発生動向総覧
※2008年5月12日の法改正に伴い、疾病の名称および並び順を一部変更しました。
〈第12週コメント〉 3月25日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 266例 |
3類感染症: |
腸管出血性大腸菌感染症12例(有症者5例)
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感染地域:国内11例、国内・国外不明1例
国内の感染地域:兵庫県2例、広島県2例、東京都1例、静岡県1例、大阪府1例、京都府1例、国内(都道府県不明)3例
年齢群:1歳(1例)、2歳(1例)、10代(2例)、20代(4例)、30代(2例)、50代(1例)、60代(1例)
血清型・毒素型:O157 VT2(6例)、O157 VT1・VT2(2例)、O55 VT1(1例)、O91 VT1(1例)、その他・不明(2例)
累積報告数:174例(有症者115例、うちHUS 6例)
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腸チフス2例(感染地域:インドネシア) パラチフス1例(感染地域:インドネシア) |
4類感染症: |
A型肝炎1例(感染地域:兵庫県)
レジオネラ症6例(肺炎型6例)
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感染地域:山形県1例、三重県1例、和歌山県1例、岡山県1例、国内(都道府県不明)2例(うち1例温泉)
年齢群:60代(2例)、70代(3例)、80代(1例)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢9例〔腸管アメーバ症6例(うち1例死亡)、腸管外アメーバ症3例(うち1例死亡)〕 |
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感染地域:福島県1例、茨城県1例、神奈川県1例、国内(都道府県不明)6例
感染経路:性的接触5例(異性間1例、同性間3例、異性間・同性間不明1例)、不明4例
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ウイルス性肝炎1例(C型_感染経路:針刺し)
急性脳炎2例
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A型インフルエンザウイルス1例_年齢群:2歳
B型インフルエンザウイルス1例_年齢群:4歳
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クロイツフェルト・ヤコブ病1例(孤発性プリオン病古典型)
劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(年齢群:60代)
後天性免疫不全症候群14例(AIDS 5例、無症候9例)
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感染地域:国内13例、国内・国外不明1例
感染経路:性的接触12例(異性間2例、同性間7例、異性/同性間2例、異性間・同性間不明1例)、不明2例
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ジアルジア症1例(感染地域:大阪府)
梅毒8例(早期顕症II期2例、晩期顕症1例、無症候5例)
バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例
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遺伝子型:VanA_菌検出検体:皮下膿
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風しん1例(検査診断例) |
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感染地域:福岡県
年齢群:6歳
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麻しん13例〔麻しん(検査診断例3例、臨床診断例7例)、修飾麻しん(検査診断例)3例〕
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感染地域:国内13例
国内の感染地域:東京都3例、大阪府2例、栃木県1例、千葉県1例、神奈川県1例、岐阜県1例、愛知県1例、兵庫県1例、岡山県1例、国内(都道府県不明)1例
年齢群:0歳(3例)、1歳(2例)、4歳(1例)、10〜14歳(1例)、15〜19歳(1例)、30〜34歳(1例)、35〜39歳(4例)
累積報告数:182例〔麻しん(検査診断例56例、臨床診断例93例)、修飾麻しん(検査診断例33例)〕
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(補)他に髄膜炎菌性髄膜炎1例の報告があったが削除予定。また、2009年第11週までに診断されたものの報告遅れとして、細菌性赤痢4例(感染地域:岡山県2例、インドネシア1例、エジプト1例)、E型肝炎1例(感染地域:静岡県.感染源:鹿生肉)、急性脳炎3例〔病原体不明3例_2歳(1例)、10代(1例)、30代(1例)〕、風しん1例(臨床診断例.感染地域:三重県.年齢群:7歳)などの報告があった。
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◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は減少した。都道府県別では山形県(41.8)、宮城県(37.0)、新潟県(28.8)、石川県(27.2)、鹿児島県(26.9)、富山県(25.0)、秋田県(24.8)、宮崎県(24.8)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症のの報告数は400例と減少した。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の約79%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では北海道(0.89)、岐阜県(0.62)、鹿児島県(0.55)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では新潟県(5.0)、富山県(4.5)、北海道(4.2)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では福井県(18.5)、宮崎県(13.9)、三重県(12.4)が多い。水痘の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では沖縄県(4.2)、宮崎県(3.2)、山形県(3.0)、福井県(3.0)が多い。手足口病の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では青森県(0.55)、愛知県(0.21)、滋賀県(0.15)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は第9週以降増加が続いている。都道府県別では山梨県(0.42)、山口県(0.32)、東京都(0.26)が多い。百日咳の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してやや多い。都道府県別では栃木県(0.15)、福岡県(0.12)、北海道(0.08)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は第9週以降増加が続いている。都道府県別では山口県(0.22)、熊本県(0.21)、島根県(0.13)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では佐賀県(2.61)、高知県(2.60)、長崎県(2.25)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は第9週以降増加が続いている。都道府県別では沖縄県(3.29)、静岡県(1.70)、宮城県(1.58)が多い。
注目すべき感染症
◆ 百日咳
百日咳は、好気性のグラム陰性桿菌である百日咳菌(Bordetella pertussis)の感染を原因とする急性の呼吸器感染症である。特有のけいれん性の咳発作(痙咳発作)を特徴としており、母親からの移行抗体が有効に働かないために乳児期早期から罹患する可能性があり、ことに百日咳(P)ワクチンを含んだDPT三種混合ワクチンを接種していない生後6カ月以下の乳児が罹患した場合は、未だに死に至る危険性がある疾患である。
百日咳はこれまで乳幼児を中心とした小児で流行する疾患とされてきたが、ワクチンの開発・普及と乳児期の接種率の上昇によって、発生報告数は大きく減少した。だが最近では小児科定点報告疾患であるにもかかわらず20歳以上の成人例の報告数が年々増加してくると共に、発生報告数そのものも増加に転じている。2008年の年間の累積報告数は6,749例と2000年以降では最多であり、小児科定点からの報告ではあるものの、20歳以上の報告割合は36.7%に達した。
感染症発生動向調査では、全国約3,000カ所の小児科定点からの報告数に基づいて百日咳の患者発生状況の分析を行っている。2009年第12週の週別の報告数は87例(定点当たり報告数0.03)であり、前週よりもやや減少がみられたものの、2000年以降では最も報告数の多かった2008年を上回った状態が続いている(図1)。都道府県別では福岡県14例、北海道12例、千葉県8例、栃木県7例、神奈川県6例、広島県5例の順となっている(図2)。第1〜12週の累積報告数は953例であり、2000年以降の同時期までの累積報告数と比較しても、これまで最も多かった2008年の累積報告数(732例)を上回っている(図3)。都道府県別にみると、千葉県114例、福岡県111例、北海道80例、大阪府47例、東京都46例、栃木県44例の順となっている(図4)。2000〜2009年まで(2009年は第12週まで)の年間の累積報告数の年齢別割合をみると、0歳児、1歳児を中心とした乳幼児からの報告割合は年々低下がみられている一方で、小児科定点からの報告ではあるものの、20歳以上の報告割合は年々増加しており、2009年は12週までの報告ではあるが、20歳以上の割合は38.0%にまで達している(図5、図6)
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図1. 百日咳の年別・週別発生状況(1999〜2009年第12週) |
図2. 百日咳の都道府県別報告状況(2009年第12週) |
図3. 百日咳の第1〜12週の累積報告数年別推移(2000年〜2009年) |
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図4. 百日咳の都道府県別累積報告状況(2009年第1〜12週) |
図5. 百日咳の年別・年齢群別割合(2000年〜2009年第12週) |
図6. 百日咳累積報告数の年齢群別割合(2009年第1〜12週) |
かつて乳幼児を中心に発生していた百日咳は、DPT3種混合ワクチンの導入と改良・普及により、患者発生数は大きく減少した。しかし、2007年以降、患者発生報告数は増加に転じると共に、成人層の報告割合が大きく増加している。感染症情報センターでは、成人層を中心とした患者発生状況に実態をより明らかにすることを目的として、2008年5月から「百日咳DB:全国の百日咳発生状況」(http://idsc.nih.go.jp/disease/pertussis/pertu-db.html)を立ち上げ、感染症発生動向調査とは別に解析を行っている。これらの検討結果から、最近の百日咳は10代もしくは20代において発病者の大幅な増加がみられていると推測される。2008年は2000年以降では最も患者発生報告数が多かったが、2009年の報告数はこれまでのところ、昨年の水準を上回った状態で推移している。2008年は第13週以降百日咳の患者報告数は大きく増加し、第22週にピーク(報告数343例、定点当たり報告数0.11)を迎えた。百日咳の今後の発生動向には十分な注意が必要である。
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