発生動向総覧
〈第39週コメント〉 9月30日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 112例 |
3類感染症: |
腸管出血性大腸菌感染症77例(有症者39例、うちHUS 1例)
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感染地域:国内76例、中国1例
国内の多い感染地域:福岡県34例*、千葉県5例、宮城県4例、東京都3例、神奈川県3例、石川県3例、埼玉県2例、大阪府2例、広島県2例、大分県2例
*うち27例が第38週の1例とともに、障害福祉施設での集団発生に関連
年齢群:0歳(1例)、1歳(1例)、2歳(3例)、3歳(3例)、5歳(2例)、6歳(1例)、7歳(5例)、8歳(2例)、10代(7例)、20代(11例)、30代(10例)、40代(11例)、50代(8例)、60代(8例)、70代(4例)
血清型・毒素型:O157 VT2(41例)、O157 VT1・VT2(25例)、O26 VT1(3例)、O26 VT1・VT2(2例)、O157 VT1(1例)、O157 VT不明(1例)、その他・不明(4例)
累積報告数:2,915例(有症者1,971例、うちHUS 56例.死亡2例)
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パラチフス1例(感染地域:インド)
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4類感染症: |
A型肝炎1例(感染地域:京都府) つつが虫病1例(感染地域:長崎県) デング熱2例(感染地域:インドネシア1例、スリランカ1例) マラリア1例(熱帯熱_感染地域:ベナン)
レジオネラ症3例(肺炎型3例)
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感染地域:静岡県1例(温泉)、岐阜県1例、奈良県1例(温泉)
年齢群:50代(1例)、60代(1例)、70代(1例)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢1例(腸管アメーバ症) |
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感染地域:静岡県
感染経路:不明
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急性脳炎5例
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インフルエンザウイルスAH1pdm 5例_年齢群:6歳(1例)、7歳(1例.死亡)、10代(3例)
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後天性免疫不全症候群4例(無症候2例、その他2例)
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感染地域:国内3例、国内・国外不明1例
感染経路:性的接触4例(異性間3例、同性間1例)
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梅毒4例(早期顕症II期2例、無症候2例)
破傷風2例〔年齢群:80代(2例)〕
風しん1例(検査診断例)
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感染地域:東京都
年齢群:30〜34歳
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麻しん5例〔麻しん(検査診断例1例、臨床診断例2例)、修飾麻しん(検査診断例)2例〕
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感染地域:国内4例、フィリピン1例
国内の感染地域:大阪府2例、福島県1例、国内(都道府県不明)1例
年齢群:1歳(1例)、15〜19歳(2例)、40代(2例)
累積報告数:641例〔麻しん(検査診断例202例、臨床診断例268例)、修飾麻しん(検査診断例171例)〕
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(補)他に2009年第38週までに診断されたものの報告遅れとして、マラリア1例(熱帯熱_感染地域:マリ)、急性脳炎5例〔インフルエンザウイルスAH1pdm 2例(6歳2例)、病原体不明3例(0歳、3歳、8歳)〕などの報告があった。
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◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い。都道府県別では沖縄県(12.12)、大阪府(8.82)、福岡県(8.79)、滋賀県(8.67)、愛知県(6.83)、東京都(6.68)、埼玉県(6.29)、北海道(6.18)、兵庫県(5.19)、千葉県(5.14)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症の報告数は292例と減少した。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の75%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は第35週以降減少が続いている。都道府県別では佐賀県(0.22)、富山県(0.17)、岡山県(0.17)、大分県(0.17)、宮崎県(0.17)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では大分県(0.92)、北海道(0.85)、富山県(0.79)、鳥取県(0.79)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は3週連続で減少した。都道府県別では大分県(4.2)、福井県(4.1)、宮崎県(4.0)が多い。水痘の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では宮崎県(1.28)、福井県(1.23)、石川県(1.07)が多い。手足口病の定点当たり報告数は第35週以降減少が続いている。都道府県別では山形県(2.70)、沖縄県(1.88)、青森県(1.14)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は第35週以降減少が続いている。都道府県別では愛媛県(0.24)、長野県(0.20)、佐賀県(0.17)が多い。百日咳の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では広島県(0.11)、三重県(0.07)、栃木県(0.06)、宮崎県(0.06)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は第32週以降減少が続いている。都道府県別では福井県(1.59)、香川県(1.11)、長野県(0.82)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では福井県(1.91)、沖縄県(1.76)、山形県(1.30)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では青森県(1.67)、沖縄県(1.57)、宮城県(1.08)が多い。
〈第40週コメント〉 10月7日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 291例 |
3類感染症: |
細菌性赤痢4例
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感染地域:中国2例、チュニジア1例、ペルー1例
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腸管出血性大腸菌感染症63例(有症者47例、うちHUS 1例)
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感染地域:国内62例、国外(渡航先不明)1例
国内の多い感染地域:大阪府6例、広島県6例、千葉県5例、埼玉県4例、兵庫県4例、石川県3例、宮城県2例、徳島県2例、宮崎県2例、鹿児島県2例
年齢群:1歳(6例)、2歳(3例)、3歳(3例)、4歳(4例)、5歳(1例)、6歳(2例)、8歳(1例)、10代(9例)、20代(9例)、30代(7例)、40代(3例)、50代(7例)、60代(5例)、70代(1例)、80代(2例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2(19例)、O157 VT2(19例)、O26 VT1(8例)、O157 VT不明(4例)、O26 VT1・VT2(3例)、O157 VT1(1例)、O91 VT1(1例)、O91 VT2(1例)、O111 VT1(1例)、O121 VT1・VT2(1例)、O121 VT2(1例)、O145 VT2(1例)、その他・不明(3例)
累積報告数:3,011例(有症者2,039例、うちHUS 58例.死亡2例)
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パラチフス1例(感染地域:インド)
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4類感染症: |
A型肝炎2例(感染地域:宮城県1例、韓国1例) つつが虫病2例(感染地域:青森県1例、神奈川県1例)
デング熱1例(デング出血熱_感染地域:フィリピン)
日本紅斑熱2例(感染地域:和歌山県1例、鹿児島県1例)
レジオネラ症3例(肺炎型3例)
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感染地域:北海道1例(温泉)、岩手県1例、長崎県1例
年齢群:60代(1例)、70代(2例)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢11例(腸管アメーバ症9例、腸管外アメーバ症1例、腸管及び腸管外アメーバ症1例) |
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感染地域:東京都4例、福島県1例、愛知県1例、京都府1例、兵庫県1例、福岡県1例、国内(都道府県不明)1例、インドネシア1例
感染経路:経口感染2例、性的接触2例(異性間2例)、不明7例
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ウイルス性肝炎4例
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B型4例_感染経路:性的接触2例(異性間1例、同性間1例)、不明2例
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急性脳炎9例
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インフルエンザウイルスAH1pdm 5例_年齢群:2歳(1例)、5歳(1例)、7歳(2例)、9歳(1例)
ムンプスウイルス1例_年齢群:2歳
病原体不明3例_年齢群:1歳(1例)、2歳(1例)、5歳(1例)
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クロイツフェルト・ヤコブ病2例
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孤発性プリオン病古典型1例
遺伝性プリオン病ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病1例
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後天性免疫不全症候群13例(AIDS 1例、無症候9例、その他3例)
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感染地域:国内12例、国内・国外不明1例
感染経路:性的接触11例(異性間1例、同性間9例、異性/同性間1例)、不明2例
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梅毒5例(早期顕症II期2例、無症候3例)
破傷風3例〔年齢群:40代(2例)、70代(1例)〕
バンコマイシン耐性腸球菌感染症2例(遺伝子型:VanC 2例_菌検出検体:血液1例、胆汁1例)
風しん1例(検査診断例)
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感染地域:千葉県
年齢群:25〜29歳
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麻しん11例〔麻しん(検査診断例5例、臨床診断例4例)、修飾麻しん(検査診断例)2例〕
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感染地域:国内10例、東京都/インドネシア1例
国内の感染地域:千葉県2例、広島県2例、青森県1例、福島県1例、東京都1例、滋賀県1例、大阪府1例、国内(都道府県不明)1例
年齢群:0歳(2例)、1歳(2例)、5〜9歳(1例)、10〜14歳(1例)、15〜19歳(1例)、35〜39歳(2例)、50代(1例)、70代(1例)
累積報告数:656例〔麻しん(検査診断例208例、臨床診断例275例)、修飾麻しん(検査診断例173例)〕
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(補)他に2009年第39週までに診断されたものの報告遅れとして、オウム病1例(感染地域:静岡県.感染源:ハト)、日本紅斑熱1例(感染地域:長崎県)、マラリア1例(熱帯熱_感染地域:ブルキナファソ)、急性脳炎9例〔インフルエンザウイルスAH1pdm 5例(1歳、2歳、6歳、7歳、10代)、A型インフルエンザウイルス1例(40代)、ヒトヘルペスウイルス6型1例(1歳)、病原体不明2例(0歳、4歳)〕、バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例(遺伝子型:不明_菌検出検体:尿)、風しん2例〔検査診断例2例.感染地域:大阪府1例、国内(都道府県不明)1例.年齢群:25〜29歳(1例)、40代(1例)〕などの報告があった。
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◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い。都道府県別では北海道(16.99)、福岡県(13.41)、沖縄県(10.47)、愛知県(10.39)、東京都(9.60)、兵庫県(8.94)、大阪府(8.54)、埼玉県(8.10)、神奈川県(8.05)、千葉県(7.66)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症の報告数は345例と増加した。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の約77%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では富山県(0.38)、佐賀県(0.26)、北海道(0.23)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では北海道(1.62)、山口県(1.48)、富山県(1.45)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では大分県(4.4)、熊本県(4.3)、富山県(4.2)、宮崎県(4.2)が多い。水痘の定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では鹿児島県(1.28)、福島県(1.02)、宮崎県(0.97)が多い。手足口病の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では山形県(2.00)、沖縄県(1.82)、宮崎県(1.50)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では青森県(0.19)、神奈川県(0.17)、愛媛県(0.14)が多い。百日咳の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では沖縄県(0.26)、栃木県(0.13)、広島県(0.10)、高知県(0.10)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は増加した。都道府県別では福井県(1.55)、高知県(1.50)、長野県(0.85)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では福井県(2.59)、山形県(2.10)、沖縄県(2.09)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では沖縄県(1.57)、青森県(1.17)、福島県(1.14)が多い。
注目すべき感染症
◆ インフルエンザ
インフルエンザ(Influenza)は、インフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症で、毎年世界中で流行がみられている。2009年4月にその存在が明らかとなった新型インフルエンザA/H1N1の臨床像は、従来の季節性インフルエンザとほぼ同様であり、罹患者の大半は合併症なく治癒するといわれているが、肺炎やインフルエンザ脳症を併発して重症化する場合がある。特に肺炎は、従来の季節性インフルエンザでは殆どみられなかったインフルエンザウイルスによる肺炎を発症する場合が多く、急速に進行する可能性があるので要注意である(Hospitalized Patientswith 2009 H1N1 Influenza in the United States, April-June 2009:The New England Journal of Medecine, Oct.8, 2009:http://content.nejm.org/cgi/content/abstract/NEJMoa0906695v1)。感染経路は季節性インフルエンザと同様に飛沫感染が主体であり、一部には接触感染があると考えられている。従って、医療機関における感染対策としては、季節性インフルエンザと同様の標準予防策、咳エチケットを含めた飛沫予防策がその中心となる(感染症情報センターホームページ:http://idsc.nih.go.jp/disease/swine_influenza/2009idsc/infection_control_0901.html 参照)。
感染症発生動向調査では、全国約5,000カ所(小児科定点約3,000、内科定点約2,000)のイン
フルエンザ定点からの報告に基づいてインフルエンザの発生動向を分析している。本サーベイ
ランスは原則的に臨床診断によるものであり、最近の国内のインフルエンザウイルス検出状況を
考慮すれば、現在報告されているインフルエンザ患者発生の殆どは新型インフルエンザによるも
のであると推定される。
2009年第40週のインフルエンザの定点当たり報告数は6.40(報告数30,765)となり、前週の値(定点当たり報告数4.25)よりも大きく増加した(図1)。定点医療機関からの報告数をもとに、定点以外を含む全国の医療機関を1週間に受診した患者数を推計すると約33万人となった。都道府県別では北海道(16.99)、福岡県(13.41)、沖縄県(10.47)、愛知県(10.39)、東京都(9.60)、兵庫県(8.94)、大阪府(8.54)、埼玉県(8.10)、神奈川県(8.05)、千葉県(7.66)の順となっている。山形県、富山県、鳥取県を除く44都道府県で定点当たり報告数が1.00以上であり(図2)、また18都道府県の96保健所地域で定点当たり報告数が10.00以上となっている。沖縄県では定点当たり報告数の減少が続いているが、北海道、首都圏、愛知県、大阪府、兵庫県、福岡県等の大都市圏からの報告が目立っており、特に北海道、神奈川県、愛知県、兵庫県、福岡県等では定点当たり報告数、患者報告数共に前週よりも大きく増加した(図3)。
患者報告数が継続的に増加し始めた第28週以降第40週までの定点当たり累積報告数は30.74(累積報告数143,628)であり、年齢群別では10〜14歳44,490例(31.0%)、5〜9歳34,945例(24.3%)、15〜19歳22,932例(16.0%)、0〜4歳14,799例(10.3%)、20〜29歳11,469例(8.0%)の順となっている(図4)。特に夏季休暇終了後(第36週以降)に5〜19歳の年齢層の割合が増加し、流行の中心となっていることは明らかである(図5)。
日本で新型インフルエンザウイルスAH1pdmが検出された2009年第19週以降第40週までに9,679件のインフルエンザウイルスの検出が報告されており、そのうちAH1pdmは8,673件(89.6%)を占めている。また、特に患者報告数が増加し始めた第28週以降では、第40週までに7,462件のインフルエンザウイルスの検出が報告され、AH1亜型(Aソ連型)16件(0.2%)、AH3亜型(A香港型)98件(1.3%)、B型4件(0.1%)、AH1pdm(新型インフルエンザウイルス)7,344件(98.4%)とインフルエンザウイルスの検出報告数の大半をAH1pdmが占めており、現在国内で発生しているインフルエンザの殆どは新型インフルエンザによるものであると推定される(図6および感染症情報センターホームページ:http://idsc.nih.go.jp/iasr/prompt/graph/sinin1.gif 参照)
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図1. インフルエンザの年別・週別発生状況(1999〜2009年第40週) |
図2. インフルエンザの都道府県別定点当たり報告数(2009年第40週) |
図3. インフルエンザの都道府県別報告数の推移(2009年第38〜40週) |
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図4. インフルエンザ累積報告数の年齢群別割合(2009年第28〜40週) |
図5. インフルエンザ報告数の年齢群別割合の推移(2009年第34〜40週) |
図6. インフルエンザウイルス検出割合報告(2009年第28〜40週) |
第39週は大型連休の影響もあって、定点からのインフルエンザの患者報告数は前週よりも減少したが、第40週には再び大きな増加がみられた。5〜19歳が流行の中心である状態が続いており、学校、幼稚園、保育施設等の若年者層の集団生活施設から地域に流行が拡大していく状況がしばらくは続いていくものと予想される。また、特に大都市圏では複数の地域でさらに本格的な流行に発展していくものと考えられる。
これまでのインフルエンザ・パンデミックの例をみても、新型インフルエンザの流行は、国民の多くが感染し免疫を保有するに至るまでは繰り返されるものと考えられる。また、現時点においては、いまだ殆どの国民が感受性者であることから、たとえ秋季の流行であっても、その規模は従来の冬季における季節性インフルエンザの流行よりも大きくなる可能性があることを考慮しておくべきである。従って、本格的な流行となった場合に、現在の医療体制を維持し、国民に対して医療サービスを提供し続けることが大きな課題であり、また、流行規模の増大に伴って、心疾患、呼吸器疾患、腎疾患、糖尿病等の慢性疾患患者、妊婦、乳幼児、高齢者等のいわゆるインフルエンザの罹患による重症化が予想される者に対する注意と対策に関する準備も急務であると思われる。新型インフルエンザを含めたインフルエンザの発生動向には今後とも警戒が必要である。
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