発生動向総覧
※2008年5月12日の法改正に伴い、疾病の名称および並び順を一部変更しました。
〈第32週コメント〉 8月12日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 299例 |
3類感染症: |
腸管出血性大腸菌感染症131例(有症者89例、HUS なし、死亡1例)
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感染地域:国内131例
国内の多い感染地域:佐賀県12例、福岡県11例、東京都8例、愛知県6例、大阪府6例、大分県6例、青森県4例、宮城県4例、長野県4例、兵庫県4例、山口県4例
年齢群:1歳(9例)、2歳(8例)、3歳(3例)、4歳(6例)、5歳(5例)、6歳(6例)、7歳(5例)、8歳(4例)、9歳(2例)、10代(18例)、20代(23例)、30代(16例)、40代(6例)、50代(8例)、60代(4例)、70代(5例)、80代(3例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2(57例)、O26 VT1(27例)、O157 VT2(25例)、O157 VT1(4例)、O103 VT1(4例)、O157 VT不明(3例)、O26 VT不明(1例)、O103 VT不明(1例)、O63 VT2(1例)、O111 VT1(1例)、O115 VT1(1例)、O165 VT2(1例)、O168 VT1(1例)、その他・不明(4例)
累積報告数:1,767例(有症者1,156例、うちHUS 28例.死亡1例)
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パラチフス1例(感染地域:スリランカ)
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4類感染症: |
つつが虫病1例〔感染地域:青森県〕 デング熱2例(感染地域:インドネシア2例) 日本紅斑熱2例(感染地域:和歌山県1例、愛媛県1例) マラリア1例(熱帯熱_感染地域:ギニア)
レジオネラ症15例(肺炎型15例)
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感染地域:東京都2例、石川県2例、愛知県2例、北海道1例、福島県1例、栃木県1例、大阪府1例、兵庫県1例、和歌山県1例、福岡県1例、日本国内(都道府県不明)2例
年齢群:40代(1例)、50代(2例)、60代(8例)、70代(2例)、80代(1例)、90代(1例)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢12例(腸管アメーバ症9例、腸管外アメーバ症3例) |
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感染地域:群馬県1例、千葉県1例、東京都1例、神奈川県1例、大阪府1例、広島県1例、国内(都道府県不明)4例、フィリピン1例、米国(グアム)1例
感染経路:経口感染5例、不明7例
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ウイルス性肝炎4例
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B型3例_感染経路:性的接触1例(異性間)、鋭利なものの刺入1例、不明1例
C型1例_感染経路:不明1例
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クロイツフェルト・ヤコブ病4例
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孤発性プリオン病古典型3例
遺伝性プリオン病家族性1例
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後天性免疫不全症候群9例(AIDS 2例、無症候7例) |
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感染地域:国内8例、国内・国外不明1例
感染経路:性的接触9例(異性間1例、同性間6例、異性/同性間2例)
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梅毒7例(早期顕症I期2例、早期顕症II期2例、無症候3例)
風しん6例(検査診断例1例、臨床診断例5例) |
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感染地域:愛知県4例、福島県1例、国内(都道府県不明)1例
年齢群:1歳(1例)、2歳(1例)、3歳(1例)、5〜9歳(2例)、40代(1例)
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麻しん12例〔麻しん(検査診断例4例、臨床診断例2例)、修飾麻しん(検査診断例)6例〕
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感染地域:国内12例
国内の感染地域:神奈川県5例、千葉県2例、大阪府1例、兵庫県1例、宮崎県1例、国内(都道府県不明)2例
年齢群:0歳(3例)、1歳(3例)、2歳(2例)、3歳(1例)、15〜19歳(1例)、35〜39歳(2例)
累積報告数:545例〔麻しん(検査診断例168例、臨床診断例234例)、修飾麻しん(検査診断例143例)〕
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(補)他に2009年第31週までに診断されたものの報告遅れとして、細菌性赤痢1例(感染地域:コロンビア/プエルトリコ/メキシコ)、E型肝炎1例〔感染地域(感染源):北海道(生ホタテ)〕、デング熱1例(感染地域:インドネシア)、マラリア1例(熱帯熱_感染地域:ガーナ)、ライム病1例(感染地域:北海道)、急性脳炎3例〔単純ヘルペスウイルス1例(0歳)、ヒトヘルペスウイルス6型1例(1歳)、インフルエンザウイルスAH1pdm1例(5歳)〕、劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(60代)、風しん4例〔検査診断例2例、臨床診断例2例.感染地域:千葉県1例、東京都1例、愛知県1例、兵庫県1例.年齢群:1歳(1例)、2歳(1例)、3歳(1例)、15〜19歳(1例)〕などの報告があった。
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◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は第28週以降増加が続いており、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い。都道府県別では沖縄県(20.36)、奈良県(1.85)、大阪府(1.80)、東京都(1.68)、長崎県(1.50)、長野県(1.44)、三重県(0.99)、茨城県(0.91)、兵庫県(0.91)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症の報告数は253例と第29週以降増加が続いている。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の約83%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は第29週以降減少が続いている。都道府県別では北海道(0.72)、沖縄県(0.59)、秋田県(0.54)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は第24週以降減少が続いている。都道府県別では富山県(1.43)、山梨県(1.25)、宮崎県(1.23)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では福井県(6.4)、大分県(6.3)、宮崎県(5.5)が多い。水痘の定点当たり報告数は3週連続で減少した。都道府県別では宮崎県(1.86)、鹿児島県(1.20)、高知県(1.10)が多い。手足口病の定点当たり報告数は第20週以降増加が続いている。都道府県別では愛媛県(6.5)、福岡県(5.9)、佐賀県(5.6)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では神奈川県(0.67)、東京都(0.29)、香川県(0.29)が多い。百日咳の定点当たり報告数は2週連続で減少したが、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では宮崎県(0.57)、岡山県(0.11)、徳島県(0.09)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は減少した。都道府県別では富山県(5.7)、三重県(4.9)、愛知県(4.6)、兵庫県(4.6)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では福井県(4.6)、長崎県(2.3)、
和歌山県(2.0)、福岡県(2.0)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では沖縄県(2.71)、青森県(1.50)、宮城県(1.50)が多い。
注目すべき感染症
◆ インフルエンザ
2009年4月にその存在が明らかとなった新型インフルエンザA/H1N1の臨床像は、従来の季節性インフルエンザ〔A/H1N1亜型(Aソ連型)、A/H3N2亜型(A香港型)、B型よりなる〕とほぼ同様であり、現在臨床現場において、迅速抗原検査も含めて季節性インフルエンザと新型インフルエンザを迅速に判別する方法はない。感染症発生動向調査では、全国約4,800カ所のインフルエンザ定点からの報告に基づいてインフルエンザの発生動向を分析している。本サーベイランスは原則的に臨床診断によるものであり、従来の季節性インフルエンザに加えて、新型インフルエンザも含まれている。
感染症発生動向調査によると、2009年第32週のインフルエンザの定点当たり報告数は、これまでの季節性インフルエンザの全国的な流行開始の指標値(1.00)に相当する0.99(報告数4,630)であり、定点医療機関からの報告数をもとに、定点以外を含む全国の医療機関を1週間に受診した患者数を推計すると約6万人となった。第28週以降増加が続いていることに加えて、特に第31週から急増している(図1)。都道府県別では沖縄県(20.36)、奈良県(1.85)、大阪府(1.80)、東京都(1.68)、長崎県(1.50)、長野県(1.44)、三重県(0.99)、茨城県(0.91)、兵庫県(0.91)の順となっている(図2)。41都道府県で前週よりも定点当たり報告数が増加しており、特に沖縄県では、本島地域を中心にインフルエンザの流行が本格化しつつある。また、34都道府県の139保健所地域で定点当たり報告数が1.0を超えており、インフルエンザの流行地域は全国に拡大しつつある。
患者報告数が継続的に増加し始めた第28週以降第32週までの定点当たり累積報告数は3.77(累積患者報告数9,641)で、年齢群別では10〜14歳2,164例(22.4%)、5〜9歳1,851例(19.2%)、15〜19歳1,840例(19.1%)、20〜29歳1,442例(15.0%)、0〜4歳936例(9.7%)の順となっている。5〜19歳が患者発生の中心であり、20歳代までで全報告数の約85%を占めている(図3)。
日本で新型インフルエンザウイルスAH1pdmが検出された2009年第19週以降32週までに、AH1亜型(Aソ連型)48件、AH3亜型(A香港型)746件、B型100件、AH1pdm(新型インフルエンザウイルス)3,355件のインフルエンザウイルスの検出が報告されており、AH1pdmは全体の約79.0%を占めている。AH1pdmの大半は、新型インフルエンザの鑑別診断のため、地方衛生研究所でRTPCR検査が実施されてきた結果であり、従来の季節性インフルエンザと新型インフルエンザの患者発生の割合を正確に示しているものではないが、特に患者報告数が増加し始めた第28週以降では、発生患者の殆どが新型インフルエンザに罹患しているものと推定される(図4)。
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図1. インフルエンザの年別・週別発生状況(1999〜2009年第32週) |
図2. インフルエンザの都道府県別報告状況(2009年第32週) |
図3. インフルエンザ累積報告数の年齢群別割合(2009年第28〜32週) |
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図4. インフルエンザウイルス分離・検出報告数の週別推移(2008年第36週〜2009年第32週) |
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国内の大半の学校が夏季休暇中であるにもかかわらず、インフルエンザの患者報告数は急増しており、その大半は新型インフルエンザと思われる。沖縄県では、既に本格的な流行となりつつあり、また全国の広範な地域でも流行が広がってきている。今後の新型インフルエンザを中心としたインフルエンザの流行の推移を予測することは困難ではあるが、まもなく本格的な流行が発生してくる可能性は十分にある。2009年6月11日、WHOは新型インフルエンザがパンデミック期に入ったことを宣言したが、これまでのインフルエンザ・パンデミックの例をみても、新型インフルエンザの流行は、国民の多くが感染し、免疫を保有するに至るまでは繰り返されるものと予想される。また、殆どの国民が感受性者であることから、流行の規模はこれまでの季節性インフルエンザの流行よりも大きくなる可能性が高い。その場合、現在の医療体制をいかに維持し、国民に対して医療サービスを提供し続けるかが極めて大きな課題になると思われる。新型インフルエンザを含めたインフルエンザの発生動向には今後とも十分な注意が必要であり、ウイルスの変化並びに症状の変化に注意して監視していくべきであると思われる。
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