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発生動向総覧
〈第35週コメント〉 9月2日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 243例 |
3類感染症: |
腸管出血性大腸菌感染症168例(有症者129例、うちHUS 5例)
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感染地域:国内167例、韓国1例
国内の多い感染地域:愛知県14例、岩手県12例、東京都12例、大阪府12例、石川県10例、神奈川県9例、福岡県9例、埼玉県7例、兵庫県7例、熊本県7例、群馬県6例、広島県6例
年齢群:1歳(13例)、2歳(6例)、3歳(10例)、4歳(7例)、5歳(6例)、6歳(9例)、7歳(4例)、8歳(7例)、9歳(4例)、10代(32例)、20代(18例)、30代(17例)、40代(5例)、50代(13例)、60代(10例)、70代(5例)、80代(1例)、90代(1例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2(82例)、O157 VT2(32例)、O26 VT1(23例)、O157 VT1(6例)、O157 VT不明(6例)、O26 VT不明(3例)、O121 VT2(2例)、O26 VT1・VT2(1例)、O121 VT不明(1例)、O111 VT1(1例)、O111 VT不明(1例)、O103 VT1(1例)、O145 VT1(1例)、その他・不明(8例)
累積報告数:2,269例(有症者1,531例、うちHUS 39例.死亡1例)
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4類感染症: |
A型肝炎2例(感染地域:千葉県1例、鳥取県1例)
デング熱4例(感染地域:フィリピン1例、インドネシア1例、ベトナム1例、イエメン1例)
マラリア1例(三日熱_感染地域:インド)
レジオネラ症7例(肺炎型7例)
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感染地域:東京都2例、神奈川県1例、福井県1例、愛知県1例、広島県1例、宮崎県1例
年齢群:50代(2例)、60代(1例)、70代(3例)、80代(1例)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢3例(腸管アメーバ症3例) |
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感染地域:神奈川県1例、広島県1例、中国1例
感染経路:経口感染2例、性的接触1例(異性間)
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ウイルス性肝炎1例〔B型_感染経路:性的接触(異性間)〕
急性脳炎5例
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インフルエンザウイルスAH1pdm 1例_年齢群:10代
病原体不明4例_年齢群:2歳(1例)、10代(1例)、50代(1例)、70代(1例)
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クロイツフェルト・ヤコブ病2例(孤発性プリオン病古典型2例)
劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例
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年齢群:40代(死亡)
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後天性免疫不全症候群14例(AIDS 4例、無症候9例、その他1例) |
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感染地域:国内13例、インドネシア1例
感染経路:性的接触12例(異性間5例、同性間7例)、不明2例
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梅毒9例(早期顕症I期2例、早期顕症II期4例、晩期梅毒1例、無症候2例)
破傷風2例(年齢群:60代(1例)、80代(1例))
バンコマイシン耐性腸球菌感染症2例 |
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遺伝子型:VanC 1例_菌検出検体:血液・胆汁
遺伝子型:不明1例_菌検出検体:喀痰
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風しん1例(臨床診断例) |
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感染地域:国内(都道府県不明)
年齢群:20〜24歳
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麻しん11例〔麻しん(検査診断例4例、臨床診断例6例)、修飾麻しん(検査診断例)1例〕
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感染地域:国内11例
国内の感染地域:埼玉県3例、滋賀県2例、大阪府2例、北海道1例、千葉県1例、三重県1例、京都府1例
年齢群:0歳(3例)、1歳(3例)、2歳(1例)、3歳(1例)、15〜19歳(1例)、25〜29歳(1例)、60代(1例)
累積報告数:594例〔麻しん(検査診断例184例、臨床診断例251例)、修飾麻しん(検査診断例159例)〕
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(補)他に2009年第34週までに診断されたものの報告遅れとして、細菌性赤痢1例(感染地域:ベトナム)、パラチフス1例(感染地域:スリランカ)、E型肝炎2例〔感染地域(感染源):福島県1例(豚の生レバー)、神奈川県1例(不明)〕、レジオネラ症2例〔感染地域:静岡県1例(温泉)、鳥取県1例(温泉)〕、急性脳炎4例〔アデノウイルス6型1例(3歳)、インフルエンザウイルスAH1pdm 1例(7歳)、病原体不明2例(2歳.死亡、8歳)〕、劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(80代.死亡)、バンコマイシン耐性腸球菌感染症2例(遺伝子型:VanC 2例_菌検出検体:血液2例)などの報告があった。
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◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は第28週以降増加が続いており、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い。都道府県別では沖縄県(36.00)、大分県(3.72)、大阪府(3.08)、福岡県(3.08)、東京都(3.01)、高知県(3.00)、千葉県(2.95)、埼玉県(2.60)、熊本県(2.35)、愛知県(2.34)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症の報告数は331例と第29週以降増加が続いている。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の約74%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では長野県(0.49)、福岡県(0.48)、北海道(0.45)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では山口県(1.26)、北海道(1.24)、福井県(1.05)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では大分県(6.6)、宮崎県(6.3)、福井県(5.8)が多い。水痘の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では宮崎県(1.47)、高知県(0.90)、鹿児島県(0.85)が多い。手足口病の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では青森県(3.95)、長崎県(3.77)、佐賀県(3.65)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では神奈川県(0.44)、佐賀県(0.26)、東京都(0.22)が多い。百日咳の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では高知県(0.23)、沖縄県(0.12)、栃木県(0.10)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は第32週以降減少が続いているが、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では香川県(4.1)、福井県(4.0)、富山県(3.8)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では山形県(3.07)、福井県(2.55)、長崎県(1.77)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では沖縄県(3.29)、富山県(2.20)、福島県(1.14)が多い。
注目すべき感染症
◆ インフルエンザ
インフルエンザ(Influenza)は、インフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症で、毎年世界中で流行がみられている。従来、ヒトからヒトに感染して臨床的に問題となっていた季節性インフルエンザの原因ウイルスとしてはA香港型(A/H3N2亜型)、Aソ連型(A/H1N1亜型)、B型の3種類があった。2009年4月にその存在が明らかとなった新型インフルエンザA/H1N1の原因ウイルス(A/H1N1pdm)はAソ連型と同じA/H1N1亜型であるが、抗原性の解析に通常用いられるHI検査では両者の間には交差性は認められない。新型インフルエンザA/H1N1の臨床像は、従来の季節性インフルエンザとほぼ同様であり、その感染経路も季節性インフルエンザと同様に飛沫感染が主体であり、一部には接触感染があると考えられている(感染症情報センターホームページ:http://idsc.nih.go.jp/disease/swine_influenza/2009idsc/infection_control_0901.html参照)。
感染症発生動向調査では、全国約4,800カ所のインフルエンザ定点からの報告に基づいてインフルエンザの発生動向を分析している。本サーベイランスは原則的に臨床診断によるものであり、最近の国内のインフルエンザウイルス検出状況を考慮すれば、現在報告されているインフルエンザ患者発生の殆どは新型インフルエンザによるものであると推定される。
感染症発生動向調査によると、インフルエンザの定点当たり報告数は、2009年第28週以降増加が続いており、第35週は2.52(報告数12,007)となった(図1)。定点医療機関からの報告数をもとに、定点以外を含む全国の医療機関を1週間に受診した患者数を推計すると、約14万人となった。都道府県別では沖縄県(36.00)、大分県(3.72)、大阪府(3.08)、福岡県(3.08)、東京都(3.01)、高知県(3.00)、千葉県(2.95)、埼玉県(2.60)、熊本県(2.35)、愛知県(2.34)の順となっている(図2)。沖縄県の報告数は大きく減少したが、青森県、栃木県、和歌山県を除く44都道府県で定点当たり報告数が1.00を超えている。また、保健所地域をみると47都道府県の409保健所地域で定点当たり報告数が1.00を超えており、インフルエンザの流行地域は増大している。
患者報告数が継続的に増加し始めた第28週以降第35週までの定点当たり累積報告数は9.28(累積報告数42,242)であり、年齢群別では5〜9歳9,210例(21.8%)、10〜14歳8,372例(19.8%)、15〜19歳6,751例(16.0%)、20〜29歳6,125例(14.5%)、0〜4歳5,406例(12.8%)の順となっている。10歳未満の報告数の割合が増加してきており、20歳代までで全報告数の約85%を占めている(図3)。
日本で新型インフルエンザウイルスAH1pdmが検出された2009年第19週以降35週までに6,635件のインフルエンザウイルスの検出が報告されており、そのうちAH1pdmは5,666件(85.4%)を占めている。また、特に患者報告数が増加し始めた第28週以降では、第35週までにAH1亜型(Aソ連型)12件(0.3%)、AH3亜型(A香港型)80件(1.8%)、B型4件(0.1%)、AH1pdm(新型インフルエンザウイルス)4,440件(97.9%)とインフルエンザウイルスの検出報告数の大半をAH1pdmが占めており、現在国内で発生しているインフルエンザの殆どは新型インフルエンザによるものであると推定される(図4および感染症情報センターホームページ:http://idsc.nih.go.jp/iasr/prompt/graph/sinin1.gif 参照)。
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図1. インフルエンザの年別・週別発生状況(1999〜2009年第35週) |
図2. インフルエンザの都道府県別報告状況(2009年第35週) |
図3. インフルエンザ累積報告数の年齢群別割合(2009年第28〜35週) |
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図4. インフルエンザウイルス検出割合報告(2009年第28〜35週) |
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第35週はインフルエンザ定点からの報告数(定点当たり報告数2.52、報告数12,007)が前週の第34週(定点当たり報告数2.47、報告数11,636)よりも増加したが、受診患者数の推計では約14万人と前週の約15万人から減少した。この相違については、小児科を受診する14歳以下の報告数が増加し(第34週6,184→第35週7,163)、内科を受診する15歳以上の報告数が減少した(第34週5,452→第35週4,844)ことが一因と考えられた。定点からの報告数は小児科定点が内科定点よりも多い(小児科定点数約3,000、内科定点数約1,800)ために、小児科での増加が強調されたものとなっている。一方、受診患者数の推計値は、全国の医療機関での小児科数と内科数に補正されているために(全国の医療機関では内科が小児科よりも多い)、小児科での増加と内科での減少がバランスされたものとなっている。ただし、「受診患者数の推計値」は、全国の医療機関の受診患者数を一部の定点医療機関の報告数から推計するために、不確実性が存在し、一定の変動範囲(95%信頼区間という)を有している。受診患者数の95%信頼区間を見積もると、第34週で約13〜17万人、第35週で約13〜16万人となった。これらの95%信頼区間の重なりが大きいことから、この2つの週における受診患者数の推計値には大きな変化がなかったとみることもできる。
沖縄県は、本格的な流行が続いているものの、定点当たり報告数が前週よりも大幅に減少し、冬季の季節性インフルエンザの流行であれば、流行のピークを過ぎたと考えられるが、第35週は8月の最終週であり、夏季休暇が終了する第36週以降に、流行が再増大する可能性は否定できない。他の都道府県では、いまだ新型インフルエンザによる本格的な流行は訪れておらず、殆どすべての学校が再開される第36週以降の流行の推移には警戒が必要である。
これまでのインフルエンザ・パンデミックの例をみても、新型インフルエンザの流行は、国民の多くが感染し免疫を保有するに至るまでは繰り返されるものと考えられる。また、現時点においては、いまだ殆どの国民が感受性者であることから、たとえ秋季の流行であっても、その規模は従来の冬季における季節性インフルエンザの流行よりも大きくなる可能性があることを考慮しておくべきである。従って、本格的な流行となった場合に、現在の医療体制を維持し、国民に対して医療サービスを提供し続けることが大きな課題であり、また、流行規模の増大に伴って、心疾患、呼吸器疾患、腎疾患、糖尿病等の慢性疾患患者、妊婦、乳幼児、高齢者等のいわゆるインフルエンザの罹患による重症化が予想される者に対する注意と対策に関する準備も急務であると思われる。新型インフルエンザを含めたインフルエンザの発生動向には今後とも警戒が必要である。
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