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発生動向総覧
〈第43週コメント〉 10月28日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 291例 |
3類感染症: |
細菌性赤痢6例
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感染地域:千葉県1例、佐賀県1例、ネパール2例、ベトナム1例、ウズベキスタン1例
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腸管出血性大腸菌感染症72例(有症者45例、うちHUS 3例) |
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感染地域:国内72例
国内の多い感染地域:栃木県7例、長崎県7例、福岡県6例、千葉県4例、東京都4例、岐阜県3例、愛知県3例、鹿児島県3例、宮城県2例、埼玉県2例、神奈川県2例、大阪府2例、兵庫県2例、岡山県2例、愛媛県2例
年齢群:0歳(3例)、1歳(4例)、2歳(2例)、3歳(3例)、4歳(3例)、5歳(3例)、6歳(1例)、7歳(2例)、8歳(1例)、9歳(1例)、10代(9例)、20代(8例)、30代(10例)、40代(5例)、50代(6例)、60代(4例)、70代(4例)、80代(3例) 血清型・毒素型:O157 VT1・VT2(32例)、O26 VT1(12例)、O157 VT2(10例)、O157 VT不明(7例)、O121 VT2(3例)、O55 VT1(1例)、O91 VT1(1例)、O103 VT1(1例)、O157 VT1(1例)、その他・不明(4例)
累積報告数:3,283例(有症者2,209例、うちHUS 70例.死亡3例)
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腸チフス1例(感染地域:インド)
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4類感染症: |
オウム病1例(感染地域:宮城県_感染源:不明)
つつが虫病5例(感染地域:福島県4例、大分県1例)
デング熱1例(感染地域:ベトナム)
日本紅斑熱6例(感染地域:広島県2例、鹿児島県2例、千葉県1例、熊本県1例)
マラリア1例(熱帯熱_感染地域:ウガンダ)
レジオネラ症11例(肺炎型11例)
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感染地域:埼玉県2例、兵庫県2例(うち1例温泉)、千葉県1例、富山県1例、岐阜県1例(温泉)、大阪府1例、国内(都道府県不明)1例、イタリア1例、国外(渡航先不明)1例
年齢群:40代(1例)、50代(1例)、60代(3例)、70代(5例)、80代(1例)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢2例(腸管アメーバ症2例) |
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感染地域:国内(都道府県不明)2例
感染経路:不明2例
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ウイルス性肝炎3例
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B型1例_感染経路:性的接触(異性間)
C型1例_感染経路:不明
サイトメガロウイルス1例_感染経路:不明
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急性脳炎12例
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インフルエンザウイルスAH1pdm 10例_年齢群:1歳(1例)、6歳(2例)、7歳(2例)、8歳(2例)、9歳(1例)、10代(2例)
病原体不明2例_年齢群:1歳(1例)、7歳(1例.死亡)
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クロイツフェルト・ヤコブ病3例(孤発性プリオン病古典型3例)
後天性免疫不全症候群8例(AIDS 1例、無症候6例、その他1例)
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感染地域:国内7例、米国1例
感染経路:性的接触7例(異性間4例、同性間3例)、不明1例
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ジアルジア症1例〔感染地域:国外(国不明)〕
梅毒4例(早期顕症I期1例、早期顕症II期1例、無症候2例)
破傷風1例(年齢群:60代)
バンコマイシン耐性腸球菌感染症2例
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遺伝子型:不明2例_菌検出検体:血液1例、尿1例
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風しん1例(検査診断例)
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感染地域:神奈川県
年齢群:35〜39歳
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麻しん4例〔麻しん(検査診断例3例)、修飾麻しん(検査診断例1例)〕
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感染地域:国内4例
国内の感染地域:千葉県2例、広島県1例、国内(都道府県不明)1例
年齢群:1歳(2例)、15〜19歳(1例)、60代(1例)
累積報告数:680例〔麻しん(検査診断例220例、臨床診断例283例)、修飾麻しん(検査診断例177例)〕
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(補)他に2009年第42週までに診断されたものの報告遅れとして、デング熱2例(感染地域:インド2例)、日本紅斑熱4例(感染地域:広島県4例)、急性脳炎14例〔インフルエンザウイルスAH1pdm 10例(4歳1例、5歳1例、6歳2例、7歳3例、9歳2例、10代1例)、インフルエンザウイルスA型1例(30代)、インフルエンザウイルス型不明1例(7歳)、病原体不明2例(7歳1例、60代1例)〕、後天性免疫不全症候群1例〔病型:AIDS.感染地域:インドネシア.感染経路:性的接触(異性間).死亡〕、バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例(遺伝子型:VanB_菌検出検体:便)、風しん1例〔検査診断例.感染地域:国内(都道府県不明).年齢群:30〜34歳〕などの報告があった。
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◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は第40週以降増加が続いており、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い。都道府県別では北海道(61.43)、愛知県(39.42)、福岡県(37.35)、兵庫県(33.51)、秋田県(32.15)、三重県(29.97)、神奈川県(29.36)、滋賀県(29.13)、岩手県(29.11)、埼玉県(28.23)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症の報告数は563例と第40週以降増加が続いている。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の約76%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では青森県(0.40)、福岡県(0.28)、富山県(0.24)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では山口県(2.44)、佐賀県(2.30)、山形県(1.87)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では熊本県(6.5)、富山県(5.3)、大分県(5.3)が多い。水痘の定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では岩手県(1.58)、大分県(1.36)、島根県(1.35)が多い。手足口病の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では沖縄県(4.97)、山形県(4.00)、岩手県(1.00)、島根県(1.00)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は第40週以降増加が続いている。都道府県別では青森県(0.38)、長野県(0.29)、山形県(0.17)、福島県(0.17)が多い。百日咳の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では福井県(0.09)、沖縄県(0.09)、千葉県(0.08)、広島県(0.08)、宮崎県(0.08)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では高知県(1.37)、福井県(1.27)、山形県(0.67)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では福井県(4.09)、山形県(3.13)、沖縄県(2.35)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では宮城県(1.92)、沖縄県(1.71)、青森県(1.50)が多い。
注目すべき感染症
◆ インフルエンザ
インフルエンザ(Influenza)は、インフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症で、毎年世界中で流行がみられている。2009年4月にその存在が明らかとなった新型インフルエンザA/H1N1の臨床像は、従来の季節性インフルエンザとほぼ同様であり、罹患者の大半は合併症なく治癒するといわれているが、肺炎やインフルエンザ脳症を併発して重症化する場合がある。特に肺炎は、急速に進行する重症のウイルス性肺炎を起こす場合が多く、喘息や慢性閉塞性肺疾患等の呼吸器疾患の存在が急激な悪化と関連しているといわれている(Clinical featuresof severe cases of pandemic influenza: Pandemic(H1N1)2009 briefing note 13, Global Alert and Response, WHO, Oct. 16, 2009;http://www.who.int/csr/disease/swineflu/notes/h1n1_clinical_features_20091016/en/index.html)。
感染症発生動向調査では、全国約5,000カ所(小児科定点約3,000、内科定点約2,000)のインフルエンザ定点からの報告に基づいてインフルエンザの発生動向を分析している。本サーベイランスは原則的に臨床診断によるものであり、最近の国内のインフルエンザウイルス検出状況を考慮すれば、現在報告されているインフルエンザ患者発生の殆どは新型インフルエンザによるものであると推定される。
2009年第43週のインフルエンザの定点当たり報告数は24.62(報告数118,570)となり、前週の値(定点当たり報告数17.65)よりも大きく増加した(図1)。定点医療機関からの報告数をもとに、定点以外を含む全国の医療機関を1週間に受診した患者数を推計すると約114万人であり、第28週以降これまでの累積の推計患者数は約431万人(95%信頼区間:418.12万人〜443.88万人)となった(図2)。都道府県別では北海道(61.43)、愛知県(39.42)、福岡県(37.35)、兵庫県(33.51)、秋田県(32.15)、三重県(29.97)、神奈川県(29.36)、滋賀県(29.13)、岩手県(29.11)、埼玉県(28.23)、大阪府(27.83)、東京都(25.24)の順となっており、全ての都道府県で定点当たり報告数の増加が認められた。また、定点当たり報告数は、42都道府県で10.00を、うち21都道府県で20.00を上回っており、全国規模で本格的な流行となってきている(図3)。
患者報告数が継続的に増加し始めた第28週以降第43週までの定点当たり累積報告数は86.56(累積報告数412,559)であり、年齢群別では10〜14歳143,984例(34.9%)、5〜9歳124,261例
(30.1%)、15〜19歳49,809例(12.1%)、0〜4歳42,201例(10.2%)、20〜29歳20,141例(4.9%)の順となっている(図4)。夏季休暇終了後に5〜19歳の割合が増加して流行の中心となっているが、特に第40週以降では5〜9歳の報告割合の増加が目立ってきている(図5)。
日本で新型インフルエンザウイルスAH1pdmが検出された2009年第19週以降第43週までに12,238件のインフルエンザウイルスの検出が報告されており、そのうちAH1pdmは11,204件(91.6%)を占めている。また、特に患者報告数が増加し始めた第28週以降では、第43週までに10,015件のインフルエンザウイルスの検出が報告され、AH1亜型(Aソ連型)18件(0.2%)、AH3亜型(A香港型)119件(1.2%)、B型4件(0.04%)、AH1pdm(新型インフルエンザウイルス)9,874件(98.6%)とインフルエンザウイルスの検出報告数の大半をAH1pdmが占めており、現在国内で発生しているインフルエンザの殆どは新型インフルエンザによるものであると推定される(図6および感染症情報センターホームページ:http://idsc.nih.go.jp/iasr/prompt/graph/sinin1.gif 参照)。
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図1. インフルエンザの年別・週別発生状況(1999〜2009年第43週) |
図2. インフルエンザ推計受診者数の推移(2009年第28〜43週) |
図3. インフルエンザの都道府県別定点当たり報告数の推移(2009年第41〜43週) |
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図4. インフルエンザ累積報告数の年齢群別割合(2009年第28〜43週) |
図5. インフルエンザ報告数の年齢群別割合の推移(2009年第28〜43週) |
図6. インフルエンザウイルス検出報告割合(2009年第28〜43週) |
新型インフルエンザによると考えられるインフルエンザの流行は、これまで大都市圏に偏在する傾向が強かったが、第43週ではその他の地域にも拡大し、全国規模で本格化してきている。年齢群別でみると、流行の中心である5〜19歳の年齢層の報告割合は高いままであるが、特に入院患者数の割合が最も多い5〜9歳(厚生労働省ホームページ:http://www.mhlw.go.jp/za/0730/d20/d20-03.html 参照)の患者報告数の割合の増加が続いていることは、今後更に小児科での入院患者数が増加してくる可能性が高いことを示唆しており、要注意である。
これまでのインフルエンザ・パンデミックの例をみても、新型インフルエンザの流行は、国民の多くが感染し免疫を保有するに至るまでは繰り返されるものと考えられる。また、現時点においては、いまだ殆どの国民が感受性者であることから、たとえ秋季の流行であっても、その規模は従来の冬季における季節性インフルエンザの流行よりも大きくなる可能性があることを考慮しておくべきである。従って、本格的な流行となった場合に、現在の医療体制を維持し、国民に対して医療サービスを提供し続けることが大きな課題であるが、特に今後は小児科での外来受診者数と入院患者数の増加が問題となってくるものと予想される。加えて、発症後急速な経過をとるといわれているインフルエンザウイルス性の肺炎や脳症の合併は要注意であり、これまでの重症例に対する迅速で詳細な解析と速やかな情報の還元は重要と思われる。新型インフルエンザを含めたインフルエンザの発生動向には今後とも警戒が必要である。
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