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発生動向総覧
〈第8週コメント〉 3月3日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 285例 |
3類感染症: |
コレラ1例(感染地域:青森県)
細菌性赤痢1例(感染地域:千葉県)
腸管出血性大腸菌感染症12例(有症者8例、うちHUS 1例) |
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感染地域:国内11例、ニューカレドニア1例
国内の感染地域:愛知県3例、石川県2例、熊本県2例、東京都1例、広島県1例、福岡県1例、不明1例
年齢群:7歳(1例)、10代(2例)、20代(3例)、30代(1例)、40代(1例)、60代(2例)、80代(2例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2(6例)、O157 VT2(1例)、O26 VT1(1例)、O91 VT1(1例)、O128 VT不明(1例)、O145 VT2(1例)、その他・不明(1例)
累積報告数:166例(有症者104例、うちHUS 5例.死亡なし)
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パラチフス1例(感染地域:インド)
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4類感染症: |
A型肝炎1例(感染地域:東京都) つつが虫病2例(感染地域:愛媛県1例、熊本県1例) デング熱3例(感染地域:インドネシア2例、ブラジル1例)
レジオネラ症9例(肺炎型9例)
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感染地域:富山県2例、栃木県1例(温泉)、新潟県1例、岐阜県1例、大阪府1例、熊本県1例、国内(都道府県不明)2例
年齢群:30代(1例)、40代(1例)、50代(1例)、60代(3例)、70代(2例)、80代(1例)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢7例(腸管アメーバ症7例) |
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感染地域:宮城県1例、山形県1例、東京都1例、富山県1例、大阪府1例、鳥取県1例、国内(都道府県不明)1例
感染経路:経口感染2例、不明5例
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ウイルス性肝炎3例
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B型2例_感染経路:性的接触1例(異性間)、不明1例
C型1例_感染経路:刺青
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急性脳炎4例
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ロタウイルス1例_年齢群:1歳(死亡)
RSウイルス1例_年齢群:2歳
インフルエンザウイルスAH1pdm 1例_年齢群:10代
病原体不明1例_年齢群:40代
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クロイツフェルト・ヤコブ病3例
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孤発性プリオン病古典型2例
遺伝性プリオン病家族性1例
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劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例
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年齢群:70代(死亡)
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後天性免疫不全症候群12例(AIDS 3例、無症候7例、その他2例)
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感染地域:国内11例、国内・国外不明1例
感染経路:性的接触12例(同性間12例)
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ジアルジア症1例(感染地域:国内・国外不明)
梅毒5例(早期顕症II期2例、晩期顕症1例、無症候2例)
バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例(遺伝子型:VanC _菌検出検体:胆汁)
麻しん3例〔麻しん(検査診断例2例)、修飾麻しん(検査診断例1例)〕
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感染地域:国内3例
国内の感染地域:埼玉県2例、神奈川県1例
年齢群:1歳(1例)、15〜19歳(1例)、50代(1例)
累積報告数:68例〔麻しん(検査診断例22例、臨床診断例25例)、修飾麻しん(検査診断例21例)〕
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(補)他に2010年第7週までに診断されたものの報告遅れとして、E型肝炎1例〔感染地域(感染源):三重県(豚レバー)〕、ライム病1例(感染地域:長野県)、レジオネラ症2例〔感染地域:神奈川県1例(温泉)、香川県1例(温泉)〕、急性脳炎5例〔インフルエンザウイルスAH1pdm2例(10代1例、40代1例)、インフルエンザウイルス型不明1例(1歳)、パレコウイルス4型1例(0歳)、ロタウイルス1例(1歳)〕などの報告があった。 |
◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は第4週以降減少が続いている。都道府県別では福井県(4.56)、佐賀県(3.74)、富山県(3.06)、新潟県(3.00)、沖縄県(2.47)、長野県(2.26)、岩手県(2.13)、山形県(2.10)、静岡県(1.99)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症の報告数は3,544例と第5週以降減少が続いている。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の約66%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は3週連続で増加した。都道府県別では宮崎県(0.83)、佐賀県(0.57)、鹿児島県(0.56)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では山形県(5.2)、鳥取県(3.9)、宮城県(3.7)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は第5週以降減少が続いているが、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い。都道府県別では大分県(20.8)、宮崎県(18.2)、鳥取県(18.1)、愛媛県(18.1)が多い。水痘の定点当たり報告数は第5週以降増加が続いている。都道府県別では宮崎県(5.0)、沖縄県(3.1)、鹿児島県(3.1)が多い。手足口病の定点当たり報告数は第3週以降増加が続いており、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では広島県(1.58)、岡山県(1.37)、福井県(1.00)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では青森県(0.43)、山形県(0.33)、神奈川県(0.33)が多い。百日咳の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では広島県(0.18)、栃木県(0.15)、福井県(0.09)、島根県(0.09)、沖縄県(0.09)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は3週連続で増加した。都道府県別では熊本県(0.27)、福岡県(0.16)、岩手県(0.13)、島根県(0.13)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は3週連続で増加した。都道府県別では沖縄県(3.21)、山形県(2.63)、大分県(2.53)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は3週連続で増加した。都道府県別では沖縄県(3.57)、福島県(1.57)、宮城県(1.42)が多い。
注目すべき感染症
◆ インフルエンザ
インフルエンザ(Influenza)は、インフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症で、毎年世界中で流行がみられている。2009年4月にその存在が明らかとなった新型インフルエンザA/H1N1の臨床像は、従来の季節性インフルエンザとほぼ同様であり、罹患者の大半は合併症なく治癒するといわれているが、肺炎やインフルエンザ脳症を併発して重症化する場合がある。特に肺炎は、急速に進行する重症のウイルス性肺炎を起こす場合が多く、喘息や慢性閉塞性肺疾患等の呼吸器疾患の存在が急激な悪化と関連しているといわれている〔Clinical features of severe cases of pandemic influenza: Pandemic(H1N1)2009 briefing note 13, Global Alert and Response, WHO, Oct. 16, 2009;http://www.who.int/csr/disease/swineflu/notes/h1n1_clinical_features_20091016/en/index.html〕。
北半球では、ヨーロッパとアジアのいくつかの地域で新型インフルエンザウイルスの伝播が続いているが、インフルエンザの活動性は弱まりつつあり、殆どの地域で低いレベルとなっている。現在最も活発な感染伝播は、東南アジア、ヨーロッパの東部及び南東部で見られている。最近では、アジアにおいてB型インフルエンザの報告数が増加しつつある。東アジアでは、香港や台湾を含めて多くの国々で新型インフルエンザの流行は低いレベルのままであり、日本や韓国では非流行期のレベルに戻りつつある。特筆すべきは、B型インフルエンザの活動性が増加しつつあり、モンゴル、中国、及び東南アジアの一部地域で流行の主流になりつつある。また日本でもB型インフルエンザの集団発生が報告されている〔Pandemic(H1N1)2009-update 90:http://www.who.int/csr/don/2010_03_05/en/index.html〕。
感染症発生動向調査では、全国約5,000カ所(小児科定点約3,000、内科定点約2,000)のインフルエンザ定点からの報告に基づいてインフルエンザの発生動向を分析している。本サーベイランスは原則的に臨床診断によるものであり、最近の国内のインフルエンザウイルス検出状況を考慮すれば、現在報告されているインフルエンザ患者発生の殆どは新型インフルエンザによるものであると推定される。
2010年第8週のインフルエンザの定点当たり報告数は1.36(報告数6,524)となり、第4週以降減少が続いている(図1)。都道府県別では福井県(4.56)、佐賀県(3.74)、富山県(3.06)、新潟県(3.00)、沖縄県(2.47)、長野県(2.26)、岩手県(2.13)、山形県(2.10)、静岡県(1.99)、埼玉県(1.91)、岐阜県(1.91)の順となっている。38都府県では前週よりも減少がみられており、また全ての都道府県で5.00を下回った(図2)。
定点医療機関からの報告数をもとに、定点以外を含む全国の医療機関を1週間に受診した患者数の推計値は約7万人(暫定値)と減少し、第28週以降これまでの累積の推計受診患者数は約2,059万人(95%信頼区間:2,039万人〜2,079万人)(暫定値)となった(図3)。性別では男性約1,063万人(51.6%)、女性約997万人(48.4%)であり、年齢群別では5〜9歳約518万人(25.2%)10〜14歳約475万人(23.1%)、15〜19歳約280万人(13.6%)、0〜4歳約228万人(11.1%)、20〜29歳約219万人(10.7%)、30〜39歳約155万人(7.5%)の順となっている(図4)。全ての年齢群で、前週よりも減少かまたは横ばいとなっている。但し、推計受診患者数は、受診患者数の多い医療機関がより多く選定されている傾向があることなどから、真の受診患者数より過大であると考えられている。この点を踏まえ、推計受診患者数についてはあくまで参考値として理解していく必要がある。
患者報告数が増加し始めた2009年第28週以降では、2010年第8週までに、全国の地方衛生研究所から28,270件のインフルエンザウイルスの検出が報告され、AH1亜型(Aソ連型)18件(0.06%)、AH3亜型(A香港型)151件(0.53%)、B型19件(0.07%)、AH1pdm(新型インフルエンザウイルス)28,082件(99.33%)とインフルエンザウイルスの検出報告数の大半をAH1pdmが占めている。また、2010年に入っても第1〜8週の8週間に検出・報告された2,169件中、AH1亜型0件、AH3亜型3件(0.14%)、B型13件(0.60%)、AH1pdm 2,153件(99.26%)と、現在国内で発生しているインフルエンザの殆どは新型インフルエンザによるものであると推定される状態が続いているが、最近では少ないながらB型やAH3亜型の検出も報告されている(図5、および感染症情報センターホームページ:http://idsc.nih.go.jp/iasr/prompt/graph/sinin1.gif 参照)。
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図1. インフルエンザの年別・週別発生状況(2000〜2010年第8週) |
図2. インフルエンザの都道府県別定点当たり報告数の推移(2010年第6〜8週) |
図3. インフルエンザ推計受診患者数(暫定値)週別推移(2009年第28週〜2010年第8週) |
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図4. インフルエンザ推計受診患者数(暫定値)の年齢群別割合(2009年第28週〜2010年第8週) |
図5. インフルエンザウイルス検出報告割合(2009年第28週〜2010年第8週) |
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定点からの報告数は、2009年第48週をピークに減少し続け、2010年第3週に一旦やや増加したものの、第4週以降再び減少が続いている。第8週の定点当たり報告数は1.36となり、インフルエンザの非流行時期のレベルに近づきつつある。しかし、まだ新型インフルエンザの今後の発生動向については不明な点も多く、季節性も含めたインフルエンザの発生動向には注意が必要であると思われる。
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