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発生動向総覧
〈第1週コメント〉 1月13日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 213例 |
3類感染症: |
細菌性赤痢4例(感染地域:東京都2例、長野県1例、インド1例)
腸管出血性大腸菌感染症21例(有症者17例、うちHUS 1例) |
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感染地域:国内20例、エジプト1例
国内の感染地域:山口県6例、兵庫県3例、埼玉県2例、東京都2例、茨城県1例、山梨県1例、愛知県1例、大阪府1例、徳島県1例、不明2例
年齢群:2歳(1例)、3歳(4例)、6歳(1例)、10代(3例)、20代(8例)、30代(3例)、40代(1例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2(11例)、O157 VT2(2例)、O26 VT1(2例)、O157 VT1(1例)、その他・不明(5例)
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4類感染症: |
A型肝炎1例(感染地域:ドミニカ共和国)
つつが虫病6例(感染地域:鹿児島県4例、東京都1例、高知県1例)
デング熱1例(感染地域:タイ)
マラリア2例(熱帯熱2例_感染地域:インドネシア1例、ナイジェリア1例)
レジオネラ症8例(肺炎型8例)
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感染地域:長野県2例、千葉県1例、新潟県1例、石川県1例、大阪府1例、大分県1例、イタリア1例
年齢群:40代(1例)、60代(3例)、70代(3例)、80代(1例)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢8例(腸管アメーバ症7例、腸管外アメーバ症1例) |
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感染地域:神奈川県3例、愛知県2例、東京都1例、大阪府1例、国内(都道府県不明)1例
感染経路:性的接触1例(異性間)、経口感染2例、不明5例
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急性脳炎4例
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インフルエンザウイルスAH1pdm 2例_年齢群:3歳(1例)、10代(1例)
RSウイルス1例_年齢群:1歳
病原体不明1例_年齢群:4歳
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クリプトスポリジウム症1例(感染地域:東京都)
クロイツフェルト・ヤコブ病1例(感染性プリオン病医原性)
劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(年齢群:90代)
後天性免疫不全症候群5例(AIDS 2例、無症候2例、その他1例)
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感染地域:国内5例
感染経路:性的接触4例(異性間1例、同性間3例)、不明1例
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ジアルジア症1例(感染地域:フィリピン)
梅毒3例(早期顕症II期2例、無症候1例)
風しん3例(検査診断例1例、臨床診断例2例)
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感染地域:千葉県1例、愛知県1例、宮崎県1例
年齢群:1歳(1例)、5〜9歳(2例)
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麻しん5例〔麻しん(検査診断例1例、臨床診断例1例)、修飾麻しん(検査診断例3例)〕
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感染地域:国内5例
国内の感染地域:埼玉県1例、千葉県1例、神奈川県1例、大阪府1例、国内(都道府県不明)1例
年齢群:1歳(1例)、2歳(1例)、10〜14歳(2例)、70代(1例)
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(補)他に2009年第53週までに診断されたものの報告遅れとして、コレラ1例〔感染地域:マレーシア(ボルネオ)〕、デング熱1例(感染地域:インドネシア)、急性脳炎7例〔インフルエンザウイルスAH1pdm 4例(9歳1例、10代2例、20代1例)、病原体不明3例(8歳2例、30代1例)〕、劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(50代)、先天性風しん症候群1例(典型例_感染地域:愛知県)などの報告があった。
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◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は第49週以降減少が続いているが、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してやや多い。都道府県別では沖縄県(45.14)、宮崎県(17.34)、愛媛県(16.80)、静岡県(16.42)、高知県(16.19)、鹿児島県(15.94)、福井県(15.66)、熊本県(14.75)、愛知県(14.07)、滋賀県(13.42)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症の報告数は3,355例と増加した。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の約73%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では佐賀県(0.39)、鹿児島県(0.35)、福井県(0.32)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では鳥取県(1.68)、秋田県(1.49)、富山県(1.48)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では大分県(18.6)、宮崎県(16.3)、三重県(15.4)が多い。水痘の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では宮崎県(5.2)、佐賀県(4.3)、大分県(4.2)が多い。手足口病の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では山形県(0.50)、広島県(0.39)、岡山県(0.35)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では三重県(0.33)、神奈川県(0.23)、青森県(0.21)が多い。百日咳の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では鳥取県(0.16)、広島県(0.15)、富山県(0.14)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は横ばいであった。都道府県別では岩手県(0.08)、埼玉県(0.05)、鹿児島県(0.05)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では山形県(3.63)、沖縄県(3.35)、北海道(2.20)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では福島県(2.00)、宮城県(1.75)、群馬県(1.75)が多い。
注目すべき感染症
◆ インフルエンザ
インフルエンザ(Influenza)は、インフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症で、毎年世界中で流行がみられている。2009年4月にその存在が明らかとなった新型インフルエンザA/H1N1の臨床像は、従来の季節性インフルエンザとほぼ同様であり、罹患者の大半は合併症なく治癒するといわれているが、肺炎やインフルエンザ脳症を併発して重症化する場合がある。特に肺炎は、急速に進行する重症のウイルス性肺炎を起こす場合が多く、喘息や慢性閉塞性肺疾患等の呼吸器疾患の存在が急激な悪化と関連しているといわれている〔Clinical features of severe cases of pandemic influenza: Pandemic(H1N1)2009 briefing note 13, Global Alert and Response, WHO, Oct. 16, 2009;http://www.who.int/csr/disease/swineflu/notes/h1n1_clinical_features_20091016/en/index.html〕。
感染症発生動向調査では、全国約5,000カ所(小児科定点約3,000、内科定点約2,000)のインフルエンザ定点からの報告に基づいてインフルエンザの発生動向を分析している。本サーベイランスは原則的に臨床診断によるものであり、最近の国内のインフルエンザウイルス検出状況を考慮すれば、現在報告されているインフルエンザ患者発生の殆どは新型インフルエンザによるものであると推定される。
2010年第1週のインフルエンザの定点当たり報告数は9.18(報告数43,759)となり、2009年第49週以降減少が続いている(図1)。都道府県別では沖縄県(45.14)、宮崎県(17.34)、愛媛県(16.80)、静岡県(16.42)、高知県(16.19)、鹿児島県(15.94)、福井県(15.66)、熊本県(14.75)、愛知県(14.07)、滋賀県(13.42)の順となっている。定点当たり報告数は、30道府県では前週よりも減少がみられ、10.00を超えているのは17県となった(図2)。
定点医療機関からの報告数をもとに、定点以外を含む全国の医療機関を1週間に受診した患者数を推計すると約59万人(暫定値)となり、第28週以降これまでの累積の推計受診患者数は約1,875万人(95%信頼区間:1,856万人〜1,894万人)(暫定値)となった。性別では男性約971万人(51.7%)、女性約906万人(48.3%)であり、年齢群別では5〜9歳約481万人(25.7%)、10〜14歳約449万人(24.0%)、15〜19歳約262万人(14.0%)、0〜4歳約205万人(11.0%)、20〜29歳約190万人(10.2%)、30〜39歳約134万人(7.2%)の順となっている(図3)。5〜9歳、10〜14歳の年齢群では推計受診患者数の減少が続いているが、20代、50代、60代では増加し、他の年齢群では横ばいとなっている(図4)。但し、推計受診患者数は、受診患者数の多い医療機関がより多く選定されている傾向があることなどから、真の受診患者数より過大であると考えられている。この点を踏まえ、推計受診患者数についてはあくまで参考値として理解していく必要がある。
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図1. インフルエンザの年別・週別発生状況(2000〜2010年第1週) |
図2. インフルエンザの都道府県別定点当たり報告数(2010年第1週) |
図3. インフルエンザ推計受診患者数(暫定値)の年齢群別割合(2009年第28週〜2010年1週) |
厚生労働省が公表している新型インフルエンザによる入院例数および死亡例数(平成22年1月12日現在入院例15,615例、死亡例155例:http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/houdou/2010/01/dl/infuh0114-01.pdf参照)と人口(平成20年度人口動態統計、性・年齢別推計人口;2008年10月1日現在:http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001057781)および第28週以降の累積の推計受診患者数による分析結果を図5〜8に示す。入院率は人口1万人当たり1.24であり、年齢群別にみるとこれまでの患者発生数を反映して5〜9歳(人口1万人当たり11.42)が最も高い1峰性のピークを示しているが(図5)、推計受診患者数当たりでみると推計受診患者(暫定値)1,000人当たり0.83となり、年齢群別では20代が最も低く、幼若年齢層〔0〜4歳:推計受診患者(暫定値)1,000人当たり1.88〕と高齢者層(60〜69歳:同2.27、70歳以上:同5.21)で高い値を示している(図6)。また、死亡率は人口100万人当たりでは1.23であり、年齢群別では0〜4歳(人口100万人当たり3.37)、5〜9歳(同2.09)、40〜49歳(同1.57)、70歳以上(同1.54)の順となっており、10代、20代、30代は他の年齢層に比べて低い(図7)。一方、推計受診患者(暫定値)10万人当たりの致死率は0.83であり、年齢群別では15〜19歳〔推計受診患者(暫定値)10万人当たり0.04〕が最も低く、70歳以上(同28.18)、60〜69歳(同15.00)、50〜59歳(同6.05)と高年齢者ほど高い致死率を示している(図8)。これまで流行の中心であった5〜14歳の年齢群での推計受診患者数の減少が続いている一方で、20歳以上の年齢群では増加または横ばい傾向となっている。今後成人層での患者発生の割合が増加するにつれて、全体的な入院率および死亡率もこれまでよりも上昇してくる可能性が考慮される。
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図4. インフルエンザ推計受診患者数(暫定値)の年齢群別推移(2009年第36週〜2010年第1週) |
図5. インフルエンザの年齢群別入院率1(人口*1万人当たり) |
図6. インフルエンザの年齢群別入院率2〔推計受診患者(暫定値)1,000人当たり〕 |
日本で新型インフルエンザウイルスAH1pdmが検出された2009年第19週以降2010年第1週までに、全国の地方衛生研究所から24,349件のインフルエンザウイルスの検出が報告されており、そのうちAH1pdmは23,297件(95.68%)を占めている。また、特に患者報告数が増加し始めた2009年第28週以降では、2010年第1週までに22,096件のインフルエンザウイルスの検出が報告され、AH1亜型(Aソ連型)18件(0.08%)、AH3亜型(A香港型)133件(0.60%)、B型6件(0.03%)、AH1pdm(新型インフルエンザウイルス)21,939件(99.29%)とインフルエンザウイルスの検出報告数の大半をAH1pdmが占めており、現在国内で発生しているインフルエンザの殆どは新型インフルエンザによるものであると推定される状態が続いている(図9)(感染症情報センターホームページ:http://idsc.nih.go.jp/iasr/prompt/graph/sinin1.gif 参照)。
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図7. インフルエンザの年齢群別死亡率(人口*100万人当たり) |
図8. インフルエンザの年齢群別致死率〔推計受診患者(暫定値)10万人当たり〕 |
図9. インフルエンザウイルス検出報告割合(2009年第28週〜2010年第1週) |
過去の季節性インフルエンザの発生動向をみると、多くの地域で冬季休暇が終了して一定期間が経過した1月の中旬以降に患者発生数が大きく増加する例が大半であった。今後新型インフルエンザの発生動向がどのような推移をとるかは不明であるが、厳冬季のいわゆるインフルエンザの流行に適した時季に入り、季節性も含めたインフルエンザの発生動向には警戒が必要であると思われる。
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