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発生動向総覧
〈第45週コメント〉 11月11日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 225例 |
3類感染症: |
腸管出血性大腸菌感染症37例(有症者28例、うちHUS なし) |
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感染地域:国内37例
国内の感染地域:佐賀県9例、長崎県4例、東京都3例、福岡県3例、福井県2例、愛知県2例、兵庫県2例、熊本県2例、岩手県1例、宮城県1例、千葉県1例、三重県1例、大阪府1例、和歌山県1例、愛媛県1例、不明3例
年齢群:1歳(8例)、2歳(4例)、5歳(1例)、6歳(1例)、9歳(1例)、10代(4例)、20代(3例)、30代(4例)、40代(3例)、50代(1例)、60代(6例)、70代(1例)
血清型・毒素型:O26 VT1(14例)、O157 VT1・VT2(13例)、O157 VT2(4例)、O157 VT不明(2例)、O157 VT1(1例)、O26 VT1・VT2(1例)、O121 VT2(1例)、O146 VT1・VT2(1例)
累積報告数:3,524例(有症者2,353例、うちHUS 74例.死亡3例)
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腸チフス1例(感染地域:インドネシア) パラチフス1例(感染地域:中国)
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4類感染症: |
A型肝炎1例(感染地域:アルゼンチン)
つつが虫病15例
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感染地域:福島県6例、神奈川県2例、富山県2例、青森県1例、茨城県1例、愛知県1例、宮崎県1例、宮城県/アフガニスタン1例
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デング熱1例(感染地域:マレーシア) 日本紅斑熱5例(感染地域:愛媛県3例、兵庫県1例、広島県1例)
レジオネラ症5例(肺炎型5例)
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感染地域:長野県2例(2例とも温泉)、兵庫県1例、福岡県1例、国内(都道府県不明)1例
年齢群:40代(1例)、60代(1例)、70代(2例)、90代(1例)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢7例(腸管アメーバ症6例、腸管外アメーバ症1例) |
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感染地域:東京都2例、宮城県1例、神奈川県1例、愛知県1例、大阪府1例、国内(都道府県不明)1例
感染経路:性的接触4例(異性間2例、同性間1例、異性・同性間不明1例)、経口感染1例、不明2例
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ウイルス性肝炎2例
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B型2例_感染経路:性的接触1例(異性間)、不明1例
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急性脳炎10例
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インフルエンザウイルスAH1pdm 8例_年齢群:5歳(2例)、6歳(1例)、8歳(2例)、9歳(1例)、10代(1例)、60代(1例)
インフルエンザウイルスA型2例_年齢群:3歳(1例)、7歳(1例)
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クロイツフェルト・ヤコブ病1例(孤発性プリオン病古典型)
劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(年齢群:60代)
後天性免疫不全症候群8例(AIDS 5例、無症候3例)
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感染地域:国内8例
感染経路:性的接触8例(同性間7例、異性/同性間1例)
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梅毒3例(早期顕症I期1例、早期顕症II期2例)
破傷風1例(年齢群:50代)
バンコマイシン耐性腸球菌感染症2例
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遺伝子型:VanC 2例_菌検出検体:血液1例、腹水1例
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麻しん5例〔麻しん(検査診断例1例、臨床診断例3例)、修飾麻しん(検査診断例1例)〕
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感染地域:国内5例
国内の感染地域:神奈川県2例、千葉県1例、東京都1例、国内(都道府県不明)1例
年齢群:1歳(1例)、2歳(1例)、5〜9歳(1例)、20〜24歳(1例)、30〜34歳(1例)
累積報告数:689例〔麻しん(検査診断例224例、臨床診断例286例)、修飾麻しん(検査診断例179例)
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(補)他に2009年第44週までに診断されたものの報告遅れとして、細菌性赤痢2例(感染地域:愛知県1例、国内・国外不明1例)、E型肝炎1例〔感染地域(感染源):北海道(不明)〕、デング熱2例〔感染地域:インド1例、国外(国不明)1例〕、日本紅斑熱12例(感染地域:三重県12例)、急性脳炎13例〔インフルエンザウイルスAH1pdm 8例(1歳1例、4歳1例、7歳2例、8歳1例、10代2例、20代1例)、インフルエンザウイルスA型2例(7歳1例、9歳1例)、病原体不明3例(2歳1例、4歳1例、70代1例)〕、クロイツフェルト・ヤコブ病2例(孤発性プリオン病古典型2例.死亡2例)、劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(10代)、バンコマイシン耐性腸球菌感染症3例(遺伝子型:VanB 3例_菌検出検体:尿2例、血液/腹水1例)などの報告があった。
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◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い。都道府県別では愛知県(53.19)、秋田県(50.64)、滋賀県(50.06)、福岡県(48.73)、宮城県(46.24)、大分県(45.78)、香川県(42.11)、新潟県(40.52)、石川県(40.10)、青森県(38.92)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症の報告数は653例と第40週以降増加が続いている。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の約75%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では佐賀県(0.48)、秋田県(0.34)、富山県(0.28)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では山口県(2.94)、佐賀県(2.70)、山形県(2.63)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では熊本県(9.2)、大分県(5.6)、富山県(5.0)が多い。水痘の定点当たり報告数は第42週以降増加が続いている。都道府県別では大分県(2.69)、岩手県(2.55)、宮崎県(2.03)が多い。手足口病の定点当たり報告数は第42週以降減少が続いている。都道府県別では山形県(2.87)、沖縄県(1.71)、岩手県(1.18)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では青森県(0.33)、長野県(0.29)、福島県(0.19)が多い。百日咳の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では新潟県(0.10)、栃木県(0.08)、広島県(0.08)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は第42週以降減少が続いている。都道府県別では高知県(0.93)、香川県(0.57)、福島県(0.50)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では山形県(3.27)、福井県(2.77)、沖縄県(2.71)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では宮城県(1.58)、沖縄県(1.43)、群馬県(1.13)が多い。
注目すべき感染症
◆ インフルエンザ
インフルエンザ(Influenza)は、インフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症で、
毎年世界中で流行がみられている。2009年4月にその存在が明らかとなった新型インフルエンザA/H1N1の臨床像は、従来の季節性インフルエンザとほぼ同様であり、罹患者の大半は合併症なく治癒するといわれているが、肺炎やインフルエンザ脳症を併発して重症化する場合がある。特に肺炎は、急速に進行する重症のウイルス性肺炎を起こす場合が多く、喘息や慢性閉塞性肺疾患等の呼吸器疾患の存在が急激な悪化と関連しているといわれている(Clinical features of severe cases of pandemic influenza: Pandemic(H1N1)2009 briefing note 13, Global Alert and Response, WHO, Oct. 16, 2009;http://www.who.int/csr/disease/swineflu/notes/h1n1_clinical_features_20091016/en/index.html)。現在新型インフルエンザは、北米、ヨーロッパ、中央及び東アジア等の北半球の国々において大きな流行となってきている〔Pandemic(H1N1)2009-update74:http://www.who.int/csr/don/2009_11_13/en/index.html〕。
感染症発生動向調査では、全国約5,000カ所(小児科定点約3,000、内科定点約2,000)のインフルエンザ定点からの報告に基づいてインフルエンザの発生動向を分析している。本サーベイランスは原則的に臨床診断によるものであり、最近の国内のインフルエンザウイルス検出状況を考慮すれば、現在報告されているインフルエンザ患者発生の殆どは新型インフルエンザによるものであると推定される。
2009年第45週のインフルエンザの定点当たり報告数は32.76(報告数157,626)となり、前週の値(定点当たり報告数33.28)よりもやや減少した(図1)。定点医療機関からの報告数をもとに、定点以外を含む全国の医療機関を1週間に受診した患者数を推計すると約153万人となり、第28週以降これまでの累積の推計患者数は約738万人(95%信頼区間:722.57万人〜753.43万人)となった(図2)。都道府県別では愛知県(53.19)、秋田県(50.64)、滋賀県(50.06)、福岡県(48.73)、宮城県(46.24)、大分県(45.78)、香川県(42.11)、新潟県(40.52)、石川県(40.10)、青森県(38.92)の順となっている。定点当たり報告数は、前週と同様全ての都道府県で10.00を上回り、前週よりも多い25道県で30.00を上回ったが、首都圏、愛知県、大阪府、兵庫県等の大都市圏を中心とした14の都道府県では報告数の減少がみられている(図3)。ただし、第45週は祝日によって診療日数が前週よりも少ない医療機関が多く、報告数もその影響を受けている可能性があるため、今後の推移を慎重に観察していく必要がある。
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図1. インフルエンザの年別・週別発生状況(1999〜2009年第45週) |
図2. インフルエンザ累積推計受診者数の推移(2009年第28〜45週) |
図3. インフルエンザの都道府県別定点当たり報告数の推移(2009年第43〜45週) |
患者報告数が継続的に増加し始めた第28週以降第45週までの累積報告数は731,659(定点当たり報告数153.43)であり、性別では男性388,542、女性343,117、年齢群別では10〜14歳243,973例(33.3%)、5〜9歳241,423例(33.0%)、0〜4歳82,730例(11.3%)、15〜19歳79,104例(10.8%)、20〜29歳30,619例(4.2%)の順となっている(図4)。また、男女比は男性53.1%、女性46.9%と男性の方がやや多くなっているが、年齢群別でみると19歳以下では男性が、20歳以上では女性の報告数の方が多い(図5)。夏季休暇終了以降に5〜19歳の割合が増加して流行の中心となっていたが、第40週以降では9歳以下の報告割合が増加傾向を示している(図6)。
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図4. インフルエンザ累積報告数の年齢群別割合(2009年第28〜45週) |
図5. インフルエンザの性別・年齢群別累積報告数(2009年第28〜45週) |
図6. インフルエンザ報告数の年齢群別割合の推移(2009年第28〜45週) |
日本で新型インフルエンザウイルスAH1pdmが検出された2009年第19週以降第45週までに14,762件のインフルエンザウイルスの検出が報告されており、そのうちAH1pdmは13,719件(92.9%)を占めている。また、特に患者報告数が増加し始めた第28週以降では、第45週までに12,522件のインフルエンザウイルスの検出が報告され、AH1亜型(Aソ連型)18件(0.14%)、AH3亜型(A香港型)127件(1.01%)、B型4件(0.03%)、AH1pdm(新型インフルエンザウイルス)12,373件(98.81%)とインフルエンザウイルスの検出報告数の大半をAH1pdmが占めており、現在国内で発生しているインフルエンザの殆どは新型インフルエンザによるものであると推定される(図7および感染症情報センターホームページ:http://idsc.nih.go.jp/iasr/prompt/graph/sinin1.gif 参照)。
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図7. インフルエンザウイルス検出報告割合(2009年第28〜45週) |
第45週の定点医療機関からの患者報告数は前週よりもやや減少したが、依然として全国規模での本格的な流行は継続しており、また祝日による診療日数の減少等の影響を考慮するならば、まだ患者発生数が減少したとは言い難いものと思われる。加えて、年齢群別では、入院患者数の割合が大きい0〜9歳の若年齢層(厚生労働省ホームページ:http://www.mhlw.go.jp/za/0730/d20/d20-03.html 参照)の患者報告数の割合が増大傾向を示しており、引き続き注意して観察していく必要がある。
これまでのパンデミックの例をみても、新型インフルエンザの流行は、国民の多くが感染し免疫を保有するに至るまでは繰り返されるものと考えられる。秋季の流行にもかかわらず、流行の規模はこれまでの冬季における季節性インフルエンザに匹敵する流行となっており、この流行が今後も更に継続、もしくは拡大する可能性があることを考慮しておくべきである。また、一旦は今回の秋季の流行が収束傾向を示したとしても、冬季には季節性インフルエンザの流行も交えた本格的な流行が再び到来することも考慮しておく必要がある。インフルエンザの流行の規模が拡大し、外来受診患者数や入院を必要とする患者数が急増した場合、医療体制を維持し、国民に対して医療サービスを提供し続けることが大きな課題である。特に小児科での外来受診者数と入院患者数の増加が、さらに大きな問題となってくるものと予想される。加えて、発症後急速な経過をとるといわれているインフルエンザウイルス性の肺炎や脳症の合併は要注意であり、重症例に関する迅速で詳細な解析と速やかな情報の還元は重要と思われる。新型インフルエンザを含めたインフルエンザの発生動向には今後とも警戒が必要である。
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