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発生動向総覧
〈第47週コメント〉 11月25日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 235例 |
3類感染症: |
コレラ1例(感染地域:インド)
腸管出血性大腸菌感染症26例(有症者14例、うちHUS なし) |
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感染地域:国内25例、中国1例
国内の感染地域:埼玉県2例、大阪府2例、徳島県2例、福岡県2例、佐賀県2例、長崎県2例、鹿児島県2例、福島県1例、茨城県1例、群馬県1例、東京都1例、愛知県1例、滋賀県1例、京都府1例、兵庫県1例、熊本県1例、不明2例
年齢群:1歳(1例)、2歳(1例)、3歳(2例)、4歳(2例)、6歳(1例)、8歳(1例)、10代(4例)、20代(3例)、30代(1例)、40代(2例)、50代(1例)、60代(5例)、70代(2例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2(10例)、O26 VT1(5例)、O157 VT2(3例)、O157 VT1(2例)、O103 VT1(2例)、O157 VT不明(1例)、O26 VT1・VT2(1例)、O91 VT1(1例)、その他・不明(1例)
累積報告数:3,618例(有症者2,418例、うちHUS 74例.死亡3例)
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腸チフス1例(感染地域:ネパール) パラチフス1例(感染地域:インドネシア)
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4類感染症: |
E型肝炎1例〔感染地域:国内(都道府県不明)_感染源:不明〕
A型肝炎2例(感染地域:石川県1例、ウズベキスタン1例)
つつが虫病23例
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感染地域:福島県8例、群馬県4例、千葉県2例、神奈川県2例、青森県1例、岩手県1例、岐阜県1例、三重県1例、大分県1例、鹿児島県1例、国内(都道府県不明)1例
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デング熱1例(感染地域:フィリピン)
日本紅斑熱3例(感染地域:熊本県2例、愛媛県1例) マラリア1例(熱帯熱_感染地域:セネガル)
レジオネラ症9例(肺炎型9例)
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感染地域:宮城県1例(温泉)、山形県1例、愛知県1例、三重県1例、愛媛県1例、福岡県1例、佐賀県/静岡県1例、国内(都道府県不明)2例
年齢群:3歳(1例)、40代(1例)、50代(1例)、60代(2例)、70代(2例)、80代(2例)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢6例(腸管アメーバ症5例、腸管及び腸管外アメーバ症1例) |
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感染地域:神奈川県1例、国内(都道府県不明)5例
感染経路:性的接触2例(同性間1例、異性・同性間不明1例)、経口感染2例、不明2例
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ウイルス性肝炎2例
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B型2例_感染経路:性的接触1例(異性・同性間不明)、不明1例
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急性脳炎11例
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インフルエンザウイルスAH1pdm 8例_年齢群:1歳(1例)、5歳(1例)、6歳(1例)、7歳(1例)、8歳(1例)、9歳(1例)、10代(2例)
インフルエンザウイルス型不明2例_年齢群:5歳(1例)、10代(1例)
病原体不明1例_年齢群:2歳
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クロイツフェルト・ヤコブ病3例
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孤発性プリオン病古典型2例、遺伝性プリオン病家族性1例
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後天性免疫不全症候群17例(AIDS 5例、無症候11例、その他1例)
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感染地域:国内15例、タイ1例、国内・国外不明1例
感染経路:性的接触16例(異性間4例、同性間12例)、不明1例
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ジアルジア症1例(感染地域:和歌山県)
梅毒3例(早期顕症I期1例、早期顕症II期1例、晩期顕症1例)
麻しん4例〔麻しん(検査診断例2例、臨床診断例2例)〕
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感染地域:国内4例
国内の感染地域:青森県1例、福島県1例、千葉県1例、国内(都道府県不明)1例
年齢群:1歳(1例)、6歳(1例)、20〜24歳(1例)、40代(1例)
累積報告数:708例〔麻しん(検査診断例232例、臨床診断例293例)、修飾麻しん(検査診断例183例)
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(補)他に2009年第46週までに診断されたものの報告遅れとして、細菌性赤痢6例(感染地域:福岡県1例、エジプト3例、インド1例、中国/インド1例)、パラチフス1例(感染地域:バングラデシュ)、エキノコックス症1例(多包条虫_感染地域:北海道)、オウム病1例(感染地域:福岡県/アフガニスタン_感染源:不明)、デング熱3例(感染地域:タイ1例、フィリピン1例、スリランカ1例)、日本紅斑熱2例(感染地域:愛媛県1例、高知県1例)、急性脳炎12例〔インフルエンザウイルスAH1pdm 7例(2歳1例、3歳1例、4歳1例、8歳3例、10代1例)、インフルエンザウイルスA型1例(5歳)、アデノウイルス3型1例(10代)、病原体不明3例(1歳1例、2歳1例、70代1例)〕、劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(40代.死亡)、バンコマイシン耐性腸球菌感染症4例〔遺伝子型:VanB 3例(うち1例死亡)_菌検出検体:尿3例、遺伝子型:VanC1例_菌検出検体:血液〕、風しん1例(検査診断例.感染地域:埼玉県.年齢群:20〜24歳)などの報告があった。
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◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は2週連続で増加し、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い。都道府県別では大分県(77.21)、福井県(71.25)、石川県(65.02)、山口県(64.31)、福岡県(58.23)、長野県(55.31)、愛知県(54.17)、鹿児島県(50.58)、宮崎県(50.56)、香川県(49.55)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症の報告数は1,144例と第40週以降増加が続いている。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の約69%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は3週連続で増加した。都道府県別では石川県(0.41)、佐賀県(0.39)、富山県(0.34)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では山口県(2.74)、富山県(2.69)、鳥取県(1.84)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では福井県(9.2)、大分県(8.1)、熊本県(7.9)が多い。水痘の定点当たり報告数は第42週以降増加が続いている。都道府県別では大分県(3.08)、岩手県(2.68)、宮崎県(2.19)が多い。手足口病の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では山形県(2.30)、福井県(1.73)、沖縄県(1.38)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は3週連続して増加した。都道府県別では青森県(0.57)、神奈川県(0.17)、千葉県(0.16)が多い。百日咳の定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では千葉県(0.14)、栃木県(0.13)、鳥取県(0.11)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は第42週以降減少が続いている。都道府県別では高知県(0.47)、鹿児島県(0.39)、福井県(0.36)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では沖縄県(2.12)、福井県(2.05)、山形県(1.87)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では青森県(2.17)、埼玉県(1.22)、富山県(1.20)が多い。
注目すべき感染症
◆ インフルエンザ
インフルエンザ(Influenza)は、インフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症で、毎年世界中で流行がみられている。2009年4月にその存在が明らかとなった新型インフルエンザA/H1N1の臨床像は、従来の季節性インフルエンザとほぼ同様であり、罹患者の大半は合併症なく治癒するといわれているが、肺炎やインフルエンザ脳症を併発して重症化する場合がある。特に肺炎は、急速に進行する重症のウイルス性肺炎を起こす場合が多く、喘息や慢性閉塞性肺疾患等の呼吸器疾患の存在が急激な悪化と関連しているといわれている〔Clinical features of severe cases of pandemic influenza: Pandemic(H1N1)2009 briefing note 13, Global Alert and Response, WHO, Oct. 16, 2009;http://www.who.int/csr/disease/swineflu/notes/h1n1_clinical_features_20091016/en/index.html〕。現在新型インフルエンザは、世界的には、北米、ヨーロッパ、東アジア等の北半球の国々において大きな流行となっている〔Pandemic(H1N1)2009-update76:http://www.who.int/csr/don/2009_11_27a/en/index.html〕。
感染症発生動向調査では、全国約5,000カ所(小児科定点約3,000、内科定点約2,000)のインフルエンザ定点からの報告に基づいてインフルエンザの発生動向を分析している。本サーベイランスは原則的に臨床診断によるものであり、最近の国内のインフルエンザウイルス検出状況を考慮すれば、現在報告されているインフルエンザ患者発生の殆どは新型インフルエンザによるものであると推定される。
2009年第47週のインフルエンザの定点当たり報告数は38.89(報告数186,117)となり、前週の値(定点当たり報告数35.15)よりも増加し、患者報告数が継続的に増加し始めた2009年第28週以降では最も高い値となった(図1)。都道府県別では大分県(77.21)、福井県(71.25)、石川県(65.02)、山口県(64.31)、福岡県(58.23)、長野県(55.31)、愛知県(54.17)、鹿児島県(50.58)、宮崎県(50.56)、香川県(49.55)の順となっている。定点当たり報告数は、全ての都道府県で20.00を上回り、前週よりも多い41府県で30.00を上回っており、38府県で前週よりも増加がみられている(図2)。
定点医療機関からの報告数をもとに、定点以外を含む全国の医療機関を1週間に受診した患者数を推計すると約173万人となり、第28週以降第47週までの累積の推計患者数は約1,075万人(95%信頼区間:1,057.97万人〜1,092.03万人)となった(図3)。性別では男性約566万人(52.5%)、女性約512万人(47.5%)であり、年齢群別では10〜14歳約309万人(28.9%)、5〜9歳約285万人(26.7%)、15〜19歳約168万人(15.7%)、0〜4歳約95万人(8.9%)、20〜29歳約84万人(7.9%)の順となっている(図4)。夏季休暇終了以降に5〜19歳の割合が増加して流行の中心となっているが、第40週以降では特に9歳以下の報告割合が増加傾向を示している(図5)
日本で新型インフルエンザウイルスAH1pdmが検出された2009年第19週以降第47週までに16,809件のインフルエンザウイルスの検出が報告されており、そのうちAH1pdmは15,764件(93.8%)を占めている。また、特に患者報告数が増加し始めた第28週以降では、第47週までに14,569件のインフルエンザウイルスの検出が報告され、AH1亜型(Aソ連型)18件(0.12%)、AH3亜型(A香港型)129件(0.89%)、B型4件(0.03%)、AH1pdm(新型インフルエンザウイルス)14,418件(98.96%)とインフルエンザウイルスの検出報告数の大半をAH1pdmが占めており、現在国内で発生しているインフルエンザの殆どは新型インフルエンザによるものであると推定される(図6および感染症情報センターホームページ:http://idsc.nih.go.jp/iasr/prompt/graph/sinin1.gif 参照)。
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図1. インフルエンザの年別・週別発生状況(1999〜2009年第47週) |
図2. インフルエンザの都道府県別定点当たり報告数の推移(2009年第45〜47週) |
図3. インフルエンザ累積推計受診患者数週別推移(2009年第28〜47週) |
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図4. インフルエンザ推計受診患者数の年齢群別割合(2009年第28〜47週) |
図5. インフルエンザ推計受診患者数の年齢群別割合の週別推移(2009年第34〜47週) |
図6. インフルエンザウイルス検出報告割合(2009年第28〜47週) |
インフルエンザ定点当たり週別報告数は、祝日のあった第45週にやや減少したものの、第46、47週と2週連続で増加し、全国規模での本格的な流行は継続している。年齢群別における推計受診患者数は、第47週は前週に比較して、0〜9歳の年齢層での割合が増加した。0〜9歳は入院患者数の割合が高い年齢層であり(厚生労働省ホームページ:http://www.mhlw.go.jp/za/0730/d20/d20-03.html 参照)、引き続き注意して観察していく必要がある。
これまでのパンデミックの例をみても、新型インフルエンザの流行は、国民の多くが感染し免疫を保有するに至るまでは繰り返されるものと考えられる。第28週以降、インフルエンザの患者報告数は増加傾向が続いており、既に推計の医療機関受診者数は1,000万人を上回っており、年齢群別では相当の割合で患者が発生しているところも出て来ている。これまでは従来のインフルエンザの流行シーズンとは異なった季節における流行であり、今後インフルエンザの流行に適した冬季に入った場合に、季節性インフルエンザの流行も交えた本格的な流行が再び到来することも考慮しておく必要があるものと思われる。一旦は現在の流行が収束傾向を示したとしても、再びインフルエンザの流行の規模が拡大する可能性は低くはないと考えられる。特に今後は9歳以下の小児の受診者数と入院患者数の増加については、引き続き注意していくべきであり、新型インフルエンザを含めたインフルエンザの発生動向には今後とも警戒が必要である。
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