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発生動向総覧
〈第48週コメント〉 12月2日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 238例 |
3類感染症: |
細菌性赤痢2例(感染地域:福島県1例、カンボジア1例)
腸管出血性大腸菌感染症35例(有症者24例、うちHUS なし) |
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感染地域:国内35例
国内の感染地域:石川県3例、愛知県3例、宮城県2例、秋田県2例、千葉県2例、東京都2例、滋賀県2例、兵庫県2例、高知県2例、福岡県2例、鹿児島県2例、岩手県1例、埼玉県1例、神奈川県1例、京都府1例、大阪府1例、徳島県1例、熊本県1例、不明4例
年齢群:1歳(1例)、2歳(2例)、3歳(2例)、6歳(2例)、7歳(1例)、8歳(1例)、10代(2例)、20代(7例)、30代(4例)、50代(4例)、60代(3例)、70代(5例)、80代(1例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2(11例)、O157 VT2(10例)、O26 VT1(2例)、O91 VT1・VT2(2例)、O91 VT1(2例)、O157 VT1(1例)、O74 VT不明(1例)、O103 VT1(1例)、O111 VT1・VT2(1例)、O121 VT2(1例)、O145 VT2(1例)、その他・不明(2例)
累積報告数:3,668例(有症者2,454例、うちHUS 76例.死亡3例)
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腸チフス1例(感染地域:神奈川県)
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4類感染症: |
つつが虫病20例
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感染地域:福島県3例、宮崎県3例、鹿児島県3例、千葉県2例、岐阜県2例、三重県2例、神奈川県1例、石川県1例、和歌山県1例、広島県1例、大分県1例
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デング熱1例(感染地域:インドネシア)
レジオネラ症18例(肺炎型18例)
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感染地域:兵庫県3例、三重県2例、広島県2例、新潟県1例(温泉)、福井県1例(温泉)、静岡県1例、大阪府1例、香川県1例、愛媛県1例、高知県1例、国内(都道府県不明)3例、タイ1例
年齢群:40代(1例)、50代(7例)、60代(5例)、70代(3例)、80代(1例)、90代(1例)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢4例(腸管アメーバ症3例、腸管外アメーバ症1例) |
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感染地域:東京都1例、静岡県1例、兵庫県1例、沖縄県1例
感染経路:性的接触2例(異性間2例)、不明2例
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ウイルス性肝炎1例
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B型_感染経路:性的接触(異性間)
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急性脳炎14例
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インフルエンザウイルスAH1pdm 11例_年齢群:0歳(1例)、1歳(1例)、3歳(1例)、5歳(1例)、6歳(1例)、7歳(1例)、9歳(1例)、10代(2例)、30代(1例)、60代(1例)
サルモネラ1例_年齢群:10代
病原体不明2例_年齢群:1歳(2例)
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クロイツフェルト・ヤコブ病1例(孤発性プリオン病古典型)
劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(年齢群:30代)
後天性免疫不全症候群5例(AIDS 1例、無症候4例)
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感染地域:国内5例
感染経路:性的接触4例(異性間1例、同性間3例)、不明1例
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髄膜炎菌性髄膜炎1例(感染地域:山口県)
梅毒5例(早期顕症II期2例、無症候3例)
麻しん3例〔麻しん(検査診断例1例、臨床診断例2例)〕
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感染地域:国内2例、ベトナム1例
国内の感染地域:埼玉県1例、大阪府1例
年齢群:0歳(2例)、9歳(1例)
累積報告数:712例〔麻しん(検査診断例234例、臨床診断例295例)、修飾麻しん(検査診断例183例)〕
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(補)他に2009年第47週までに診断されたものの報告遅れとして、E型肝炎1例(感染地域:不明_感染源:焼き肉)、エキノコックス症1例(多包条虫_感染地域:北海道)、デング熱1例(デング出血熱_感染地域:ベトナム)、日本紅斑熱1例(感染地域:和歌山県)、レジオネラ症2例〔感染地域:栃木県1例(温泉)、静岡県1例(温泉)〕、急性脳炎26例〔インフルエンザウイルスAH1pdm 18例(4歳4例、5歳1例、6歳2例、8歳3例、9歳3例、10代3例、30代1例、70代1例)、インフルエンザウイルスA型2例(3歳1例、7歳1例)、インフルエンザウイルス型不明1例(7歳)、EBウイルス1例(5歳)、病原体不明4例(1歳3例、2歳1例)〕、劇症型溶血性レンサ球菌感染症2例〔50代(1例)、60代(1例.死亡)〕、風しん1例(臨床診断例.感染地域:兵庫県.年齢群:10〜14歳)などの報告があった。
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◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は3週連続で増加し、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い。都道府県別では福井県(95.44)、大分県(75.22)、宮崎県(69.08)、山口県(63.59)、福岡県(63.35)、鹿児島県(61.95)、長崎県(59.14)、石川県(59.06)、香川県(54.87)、愛媛県(52.87)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症の報告数は1,327例と第40週以降増加が続いている。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の約68%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では石川県(0.48)、島根県(0.39)、熊本県(0.35)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では山口県(2.90)、富山県(2.21)、鳥取県(2.11)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は3週連続で増加した。都道府県別では大分県(7.6)、熊本県(7.5)、福井県(5.0)が多い。水痘の定点当たり報告数は第42週以降増加が続いている。都道府県別では福井県(2.73)、宮崎県(2.14)、富山県(2.07)が多い。手足口病の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では山形県(2.20)、福井県(0.82)、沖縄県(0.79)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では青森県(0.38)、愛媛県(0.24)、長野県(0.18)が多い。百日咳の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では千葉県(0.14)、高知県(0.13)、鳥取県(0.11)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は第42週以降減少が続いている。都道府県別では熊本県(0.27)、鹿児島県(0.22)、大分県(0.19)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では山形県(2.83)、福井県(2.41)、沖縄県(1.53)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では宮城県(1.83)、沖縄県(1.71)、埼玉県(0.78)が多い。
注目すべき感染症
◆ インフルエンザ
インフルエンザ(Influenza)は、インフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症で、毎年世界中で流行がみられている。2009年4月にその存在が明らかとなった新型インフルエンザA/H1N1の臨床像は、従来の季節性インフルエンザとほぼ同様であり、罹患者の大半は合併症なく治癒するといわれているが、肺炎やインフルエンザ脳症を併発して重症化する場合がある。特に肺炎は、急速に進行する重症のウイルス性肺炎を起こす場合が多く、喘息や慢性閉塞性肺疾患等の呼吸器疾患の存在が急激な悪化と関連しているといわれている〔Clinical features of severe cases of pandemic influenza: Pandemic(H1N1)2009 briefing note 13, Global Alert and Response, WHO, Oct. 16, 2009;http://www.who.int/csr/disease/swineflu/notes/h1n1_clinical_features_20091016/en/index.html〕。現在新型インフルエンザは、世界的には、北米、ヨーロッパ、アジア等の北半球の国々において大きな流行となっている〔Pandemic(H1N1)2009-update77:http://www.who.int/csr/don/2009_12_04/en/index.html〕。
感染症発生動向調査では、全国約5,000カ所(小児科定点約3,000、内科定点約2,000)のインフルエンザ定点からの報告に基づいてインフルエンザの発生動向を分析している。本サーベイランスは原則的に臨床診断によるものであり、最近の国内のインフルエンザウイルス検出状況を考慮すれば、現在報告されているインフルエンザ患者発生の殆どは新型インフルエンザによるものであると推定される。
2009年第48週のインフルエンザの定点当たり報告数は39.63(報告数190,801)と3週連続で増加し、2009年の最高値を更新した(図1)。都道府県別では福井県(95.44)、大分県(75.22)、宮崎県(69.08)、山口県(63.59)、福岡県(63.35)、鹿児島県(61.95)、長崎県(59.14)、石川県(59.06)、香川県(54.87)、愛媛県(52.87)の順となっている。定点当たり報告数は、北海道を除く46都府県で20.00を上回り、40府県で30.00を、27県で40.00を上回っているが、19都道府県では前週よりも減少している(図2)。
定点医療機関からの報告数をもとに、定点以外を含む全国の医療機関を1週間に受診した患者数を推計すると約189万人となり、第28週以降第48週までの累積の推計患者数(暫定値)は約1,264万人(95%信頼区間:1,246万人〜1,282万人)となった(図3)。性別では男性約664万人(52.4%)女性約603万人(47.6%)であり、年齢群別では10〜14歳約350万人(27.8%)、5〜9歳約338万人(26.9%)、15〜19歳約192万人(15.3%)、0〜4歳約119万人(9.5%)、20〜29歳約102万人(8.1%)、30〜39歳75万人(6.0%)の順となっている(図4)。第48週は、これまで流行の中心ではなかった0〜4歳の低年齢児及び20代、30代を中心とした成人層の増加が目立っている(図5)。
日本で新型インフルエンザウイルスAH1pdmが検出された2009年第19週以降第48週までに18,417件のインフルエンザウイルスの検出が報告されており、そのうちAH1pdmは17,370件(94.3%)を占めている。また、特に患者報告数が増加し始めた第28週以降では、第48週までに16,177件のインフルエンザウイルスの検出が報告され、AH1亜型(Aソ連型)18件(0.11%)、AH3亜型(A香港型)130件(0.80%)、B型5件(0.03%)、AH1pdm(新型インフルエンザウイルス)16,024件(99.05%)とインフルエンザウイルスの検出報告数の大半をAH1pdmが占めており、現在国内で発生しているインフルエンザの殆どは新型インフルエンザによるものであると推定される(図6および感染症情報センターホームページ:http://idsc.nih.go.jp/iasr/prompt/graph/sinin1.gif 参照)。
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図1. インフルエンザの年別・週別発生状況(1999〜2009年第48週) |
図2. インフルエンザの都道府県別定点当たり報告数の推移(2009年第46〜48週) |
図3. インフルエンザ累積推計受診患者数(暫定値)週別推移(2009年第28〜48週) |
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図4. インフルエンザ推計受診患者数(暫定値)の年齢群別割合(2009年第28〜48週) |
図5. インフルエンザ推計受診患者数(暫定値)の年齢群別割合の週別推移(2009年第34〜48週) |
図6. インフルエンザウイルス検出報告割合(2009年第28〜48週) |
インフルエンザ定点当たり週別報告数は、祝日のあった第45週にやや減少したものの、その後3週連続で増加し、全国規模での本格的な流行が続いた。今回の流行の当初にその中心であった大都市圏では、患者報告数は横ばいかやや減少傾向を示している地域が多いが、中部、中国、四国、九州では急激な増加が続いている地域も少なくない。年齢群別における推計受診患者数(暫定値)では、第48週は前週に比較して、0〜4歳、及び成人層の年齢群での増加が目立った。これまで流行の中心であった5〜19歳の年齢群の周辺の年齢群の患者発生数が増加してきているものと思われる。
これまでのパンデミックの例をみても、新型インフルエンザの流行は、国民の多くが感染し免疫を保有するに至るまでは繰り返されるものと考えられる。第28週以降、インフルエンザの患者報告数は増加傾向が続いており、既に推計の医療機関受診患者数(暫定値)は1,000万人を上回っており、年齢群別では相当の割合で患者が発生しているところも出て来ている。特に10〜14歳、5〜9歳の年齢群は、既に相当数が新型インフルエンザに罹患していると推定され、今後これらの年齢群からの罹患者数は大きく増加することはなく、むしろ短期間のうちに減少してくる可能性が考慮される。しかし、これまでは従来のインフルエンザの流行シーズンとは異なった季節における流行であり、インフルエンザの流行に適した冬季に入り、季節性インフルエンザの流行も交えた本格的な流行が再び到来することも考慮しておく必要があるものと思われる。一旦は現在の流行が収束傾向を示したとしても、再びインフルエンザの流行の規模が拡大する可能性は低くはないと考えられる。また、現時点では4歳以下の小児の受診者数と入院患者数の増加については、引き続き注意していくべきであり、新型インフルエンザを含めたインフルエンザの発生動向には今後とも警戒が必要である。
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