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発生動向総覧
〈第41週コメント〉 10月14日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 217例 |
3類感染症: |
細菌性赤痢4例
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感染地域:静岡県2例、ベトナム1例、インド1例
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腸管出血性大腸菌感染症65例(有症者38例、うちHUS 2例) |
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感染地域:国内65例
国内の多い感染地域:福岡県17例、佐賀県5例、東京都4例、愛知県3例、広島県3例、長崎県3例、鹿児島県3例、北海道2例、福島県2例、三重県2例、兵庫県2例、岡山県2例
年齢群:0歳(1例)、1歳(7例)、2歳(2例)、3歳(2例)、4歳(3例)、5歳(2例)、6歳(2例)、7歳(1例)、9歳(1例)、10代(12例)、20代(9例)、30代(8例)、40代(4例)、50代(5例)、60代(1例)、70代(2例)、80代(2例)、90代(1例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2(36例)、O157 VT2(7例)、O26 VT1(7例)、O157 VT不明(5例)、O157 VT1(1例)、O26 VT不明(1例)、O91 VT1(1例)、O103 VT1(1例)、O111 VT1・VT2(1例)、その他・不明(5例)
累積報告数:3,093例(有症者2,089例、うちHUS 62例.死亡3例)
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パラチフス1例(感染地域:バングラデシュ)
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4類感染症: |
デング熱5例(感染地域:インド3例、インドネシア1例、パナマ1例) 日本紅斑熱5例(感染地域:広島県2例、熊本県2例、長崎県1例) 日本脳炎1例(40代_感染地域:滋賀県)
マラリア1例(熱帯熱_感染地域:ナイジェリア)
レジオネラ症2例(肺炎型2例)
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感染地域:山形県1例、佐賀県1例
年齢群:60代(2例)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢9例(腸管アメーバ症7例、腸管外アメーバ症2例) |
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感染地域:宮城県1例、千葉県1例、大阪府1例、兵庫県1例、高知県1例、国内(都道府県不明)1例、中国1例、インドネシア1例、国内・国外不明1例
感染経路:経口感染2例、性的接触3例(異性間3例)、不明4例
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ウイルス性肝炎1例
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B型_感染経路:性的接触(異性間)
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急性脳炎7例
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インフルエンザウイルスAH1pdm 7例_年齢群:4歳(1例)、8歳(3例)、9歳(2例)、10代(1例)
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クリプトスポリジウム症1例(感染地域:タイ/エジプト/エチオピア)
クロイツフェルト・ヤコブ病1例(孤発性プリオン病古典型)
後天性免疫不全症候群10例(AIDS 4例、無症候5例、その他1例)
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感染地域:国内6例、国内・国外不明4例
感染経路:性的接触6例(異性間4例、同性間2例)、不明4例
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ジアルジア症1例(感染地域:インド)
梅毒4例(早期顕症II期1例、無症候3例)
風しん2例(検査診断例2例)
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感染地域:東京都2例
年齢群:25〜29歳(1例)、40代(1例)
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麻しん7例〔麻しん(検査診断例4例、臨床診断例2例)、修飾麻しん(検査診断例)1例〕
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感染地域:国内7例
国内の感染地域:広島県5例、群馬県1例、国内(都道府県不明)1例
年齢群:0歳(1例)、15〜19歳(2例)、20〜24歳(2例)、25〜29歳(1例)、30〜34歳(1例)
累積報告数:668例〔麻しん(検査診断例214例、臨床診断例279例)、修飾麻しん(検査診断例175例)〕
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(補)他に細菌性赤痢1例、マラリア1例の報告があったが削除予定。また、2009年第40週までに診断されたものの報告遅れとして、細菌性赤痢1例(感染地域:ベトナム)、オウム病1例(感染地域:大阪府_感染源:ドバト)、日本紅斑熱6例(感染地域:三重県4例、兵庫県2例)、マラリア1例(熱帯熱_感染地域:中国)、急性脳炎6例〔インフルエンザウイルスAH1pdm 3例(5歳1例、10代2例)、病原体不明3例(4歳1例、20代2例)〕などの報告があった。
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◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数はは2週連続で増加し、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い。都道府県別では北海道(38.96)、愛知県(23.52)、福岡県(23.48)、神奈川県(21.63)、沖縄県(19.48)、東京都(18.98)、大阪府(16.96)、埼玉県(16.89)、兵庫県(16.54)、千葉県(15.79)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症の報告数は507例と2週連続で増加した。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の約71%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では富山県(0.24)、北海道(0.23)、宮崎県(0.22)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では山口県(2.34)、北海道(2.05)、山形県(1.60)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では福井県(5.3)、宮崎県(4.9)、大分県(4.6)が多い。水痘の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では大分県(0.75)、岩手県(0.73)、福岡県(0.63)が多い。手足口病の定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では沖縄県(4.5)、山形県(3.5)、佐賀県(1.6)、長崎県(1.6)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では愛媛県(0.19)、神奈川県(0.15)、長野県(0.15)が多い。百日咳の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では広島県(0.14)、高知県(0.13)、千葉県(0.09)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は2週連続で増加し、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では高知県(3.20)、福井県(1.95)、沖縄県(1.26)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では山形県(2.70)、福井県(1.86)、沖縄県(1.74)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では沖縄県(1.71)、宮城県(1.17)、群馬県(1.00)が多い。
注目すべき感染症
◆ インフルエンザ
インフルエンザ(Influenza)は、インフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症で、毎年世界中で流行がみられている。2009年4月にその存在が明らかとなった新型インフルエンザA/H1N1の臨床像は、従来の季節性インフルエンザとほぼ同様であり、罹患者の大半は合併症なく治癒するといわれているが、肺炎やインフルエンザ脳症を併発して重症化する場合がある。特に肺炎は、急速に進行する重症のウイルス性肺炎を起こす場合が多く、喘息や慢性閉塞性肺疾患等の呼吸器疾患の存在が急激な悪化と関連しているといわれている(Clinical features of severe cases of pandemic influenza: Pandemic(H1N1)2009 briefing note 13, Global Alertand Response, WHO, Oct. 16, 2009;http://www.who.int/csr/disease/swineflu/notes/h1n1_clinical_features_20091016/en/index.html)。感染経路は季節性インフルエンザと同様に飛沫感染が主体であり、一部には接触感染があると考えられている。従って、医療機関における感染対策としては、季節性インフルエンザと同様の標準予防策、咳エチケットを含めた飛沫予防策がその中心となる(感染症情報センターホームページ:http://idsc.nih.go.jp/disease/swine_influenza/2009idsc/infection_control_0901.html 参照)。
感染症発生動向調査では、全国約5,000カ所(小児科定点約3,000、内科定点約2,000)のインフルエンザ定点からの報告に基づいてインフルエンザの発生動向を分析している。本サーベイランスは原則的に臨床診断によるものであり、最近の国内のインフルエンザウイルス検出状況を考慮すれば、現在報告されているインフルエンザ患者発生の殆どは新型インフルエンザによるものであると推定される。
2009年第41週のインフルエンザの定点当たり報告数は12.92(報告数61,583)となり、前週の値(定点当たり報告数6.40)よりも大きく増加した(図1)。定点医療機関からの報告数をもとに、定点以外を含む全国の医療機関を1週間に受診した患者数を推計すると約64万人であり、第28週以降これまでの累積の推計患者数は約234万人(95%信頼区間:223.75万人〜244.25万人)となった。都道府県別では北海道(38.96)、愛知県(23.52)、福岡県(23.48)、神奈川県(21.63)、沖縄県(19.48)、東京都(18.98)、大阪府(16.96)、埼玉県(16.89)、兵庫県(16.54)、千葉県(15.79)、三重県(11.07)、秋田県(10.49)の順となっている(図2)。また、全国29都道府県の221保健所地域で定点当たり報告数が10.0以上となっている。定点当たり報告数、患者報告数ともに北海道、首都圏、愛知県、大阪府、兵庫県、福岡県等の大都市圏を中心とした地域での急速な増加が続いており、第35週以降減少が続いていた沖縄県も増加に転じた。特に北海道では、季節性インフルエンザの流行のピークに匹敵する報告数となっている(図3)。
患者報告数が継続的に増加し始めた第28週以降第41週までの定点当たり累積報告数は43.69(累積報告数207,245)であり、年齢群別では10〜14歳69,450例(33.5%)、5〜9歳55,350例(26.7%)、15〜19歳30,013例(14.5%)、0〜4歳20,402例(9.8%)、20〜29歳13,378例(6.5%)の順となっており、特に5〜9歳の報告割合が増加してきている(図4)。特に夏季休暇終了後(第36週以降)に5〜19歳の年齢層の割合が増加し、現在の流行の中心となっていることは明らかである(図5)
日本で新型インフルエンザウイルスAH1pdmが検出された2009年第19週以降第41週までに10,157件のインフルエンザウイルスの検出が報告されており、そのうちAH1pdmは9,142件(90.0%)を占めている。また、特に患者報告数が増加し始めた第28週以降では、第41週までに7,936件のインフルエンザウイルスの検出が報告され、AH1亜型(Aソ連型)17件(0.2%)、AH3亜型(A香港型)103件(1.3%)、B型4件(0.1%)、AH1pdm(新型インフルエンザウイルス)7,812件(98.4%)とインフルエンザウイルスの検出報告数の大半をAH1pdmが占めており、現在国内で発生しているインフルエンザの殆どは新型インフルエンザによるものであると推定される(図6および感染症情報センターホームページ:http://idsc.nih.go.jp/iasr/prompt/graph/sinin1.gif 参照)。
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図1. インフルエンザの年別・週別発生状況(1999〜2009年第41週) |
図2. インフルエンザの都道府県別定点当たり報告数(2009年第41週) |
図3. インフルエンザの都道府県別報告数の推移(2009年第38〜41週) |
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図4. インフルエンザ累積報告数の年齢群別割合(2009年第28〜41週) |
図5. インフルエンザ報告数の年齢群別割合の推移(2009年第34〜41週) |
図6. インフルエンザウイルス検出割合報告(2009年第28〜41週) |
第41週に入り、国内の大都市圏では本格的な流行になってきている。特に北海道では、札幌市を含めて半数近い保健所地域で定点当たり報告数が30.00以上となっている。流行の中心である5〜19歳の年齢層の報告割合がまだ増加傾向にあることは、今後更に他の年齢層へ流行が拡大していく可能性が高いことを示しているものと考えられる。特に、入院患者の報告数が最も多い5〜9歳(厚生労働省ホームページ:http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/rireki/091016-02.html 参照)の患者報告数の割合が増加してきていることは、要注意である。
これまでのインフルエンザ・パンデミックの例をみても、新型インフルエンザの流行は、国民の多くが感染し免疫を保有するに至るまでは繰り返されるものと考えられる。また、現時点においては、いまだ殆どの国民が感受性者であることから、たとえ秋季の流行であっても、その規模は従来の冬季における季節性インフルエンザの流行よりも大きくなる可能性があることを考慮しておくべきである。従って、本格的な流行となった場合に、現在の医療体制を維持し、国民に対して医療サービスを提供し続けることが大きな課題であり、また、流行規模の増大に伴って、心疾患、呼吸器疾患、腎疾患、糖尿病等の慢性疾患患者、妊婦、乳幼児、高齢者等のいわゆるインフルエンザの罹患による重症化が予想される者に対する注意と対策に関する準備も急務であると思われる。また、特に発症後急速な経過をとるといわれているインフルエンザウイルス性の肺炎やインフルエンザ脳症の合併は要注意であり、これまでの重症例に対する迅速で詳細な解析と速やかな情報の還元は重要と思われる。新型インフルエンザを含めたインフルエンザの発生動向には今後とも警戒が必要である。
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