発生動向総覧
※2008年5月12日の法改正に伴い、疾病の名称および並び順を一部変更しました。
〈第14週コメント〉 4月8日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 280例 |
3類感染症: |
細菌性赤痢5例(感染地域:三重県3例、インド1例、ギニア1例)
腸管出血性大腸菌感染症25例(有症者17例)
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感染地域:国内24例、国内(都道府県不明)/イラン1例
国内の感染地域:北海道3例、大分県3例、福井県2例、愛知県2例、秋田県1例、栃木県1例、千葉県1例、神奈川県1例、富山県1例、静岡県1例、滋賀県1例、兵庫県1例、和歌山県1例、広島県1例、鹿児島県1例、国内(都道府県不明)3例
年齢群:4歳(2例)、7歳(1例)、8歳(1例)、10代(5例)、20代(1例)、30代(5例)、40代(5例)、50代(2例)、60代(1例)、70代(1例)、80代(1例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2(11例)、O26 VT1(4例)、O157 VT2(2例)、O26 VT1・VT2(1例)、O103 VT1(1例)、O146 VT1(1例)、O165 VT2(1例)、その他・不明(4例)
累積報告数:219例(有症者144例、うちHUS 7例)
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腸チフス1例(感染地域:カンボジア)
パラチフス1例(感染地域:インド)
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4類感染症: |
A型肝炎2例〔感染地域:長崎県1例、国内(都道府県不明)1例〕
日本紅斑熱1例(感染地域:宮崎県)
マラリア2例
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三日熱1例_感染地域:タイ
原虫種不明1例_感染地域:ウガンダ
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レジオネラ症6例(肺炎型6例)
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感染地域:栃木県1例(温泉)、埼玉県1例、長野県1例、愛媛県1例、国内(都道府県不明)2例
年齢群:50代(1例)、60代(2例)、70代(2例)、80代(1例)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢3例(腸管アメーバ症1例、腸管外アメーバ症2例) |
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感染地域:青森県1例、岩手県1例、国内(都道府県不明)1例
感染経路:経口感染1例、不明2例
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ウイルス性肝炎3例(B型3例_感染経路:不明3例)
急性脳炎1例(単純ヘルペスウイルス_年齢群:0歳)
後天性免疫不全症候群16例(AIDS 5例、無症候10例、その他1例)
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感染地域:国内11例、タイ1例、インドネシア/ベトナム1例、国外(国不明)1例、国内・国外不明2例
感染経路:性的接触14例(異性間3例、同性間10例、異性間・同性間不明1例)、不明2例
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ジアルジア症2例〔感染地域:インド1例、国内(都道府県不明)1例〕
梅毒6例(早期顕症I期2例、早期顕症II期1例、無症候3例)
破傷風1例(年齢群:10代)
バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例
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遺伝子型:VanC_菌検出検体:胆汁
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風しん2例(検査診断例1例、臨床診断例1例) |
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感染地域:広島県1例、国内(都道府県不明)1例
年齢群:9歳(1例)、35〜39歳(1例)
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麻しん14例〔麻しん(検査診断例3例、臨床診断例7例)、修飾麻しん(検査診断例)4例〕
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感染地域:国内14例
国内の感染地域:大阪府3例、栃木県1例、埼玉県1例、東京都1例、神奈川県1例、愛媛県1例、佐賀県1例、国内(都道府県不明)5例
年齢群:0歳(2例)、1歳(3例)、10〜14歳(1例)、15〜19歳(3例)、20〜24歳(2例)、35〜39歳(3例)
累積報告数:208例〔麻しん(検査診断例67例、臨床診断例103例)、修飾麻しん(検査診断例38例)〕
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(補)他に、腸管出血性大腸菌感染症1例、髄膜炎菌性髄膜炎1例の報告があったが削除予定。また、2009年第13週までに診断されたものの報告遅れとして、E型肝炎2例〔感染地域(感染源):北海道1例(豚の内臓)、三重県1例(不明)〕、急性脳炎2例〔ヒトヘルペスウイルス6型1例(1歳)、B型インフルエンザウイルス1例(15歳)〕、劇症型溶血性レンサ球菌感染症2例〔50代(1例.死亡)、80代(1例)〕、髄膜炎菌性髄膜炎1例(50代.感染地域:不明)、バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例(遺伝子型:VanC_菌検出検体:血液)、風しん1例(検査診断例.感染地域:神奈川県.年齢群:10〜14歳)などの報告があった。
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◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は3週連続で減少した。都道府県別では新潟県(15.4)、石川県(15.3)、秋田県(14.6)、福井県(14.0)、山形県(13.2)、鹿児島県(12.5)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症の報告数は355例と3週連続で減少した。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の約79%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では北海道(0.63)、滋賀県(0.55)、石川県(0.52)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は3週連続で減少した。都道府県別では福井県(3.45)、富山県(3.31)、鳥取県(3.26)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では宮崎県(15.3)、福井県(14.5)、愛媛県(12.0)が多い。水痘の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では宮崎県(2.97)、沖縄県(2.71)、佐賀県(2.52)が多い。手足口病の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では青森県(0.31)、福岡県(0.28)、岐阜県(0.19)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では神奈川県(0.49)、山形県(0.31)、広島県(0.28)が多い。百日咳の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してやや多い。都道府県別では栃木県(0.13)、福岡県(0.13)、沖縄県(0.12)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では熊本県(0.17)、滋賀県(0.16)、大分県(0.11)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では福井県(2.36)、佐賀県(2.30)、長崎県(1.82)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では沖縄県(2.86)、宮城県(1.58)、福島県(1.29)が多い。
注目すべき感染症
◆ インフルエンザ
インフルエンザ(Influenza)は、インフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症で、毎年世界中で流行がみられている。1〜3日間の潜伏期間を経て、突然に発熱(38℃以上の高熱)、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛・関節痛などが出現し、鼻水・咳などの呼吸器症状がこれに続く。通常は1週間前後の経過で軽快するが、いわゆる「かぜ」と比べて全身症状が強いのが特徴である。北半球の温帯地域では、通常は冬季に流行する感染症であり、日本では例年流行期間は12月から4月までの間の4〜5カ月間となることが殆どであり、シーズンによって差はあるものの、推定でシーズン当たり平均1,000万人以上の罹患者が発生している。
感染症発生動向調査によると、今シーズン(2008/09シーズン)は、2008年第49週からインフルエンザの流行が開始し、2009年第4週にインフルエンザ定点からの報告数は今シーズン最多(定点当たり報告数37.45、報告数178,991)となった。その後定点当たり報告数は継続的な減少がみられたが、第9週以降に再び増加に転じ、第11週に2つ目のピーク(定点当たり報告数16.50、報告数78,897)を迎え、その後は減少が続いている。2009年第14週のインフルエンザの定点当たり報告数は6.11(報告数29,130)となり、第12週以降3週連続で減少がみられた(図1)。都道府県別では新潟県(15.4)、石川県(15.3)、秋田県(14.6)、福井県(14.0)、山形県(13.2)、鹿児島県(12.5)、宮城県(12.2)の順であり、山口県を除く46都道府県で前週よりも減少した(図2)。2008年第36週〜2009年第14週までの定点当たり累積報告数は259.57(累積報告数1,237,576)であり、都道府県別では沖縄県(378.9)、山形県(376.8)、宮崎県(359.8)、新潟県(357.0)、宮城県(321.7)、千葉県(311.2)、長崎県(306.4)、埼玉県(306.3)、福井県(304.6)、兵庫県(301.6)の順となっている(図3)。年齢群別では、5〜9歳452,283例(36.5%)、0〜4歳263,911例(21.3%)、10〜14歳227,489例(18.4%)、30〜39歳86,156例(7.0%)の順となっており、5〜9歳の年齢群が最多であり、14歳以下の小児の報告割合が全体の75%以上を占めている(図4)。第36週以降のインフルエンザウイルスの分離報告数は47都道府県から5,410件あり、その内訳はAH1亜型2,898件(53.6%)、AH3亜型1,397件(25.8%)、B型1,115件(20.6%)となっており、第4週をピークとした流行はAH1亜型が、後半の第11週をピークとした流行はB型が発生の中心であったものと推定される(図5、図6)。
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図1. インフルエンザの年別・週別発生状況(1999〜2009年第14週) |
図2. インフルエンザの都道府県別報告状況(2009年第14週) |
図3. 2008/09シーズンのインフルエンザの都道府県別累積報告状況(2008年第36週〜2009年第14週) |
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図4. 2008/09シーズンのインフルエンザ累積報告数の年齢群別割合(2008年第36週〜2009年第14週) |
図5. インフルエンザウイルス型別分離・検出割合報告(2008年第36週〜2009年第14週) |
図6. インフルエンザウイルス分離・検出報告数の週別推移(2008年第36週〜2009年第14週) |
インフルエンザの重篤な合併症であるインフルエンザ脳症は、急性脳炎の発生動向調査の一環として報告されており、今シーズンは2008年第36週以降これまでに22都道府県から49例(男性25例、女性24例、49例中7例は死亡報告あり)の報告があった。診断週別にみると、第52週以降報告数の増加がみられ、第4週7例、第5週10例とAH1亜型を流行の中心とした流行のピークとほぼ一致する形でインフルエンザ脳症の報告数が増加している(図7)。年齢別では、3歳が8例と最も多く、10歳以下が41例と全体の約84%を占めていた。都道府県別では東京都、大阪府からの報告数がそれぞれ8例と最も多く、次いで福島県、新潟県各4例、千葉県3例、北海道、栃木県、埼玉県、神奈川県、京都府から各2例の順であった(表)。ウイルス型別では、A型41例(83.7%)、B型5例(10.2%)、型別不明3例(6.1%)となっており、今シーズンのインフルエンザの流行状況を反映しているものと思われる(図8)。なお、49例中7例の死亡報告がみられていたが、全ての死亡例が反映されていない可能性がある。
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図7. 2008/09シーズンインフルエンザ脳症診断報告数及びインフルエンザ定点当たり報告数週別推移(2008年第36週〜2009年第14週) |
表. 2008/09シーズンインフルエンザ脳症発生報告一覧 |
図8. 2008/09シーズンのインフルエンザ脳症報告例ウイルス型別割合(2008年第36週〜2009年第14週) |
今シーズンのインフルエンザは、第4週をピークとしたAH1亜型ウイルスを中心とした流行と、第11週をピークとしたB型ウイルスを中心とした流行がみられたが、全国的にはようやく終息傾向となりつつある。しかしながら、まだ流行が残存している地域も少なからず存在しており、今しばらくはインフルエンザの発生動向に対する注意が必要である。
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