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発生動向総覧
〈第38週コメント〉 9月25日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 272例 |
3類感染症: |
細菌性赤痢8例
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感染地域:長崎県1例、ベトナム2例、カンボジア1例、インド1例、トルコ1例、アルジェリア1例、インド/中国1例
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腸管出血性大腸菌感染症89例(有症者53例、うちHUS なし)
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感染地域:国内89例
国内の多い感染地域:兵庫県14例、東京都10例、福岡県9例、宮城県6例、埼玉県5例、千葉県4例、鹿児島県4例、岩手県3例、愛知県3例、三重県3例、広島県3例
年齢群:1歳(6例)、2歳(2例)、3歳(3例)、5歳(3例)、6歳(5例)、7歳(2例)、8歳(4例)、9歳(2例)、10代(12例)、20代(19例)、30代(10例)、40代(7例)、50代(5例)、60代(7例)、70代(1例)、80代(1例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2( 49例)、O157 VT2( 17例)、O26 VT1(6例)、O121 VT2(2例)、O145 VT1(2例)、O157 VT1(1例)、O157 VT不明(1例)、O121 VT不明(1例)、O6 VT1(1例)、O91 VT1(1例)、O103 VT不明(1例)、O111 VT1(1例)、その他・不明(6例)
累積報告数:2,791例(有症者1,905例、うちHUS 54例.死亡2例)
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腸チフス1例(感染地域:千葉県)
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4類感染症: |
E型肝炎1例(感染地域:青森県_感染源:不明) A型肝炎1例(感染地域:佐賀県)
デング熱2例(感染地域:マレーシア1例、パプアニューギニア1例)
日本紅斑熱2例(感染地域:島根県1例、広島県1例)
レジオネラ症6例(肺炎型6例)
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感染地域:埼玉県1例、石川県1例(温泉)、愛知県1例、岐阜県1例(温泉)、国内(都道府県不明)1例、トルコ1例
年齢群:50代(3例)、60代(2例)、80代(1例)
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レプトスピラ症1例(感染地域:沖縄県_感染源:河川)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢6例(腸管アメーバ症6例) |
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感染地域:石川県1例、岐阜県1例、広島県1例、国内(都道府県不明)2例、ベトナム/タイ1例
感染経路:経口感染1例、性的接触2例(異性間1例、異性間・同性間不明1例)、不明3例
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急性脳炎6例
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インフルエンザウイルスAH1pdm 2例_年齢群:10代(2例)
インフルエンザウイルスA型1例_年齢群:6歳
病原体不明3例_年齢群:0歳(1例)、1歳(1例)、10代(1例)
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クロイツフェルト・ヤコブ病2例
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孤発性プリオン病古典型2例
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後天性免疫不全症候群14例(AIDS 3例、無症候10例、その他1例)
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感染地域:国内13例、国内・国外不明1例
感染経路:性的接触10例(異性間2例、同性間8例)、不明4例
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ジアルジア症1例〔感染地域:国内(都道府県不明)〕
梅毒8例(早期顕症I期1例、早期顕症II期2例、晩期顕症1例、無症候4例)
破傷風4例〔年齢群:40代(1例)、50代(1例)、60代(1例)、70代(1例)〕
麻しん9例〔麻しん(検査診断例3例、臨床診断例3例)、修飾麻しん(検査診断例)3例〕
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感染地域:国内9例
国内の感染地域:千葉県2例、神奈川県1例、福岡県1例、鹿児島県1例、国内(都道府県不明)4例
年齢群:1歳(2例)、5〜9歳(1例)、10〜14歳(1例)、15〜19歳(1例)、20〜24歳(2例)、30〜34歳(2例)
累積報告数:635例〔麻しん(検査診断例201例、臨床診断例265例)、修飾麻しん(検査診断例169例)〕
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(補)他に2009年第37週までに診断されたものの報告遅れとして、E型肝炎2例〔感染地域(感染源):熊本県1例(イノシシの生肉)、栃木県1例(もつ)〕、エキノコックス症1例(多包条虫_感染地域:北海道)、デング熱1例(感染地域:カンボジア/ベトナム/ラオス)、急性脳炎2例〔ヒトヘルペスウイルス6型1例(1歳)、病原体不明1例(1歳)〕、劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(70代.死亡)、梅毒2例(先天梅毒2例)、バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例(遺伝子型:不明_菌検出検体:胆汁.死亡)、風しん1例(臨床診断例.感染地域:東京都.年齢群:15〜19歳)などの報告があった。
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◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は第28週以降増加が続いており、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い。都道府県別では沖縄県(12.52)、東京都(10.24)、大阪府(9.21)、北海道(8.21)、千葉県(7.31)、兵庫県(7.15)、神奈川県(7.09)、宮城県(7.07)、福岡県(6.99)、埼玉県(6.83)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症の報告数は483例と増加した。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の約76%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は第35週以降減少が続いている。都道府県別では福岡県(0.44)、山形県(0.30)、北海道(0.26)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は第34週以降増加が続いている。都道府県別では鳥取県(2.16)、北海道(1.81)、山口県(1.34)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では大分県(5.7)、宮崎県(4.9)、福井県(4.6)が多い。水痘の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では福島県(1.06)、富山県(0.69)、宮崎県(0.69)、鹿児島県(0.69)が多い。手足口病の定点当たり報告数は第35週以降減少が続いている。都道府県別では佐賀県(2.78)、沖縄県(2.50)、山形県(2.40)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は第35週以降減少が続いている。都道府県別では佐賀県(0.43)、青森県(0.24)、神奈川県(0.22)が多い。百日咳の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では長野県(0.13)、長崎県(0.09)、福岡県(0.08)、大分県(0.08)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は第32週以降減少が続いている。都道府県別では福井県(3.09)、長野県(2.31)、香川県(2.04)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では山形県(2.83)、佐賀県(2.48)、福井県(2.05)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では宮城県(1.50)、埼玉県(1.44)、沖縄県(1.29)が多い。
注目すべき感染症
◆ インフルエンザ
インフルエンザ(Influenza)は、インフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症で、毎年世界中で流行がみられている。2009年4月にその存在が明らかとなった新型インフルエンザA/H1N1の臨床像は、従来の季節性インフルエンザとほぼ同様であり、その感染経路も季節性インフルエンザと同様に飛沫感染が主体であり、一部には接触感染があると考えられている。従って、医療機関における感染対策としては、季節性インフルエンザと同様の標準予防策、咳エチケットを含めた飛沫予防策がその中心となる(感染症情報センターホームページ:http://idsc.nih.go.jp/disease/swine_influenza/2009idsc/infection_control_0901.html 参照)。
感染症発生動向調査では、全国約5,000カ所(小児科定点約3,000、内科定点約2,000)のインフルエンザ定点からの報告に基づいてインフルエンザの発生動向を分析している。本サーベイランスは原則的に臨床診断によるものであり、最近の国内のインフルエンザウイルス検出状況を考慮すれば、現在報告されているインフルエンザ患者発生の殆どは新型インフルエンザによるものであると推定される。
インフルエンザの定点当たり報告数は2009年第28週以降増加が続いており、第38週は4.95(報告数23,275)と前週の値(定点当たり報告数3.21)よりも大きく増加した(図1)。定点医療機関からの報告数をもとに、定点以外を含む全国の医療機関を1週間に受診した患者数を推計すると約27万人となった。都道府県別では沖縄県(12.52)、東京都(10.24)、大阪府(9.21)、北海道(8.21)、千葉県(7.31)、兵庫県(7.15)、神奈川県(7.09)、宮城県(7.07)、福岡県(6.99)、埼玉県(6.83)、長崎県(5.99)、愛知県(5.81)の順となっている。39都道府県で定点当たり報告数が1.00を超えており(図2)、また18都道府県の67保健所地域で定点当たり報告数が10.00を超えている。
沖縄県の報告数は減少が続いているが、北海道、宮城県、首都圏、愛知県、大阪府、兵庫
県、福岡県等の大都市圏を中心に報告数が大きく増加している(図3)。
患者報告数が継続的に増加し始めた第28週以降第38週までの定点当たり累積報告数は20.03(累積報告数93,590)であり、年齢群別では10〜14歳26,217例(28.0%)、5〜9歳22,135例(23.7%)、15〜19歳14,988例(16.0%)、0〜4歳10,444例(11.2%)、20〜29歳8,873例(9.5%)の順となっている(図4)。特に第34週以降の週毎の推移をみると、10〜14歳の割合が急増しており、第38週は約40%に達している(図5)
日本で新型インフルエンザウイルスAH1pdmが検出された2009年第19週以降第38週までに8,155件のインフルエンザウイルスの検出が報告されており、そのうちAH1pdmは7,172件(87.9%)を占めている。また、特に患者報告数が増加し始めた第28週以降では、第38週までに5,971件のインフルエンザウイルスの検出が報告されており、AH1亜型(Aソ連型)16件(0.3%)、AH3亜型(A香港型)89件(1.5%)、B型4件(0.1%)、AH1pdm(新型インフルエンザウイルス)5,862件(98.2%)とインフルエンザウイルスの検出報告数の大半をAH1pdmが占めており、現在国内で発生しているインフルエンザの殆どは新型インフルエンザによるものであると推定される(図6および感染症情報センターホームページ:http://idsc.nih.go.jp/iasr/prompt/graph/sinin1.gif 参照)。
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図1. インフルエンザの年別・週別発生状況(1999〜2009年第38週) |
図2. インフルエンザの都道府県別定点当たり報告数(2009年第38週) |
図3. インフルエンザの都道府県別報告数の推移(2009年第36〜38週) |
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図4. インフルエンザ累積報告数の年齢群別割合(2009年第28〜38週) |
図5. インフルエンザ報告数の年齢群別割合の推移(2009年第34〜38週) |
図6. インフルエンザウイルス検出割合報告(2009年第28〜38週) |
第38週は報告数が第28週以降では最も大きく増加したが、患者発生の中心は10代前半を中心とした5〜19歳の年齢層であり、夏季休暇の終了によって、学校、幼稚園、保育施設等の若年齢層の集団生活施設が流行の中心となっていることを表しているものと考えられる。また、特に10代前半の年齢群で報告数の急増が続いていることや、大都市圏を中心に流行が拡大しつつあるということは、現在は日本国内におけるインフルエンザの流行は初期の段階であり、今後更に大きな流行に発展して行く可能性が十分にあるものと予想される。
これまでのインフルエンザ・パンデミックの例をみても、新型インフルエンザの流行は、国民の多くが感染し免疫を保有するに至るまでは繰り返されるものと考えられる。また、現時点においては、いまだ殆どの国民が感受性者であることから、たとえ秋季の流行であっても、その規模は従来の冬季における季節性インフルエンザの流行よりも大きくなる可能性があることを考慮しておくべきである。従って、本格的な流行となった場合に、現在の医療体制を維持し、国民に対して医療サービスを提供し続けることが大きな課題であり、また、流行規模の増大に伴って、心疾患、呼吸器疾患、腎疾患、糖尿病等の慢性疾患患者、妊婦、乳幼児、高齢者等のいわゆるインフルエンザの罹患による重症化が予想される者に対する注意と対策に関する準備も急務であると思われる。新型インフルエンザを含めたインフルエンザの発生動向には今後とも警戒が必要である。
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