発生動向総覧
※2008年5月12日の法改正に伴い、疾病の名称および並び順を一部変更しました。
〈第21週コメント〉 5月27日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 288例 |
3類感染症: |
細菌性赤痢3例
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感染地域:コロンビア1例、ネパール1例、インド1例
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腸管出血性大腸菌感染症45例(有症者24例、HUS 1例)
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感染地域:国内40例、中国4例*、韓国1例
*うち3例は同一ツアー
国内の多い感染地域:高知県4例、富山県3例、兵庫県3例、岩手県2例、香川県2例、佐賀県2例、埼玉県2例、青森県2例、千葉県2例、大阪府2例、東京都2例
年齢群:2歳(2例)、3歳(1例)、4歳(1例)、5歳(1例)、7歳(3例)、8歳(2例)、9歳(1例)、10代(6例)、20代(2例)、30代(4例)、40代(9例)、50代(1例)、60代(8例)、70代(4例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2(15例)、O157 VT2(6例)、O26 VT1(4例)、O111 VT1(3例)、O157 VT1(2例)、O26 VT1・VT2(2例)、O111 VT1・VT2(2例)、O157 VT不明( 1例)、O91 VT1( 1例)、O103 VT1(1例)、O115 VT1(1例)、O128 VT1(1例)、O146 VT1・VT2(1例)、その他・不明(5例)
累積報告数:432例(有症者286例、うちHUS 11例)
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パラチフス1例(感染地域:佐賀県)
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4類感染症: |
A型肝炎4例〔感染地域:宮城県2例、マラウイ1例、国内(都道府県不明)1例〕
つつが虫病2例(感染地域:福島県1例、長野県1例)
デング熱1例(感染地域:タイ)
日本紅斑熱3例(感染地域:三重県2例、広島県1例)
レジオネラ症10例(肺炎型9例、ポンティアック型1例)
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感染地域:青森県1例、宮城県1例、東京都1例、千葉県1例、富山県1例、長野県1例、滋賀県1例、広島県1例、国内(都道府県不明)1例、国外(国不明)1例
年齢群:20代(1例)、30代(1例)、50代(3例)、60代(3例)、70代(1例)、80代(1例)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢9例(腸管アメーバ症7例、腸管外アメーバ症2例) |
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感染地域:広島県2例、栃木県1例、埼玉県1例、神奈川県1例、滋賀県1例、兵庫県1例、愛媛県1例、国内(都道府県不明)1例
感染経路:経口感染5例、性的接触2例(異性間1例、異性間・同性間不明1例)、不明2例
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ウイルス性肝炎2例
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B型2例_感染経路:性的接触1例(異性間)、不明1例
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急性脳炎2例
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病原体不明2例
年齢群:1歳(1例)、4歳(1例)
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クロイツフェルト・ヤコブ病4例(孤発性プリオン病古典型4例)
劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例
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年齢群:40代(死亡)
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後天性免疫不全症候群14例(AIDS 6例、無症候7例、その他1例) |
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感染地域:国内12例、国外(国不明)1例、国内・国外不明1例
感染経路:性的接触11例(異性間4例、同性間6例、異性/同性間1例)、静注薬物使用1例、不明2例
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ジアルジア症1例(感染地域:マラウイ)
梅毒8例(早期顕症II期2例、晩期顕症1例、先天梅毒1例、無症候4例)
破傷風3例〔年齢群:80代(3例)〕
風しん1例(検査診断例) |
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感染地域:福岡県
年齢群:10〜14歳
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麻しん19例〔麻しん(検査診断例8例、臨床診断例10例)、修飾麻しん(検査診断例)1例〕
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感染地域:国内19例
国内の感染地域:東京都4例、埼玉県3例、千葉県2例、大阪府2例、岩手県1例、神奈川県1例、静岡県1例、愛知県1例、兵庫県1例、奈良県1例、和歌山県1例、国内(都道府県不明)1例
年齢群:0歳(2例)、1歳(2例)、2歳(1例)、3歳(2例)、8歳(1例)、10〜14歳(2例)、20〜24歳(3例)、25〜29歳(1例)、35〜39歳(3例)、50代(1例)、70代(1例)
累積報告数:364例〔麻しん(検査診断例115例、臨床診断例171例)、修飾麻しん(検査診断例78例)〕
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(補)他に2009年第20週までに診断されたものの報告遅れとして、オウム病1例(感染地域:埼玉県_感染源:鳥類)、日本紅斑熱1例(感染地域:鹿児島県)、急性脳炎1例〔病原体不明(1歳)〕、劇症型溶血性レンサ球菌感染症3例〔0歳(1例)、70代(1例)、80代(1例)〕、バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例(遺伝子型:不明_菌検出検体:血液)、風しん3例〔検査診断例2例、臨床診断例1例.感染地域:三重県1例、岡山県1例、国内(都道府県不明)1例.年齢群:20〜24歳(1例)、25〜29歳(1例)、35〜39歳(1例)〕などの報告があった。
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◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してやや多い。都道府県別では沖縄県(10.7)、秋田県(4.2)、北海道(3.9)、鹿児島県(2.4)、長野県(2.2)、福井県(2.1)、滋賀県(2.0)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症の報告数は242例と増加した。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の約76%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は2週続けて増加した。都道府県別では香川県(0.68)、鹿児島県(0.65)、北海道(0.62)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は2週続けて増加した。都道府県別では山形県(4.6)、大分県(4.2)、富山県(4.2)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では山形県(14.8)、大分県(13.7)、福井県(13.1)が多い。水痘の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では宮崎県(3.2)、福井県(3.2)、佐賀県(3.0)が多い。手足口病の定点当たり報告数は2週続けて増加した。都道府県別では福岡県(0.79)、青森県(0.74)、佐賀県(0.65)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は2週続けて増加した。都道府県別では神奈川県(0.99)、福島県(0.63)、山梨県(0.61)が多い。百日咳の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では宮崎県(0.54)、高知県(0.20)、栃木県(0.15)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は2週続けて増加した。都道府県別では宮崎県(0.80)、大分県(0.44)、滋賀県(0.43)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では福井県(4.1)、長崎県(2.5)、佐賀県(2.4)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は3週続けて増加した。都道府県別では愛媛県(2.2)、宮城県(2.1)、福島県(2.0)が多い。
注目すべき感染症
◆ 新型インフルエンザ(2009年6月3日現在)
*本週報では、通常当該週(第21週)までの情報や報告数について掲載していますが、新型インフルエンザに関する迅速な情報提供の必要性を考慮し、本稿については6月3日までに得られた情報や知見、報告に基づいて掲載しています。
新型インフルエンザA(H1N1)ウイルスは、ヒトからヒトへ容易に伝播する能力を獲得したとみられ、このウイルスによる疾患の流行は引き続き世界各地で見られている。新型インフルエンザA(H1N1)は、急な発熱や咳、鼻汁などを主な臨床症状とする急性呼吸器疾患であり、季節性インフルエンザと同様の臨床像を示す。アメリカやメキシコの報告では、下痢・嘔吐・腹痛などの消化器症状が特徴とされるが、日本の患者においてはあまり特徴的ではない。本疾患に特異的な臨床現場で利用可能な検査方法はなく、地方衛生研究所などにおけるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による遺伝子検査によってのみ病原体に関する確定診断が得られる。
WHOによると、2009年6月3日現在、確定症例は世界62カ国から17,000例余りが報告されており、うち死亡例は115例となっている。流行の中心はメキシコ、アメリカ合衆国、カナダであるが、それ以外に100例を超えている国は、日本、英国、スペイン、パナマ、アルゼンチン、オーストラリア、チリの7カ国である。北半球は夏季を迎え、流行の速度が低下している印象を受ける。一方で冬季を迎える南半球のアルゼンチン、オーストラリア、チリは、これまでほとんど患者の報告をみなかったが、ここにきて急速に患者数の増加をみている。これらの国々における新型インフルエンザA(H1N1)の流行の推移を監視することは、約半年後の北半球の流行を予測する上で非常に重要である。
日本国内では、6月3日正午の時点で、386例の確定例が報告されている。この1週間の報告は実数としては少なくなっているものの、発生地は広域にわたり、直近の渡航歴の有無や年齢などが多彩になってきている印象を受ける。学校閉鎖による公衆衛生介入を行なった兵庫県や大阪府でも患者が散発的に発生しており、季節性インフルエンザウイルスがそうであるように、本ウイルスもヒトの間で循環していることをうかがわせる。
今後、本疾患が1957年のアジアインフルエンザのごとく夏季にも流行を続けるのか、あるいは一旦終息し秋から冬に再流行するのか、今後の流行の推移は予測困難である。従って、流行の推移をリアルタイムにできるだけ正確に把握することが重要である。そのためには、検査可能機関の拡大、サンプリング方法による病原体サーベイランスの拡大などが必要であり、同時に、現有の検査体制や医療体制、患者の利便性などのバランスを考慮して行われることも必要である。また、今後の診療に役立てるため、これまでに発生した患者の臨床情報を集約し解析することが必要である。
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日本国内の報告数
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新型インフルエンザの最新情報はhttp://idsc.nih.go.jp/disease/swine_influenza/index.html をご参照ください
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