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発生動向総覧
〈第44週コメント〉 11月4日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 187例 |
3類感染症: |
腸管出血性大腸菌感染症72例(有症者34例、うちHUS 2例) |
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感染地域:国内70例、中国1例、イタリア/フランス1例
国内の多い感染地域:佐賀県26例*、福岡県9例、奈良県5例、東京都4例、岐阜県3例、鹿児島県3例、山形県2例、群馬県2例、愛知県2例、兵庫県2例
*うち24例は保育施設に関連した集団発生
年齢群:1歳(1例)、3歳(2例)、5歳(1例)、6歳(3例)、7歳(4例)、8歳(2例)、9歳(3例)、10代(7例)、20代(14例)、30代(8例)、40代(5例)、50代(6例)、60代(8例)、70代(5例)、80代(3例)
血清型・毒素型:O26 VT1( 27例)、O157 VT1・VT2( 21例)、O157 VT2( 8例)、O157 VT不明(4例)、O91 VT1(4例)、O121 VT2(2例)、O28ac VT2(1例)、O103 VT不明(1例)、その他・不明(4例)
累積報告数:3,461例(有症者2,306例、うちHUS 73例.死亡3例)
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腸チフス1例(感染地域:インド)
パラチフス1例(感染地域:インド)
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4類感染症: |
E型肝炎1例(感染地域:北海道_感染源:不明) A型肝炎3例(感染地域:東京都1例、パキスタン1例、ウガンダ1例)
つつが虫病10例(感染地域:福島県4例、神奈川県3例、群馬県2例、山形県1例)
デング熱3例(感染地域:フィリピン1例、インドネシア1例、インド1例)
日本紅斑熱2例(感染地域:愛媛県1例、熊本県1例)
ライム病1例(感染地域:北海道)
レジオネラ症8例(肺炎型8例)
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感染地域:青森県1例(温泉)、千葉県1例(温泉)、東京都1例、長野県1例(温泉)、滋賀県1例(温泉)、兵庫県1例、国内(都道府県不明)2例
年齢群:30代(1例)、60代(3例)、70代(2例)、80代(2例)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢8例(腸管アメーバ症7例、腸管外アメーバ症1例) |
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感染地域:青森県1例、大阪府1例、兵庫県1例、国内(都道府県不明)3例、フィリピン1例、国外(国不明)1例
感染経路:性的接触1例(異性間)、経口感染1例、不明6例
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急性脳炎10例
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インフルエンザウイルスAH1pdm 10例_年齢群:1歳(1例)、3歳(1例)、5歳(1例)、6歳(1例)、9歳(2例)、10代(4例)
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クリプトスポリジウム症1例(感染地域:大阪府)
後天性免疫不全症候群10例(AIDS 3例、無症候7例)
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感染地域:国内6例、国内・国外不明4例
感染経路:性的接触6例(同性間5例、異性/同性間1例)、その他・不明4例
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ジアルジア症1例〔感染地域:国内(都道府県不明)〕
梅毒5例(早期顕症I期1例、早期顕症II期3例、無症候1例)
バンコマイシン耐性腸球菌感染症2例
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遺伝子型:VanB 1例_菌検出検体:尿
遺伝子型:VanC 1例_菌検出検体:胆汁
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麻しん2例〔麻しん(検査診断例1例)、修飾麻しん(検査診断例1例)〕
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感染地域:国内2例
国内の感染地域:福島県1例、埼玉県1例
年齢群:15〜19歳(1例)、50代(1例)
累積報告数:683例〔麻しん(検査診断例221例、臨床診断例284例)、修飾麻しん(検査診断例178例)〕
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(補)他に2009年第43週までに診断されたものの報告遅れとして、コレラ1例(感染地域:インドネシア)、E型肝炎3例〔感染地域(感染源):北海道3例(ブタのレバ刺し1例、不明2例)〕、エキノコックス症1例(多包条虫_感染地域:北海道)、デング熱6例(感染地域:ベトナム3例、インド2例、インドネシア1例)、日本紅斑熱3例(感染地域:三重県3例)、レジオネラ症1例〔感染地域:高知県(温泉)〕、急性脳炎16例〔インフルエンザウイルスAH1pdm 13例(3歳2例、5歳1例、7歳1例、8歳2例、9歳2例、10代4例、20代1例)、インフルエンザウイルスA型3例(9歳1例、10代2例)〕、クロイツフェルト・ヤコブ病1例(孤発性プリオン病古典型.死亡)、劇症型溶血性レンサ球菌感染症2例〔0歳(1例)、70代(1例.死亡)〕、バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例(遺伝子型:VanB_菌検出検体:便、カテーテル)などの報告があった。
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◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は第40週以降増加が続いており、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い。都道府県別では愛知県(54.44)、秋田県(53.55)、北海道(49.08)、三重県(46.14)、福岡県(45.64)、宮城県(44.82)、滋賀県(44.42)、兵庫県(42.43)、埼玉県(39.39)、新潟県(39.25)、神奈川県(38.39)、青森県(37.46)、大分県(36.33)、香川県(34.79)、大阪府(34.77)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症の報告数は612例と第40週以降増加が続いている。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の約73%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では山形県(0.40)、福岡県(0.27)、佐賀県(0.22)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では山口県(2.68)、佐賀県(2.52)、山形県(2.10)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では熊本県(8.9)、大分県(5.1)、石川県(4.9)が多い。水痘の定点当たり報告数は3週連続で増加した。都道府県別では大分県(1.47)、福島県(1.35)、山形県(1.27)が多い。手足口病の定点当たり報告数は3週連続で減少した。都道府県別では沖縄県(4.06)、山形県(3.97)、福井県(1.09)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では青森県(0.45)、山形県(0.17)、神奈川県(0.15)、長野県(0.15)が多い。百日咳の定点当たり報告数は横ばいであった。都道府県別では滋賀県(0.10)、福岡県(0.09)、広島県(0.07)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は3週連続で減少した。都道府県別では高知県(1.33)、福井県(0.86)、香川県(0.61)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では山形県(2.00)、大分県(1.83)、沖縄県(1.76)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では宮城県(1.17)、沖縄県(1.14)、埼玉県(1.00)、愛媛県(1.00)が多い。
注目すべき感染症
◆ インフルエンザ
インフルエンザ(Influenza)は、インフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症で、毎年世界中で流行がみられている。2009年4月にその存在が明らかとなった新型インフルエンザA/H1N1の臨床像は、従来の季節性インフルエンザとほぼ同様であり、罹患者の大半は合併症なく治癒するといわれているが、肺炎やインフルエンザ脳症を併発して重症化する場合がある。特に肺炎は、急速に進行する重症のウイルス性肺炎を起こす場合が多く、喘息や慢性閉塞性肺疾患等の呼吸器疾患の存在が急激な悪化と関連しているといわれている(Clinical features of severe cases of pandemic influenza: Pandemic(H1N1)2009 briefing note 13, Global Alert and Response, WHO, Oct. 16, 2009;http://www.who.int/csr/disease/swineflu/notes/h1n1_clinical_features_20091016/en/index.html)。
感染症発生動向調査では、全国約5,000カ所(小児科定点約3,000、内科定点約2,000)のインフルエンザ定点からの報告に基づいてインフルエンザの発生動向を分析している。本サーベイランスは原則的に臨床診断によるものであり、最近の国内のインフルエンザウイルス検出状況を考慮すれば、現在報告されているインフルエンザ患者発生の殆どは新型インフルエンザによるものであると推定される。
2009年第44週のインフルエンザの定点当たり報告数は33.28(報告数159,651)となり、前週の値(定点当たり報告数24.62)よりも大きく増加した(図1)。定点医療機関からの報告数をもとに、定点以外を含む全国の医療機関を1週間に受診した患者数を推計すると約154万人であり、第28週以降これまでの累積の推計患者数は約585万人(95%信頼区間:570.79万人〜599.21万人)となった(図2)。第44週は、北海道を除くすべての都府県で定点当たり報告数の増加が認められ、都道府県別では愛知県(54.44)、秋田県(53.55)、北海道(49.08)、三重県(46.14)、福岡県(45.64)、宮城県(44.82)、滋賀県(44.42)、兵庫県(42.43)、埼玉県(39.39)、新潟県(39.25)、神奈川県(38.39)、青森県(37.46)、大分県(36.33)、香川県(34.79)、大阪府(34.77)の順となっている。定点当たり報告数は、全ての都道府県で10.00を上回り、21道府県で30.00以上となっており、全国規模での流行は前週よりもさらに本格化している(図3)。
患者報告数が継続的に増加し始めた第28週以降第44週までの定点当たり累積報告数は120.13(累積報告数572,725)であり、年齢群別では10〜14歳197,390例(34.5%)、5〜9歳183,030例(32.0%)、15〜19歳63,880例(11.2%)、0〜4歳61,302例(10.7%)、20〜29歳24,782例(4.3%)の順となっている(図4)。夏季休暇終了後に5〜19歳の割合が増加して流行の中心となっていたが、第40週以降では5〜9歳及び0〜4歳の報告割合が増加してきている(図5)。
日本で新型インフルエンザウイルスAH1pdmが検出された2009年第19週以降第44週までに13,531件のインフルエンザウイルスの検出が報告されており、そのうちAH1pdmは12,496件(92.4%)を占めている。また、特に患者報告数が増加し始めた第28週以降では、第44週までに11,293件のインフルエンザウイルスの検出が報告され、AH1亜型(Aソ連型)18件(0.2%)、AH3亜型(A香港型)120件(1.1%)、B型4件(0.04%)、AH1pdm(新型インフルエンザウイルス)11,151件(98.7%)とインフルエンザウイルスの検出報告数の大半をAH1pdmが占めており、現在国内で発生しているインフルエンザの殆どは新型インフルエンザによるものであると推定される(図6および感染症情報センターホームページ:http://idsc.nih.go.jp/iasr/prompt/graph/sinin1.gif 参照)。
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図1. インフルエンザの年別・週別発生状況(1999〜2009年第44週) |
図2. インフルエンザ累積推計受診者数の推移(2009年第28〜44週) |
図3. インフルエンザの都道府県別定点当たり報告数の推移(2009年第42〜44週) |
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図4. インフルエンザ累積報告数の年齢群別割合(2009年第28〜44週) |
図5. インフルエンザ報告数の年齢群別割合の推移(2009年第28〜44週) |
図6. インフルエンザウイルス検出報告割合(2009年第28〜44週) |
殆どが新型インフルエンザによると考えられるインフルエンザの流行は全国規模でさらに本格化してきている。年齢群別では、入院患者数の割合が大きい0〜9歳(厚生労働省ホームページ:http://www.mhlw.go.jp/za/0730/d20/d20-03.html 参照)の患者報告数の割合が増加し続けており、要注意である。
これまでのパンデミックの例をみても、新型インフルエンザの流行は、国民の多くが感染し免疫を保有するに至るまでは繰り返されるものと考えられる。秋季の流行にもかかわらず、流行の規模はこれまでの冬季における季節性インフルエンザに匹敵する流行となっており、この流行が今後も更に継続、もしくは拡大する可能性があることを考慮しておくべきである。本格的な流行となっている現在、医療体制を維持し、国民に対して医療サービスを提供し続けることが大きな課題である。特に小児科での外来受診者数と入院患者数の増加が、今後さらに大きな問題となってくるものと予想される。加えて、発症後急速な経過をとるといわれているインフルエンザウイルス性の肺炎や脳症の合併は要注意であり、重症例に関する迅速で詳細な解析と速やかな情報の還元は重要と思われる。新型インフルエンザを含めたインフルエンザの発生動向には今後とも警戒が必要である。
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