発生動向総覧
〈第46週コメント〉 11月18日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 246例 |
3類感染症: |
細菌性赤痢6例
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感染地域:山梨県1例、国内(都道府県不明)1例、ベトナム1例、ネパール1例、タイ/ベトナム1例、インド/ネパール1例
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腸管出血性大腸菌感染症36例(有症者30例、うちHUS なし) |
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感染地域:国内36例
国内の感染地域:佐賀県7例、福岡県6例、大阪府3例、福島県2例、東京都2例、大分県2例、宮城県1例、埼玉県1例、静岡県1例、愛知県1例、奈良県1例、広島県1例、徳島県1例、長崎県1例、宮崎県1例、不明5例
年齢群:1歳(6例)、2歳(3例)、3歳(3例)、4歳(2例)、5歳(2例)、10代(5例)、20代(4例)、30代(2例)、40代(3例)、50代(1例)、60代(1例)、70代(4例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2(11例)、O26 VT1(10例)、O157 VT不明(5例)、O157 VT2(2例)、O26 VT1・VT2(2例)、O157 VT1(1例)、O103 VT1・VT2(1例)、O111 VT1・VT2(1例)、その他・不明(3例)
累積報告数:3,571例(有症者2,391例、うちHUS 74例.死亡3例)
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腸チフス1例〔感染地域:国内(都道府県不明)〕
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4類感染症: |
A型肝炎1例(感染地域:東京都)
つつが虫病32例
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感染地域:福島県11例、神奈川県5例、岐阜県4例、大分県3例、群馬県2例、千葉県2例、広島県2例、富山県1例、佐賀県1例、宮崎県1例
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日本紅斑熱2例(感染地域:和歌山県1例、徳島県1例)
レジオネラ症8例(肺炎型8例)
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感染地域:富山県2例、埼玉県1例、愛知県1例、三重県1例、兵庫県1例、広島県1例、国内(都道府県不明)1例
年齢群:20代(1例)、50代(2例)、60代(1例)、70代(2例)、80代(2例)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢7例(腸管アメーバ症6例、腸管外アメーバ症1例) |
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感染地域:神奈川県2例、宮城県1例、東京都1例、国内(都道府県不明)1例、中国1例、インドネシア1例
感染経路:性的接触2例(異性間1例、同性間1例)、経口感染1例、経口/性的接触(異性間)1例、不明3例
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ウイルス性肝炎1例(B型_感染経路:不明)
急性脳炎13例
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インフルエンザウイルスAH1pdm 9例_年齢群:3歳(2例)、6歳(2例)、7歳(2例)、8歳(2例)、9歳(1例)
インフルエンザウイルスA型3例_年齢群:6歳(1例)、8歳(1例)、60代(1例)
病原体不明1例_年齢群:7歳
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クロイツフェルト・ヤコブ病4例 |
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孤発性プリオン病古典型3例、遺伝性プリオン病家族性1例
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後天性免疫不全症候群12例(AIDS 5例、無症候6例、その他1例) |
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感染地域:国内10例、国内・国外不明2例
感染経路:性的接触12例(異性間4例、同性間8例)
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ジアルジア症1例(感染地域:宮城県) 梅毒9例(早期顕症I期4例、早期顕症II期3例、無症候2例)
破傷風1例(年齢群:70代)
バンコマイシン耐性腸球菌感染症2例(遺伝子型:VanC 2例_菌検出検体:血液2例)
麻しん4例〔麻しん(検査診断例1例、臨床診断例1例)、修飾麻しん(検査診断例2例)〕
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感染地域:国内4例
国内の感染地域:群馬県1例、千葉県1例、東京都1例、国内(都道府県不明)1例
年齢群:1歳(2例)、10〜14歳(1例)、50代(1例)
累積報告数:702例〔麻しん(検査診断例229例、臨床診断例291例)、修飾麻しん(検査診断例182例)
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(補)他に2009年第45週までに診断されたものの報告遅れとして、細菌性赤痢2例(感染地域:東京都1例、インドネシア1例)、E型肝炎1例〔感染地域(感染源):北海道(不明)〕、エキノコックス症1例(多包条虫_感染地域:北海道)、日本紅斑熱2例(感染地域:和歌山県2例)、急性脳炎6例〔インフルエンザウイルスAH1pdm 3例(3歳1例、7歳1例、10代1例)、インフルエンザウイルスA型2例(7歳1例、8歳1例)、病原体不明1例(0歳)〕、クリプトスポリジウム症1例(感染地域:ニカラグア)、劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(40代.死亡)、バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例(遺伝子型:VanC_菌検出検体:胆汁)などの報告があった。
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◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い。都道府県別では愛知県(58.70)、大分県(53.64)、石川県(49.77)、山口県(48.68)、新潟県(46.98)、福岡県(46.51)、秋田県(46.44)、滋賀県(46.33)、佐賀県(44.33)、香川県(41.49)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症の報告数は889例と第40週以降増加が続いている。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の約69%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は2週連続して増加した。都道府県別では石川県(0.38)、福岡県(0.25)、北海道(0.22)、広島県(0.22)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では山口県(2.58)、鳥取県(1.79)、山形県(1.73)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では熊本県(10.5)、大分県(7.3)、福井県(5.7)が多い。水痘の定点当たり報告数は第42週以降増加が続いている。都道府県別では富山県(2.07)、鹿児島県(1.83)、宮崎県(1.78)が多い。手足口病の定点当たり報告数は第42週以降減少が続いている。都道府県別では山形県(2.33)、沖縄県(1.68)、福井県(0.91)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は2週連続して増加した。都道府県別では青森県(0.38)、山形県(0.20)、神奈川県(0.17)が多い。百日咳の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では沖縄県(0.15)、栃木県(0.10)、福井県(0.09)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は第42週以降減少が続いている。都道府県別では福島県(0.46)、高知県(0.43)、山口県(0.32)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は2週連続して増加した。都道府県別では山形県(2.90)、福井県(2.64)、茨城県(1.92)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎のの定点当たり報告数は減少した。都道府県別では青森県(1.33)、群馬県(1.00)、岡山県(1.00)が多い。
〈10月コメント〉
◆性感染症について 2009年11月9日集計分 性感染症定点数:949
(産婦人科・産科・婦人科:454、泌尿器科:393、皮膚科88、性病科14)
●月別推移
2009年10月の月別定点当たり患者報告数は、性器クラミジア感染症が2.32(男1.07、女1.25)、性器ヘルペスウイルス感染症が0.70(男0.29、女0.41)、尖圭コンジローマが0.46(男0.25、女0.21)、淋菌感染症が0.82(男0.65、女0.17)であった。男性では性器クラミジア感染症、次いで淋菌感染症が多く、女性では性器クラミジア感染症、次いで性器ヘルペスウイルス感染症が多かった(図1)。
前月に比べると、男性では、性器クラミジア感染症で減少、性器ヘルペスウイルス感染症で増加、尖圭コンジローマで減少、淋菌感染症で減少であった。女性では、性器クラミジア感染症で減少、性器ヘルペスウイルス感染症で同値、尖圭コンジローマで増加、淋菌感染症で同値であった(29〜32ページ「グラフ総覧」参照)。
過去5年間の同時期と比較すると、男性では尖圭コンジローマ、淋菌感染症でやや少なかった。女性では4疾患すべてでやや少なかった(図2)。
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図1. 各性感染症が総報告数に占める割合(10月) |
●男女別・年齢階級別
年齢群別(0歳、1〜4歳、5〜69歳は5歳毎、および70歳以上)でみた定点当たり報告数のピークは、男性では、性器クラミジア感染症は25〜29歳、性器ヘルペスウイルス感染症は30〜34歳、尖圭コンジローマは25〜29歳、淋菌感染症は25〜29歳の年齢群であった。女性では、4疾患すべてで20〜24歳の年齢群であった(図3:PDF参照)。男女ともに4疾患すべてで15〜19歳の年齢群の報告があり、男性の淋菌感染症、女性の性器クラミジア感染症、性器ヘルペスウイルス感染症、淋菌感染症では10〜14歳の年齢群の報告があった。また、性器クラミジア感染症、尖圭コンジローマ、淋菌感染症の3疾患は、男性では60代以上は僅かであり、女性では50代以上の報告はないか、あっても僅かである。しかし、性器ヘルペスウイルス感染症は男女ともに、50代以降の報告も少なくない。この年齢層は再発例が含まれている可能性が以前から指摘されており、2006年4月の届出基準改正により、抗体のみ陽性のものの除外に加えて「明らかな再発例は除外する」ことが明示された。しかし、報告数や年齢群分布において明らかな変化は見られておらず、この基準変更の周知徹底が必要と考える。
年齢群毎にみた定点当たり報告数の男女の比較では、淋菌感染症では、すべての年齢群で男性が女性よりも多かった。一方、性器クラミジア感染症では10〜29歳の4つの年齢群、性器ヘルペスウイルス感染症では、15〜29歳、55〜59歳、70歳以上の5つの年齢群、尖圭コンジローマでは15〜24歳の2つの年齢群の、比較的低い年齢層を中心に女性が男性よりも多かった。ただし、性感染症定点は泌尿器科系、婦人科系および皮膚科系などの診療科から構成されており、男女の比較についてはそれらの比率の影響を受ける可能性がある。
●若年齢層での推移
感染症法が施行された1999年4月以降について、若年層(15〜29歳)における各疾患の定点当たり報告数を男女別・月別に(図4:PDF参照)に示した。性器クラミジア感染症は男女ともに2003年以降減少傾向がみられる。性器ヘルペスウイルス感染症は、男性では2007年以降、女性では2006年以降微減傾向がみられる。尖圭コンジローマは男女共に2006年以降微減傾向がみられる。淋菌感染症は、男性では2003年以降減少傾向、女性では2004年以降微減傾向がみられる。前月との比較では、男性では性器クラミジア感染症で同値、性器ヘルペスウイルス感染症で同値、尖圭コンジローマで増加、淋菌感染症で減少であった。女性では性器クラミジア感染症で減少、性器ヘルペスウイルス感染症で増加、尖圭コンジローマで増加、淋菌感染症で減少であった。
◆薬剤耐性菌について (11月9日集計分)
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基幹定点数(10月):460.
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●月別
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メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症
3.74(前月:3.99、前年同月:4.18)
定点当たり報告数は、例年年間を通じてほぼ一定である。10月は前月よりやや低下し、過去10年間の同月との比較では中位に属した。
ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)感染症
0.75(前月:0.70、前年同月:1.02)
定点当たり報告数は、例年春から初夏にかけて(4〜6月)と冬(11、12月)に多く、夏(7〜9月)に少なく推移している。10月は前月よりやや増加し、過去10年間の同月との比較では中位に属した。
薬剤耐性緑膿菌感染症
0.07(前月:0.09、前年同月:0.11)
定点当たり報告数は、例年後半が前半に比して多い傾向がある。10月は前月より減少し、過去10年間の同月との比較では最下位であった。
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●年齢階級別
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MRSA感染症
高齢者に多く、70歳以上が全体の64%を占めている(図1:PDF参照)
PRSP感染症
小児と高齢者に多い。5歳未満が全体の68%を占める一方、70歳以上が全体の17%を占めている(図2:PDF参照)。
薬剤耐性緑膿菌感染症
高齢者に多く、70歳以上が全体の53%を占めている(図3:PDF参照)
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●性別:女性を1 として算出した男/女比
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MRSA感染症…男:女=1.9:1
PRSP感染症…男:女=1.5:1
薬剤耐性緑膿菌感染症…男:女=0.9:1
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●都道府県別
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MRSA感染症
定点当たり報告数は沖縄県(9.9)、岐阜県(8.4)、新潟県(7.6)が多い。
PRSP感染症 定点当たり報告数は宮崎県(3.9)、富山県(2.8)、高知県(1.9)が多い。
薬剤耐性緑膿菌感染症
報告総数が34件にとどまるため、都道府県別定点当たり報告数の評価は困難である。
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注目すべき感染症
◆ インフルエンザ
インフルエンザ(Influenza)は、インフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症で、毎年世界中で流行がみられている。2009年4月にその存在が明らかとなった新型インフルエンザA/H1N1の臨床像は、従来の季節性インフルエンザとほぼ同様であり、罹患者の大半は合併症なく治癒するといわれているが、肺炎やインフルエンザ脳症を併発して重症化する場合がある。特に肺炎は、急速に進行する重症のウイルス性肺炎を起こす場合が多く、喘息や慢性閉塞性肺疾患等の呼吸器疾患の存在が急激な悪化と関連しているといわれている(Clinical features of severe cases of pandemic influenza: Pandemic(H1N1)2009 briefing note 13, Global Alert and Response, WHO, Oct. 16, 2009;http://www.who.int/csr/disease/swineflu/notes/h1n1_clinical_features_20091016/en/index.html)。現在新型インフルエンザは、世界的には、北米、ヨーロッパ、中央・西・東アジア等の北半球の国々において大きな流行となっている〔Pandemic(H1N1)2009-update75:http://www.who.int/csr/don/2009_11_20a/en/index.html〕。
感染症発生動向調査では、全国約5,000カ所(小児科定点約3,000、内科定点約2,000)のインフルエンザ定点からの報告に基づいてインフルエンザの発生動向を分析している。本サーベイランスは原則的に臨床診断によるものであり、最近の国内のインフルエンザウイルス検出状況を考慮すれば、現在報告されているインフルエンザ患者発生の殆どは新型インフルエンザによるものであると推定される。
2009年第46週のインフルエンザの定点当たり報告数は35.15(報告数169,095)となり、前週の値(定点当たり報告数32.76)よりも増加し、患者報告数が継続的に増加し始めた2009年第28週以降では最も高い値となった(図1)。都道府県別では愛知県(58.70)、大分県(53.64)、石川県(49.77)、山口県(48.68)、新潟県(46.98)、福岡県(46.51)、秋田県(46.44)、滋賀県(46.33)、佐賀県(44.33)、香川県(41.49)の順となっている。定点当たり報告数は、鳥取県を除く46都道府県で20.00を上回り、前週よりも多い36府県で30.00を上回ったが、13の都道府県では前週の報告数よりも減少がみられている(図2)。
定点医療機関からの報告数をもとに、定点以外を含む全国の医療機関を1週間に受診した患者数を推計すると約164万人となり、第28週以降第46週までの累積の推計患者数は約902万人(95%信頼区間:886.06万人〜917.94万人)となった(図3)。性別では男性約476万人(52.6%)、女性約429万人(47.4%)であり、年齢群別では10〜14歳約267万人(29.8%)、5〜9歳約230万人(25.7%)、15〜19歳約144万人(16.1%)、0〜4歳約75万人(8.4%)、20〜29歳約72万人(8.0%)の順となっている(図4)。夏季休暇終了以降に5〜19歳の割合が増加して流行の中心となっているが、第40週以降では特に9歳以下の報告割合が増加傾向を示している(図5)。
またインフルエンザ脳症は、国内においてインフルエンザの患者報告数が継続的に増加し、かつその殆どが新型インフルエンザと考えられる第28週以降第45週までの期間に、132例が報告されており(IDWR感染症週報2009年第45週速報:http://idsc.nih.go.jp/disease/influenza/idwr09week45.html)、インフルエンザ脳症が感染症発生動向調査の急性脳炎の中の届出対象となった2004年以降の各シーズンの報告数よりも大幅に増加している。
日本で新型インフルエンザウイルスAH1pdmが検出された2009年第19週以降第46週までに15,680件のインフルエンザウイルスの検出が報告されており、そのうちAH1pdmは14,635件(93.3%)を占めている。また、特に患者報告数が増加し始めた第28週以降では、第46週までに13,440件のインフルエンザウイルスの検出が報告され、AH1亜型(Aソ連型)18件(0.13%)、AH3亜型(A香港型)129件(0.96%)、B型4件(0.03%)、AH1pdm(新型インフルエンザウイルス)13,289件(98.88%)とインフルエンザウイルスの検出報告数の大半をAH1pdmが占めており、現在国内で発生しているインフルエンザの殆どは新型インフルエンザによるものであると推定される(図6および感染症情報センターホームページ:http://idsc.nih.go.jp/iasr/prompt/graph/sinin1.gif 参照)。
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図1. インフルエンザの年別・週別発生状況(1999〜2009年第46週) |
図2. インフルエンザの都道府県別定点当たり報告数の推移(2009年第44〜46週) |
図3. インフルエンザ累積推計受診者数週別推移(2009年第28〜46週) |
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図4. インフルエンザ推計受診患者数の年齢群別割合(2009年第28〜46週) |
図5. インフルエンザ全国推計受診者数の年齢群別割合の週別推移(2009年第34〜46週) |
図6. インフルエンザウイルス検出報告割合(2009年第28〜46週) |
第45週の定点医療機関からの患者報告数は前週よりもやや減少したが、第46週は再び増加し、全国規模での本格的な流行は継続している。年齢群別では、入院患者数の割合が大きい0〜9歳の若年齢層(厚生労働省ホームページ:http://www.mhlw.go.jp/za/0730/d20/d20-03.html参照)の患者報告数の割合が増大傾向を示しており、引き続き注意して観察していく必要がある。
これまでのパンデミックの例をみても、新型インフルエンザの流行は、国民の多くが感染し免疫を保有するに至るまでは繰り返されるものと考えられる。秋季の流行にもかかわらず、流行の規模はこれまでの冬季における季節性インフルエンザに匹敵する流行となっており、この流行が今後も更に継続、もしくは拡大する可能性があることを考慮しておくべきである。また、現在の流行が一旦は収束傾向を示したとしても、冬季に季節性インフルエンザの流行も交えた本格的な流行が再び到来することも考慮しておく必要がある。インフルエンザの流行の規模がさらに拡大し、外来受診患者数や入院を必要とする患者数が急増した場合、医療体制を維持し、国民に対して医療サービスを提供し続けることが大きな課題である。特に今後は9歳以下の小児の受診者数と入院患者数の増加が、さらに大きな問題となってくるものと予想される。新型インフルエンザを含めたインフルエンザの発生動向には今後とも警戒が必要である。
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