発生動向総覧
※2008年5月12日の法改正に伴い、疾病の名称および並び順を一部変更しました。
〈第31週コメント〉 8月5日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 338例 |
3類感染症: |
細菌性赤痢3例
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感染地域:埼玉県1例、エジプト1例、タンザニア1例
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腸管出血性大腸菌感染症136例(有症者81例、HUS 1例)
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感染地域:国内133例、中国1例、韓国1例、インドネシア1例
国内の多い感染地域:宮崎県14例*、香川県12例*、東京都10例、石川県9例*、宮城県6例、長崎県6例、群馬県5例、千葉県5例、富山県5例、愛知県4例、福岡県4例
*いずれの県も、全例が保育園に関連した集団発生
年齢群:0歳(5例)、1歳(5例)、2歳(23例)、3歳(11例)、4歳(11例)、5歳(4例)、6歳(1例)、7歳(3例)、8歳(3例)、9歳(2例)、10代(15例)、20代(16例)、30代(11例)、40代(6例)、50代(8例)、60代(6例)、70代(2例)、80代(4例)
血清型・毒素型:O26 VT1(46例)、O157 VT1・VT2(43例)、O157 VT2(22例)、O103 VT1(7例)、O157 VT不明(6例)、O26 VT1・VT2(2例)、O157 VT1(1例)、O26 VT不明(1例)、O111 VT1(1例)、O124 VT1・VT2(1例)、その他・不明(6例)
累積報告数:1,594例(有症者1,039例、うちHUS 27例)
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腸チフス1例(感染地域:カンボジア)
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4類感染症: |
E型肝炎1例〔感染地域:北海道_感染源:豚肉(ホルモン)〕
A型肝炎3例(感染地域:福島県1例、韓国2例)
オウム病1例(感染地域:栃木県_感染源:ハト)
日本紅斑熱5例(感染地域:熊本県4例、千葉県1例)
レジオネラ症19例(肺炎型17例、ポンティアック型2例)
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感染地域:愛知県3例、北海道1例(温泉)、宮城県1例、埼玉県1例、千葉県1例、新潟県1例、石川県1例、山梨県1例、長野県1例、静岡県1例、兵庫県1例、和歌山県1例、福島県/大阪府1例(温泉)、国内(都道府県不明)3例、中国1例
年齢群:40代(1例)、50代(4例)、60代(7例)、70代(6例)、80代(1例)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢10例(腸管アメーバ症8例、腸管外アメーバ症2例) |
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感染地域:埼玉県1例、東京都1例、愛知県1例、滋賀県1例、京都府1例、大阪府1例、福岡県1例、国内(都道府県不明)2例、マレーシア1例
感染経路:経口感染2例、性的接触2例(同性間2例)、不明6例
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ウイルス性肝炎3例
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B型3例_感染経路:性的接触3例(異性間2例、異性間・同性間不明1例)
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急性脳炎4例
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サルモネラ菌1例_年齢群:5歳
病原体不明3例_年齢群:3歳(1例)、20代(1例)、70代(1例)
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クロイツフェルト・ヤコブ病3例
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孤発性プリオン病古典型2例
遺伝性プリオン病家族性1例
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後天性免疫不全症候群18例(AIDS 6例、無症候11例、その他1例) |
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感染地域:国内14例、中国1例、国外(国不明)1例、国内・国外不明2例
感染経路:性的接触17例(異性間4例、同性間13例)、不明1例
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ジアルジア症1例(感染地域:石川県)
梅毒5例(早期顕症I期1例、早期顕症II期2例、無症候2例)
破傷風2例〔年齢群:60代(1例)、70代(1例)〕
バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例 |
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遺伝子型:不明_菌検出検体:腹水
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風しん5例(検査診断例1例、臨床診断例4例) |
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感染地域:新潟県3例、神奈川県1例、国内(都道府県不明)1例
年齢群:1歳(3例)、15〜19歳(2例)
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麻しん8例〔麻しん(検査診断例1例、臨床診断例4例)、修飾麻しん(検査診断例)3例〕
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感染地域:国内8例
国内の感染地域:神奈川県3例、福岡県2例、千葉県1例、岐阜県1例、大阪府1例
年齢群:1歳(1例)、2歳(2例)、3歳(1例)、5〜9歳(2例)、15〜19歳(1例)、40代(1例)
累積報告数:528例〔麻しん(検査診断例162例、臨床診断例230例)、修飾麻しん(検査診断例136例)〕
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(補)他に2009年第30週までに診断されたものの報告遅れとして、パラチフス1例(感染地域:スリランカ)、エキノコックス症1例(多包条虫_感染地域:北海道)、マラリア1例(三日熱_感染地域:インドネシア)、ライム病1例(感染地域:ドイツ)、急性脳炎6例〔ヒトヘルペスウイルス6型2例(0歳、1歳_死亡)、RSウイルス1例(2歳)、パラインフルエンザ3型ウイルス1例(1歳)、病原体不明2例(0歳、40代)〕、風しん1例(臨床診断例.感染地域:群馬県.年齢群:30〜34歳)などの報告があった。
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◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は第28週以降増加が続いており、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い。都道府県別では沖縄県(11.79)、大阪府(1.68)、東京都(0.97)、滋賀県(0.96)、奈良県(0.95)、長崎県(0.79)、千葉県(0.57)、石川県(0.50)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症の報告数は193例と3週連続で増加した。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の約80%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は3週連続で減少した。都道府県別では北海道(0.94)、石川県(0.62)、高知県(0.53)、宮崎県(0.53)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は第24週以降減少が続いている。都道府県別では宮崎県(1.56)、富山県(1.46)、福井県(1.41)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では大分県(7.7)、宮崎県(6.3)、福井県(5.9)が多い。水痘の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では徳島県(1.83)、宮崎県(1.56)、石川県(1.41)が多い。手足口病の定点当たり報告数は第20週以降増加が続いている。都道府県別では福岡県(7.5)、愛媛県(6.6)、佐賀県(6.1)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では神奈川県(0.85)、東京都(0.31)、山梨県(0.25)が多い。百日咳の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では宮崎県(0.72)、愛媛県(0.41)、徳島県(0.13)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は増加した。都道府県別では大分県(7.7)、三重県(6.0)、島根県(5.8)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では福井県(4.3)、長崎県(2.8)、佐賀県(2.7)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は第26週以降減少が続いている。都道府県別では沖縄県(2.29)、宮城県(1.42)、青森県(1.33)が多い。
注目すべき感染症
◆ インフルエンザ
インフルエンザの典型的な臨床像は、1〜4日間の潜伏期間を経て、発熱(38℃以上の高熱)、咳、咽頭痛、鼻汁・鼻閉等の急性呼吸器症状、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛・関節痛などが出現することである。これは、従来からヒトの世界で流行している季節性インフルエンザ〔A/H1N1亜型(Aソ連型)、A/H3N2亜型(A香港型)、B型よりなる〕の症状とされているものであるが、2009年4月にその存在が明らかとなった新型インフルエンザA/H1N1においても、その臨床像はほぼ同様である。迅速抗原検査を含めて、現在臨床現場では従来の季節性インフルエンザと新型インフルエンザを迅速に判別する方法はない。感染症発生動向調査では、全国約4,800カ所のインフルエンザ定点からの報告に基づいてインフルエンザの発生動向を分析しており、本サーベイランスでは、従来の季節性インフルエンザに加えて、新型インフルエンザも含まれて報告されていることを前提として解析を行っていくべきと考えられる。
感染症発生動向調査によると、2009年第31週のインフルエンザの定点当たり報告数は0.56(報告数2,655)であり、第28週以降増加が続いていることに加えて、前週(第30週)の定点当たり報告数(0.28)が倍増した(図1)。都道府県別では沖縄県(11.79)、大阪府(1.68)、東京都(0.97)、滋賀県(0.96)、奈良県(0.95)、長崎県(0.79)、千葉県(0.57)、石川県(0.50)の順となっている(図2)。33都道府県で前週よりも患者報告数が増加しており、特に東京都及びその周辺地域、大阪府及びその周辺地域、沖縄県での増加が目立つ。また、19都府県の71保健所地域で定点当たり報告数が1.0を超え、4保健所地域(大阪府1、沖縄県3)では定点当たり報告数は10.0を超えている。インフルエンザの流行地域およびそのレベルは共に増大している。
患者報告数が継続的に増加し始めた第28週以降第31週までの定点当たり累積報告数は1.54(累積患者報告数5,992)で、年齢群別では10〜14歳1,329例(22.2%)、5〜9歳1,284例(21.4%)、15〜19歳1,022例(17.1%)、20〜29歳800例(13.4%)、0〜4歳649例(10.8%)の順となっている(図3)。従来、インフルエンザの年齢群別報告数は、5〜9歳、0〜4歳、10〜14歳、30〜39歳、20〜29歳の年齢群の順で多かったので、10代を中心に発症者がみられている新型インフルエンザが大きく影響している可能性が高い。
第19〜31週のインフルエンザウイルスの検出は、AH1亜型(Aソ連型)48件、AH3亜型(A香港型)733件、B型92件の報告があり、またAH1pdm(新型インフルエンザウイルス)は、2,753件の分離・検出が報告されているため、AH1pdmはこの期間中の分離・検出全体の75.9%を占めている。但し、AH1pdmの大半は、これまでは新型インフルエンザの全数報告の一環として、診断のために地方衛生研究所でRT-PCR検査が実施されてきた結果が反映されたものであり(図4)、従来の季節性インフルエンザと新型インフルエンザの患者発生の割合を正確に示しているものではない。
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図1. インフルエンザの年別・週別発生状況(1999〜2009年第31週) |
図2. インフルエンザの都道府県別報告状況(2009年第31週) |
図3. インフルエンザ累積報告数の年齢群別割合(2009年第28〜31週) |
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図4. インフルエンザウイルス分離・検出報告数の週別推移(2008年第36週〜2009年第31週) |
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インフルエンザの患者報告数は、昨年までは、例年夏季休暇中に年間を通じて最も減少していた。しかし2009年は、国内の大半の学校が夏季休暇中となっているにも関わらず、インフルエンザの患者報告数の増加が続いている。また、最近の年齢群別の患者発生割合をみても、現在のインフルエンザの報告数の大半は新型インフルエンザによると考えるべきであろう。今後のインフルエンザ、新型インフルエンザの発生動向を予測することは困難であるが、全国の学校が夏季休暇を終了する9月以降早期に、本格的な流行が発生してくる可能性は十分にあると思われる。新型インフルエンザを含めたインフルエンザの発生動向には今後とも十分な注意が必要であり、ウイルスの変化並びに症状の変化に注意して監視していくべきであると思われる。
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