発生動向総覧
〈第42週コメント〉 10月21日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 214例 |
3類感染症: |
細菌性赤痢5例
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感染地域:東京都1例、インドネシア1例、マレーシア1例、インド
1例、ロシア1例
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腸管出血性大腸菌感染症54例(有症者40例、うちHUS 2例)
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感染地域:国内54例
国内の多い感染地域:福岡県9例、愛知県6例、栃木県3例、千葉県3例、東京都3例、宮城県2例、山形県2例、埼玉県2例、神奈川県2例、兵庫県2例、宮崎県2例
年齢群:1歳(3例)、2歳(1例)、3歳(7例)、4歳(5例)、5歳(4例)、6歳(1例)、8歳(2例)、10代(6例)、20代(7例)、30代(3例)、40代(7例)、60代(5例)、70代(2例)、90代(1例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2(24例)、O157 VT2(11例)、O26 VT1(3例)、O157 VT不明(2例)、O91 VT1(2例)、O111 VT1(2例)、O157 VT1(1例)、O26 VT1・VT2(1例)、O103 VT1(1例)、O121 VT2(1例)、その他・不明(6例)
累積報告数:3,187例(有症者2,147例、うちHUS 66例.死亡3例)
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パラチフス1例(感染地域:インド)
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4類感染症: |
E型肝炎2例
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感染地域:石川県1例、国内(都道府県不明)1例
感染源:不明2例
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オウム病1例(感染地域:大阪府_感染源:不明)
つつが虫病2例(感染地域:福島県1例、静岡県1例)
デング熱2例(感染地域:インドネシア1例、インド1例)
マラリア1例(三日熱_感染地域:仏領ギアナ)
ライム病1例(感染地域:長野県)
レジオネラ症12例(肺炎型12例)
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感染地域:兵庫県3例、岩手県1例、山形県1例、茨城県1例、栃木県1例、群馬県1例、千葉県1例、静岡県1例、国内(都道府県不明)1例、ハワイ1例
年齢群:50代(3例)、60代(6例)、70代(3例)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢5例(腸管アメーバ症5例) |
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感染地域:群馬県1例、埼玉県1例、国内(都道府県不明)1例、カンボジア2例
感染経路:経口感染2例、不明3例
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ウイルス性肝炎1例(C型_感染経路:不明)
急性脳炎8例
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インフルエンザウイルスAH1pdm 8例_年齢群:1歳(1例)、2歳(1例)、3歳(1例)、4歳(1例)、6歳(1例)、8歳(3例)
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クロイツフェルト・ヤコブ病1例(孤発性プリオン病古典型)
後天性免疫不全症候群11例(AIDS 2例、無症候8例、その他1例) |
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感染地域:国内10例、ベトナム1例
感染経路:性的接触10例(異性間2例、同性間8例)、性的接触(同性間)/静注薬物使用1例
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梅毒4例(早期顕症I期1例、無症候3例)
破傷風2例〔年齢群:70代(1例)、80代(1例)〕
風しん1例(検査診断例) |
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感染地域:国内(都道府県不明)/タイ
年齢群:30〜34歳
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麻しん1例〔麻しん(検査診断例)〕
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感染地域:国内
国内の感染地域:広島県
年齢群:10〜14歳
累積報告数:672例〔麻しん(検査診断例216例、臨床診断例281例)、修飾麻しん(検査診断例175例)〕
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(補)他に2009年第41週までに診断されたものの報告遅れとして、コレラ1例(感染地域:インド)、細菌性赤痢1例(感染地域:ロシア)、パラチフス1例(感染地域:インド)、エキノコックス症1例(多包条虫_感染地域:北海道)、日本紅斑熱2例(感染地域:広島県1例、宮崎県1例)、マラリア1例(熱帯熱_感染地域:ガーナ)、急性脳炎9例〔インフルエンザウイルスAH1pdm6例(4歳1例、6歳1例、7歳1例、8歳2例、10代1例)、単純ヘルペスウイルス1例(80代)、ヒトヘルペスウイルス6型1例(1歳)、病原体不明1例(40代)〕、バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例(遺伝子型:VanC_菌検出検体:血液)、風しん1例(検査診断例.感染地域:鳥取県.年齢群:2歳)などの報告があった。
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◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は3週連続で増加し、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い。都道府県別では北海道(57.93)、愛知県(31.78)、福岡県(29.08)、神奈川県(25.19)、大阪府(23.25)、埼玉県(22.97)、東京都(22.20)、兵庫県(22.09)、沖縄県(22.05)、秋田県(19.29)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症の報告数は548例と3週連続で増加した。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の約73%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では北海道(0.21)、熊本県(0.21)、福岡県(0.19)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では鳥取県(1.95)、山形県(1.70)、山口県(1.64)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では熊本県(4.7)、宮崎県(4.0)、大分県(3.9)が多い。水痘の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では青森県(1.26)、岩手県(1.20)、石川県(1.14)が多い。手足口病の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では山形県(3.83)、沖縄県(3.00)、島根県(1.30)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は3週連続で増加した。都道府県別では青森県(0.24)、群馬県(0.19)、神奈川県(0.18)が多い。百日咳の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では福井県(0.09)、栃木県(0.08)、宮崎県(0.08)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は減少した。都道府県別では高知県(1.87)、福井県(0.86)、和歌山県(0.71)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では福井県(2.14)、山形県(1.93)、沖縄県(1.68)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では埼玉県(1.67)、福島県(1.57)、沖縄県(1.57)が多い。
〈9月コメント〉
◆性感染症について 2009年10月9日集計分 性感染症定点数:951
(産婦人科・産科・婦人科:454、泌尿器科:396、皮膚科88、性病科13)
●月別推移
2009年9月の月別定点当たり患者報告数は、性器クラミジア感染症が2.37(男1.11、女1.27)、性器ヘルペスウイルス感染症が0.66(男0.26、女0.41)、尖圭コンジローマが0.47(男0.29、女0.18)、淋菌感染症が0.83(男0.66、女0.17)であった。男性では性器クラミジア感染症、次いで淋菌感染症が多く、女性では性器クラミジア感染症、次いで性器ヘルペスウイルス感染症が多かった(図1)。
前月に比べると、男性では、性器クラミジア感染症、性器ヘルペスウイルス感染症、尖圭コンジローマで同値、淋菌感染症で減少であった。女性では、性器クラミジア感染症、性器ヘルペスウイルス感染症で増加、尖圭コンジローマで減少、淋菌感染症で増加であった(28〜31ページ「グラフ総覧」参照)。
過去5年間の同時期と比較すると、男性では4疾患すべてでやや少なかった。女性では尖圭コンジローマでかなり少なく、性器クラミジア感染症、性器ヘルペスウイルス感染症、淋菌感染症の3疾患でやや少なかった(図2)。
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図1. 各性感染症が総報告数に占める割合(9月) |
●男女別・年齢階級別
年齢群別(0歳、1〜4歳、5〜69歳は5歳毎、および70歳以上)でみた定点当たり報告数のピークは、男性では、性器クラミジア感染症は25〜29歳、性器ヘルペスウイルス感染症は30〜39歳の2つの年齢群、尖圭コンジローマは30〜34歳、淋菌感染症は25〜29歳の年齢群であった。女性では、性器クラミジア感染症は20〜24歳、性器ヘルペスウイルス感染症は25〜29歳、尖圭コンジローマは20〜24歳、淋菌感染症は20〜24歳の年齢群であった(図3:PDF参照)。男女ともに4疾患すべてで15〜19歳の年齢群の報告があり、女性の性器クラミジア感染症と尖圭コンジローマでは10〜14歳の年齢群の報告があった。また、性器クラミジア感染症、尖圭コンジローマ、淋菌感染症の3疾患は、男性では60代以上は僅かであり、女性では50代以上の報告はないか、あっても僅かである。しかし、性器ヘルペスウイルス感染症は男女ともに、50代以降の報告も少なくない。この年齢層は再発例が含まれている可能性が以前から指摘されており、2006年4月の届出基準改正により、抗体のみ陽性のものの除外に加えて「明らかな再発例は除外する」ことが明示された。しかし、報告数や年齢群分布において明らかな変化は見られておらず、この基準変更の周知徹底が必要と考える。
年齢群毎にみた定点当たり報告数の男女の比較では、淋菌感染症では、すべての年齢群で男性が女性よりも多かった。一方、性器クラミジア感染症では10〜29歳の4つの年齢群、性器ヘルペスウイルス感染症では、15〜34歳、50〜54歳、60〜69歳の7つの年齢群、尖圭コンジローマでは10〜14歳、20〜24歳の2つの年齢群の、比較的低い年齢層を中心に女性が男性よりも多かった。ただし、性感染症定点は泌尿器科系、婦人科系および皮膚科系などの診療科から構成されており、男女の比較についてはそれらの比率の影響を受ける可能性がある。
●若年齢層での推移
感染症法が施行された1999年4月以降について、若年層(15〜29歳)における各疾患の定点当たり報告数を男女別・月別に(図4:PDF参照)に示した。性器クラミジア感染症は男女ともに2003年以降減少傾向がみられる。性器ヘルペスウイルス感染症は、男性では2007年以降、女性では2006年以降微減傾向がみられる。尖圭コンジローマは男女共に2006年以降微減傾向がみられる。淋菌感染症は、男性では2003年以降減少傾向、女性では2004年以降微減傾向がみられる。前月との比較では、男性では性器クラミジア感染症は増加、性器ヘルペスウイルス感染症、尖圭コンジローマ、淋菌感染症の3疾患は減少した。女性では性器クラミジア感染症は増加、性器ヘルペスウイルス感染症と尖圭コンジローマは同値、淋菌感染症は増加した。
◆薬剤耐性菌について (10月9日集計分)
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基幹定点数(9月):457.
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●月別
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メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症
3.99(前月:4.20、前年同月:4.17)
定点当たり報告数は、例年年間を通じてほぼ一定である。9月は前月よりやや低下し、過去10年間の同月との比較では上位に属した。
ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)感染症
0.70(前月:0.76、前年同月:0.59)
定点当たり報告数は、例年春から初夏にかけて(4〜6月)と冬(11、12月)に多く、夏(7〜9月)に少なく推移している。9月は前月より減少し、過去10年間の同月との比較では上位に属した。
薬剤耐性緑膿菌感染症
0.09(前月:0.09、前年同月:0.09)
定点当たり報告数は、例年後半が前半に比して多い傾向がある。9月は前月よりやや減少し、過去10年間の同月との比較ではもっとも少なかった。
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●年齢階級別
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MRSA感染症
高齢者に多く、70歳以上が全体の63%を占めている(図1:PDF参照)
PRSP感染症
小児と高齢者に多い。5歳未満が全体の66%を占める一方、70歳以上が全体の20%を占めている(図2:PDF参照)。
薬剤耐性緑膿菌感染症
高齢者に多く、70歳以上が全体の55%を占めている(図3:PDF参照)
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●性別:女性を1 として算出した男/女比
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MRSA感染症…男:女=1.7:1
PRSP感染症…男:女=1.5:1
薬剤耐性緑膿菌感染症…男:女=2.2:1
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●都道府県別
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MRSA感染症
定点当たり報告数は沖縄県(10.9)、滋賀県(9.4)、福島県(8.0)が多い。
PRSP感染症
定点当たり報告数は宮崎県(2.6)、新潟県(2.2)、高知県(1.7)が多い。
薬剤耐性緑膿菌感染症
報告総数が42件にとどまるため、都道府県別定点当たり報告数の評価は困難である。
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注目すべき感染症
◆ インフルエンザ
インフルエンザ(Influenza)は、インフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症で、毎年世界中で流行がみられている。2009年4月にその存在が明らかとなった新型インフルエンザA/H1N1の臨床像は、従来の季節性インフルエンザとほぼ同様であり、罹患者の大半は合併症なく治癒するといわれているが、肺炎やインフルエンザ脳症を併発して重症化する場合がある。特に肺炎は、急速に進行する重症のウイルス性肺炎を起こす場合が多く、喘息や慢性閉塞性肺疾患等の呼吸器疾患の存在が急激な悪化と関連しているといわれている(Clinical features of severe cases of pandemic influenza: Pandemic(H1N1)2009 briefing note 13, Global Alert and Response, WHO, Oct. 16, 2009;http://www.who.int/csr/disease/swineflu/notes/h1n1_clinical_features_20091016/en/index.html)。
感染症発生動向調査では、全国約5,000カ所(小児科定点約3,000、内科定点約2,000)のインフルエンザ定点からの報告に基づいてインフルエンザの発生動向を分析している。本サーベイランスは原則的に臨床診断によるものであり、最近の国内のインフルエンザウイルス検出状況を考慮すれば、現在報告されているインフルエンザ患者発生の殆どは新型インフルエンザによるものであると推定される。
2009年第42週のインフルエンザの定点当たり報告数は17.65(報告数84,976)となり、前週の値(定点当たり報告数12.92)よりも増加した(図1)。定点医療機関からの報告数をもとに、定点以外を含む全国の医療機関を1週間に受診した患者数を推計すると約83万人であり、第28週以降これまでの累積の推計患者数は317万人(95%信頼区間:305.60万人〜328.40万人)となった。都道府県別では北海道(57.93)、愛知県(31.78)、福岡県(29.08)、神奈川県(25.19)、大阪府(23.25)、埼玉県(22.97)、東京都(22.20)、兵庫県(22.09)、沖縄県(22.05)、秋田県(19.29)の順となっており、鳥取県を除く46都道府県で定点当たり報告数の増加が認められた(図2)(参考:図3)。38都道府県の299保健所地域では定点当たり報告数が10.00以上となっており、また12都道府県の75保健所地域では定点当たり報告数は30.00以上となっている。
患者報告数が継続的に増加し始めた第28週以降第42週までの定点当たり累積報告数は61.62(累積報告数293,511)であり、年齢群別では10〜14歳100,444例(34.2%)、5〜9歳83,708例(28.5%)15〜19歳38,654例(13.2%)、0〜4歳29,550例(10.1%)、20〜29歳16,412例(5.6%)の順となっている(図4)。夏季休暇終了後に5〜19歳の割合が増加して流行の中心となっているが、特に第40週以降では5〜9歳の報告割合の増加が目立ってきていることに加えて、4歳以下の年齢群の報告割合も増加してきている(図5)。
日本で新型インフルエンザウイルスAH1pdmが検出された2009年第19週以降第42週までに11,083件のインフルエンザウイルスの検出が報告されており、そのうちAH1pdmは10,058件(90.8%)を占めている。また、特に患者報告数が増加し始めた第28週以降では、第42週までに8,860件のインフルエンザウイルスの検出が報告され、AH1亜型(Aソ連型)17件(0.2%)、AH3亜型(A香港型)111件(1.3%)、B型4件(0.0%)、AH1pdm(新型インフルエンザウイルス)8,728件(98.5%)とインフルエンザウイルスの検出報告数の大半をAH1pdmが占めており、現在国内で発生しているインフルエンザの殆どは新型インフルエンザによるものであると推定される(図6および感染症情報センターホームページ:http://idsc.nih.go.jp/iasr/prompt/graph/sinin1.gif 参照)。
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図1. インフルエンザの年別・週別発生状況(1999〜2009年第42週) |
図2. インフルエンザの都道府県別定点当たり報告数(2009年第42週) |
図3. インフルエンザの都道府県別報告数の推移(2009年第40〜42週) |
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図4. インフルエンザ累積報告数の年齢群別割合(2009年第28週〜42週) |
図5. インフルエンザ報告数の年齢群別割合の推移(2009年第28〜42週) |
図6. インフルエンザウイルス検出割合報告(2009年第28〜42週) |
第42週に入り、北海道では既に2009年の冬季の流行のピークを大きく上回っており、首都圏、愛知県、大阪府、兵庫県、福岡県等の大都市圏や秋田県、沖縄県においても本格的な流行となっている。年齢群別でみると、流行の中心である5〜19歳の年齢層の報告割合は高いままであるが、特に入院患者数の割合が最も多い5〜9歳および比較的入院患者数が多い4歳以下(厚生労働省ホームページ:http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/rireki/091016-02.html 参照)の患者報告数の割合が増加してきていることは、今後更に小児科での入院患者数が増加してくる可能性が高いことを示唆しており、要注意である。
これまでのインフルエンザ・パンデミックの例をみても、新型インフルエンザの流行は、国民の多くが感染し免疫を保有するに至るまでは繰り返されるものと考えられる。また、現時点においては、いまだ殆どの国民が感受性者であることから、たとえ秋季の流行であっても、その規模は従来の冬季における季節性インフルエンザの流行よりも大きくなる可能性があることを考慮しておくべきである。従って、本格的な流行となった場合に、現在の医療体制を維持し、国民に対して医療サービスを提供し続けることが大きな課題であり、また、流行規模の増大に伴って、心疾患、呼吸器疾患、腎疾患、糖尿病等の慢性疾患患者、妊婦、乳幼児、高齢者等のいわゆるインフルエンザの罹患による重症化が予想される者に対する注意と対策に関する準備も急務であると思われる。また、特に発症後急速な経過をとるといわれているインフルエンザウイルス性の肺炎や脳症の合併は要注意であり、これまでの重症例に対する迅速で詳細な解析と速やかな情報の還元は重要と思われる。新型インフルエンザを含めたインフルエンザの発生動向には今後とも警戒が必要である。
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