発生動向総覧
※2008年5月12日の法改正に伴い、疾病の名称および並び順を一部変更しました。
〈第10週コメント〉 3月11日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 282例 |
3類感染症: |
コレラ1例(感染地域:フィリピン)
細菌性赤痢8例(感染地域:富山県1例、インドネシア4例、カンボジア1例、タイ1例、インド1例)
腸管出血性大腸菌感染症16例(有症者9例、うちHUS 1例)
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感染地域:国内15例、ネパール1例
国内の感染地域:和歌山県3例、福岡県3例、熊本県3例、青森県1例、埼玉県1例、兵庫県1例、国内(都道府県不明)3例
年齢群:1歳(2例)、2歳(1例)、3歳(2例)、4歳(2例)、5歳(2例)、8歳(1例)、20代(2例)、30代(2例)、60代(2例)
血清型・毒素型:O26 VT1( 6例)、O157 VT1・VT2( 4例)、O1 VT2(1例)、O91 VT1(1例)、O157 VT2(1例)、その他・不明(3例)
累積報告数:144例(有症者96例、うちHUS 6例)
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腸チフス2例(感染地域:国内(都道府県不明)1例、フィリピン1例)
パラチフス1例(感染地域:東京都) |
4類感染症: |
E型肝炎1例(感染地域:北海道_感染源:不明)
A型肝炎1例(感染地域:千葉県)
エキノコックス症1例(多包条虫_感染地域:北海道)
つつが虫病1例(感染地域:大分県) デング熱2例(感染地域:マレーシア1例、インドネシア1例)
マラリア1例〔熱帯熱_感染地域:アフリカ(国不明)〕
レジオネラ症7例(肺炎型7例)
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感染地域:埼玉県1例、千葉県1例、石川県1例、長野県1例、静岡県1例、三重県1例、奈良県1例(温泉)
年齢群:40代(1例)、50代(1例)、60代(3例)、80代(2例)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢8例(腸管アメーバ症6例、腸管外アメーバ症2例) |
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感染地域:宮城県1例、千葉県1例、富山県1例、愛知県1例、滋賀県1例、山口県1例、国内(都道府県不明)1例、インドネシア1例
感染経路:経口感染3例、性的接触2例(異性間1例、異性間・同性間不明1例)、不明3例
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ウイルス性肝炎1例〔B型_感染経路:性的接触(異性間・同性間不明)〕
急性脳炎1例(単純ヘルペスウイルス_年齢群:70代)
クロイツフェルト・ヤコブ病2例
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遺伝性プリオン病ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病1例
遺伝性プリオン病家族性1例
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後天性免疫不全症候群19例(AIDS 5例、無症候13例、その他1例)
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感染地域:国内14例、台湾1例、マレーシア1例、タイ1例、マラウイ1例、国内・国外不明1例
感染経路:性的接触16例(異性間5例、同性間10例、異性/同性間1例)、不明3例
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ジアルジア症1例(感染地域:フランス)
髄膜炎菌性髄膜炎1例(感染地域:福岡県_年齢群:50代)
梅毒11例(早期顕症I期2例、晩期顕症3例、無症候6例)
バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例
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遺伝子型:VanC_菌検出検体:腹水
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風しん3例(検査診断例3例) |
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感染地域:千葉県1例、和歌山県1例、福岡県1例
年齢群:10〜14歳(1例)、15〜19歳(1例)、25〜29歳(1例)
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麻しん19例〔麻しん(検査診断例3例、臨床診断例10例)、修飾麻しん(検査診断例)6例〕
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感染地域:国内19例
国内の感染地域:千葉県5例、愛知県2例、青森県1例、宮城県1例、群馬県1例、東京都1例、長野県1例、三重県1例、長崎県1例、国内(都道府県不明)5例
年齢群:0歳(2例)、1歳(1例)、2歳(2例)、4歳(1例)、5〜9歳(3例)、10〜14歳(7例)、15〜19歳(1例)、40代(2例)
累積報告数:152例〔麻しん(検査診断例41例、臨床診断例82例)、修飾麻しん(検査診断例29例)〕
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(補)他に2009年第9週までに診断されたものの報告遅れとして、急性脳炎8例〔A型インフルエンザウイルス4例_1歳(1例)、2歳(1例)、4歳(1例)、30代(1例).コクサッキーB2型ウイルス1例(0歳).ロタウイルス1例(0歳).病原体不明2例_2歳(1例)、60代(1例)〕、後天性免疫不全症候群1例(病型:その他.感染地域:国内.感染経路:不明.死亡)、バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例(遺伝子型:VanB_菌検出検体:開放性膿)、風しん2例〔検査診断例1例、臨床診断例1例.感染地域:千葉県1例、広島県1例.年齢群:8歳(1例)、40代(1例)〕などの報告があった。
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◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では山形県(31.2)、宮城県(30.5)、千葉県(24.6)、新潟県(24.3)、徳島県(24.2)、静岡県(23.9)、富山県(22.5)、宮崎県(22.5)、長崎県(20.1)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症の報告数は393例と第3週以降減少が続いている。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の約76%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では三重県(0.80)、宮崎県(0.80)、石川県(0.79)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は3週連続で増加した。都道府県別では福井県(6.1)、大分県(5.9)、新潟県(5.8)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は3週連続で増加した。都道府県別では福井県(16.3)、三重県(14.6)、宮崎県(13.2)が多い。水痘の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では福井県(4.8)、沖縄県(4.0)、宮崎県(4.0)が多い。手足口病の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では秋田県(0.80)、滋賀県(0.39)、島根県(0.39)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では山梨県(0.25)、神奈川県(0.23)、熊本県(0.21)が多い。百日咳の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してやや多い。都道府県別では長崎県(0.16)、高知県(0.10)、千葉県(0.09)、鹿児島県(0.09)、沖縄県(0.09)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では熊本県(0.19)、山口県(0.18)、島根県(0.13)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では福井県(3.14)、長崎県(2.16)、福岡県(1.89)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では沖縄県(2.57)、愛媛県(1.50)、宮城県(1.17)が多い。
注目すべき感染症
◆ インフルエンザ
インフルエンザ(Influenza)は、インフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症で、毎年世界中で流行がみられている。1〜3日間の潜伏期間を経て、突然に発熱(38℃以上の高熱)、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛・関節痛などが出現し、鼻水・咳などの呼吸器症状がこれに続く。通常は1週間前後の経過で軽快するが、いわゆる「かぜ」と比べて全身症状が強いのが特徴である。わが国のインフルエンザの発生は、11月下旬から12月上旬頃に始まり、翌年の1〜3月頃に患者数が増加し、4〜5月にかけて減少していくパターンを示すが、流行の程度とピークの時期はその年によって異なる。今シーズン(2008/09シーズン)は、2008年第49週からインフルエンザの流行が開始している。
感染症発生動向調査によると、2009年第10週のインフルエンザの定点当たり報告数は14.85
(報告数71,107)となり、2週連続で増加がみられた(図1)。都道府県別では山形県(31.2)、宮城県(30.5)、千葉県(24.6)、新潟県(24.3)、徳島県(24.2)、静岡県(23.9)、富山県(22.5)、宮崎県(22.5)、長崎県(20.1)、岩手県(19.4)の順であり、25都道県で前週よりも増加していた(図2、図3)。2008年第36週〜2009年第10週までの定点当たり累積報告数は211.96(累積報告数1,009,535)であり、年齢別では5〜9歳346,371例(34.3%)、0〜4歳222,340例(22.0%)、10〜14歳173,962例(17.2%)、30〜39歳79,046例(7.8%)の順となっているが、5〜9歳の年齢群が最多を占め、14歳以下の報告割合が全体の70%を超えている(図4)。第36週以降のインフルエンザウイルスの分離報告数は47都道府県から4,000件あり、その内訳はAH1亜型2,356件(58.9%)、AH3亜型1,108件(27.7%)、B型536件(13.4%)と、AH1亜型ウイルスの検出が60%近くとなっている一方、B型の分離割合が増加傾向にある(図5、図6)。
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図1. インフルエンザの年別・週別発生状況(1999〜2009年第10週) |
図2. インフルエンザの都道府県別報告状況(2009年第10週) |
図3. 主要都道府県におけるインフルエンザの週別推移(2008年第36〜2009年第10週) |
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図4. 2008/09シーズンのインフルエンザ累積報告数の年齢群別割合(2008年第36〜2009年第10週) |
図5. インフルエンザウイルス型別分離・検出割合報告(2008年第36〜2009年第10週) |
図6. インフルエンザウイルス分離・検出報告数の週別推移(2008年第20〜2009年第10週) |
今シーズンのインフルエンザの流行は2009年第4週(定点当たり報告数37.45、報告数178,991)が最多であり、その後減少が続いたが、第9週に再び増加し、第10週も増加がみられた。現在の流行は、最近のインフルエンザの分離状況等からその中心はB型であると推察される。また、多くの学校、幼稚園等が春期休暇の直前の第11週までは患者報告数の増加が続く可能性が高いと予想されるため、今しばらくはインフルエンザの発生動向およびウイルスの分離状況には注意が必要である。
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