報告遅れとして、E型肝炎1例(感染地域:福岡県.感染源:不明)、エキノコックス症1例(多包条虫_感染地域:北海道)、デング熱1例(感染地域:東ティモール)、急性脳炎3例〔A型インフルエンザウイルス1例(7歳.死亡)、麻しんウイルス1例(30代)、病原体不明1例(0歳)〕、劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(10代)、バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例(遺伝子型:VanC_菌検出検体:関節内組織)、風しん2例〔検査診断例1例、臨床診断例1例.感染地域:福岡県2例.年齢群:15〜19歳(1例)、30〜34歳(1例)〕などの報告があった。
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◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は増加した。都道府県別では山形県(21.6)、徳島県(21.2)、新潟県(20.6)、長崎県(19.6)、宮城県(19.4)、宮崎県(19.2)、千葉県(19.1)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症の報告数は399例と第3週以降減少が続いている。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の約78%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では新潟県(0.75)、徳島県(0.74)、北海道(0.65)、島根県(0.65)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では福井県(6.6)、富山県(5.6)、大分県(5.0)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では福井県(17.7)、三重県(12.2)、宮崎県(12.1)が多い。水痘の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では沖縄県(4.8)、宮崎県(4.2)、佐賀県(3.5)が多い。手足口病の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では青森県(0.79)、島根県(0.57)、秋田県(0.46)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では山梨県(0.33)、広島県(0.25)、佐賀県(0.22)が多い。百日咳の定点当たり報告数は3週連続で増加し、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い。都道府県別では鹿児島県(0.18)、栃木県(0.15)、香川県(0.14)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は増加した。都道府県別では島根県(0.13)、熊本県(0.13)、群馬県(0.10)、山口県(0.10)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では福井県(2.23)、山形県(2.13)、佐賀県(1.78)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では沖縄県(2.57)、福島県(2.43)、埼玉県(1.56)が多い。
注目すべき感染症
◆ インフルエンザ
インフルエンザ(Influenza)は、インフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症で、毎年世界中で流行がみられている。1〜3日間の潜伏期間を経て、突然に発熱(38℃以上の高熱)、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛・関節痛などが出現し、鼻水・咳などの呼吸器症状がこれに続く。通常は1週間前後の経過で軽快するが、いわゆる「かぜ」と比べて全身症状が強いのが特徴である。温帯地域より緯度の高い国々での流行は冬季にあり、北半球では1〜2月頃、南半球では7〜8月頃が流行のピークとなる。また、熱帯・亜熱帯地域では、雨季を中心としてインフルエンザが発生する。わが国のインフルエンザの発生は、11月下旬から12月上旬頃に始まり、翌年の1〜3月頃に患者数が増加し、4〜5月にかけて減少していくパターンを示すが、流行の程度とピークの時期はその年によって異なる。今シーズン(2008/09シーズン)は、2008年第49週からインフルエンザの流行が開始している。
感染症発生動向調査によると、2009年第9週のインフルエンザの定点当たり報告数は13.49(報告数64,528)となり、第5週以降減少が続いていた報告数は再度増加した(図1)。都道府県別では山形県(21.6)、徳島県(21.2)、新潟県(20.6)、長崎県(19.6)、宮城県(19.4)、宮崎県(19.2)、千葉県(19.1)、熊本県(19.1)、静岡県(19.1)の順であり、31都道府県で前週よりも増加していた(図2、図3)。2008年第36週〜2009年第9週までの定点当たり累積報告数は197.15(累積報告数938,249)であり、年齢別では5〜9歳312,889例(33.3%)、0〜4歳210,241例(22.4%)、10〜14歳156,781例(16.7%)、30〜39歳76,702例(8.2%)の順となっている。5〜9歳の年齢群が最多を占め、14歳以下の報告割合が全体の70%を超えていることは例年と同様である(図4)。第36週以降のインフルエンザウイルスの分離報告数は長崎県を除く46都道府県から3,588件あり、その内訳はAH1亜型2,087件(58.2%)、AH3亜型1,042件(29.0%)、B型459件(12.8%)となっており(図5)、AH1亜型ウイルスの大半がリン酸オセルタミビルに対する耐性遺伝子を有していることが確認されている(インフルエンザウイルス分離・検出速報:http://idsc.nih.go.jp/iasr/influ.html)。また、B型の分離割合が増加傾向にある(図6)。
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図1. インフルエンザの年別・週別発生状況(1999〜2009年第9週) |
図2. インフルエンザの都道府県別報告状況(2009年第9週) |
図3. 主要都道府県におけるインフルエンザの週別推移(2008年第36〜2009年第9週) |
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図4. 2008/09シーズンのインフルエンザ累積報告数の年齢群別割合(2008年第36〜2009年第9週) |
図5. インフルエンザウイルス型別分離・検出割合報告(2008年第36〜2009年第9週) |
図6. インフルエンザウイルス分離・検出報告数の週別推移(2008年第20〜2009年第9週) |
2009年第4週に定点当たり報告数は37.45(報告数178,991)と今シーズン最高となり、その後第5週以降4週連続して報告数は減少していたが、第9週の定点当たり報告数は第8週(定点当たり報告数12.05、報告数57,681)よりも増加した。これは、シーズン後半に増加する傾向にあるB型インフルエンザの流行が関与している可能性が考慮される。今しばらくはインフルエンザの発生動向およびウイルスの分離状況には注意が必要である。
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