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発生動向総覧
〈第51週コメント〉 12月24日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 297例 |
3類感染症: |
細菌性赤痢2例(感染地域:鹿児島県1例、タイ1例)
腸管出血性大腸菌感染症18例(有症者13例、うちHUS 1例) |
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感染地域:国内16例、インドネシア1例、トルコ1例
国内の感染地域:大阪府4例、埼玉県2例、東京都2例、兵庫県2例、静岡県1例、愛知県1例、広島県1例、佐賀県1例、宮崎県1例、不明1例
年齢群:1歳(1例)、4歳(1例)、6歳(1例)、10代(2例)、20代(6例)、30代(2例)、40代(2例)、50代(2例)、70代(1例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2(4例)、O157 VT2(3例)、O26 VT不明( 2例)、O128 VT1・VT2( 2例)、O26 VT1(1例)、O91 VT1(1例)、O157 VT1(1例)、O157 VT不明(1例)、その他・不明(3例)
累積報告数:3,780例(有症者2,536例、うちHUS 79例.死亡3例)
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パラチフス1例(感染地域:スリランカ)
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4類感染症: |
A型肝炎2例(感染地域:奈良県1例、長崎県1例)
つつが虫病13例
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感染地域:鹿児島県5例、福島県2例、千葉県2例、静岡県1例、三重県1例、長崎県1例、宮崎県1例
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デング熱1例(感染地域:インド)
レジオネラ症9例(肺炎型9例)
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感染地域:兵庫県2例(うち1例温泉)、福島県1例(温泉)、東京都1例、石川県1例、長野県1例、静岡県1例、愛媛県1例、国内(都道府県不明)1例
年齢群:50代(2例)、60代(1例)、70代(3例)、80代(3例)
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レプトスピラ症1例(感染地域:群馬県_感染源:ネズミ)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢8例(腸管アメーバ症5例、腸管外アメーバ症2例、腸管及び腸管外アメーバ症1例) |
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感染地域:東京都2例、岩手県1例、埼玉県1例、鹿児島県1例、国内(都道府県不明)3例
感染経路:性的接触1例(異性間)、経口感染1例、不明6例
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ウイルス性肝炎1例(B型_感染経路:不明)
急性脳炎10例
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インフルエンザウイルスAH1pdm 6例_年齢群:2歳(1例)、5歳(2例)、6歳(2例)、7歳(1例)
ヒトヘルペスウイルス6型1例_年齢群:1歳
病原体不明3例_年齢群:0歳(1例)、1歳(1例)、10代(1例)
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クリプトスポリジウム症1例(感染地域:長野県)
クロイツフェルト・ヤコブ病2例(孤発性プリオン病古典型2例)
劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(年齢群:70代)
後天性免疫不全症候群11例(AIDS 2例、無症候8例、その他1例)
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感染地域:国内9例、米国1例、国内・国外不明1例
感染経路:性的接触9例(異性間3例、同性間6例)、性的接触(同性間)/静注薬物使用1例、不明1例
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梅毒6例(早期顕症I期1例、早期顕症II期3例、無症候2例)
破傷風2例(年齢群:50代(1例)、60代(1例))
風しん2例(検査診断例1例、臨床診断例1例)
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感染地域:千葉県1例、国内(都道府県不明)1例
年齢群:5〜9歳(1例)、40代(1例)
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麻しん4例〔麻しん(検査診断例1例、臨床診断例1例)、修飾麻しん(検査診断例2例)〕
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感染地域:国内4例
国内の感染地域:千葉県2例、新潟県1例、岐阜県1例
年齢群:1歳(1例)、3歳(1例)、5〜9歳(1例)、60代(1例)
累積報告数:733例〔麻しん(検査診断例244例、臨床診断例299例)、修飾麻しん(検査診断例190例)〕
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(補)他に2009年第50週までに診断されたものの報告遅れとして、レプトスピラ症1例(感染地域:宮崎県_感染原因:稲刈り)、急性脳炎11例〔インフルエンザウイルスAH1pdm 4例(0歳1例、4歳1例、7歳1例、8歳1例)、インフルエンザウイルスA型1例(9歳)、インフルエンザウイルス(型不明)2例(4歳1例、10代1例)、日本紅斑熱リケッチア1例(70代)、ヒトヘルペスウイルス6型1例(0歳)、病原体不明2例(20代1例、50代1例)〕、バンコマイシン耐性腸球菌感染症10例(遺伝子型:VanB 1例_菌検出検体:血液/腹水.遺伝子型:VanC 8例_菌検出検体:血液2例、胆汁6例.遺伝子型:不明1例_菌検出検体:尿)、風しん1例(検査診断例.感染地域:マレーシア.年齢群:30〜34歳)などの報告があった。
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◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は3週連続で減少したが、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い。都道府県別では福井県(43.22)、宮崎県(41.81)、福島県(38.99)、愛媛県(33.51)、岐阜県(32.90)、長野県(31.72)、長崎県(31.00)、大分県(30.07)、鹿児島県(30.06)、山口県(29.66)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症の報告数は3,175例と第40週以降増加が続いている。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の約64%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は3週連続で増加した。都道府県別では佐賀県(0.48)、石川県(0.41)、福岡県(0.41)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は3週連続で増加した。都道府県別では富山県(2.62)、山形県(2.60)、山口県(2.40)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は第46週以降増加が続いている。都道府県別では大分県(15.4)、宮崎県(11.0)、岩手県(10.8)が多い。水痘の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では佐賀県(3.39)、大分県(3.08)、宮崎県(2.75)が多い。手足口病の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では山形県(1.60)、岩手県(0.65)、広島県(0.58)、宮崎県(0.58)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では神奈川県(0.29)、青森県(0.26)、長崎県(0.20)が多い。百日咳の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では広島県(0.14)、奈良県(0.09)、沖縄県(0.09)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では香川県(0.29)、富山県(0.14)、岩手県(0.13)、和歌山県(0.13)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では沖縄県(2.38)、大分県(2.00)、山形県(1.97)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では埼玉県(1.56)、青森県(1.33)、群馬県(1.25)が多い。
注目すべき感染症
◆ インフルエンザ
インフルエンザ(Influenza)は、インフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症で、毎年世界中で流行がみられている。2009年4月にその存在が明らかとなった新型インフルエンザA/H1N1の臨床像は、従来の季節性インフルエンザとほぼ同様であり、罹患者の大半は合併症なく治癒するといわれているが、肺炎やインフルエンザ脳症を併発して重症化する場合がある。特に肺炎は、急速に進行する重症のウイルス性肺炎を起こす場合が多く、喘息や慢性閉塞性肺疾患等の呼吸器疾患の存在が急激な悪化と関連しているといわれている〔Clinical features of severe cases of pandemic influenza: Pandemic(H1N1)2009 briefing note 13, Global Alert and Response, WHO, Oct. 16, 2009;http://www.who.int/csr/disease/swineflu/notes/h1n1_clinical_features_20091016/en/index.html〕。新型インフルエンザは、北半球の温帯地域で活動性が維持されているものの、全体的には最近ピークに達したとみられている。活動性の増加が続いているのは、流行の遅かったヨーロッパの中央部および東部地域、そして西および中央、南アジアである〔Pandemic(H1N1)2009-update80:http://www.who.int/csr/don/2009_12_23/en/index.html〕。
感染症発生動向調査では、全国約5,000カ所(小児科定点約3,000、内科定点約2,000)のインフルエンザ定点からの報告に基づいてインフルエンザの発生動向を分析している。本サーベイランスは原則的に臨床診断によるものであり、最近の国内のインフルエンザウイルス検出状況を考慮すれば、現在報告されているインフルエンザ患者発生の殆どは新型インフルエンザによるものであると推定される。
2009年第51週のインフルエンザの定点当たり報告数は22.44(報告数108,071)と3週連続で減少した(図1)。都道府県別では福井県(43.22)、宮崎県(41.81)、福島県(38.99)、愛媛県(33.51)岐阜県(32.90)、長野県(31.72)、長崎県(31.00)、大分県(30.07)、鹿児島県(30.06)、山口県(29.66)の順となっている。定点当たり報告数は37県では20.00を上回り、9県で30.00を上回っているが、福島県、山梨県、沖縄県を除く44都道府県で前週よりも減少した(図2)。
定点医療機関からの報告数をもとに、定点以外を含む全国の医療機関を1週間に受診した患者数を推計すると約107万人(暫定値)と3週連続で減少し、第28週以降これまでの累積の推計患者数(暫定値)は約1,653万人(95%信頼区間:1,634万人〜1,672万人)(暫定値)となった(図3)。性別では男性約859万人(51.9%)、女性約796万人(48.1%)であり、年齢群別では5〜9歳約445万人(27.0%)、10〜14歳約423万人(25.7%)、15〜19歳約238万人(14.4%)、0〜4歳約177万人(10.7%)、20〜29歳約142万人(8.6%)、30〜39歳約106万人(6.4%)の順となっている(図4、図5)。
日本で新型インフルエンザウイルスAH1pdmが検出された2009年第19週以降第51週までに、全国の地方衛生研究所から21,914件のインフルエンザウイルスの検出が報告されており、そのうちAH1pdmは20,863件(95.20%)を占めている。また、特に患者報告数が増加し始めた第28週以降では、第51週までに19,669件のインフルエンザウイルスの検出が報告され、AH1亜型(Aソ連型)18件(0.09%)、AH3亜型(A香港型)132件(0.67%)、B型6件(0.03%)、AH1pdm(新型インフルエンザウイルス)19,513件(99.21%)とインフルエンザウイルスの検出報告数の大半をAH1pdmが占めており、現在国内で発生しているインフルエンザの殆どは新型インフルエンザによるものであると推定される(図6および感染症情報センターホームページ:http://idsc.nih.go.jp/iasr/prompt/graph/sinin1.gif 参照)。
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図1. インフルエンザの年別・週別発生状況(1999〜2009年第51週) |
図2. インフルエンザの都道府県別定点当たり報告数の推移(2009年第49〜51週) |
図3. インフルエンザ推計受診患者数(暫定値)週別推移(2009年第28〜51週) |
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図4. インフルエンザ推計受診患者数(暫定値)の年齢群別割合(2009年第28〜51週) |
図5. インフルエンザ推計受診患者数(暫定値)の年齢群別推移(2009年第36〜51週) |
図6. インフルエンザウイルス検出報告割合(2009年第28〜51週) |
インフルエンザの定点からの報告数は、3週連続して減少がみられ、国内の大半の都道府県では減少傾向が続いている(図2)。今後の冬季休暇を含む週の報告数は、さらに減少していくものと予想される。
これまでのパンデミックの例をみても、新型インフルエンザの流行は、国民の多くが感染し免疫を保有するに至るまでは繰り返されるものと考えられる。既に推計の医療機関受診患者数(暫定値)は1,600万人を上回り人口の10%以上が罹患したと考えられるが、不顕性感染者の存在も考慮すると、さらに多くが新型インフルエンザに対する免疫を保有している可能性がある。特に5〜14歳の年齢層では、半数以上の割合で免疫を保有している者がいると推定される。一方で、現時点では、他の年齢層の多くが未だ免疫を保有している状況とはいえず、今後、異なる年齢層を中心とした流行も考慮する必要があるものと思われる。季節性インフルエンザも含め、インフルエンザの発生動向に引き続き警戒が必要である。
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